ぐらさい日記   作:長之助

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ホワイトパーリナイ

「特異点!姦淫しよ」

 

「光の刃ァ!!!」

 

「がふっ」

 

「オラさっさと立てベリアルゥ!!戦果と金貨と銀貨落とさんかいワレェ!!」

 

「おいおい、俺のマゾヒズムをくすぐるのは止めてくれよ。興奮で達してしまうだろう?」

 

「ベリアル語録はもういいんだよ!!アズラエルとイスラフィルのこと許すと思ってんのかゴラァ!!!」

 

「はっはっは、既に満身創痍の俺にまだ攻撃を続けるとはね。特異点はサディズムの塊じゃないか?」

 

 どこともしれない赤い空の下で、メカニックとなっているグランはシュヴァリエマグナの力が宿った銃で、ベリアルを殴っていた。言葉にして表してみると至極単純なことだが、持ち手の方でぶん殴っているのでベリアルの頬に凄まじいダメージが入っている。

 

「なんだったらもっかい錬金術とドリルとメイド達のコンビネーション味わせてやろうか!?」

 

「えっ」

 

「おいおい特異点、後ろの女達が驚いてんぜ?あとそれやられるとまた俺達してしまう」

 

 何かの括りで分けられた全員の怒りを代弁するかのごとく、怒り狂ったグランはベリアルを殴っていく。

 

「おうお前あと1ヶ月くらい殴り続けてやるからな!!」

 

「おいおいそんな長時間のプレイをする気か?ずっとせめてばかりじゃ飽きるだろうし、途中で交代しよう…そしたらマゾヒズムとサディズムを両方満たすことが出来るぞ?」

 

「うるせぇ!!」

 

 赤い空の下でグランの叫びがこだまする。彼の怒りはもはや誰にも止めることが出来ないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ…!?夢か……ん?」

 

「っ…!?」

 

「……やぁクラリス、何故君は寝ている俺の顔にそこまで顔を近づけているのかな?俺の顔がよく見えないという話なら、眼鏡をつけるといい」

 

「ち、違うから!?ウチは別にそこまで目が悪くないから!?」

 

 目が覚めると、グランの顔の数センチ先にクラリスの顔があった。真っ赤にした顔と、慌てふためく姿が存在しているこの異常な状況が、グランの寝ぼけた頭をそれなりに回転させてくれていた。

 

「ふぁ……あ、もしかして寝過ごしちゃってる?」

 

「いや、そこまで寝過ごしてないと思うけど……珍しくグランより早く起きれたから、ちょっと様子見に来ただけだし」

 

「あぁそうだったのか……あぁそうだった、クラリスちょっとこっちおいで」

 

 起き上がってから、グランは手招きしてとある部屋へとクラリスを招く。

 入った瞬間に、凄まじいほどのチョコの匂いがクラリスの鼻腔に入ってくる。

 

「こ、このチョコのにおいは……」

 

「はい、これバレンタインのお返し」

 

「……あ!今日ホワイトデー!!」

 

「何だ今気づいたのか。だったら話は早いな……はい、これクラリスの分だから存分に味わってくれ」

 

「この部屋、チョコの匂いがかなり凄いけど……私のお菓子もチョコなの?」

 

「何人かはチョコじゃないけどな……お前にはミカンを使ったビスケットだ」

 

 クラリスが丁寧に包装された箱を開けると、そこにはグランの言う通りみかんの香りが漂うビスケットが入っていた。

 

「うわ凄い……1人で作ったの?」

 

「当たり前だろ?作ったのは俺一人だよ…あぁそうだ、これからみんなにお返ししにいかなくちゃいけないんだったな 」

 

「……団全員の子にお返しする気なの…?」

 

「え?そうしないと失礼だろ?」

 

 クラリスはそういうことが聞きたいのではなかