忙しすぎて全く書けていないので。あとちょっと書きたくなったので。

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ちょっとずつ訴えかける赤城さん

「ここにバケツがあります」

 

彼女はそう言いつつ、地面に座って空っぽの高速修復材のバケツを弄っている。

 

「私が普段ボーキ入れと呼んでいる物です」

 

使用済みのバケツを入渠ドッグから、彼女がこっそりくすねてきた事は言わなかった。

 

「しかし、このボーキ入れは不完全です。現状、このボーキ入れの存在価値(レゾンデートル)は満たされておらず…」

 

そこまで言うと、彼女は顔を上げる。黒髪ロングの美しい女性である。

 

「これはただの緑色の個体でしかないのです。分かりますか?」

 

そんな彼女を見下ろすのは5人。真ん中に立つのはこの施設、横須賀鎮守府の最高責任者である提督。その右に立つのは本日の秘書艦である川内型軽巡洋艦2番艦の神通。提督と最初にケッコンカッコカリをした艦娘であり、この鎮守府で最高の練度(Lv175)を持つ最強の嫁である。提督の左には工廠の責任者である工作艦明石が、その横には明石の友人であり工廠の副責任者でもある夕張型軽巡洋艦の夕張がいた。神通の横には”任務娘”こと大淀型軽巡洋艦の大淀がいた。そんな5人は彼女の言葉に返事もせず、そして無表情のままであった。

 

「ん~? もう少し説明が必要ですかね?」

 

首を可愛らしく傾げながら彼女、正規空母赤城はバケツに目線を落として再び口を開く。

 

「つまり、ボーキサイトが入っていないバケツはただの金属であり、誰もいない鎮守府は穴が空いただけの赤レンガの山です…ここまでは分かりますね?」

 

5人は無表情のままだったが、手や体がプルプルと震えている事に赤城は気づいていない。

 

「ではこの緑色の個体がなぜ不完全か…見ての通りこのバケツには何も入っていない…そうでしょう? さて、では何が足りないのか…」

 

ここで赤城はドヤ顔で提督達に顔を向けた。

 

「分かりますよね!?」

 

 

 

 

 

「赤城よ」

 

提督の口から恐ろしいほど冷たい声が出た。赤城はもちろん、横にいた4人も震え上がるほどだった。

 

「分かっているのは、お前がボーキサイトをガツガツ食っちまったことだ。まあそれ自体はいつもの事だ。大目に見ようと思った。だが今回は駄目だ。何故か分かるか?」

 

無言で首を横に振る赤城。

 

「お前が食ったボーキサイトな、実は今日ある目的に使う予定だったんだ。その目的はな…」

 

提督が赤城の後方を指差す。つられて後ろを見た赤城は思わず息が止まりそうになった。そこにいたのはこの横須賀鎮守府にいる他の空母達、それに航空戦艦達だった。一番の親友である加賀が、他の正規空母が、軽空母が、護衛空母が、水上機母艦が、そして航空戦艦がずらりと並んでいたのだ。

 

「この鎮守府で使用している艦戦・艦爆・水偵・水戦・陸攻・陸戦を一気に改修しようとしていてな、その為に貯めていたボーキサイトだったんだよ。ほら、あそこにネジが山積みになってるだろ?」

 

汗が止まらない。膝がガクガクする。赤城は必死に考えた。どうすればいい? どう謝罪すれば許してくれるのか?

 

「赤城よ、起きてしまった事はしょうがない。過去には戻れないからな。だが罰は受けてもらう。加賀?」

 

「はい、提督」

 

加賀が無表情でゆっくりと近づいてきた。普段一緒の部屋で生活している赤城はすぐに理解した。

 

(あ、加賀さん超怒ってる。私死んだわ)

 

「赤城さん」

 

「はははははい!!」

 

加賀は赤城の耳元に口を近づけてそっと、しかしこの場にいる全員に聞こえるように言った。

 

「とても、いえ、とっても頭にきました」

 

次の瞬間、加賀は赤城の耳たぶを思いっ切りつねりあげた。

 

「痛たたたたたたた!!!!!」

 

「さ、みんなに謝りましょう?」

 

「ごごごめんなさいいいい!!!」

 

「何か言った? 聞こえないけれど?」

 

「ごめんなさい!!!」

 

「もっとはっきり言って?」

 

「こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛い゛い゛い゛!!!」

 

加賀は耳たぶから手を離して、涙目の赤城はようやく痛みから解放された。

 

「はぁ……はぁ……痛いよう…」

 

「みんな、これでいいかしら?」

 

後ろを見ながら加賀がそう言うと、待機組は全員頷いた。

 

「そう。提督、あとはお願いします」

 

そう言って加賀は待機していた場所に戻った。同時に神通が赤城に近づく。

 

「赤城よ、私はまだ怒っている。だがお前を直接殴ったりはしない。俺は女性に優しい男だからな。だからお前への処罰は神通がやる」

 

「赤城さん」

 

神通は赤城の襟首をつかみ、ひょいっと持ち上げながら満面の笑顔で言った。

 

「赤城さんは空母ですよね?」

 

「え? え、ええそうですけど…」

 

そのまま工廠のすぐ横にある桟橋まで移動する。

 

「空母って飛行機の事ならほとんど知っているんですよね?」

 

「ま、まあ艦載機限定ですけど…?」

 

「でも赤城さんは空を飛んだ事はないのですよね?」

 

「そりゃ飛んだ事はないですよ」

 

それを聞いた神通は真顔になってこう言った。

 

「なら、鳥になってこい」

 

 

 

 Lv175になった神通は戦闘能力はもちろん、その他の能力も飛躍的に向上していた。例えば筋力。艤装を付けていない状態でも厚さ5mの鉄筋コンクリート壁を粉々に出来る。軽巡ト級程度までなら手刀で殺せる。艤装を付けた場合は更に能力が上がる。飛んできた敵戦艦の主砲弾を手刀で真っ二つにするのはよくある事で、接近してくる敵魚雷を拾って投げ返す、急降下爆撃してきた敵艦載機を飛び膝蹴りで破壊する、5km以上離れた場所から空母ヲ級の頭にあるでかい口に酸素魚雷を投げ込み撃沈する等、驚異的な戦闘力を有している。ある夜戦時には、敵の戦艦レ級elite2隻を一瞬で殺し、ダイソンこと戦艦棲姫の首を文字通り”引っこ抜き”、その首を近くにいた砲台小鬼に叩きつけて殺害。それを見た潜水夏姫flagshipは潜って逃げようとしたが、神通が投げた剣(天龍から分捕ったもの)で貫かれて海の藻屑となった。

 

そんな神通が艤装を付けた状態で本気で物を投げた場合どうなるか。

 

 

 

 投げられた赤城は1秒もしないうちに音速を超えた。ソニックブームで工廠の窓ガラスが木っ端微塵になった。更に赤城は加速していき、マッハ5を超えて極超音速に突入した。赤城の美しい黒髪と着ていた服は全て蒸発したが、艦娘の保護機能が働いた為、体は燃えずに済んだ。そのまま飛んでいった赤城が最終的に落ちたのは、深海棲艦の一大拠点であるミッドウェー島であった。普通の航空機や艦娘であれば、深海棲艦はすぐに察知して戦闘態勢に移行できたのだが、マッハ5を超えて艦娘本体が飛んでくる事など想定外だった。真っ赤に輝きながら飛んできた赤城は、深海棲艦の司令部施設に直撃。爆薬は搭載していなかったが、赤城の質量及び極超音速での衝突速度が十分な破壊と効果をもたらした。神通の腕力と赤城の質量と速度が1つになった結果、正規空母赤城は”運動エネルギー弾”赤城に生まれ変わったのだ(本人は望んでいないだろうが)。ちなみに着弾時の速度は時速10.903km、約マッハ8.9であった。そんな赤城の直撃を受けた司令部施設は言うまでもなく、島にいたほとんどの深海棲艦が塵も残さず蒸発。海上でのんびりしていた深海棲艦達は、着弾の衝撃波でその9割が即死した。物資は貯蔵庫や輸送艦もろとも吹き飛び、島は地図を書き換える必要がある程地形が変わってしまった。

 

これを現地で見ていた巡潜乙型3番艦の伊19は、

 

「汚い花火なのね」

 

と言いながら、深海棲艦の残存艦隊を雷撃して全て撃沈している。伊19は鎮守府で2番目の実力を持っており、現在の練度はLv174である。

 

 

 

 1週間後、提督は大本営に対してミッドウェー島解放を報告。最初は信じてもらえなかったが、ミッドウェー島まで見に来てもらい信じてもらった。なお、赤城着弾の跡については貯蔵庫が爆発したのでは、という説明をした。この功績により提督は勲章と栄誉、大量の資材を手に入れた。その一方、深海棲艦側は主力艦隊と大量の物資を一気に喪失した為、各地の戦線で敗北が続く事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお赤城についてだが、ミッドウェー島で犬神家よろしく地面に突き刺さっているのを発見され、無事に回収された。ドッグにぶち込んでバケツをかければ、服や髪は全部元通りになった。ただちょっとトラウマがあるらしく、神通が視界に入ると直立不動の姿勢を取る上、神通の命令なら何でも聞くようになった。そして一番大事な事だが、ボーキサイトのつまみ食いはしなくなった。


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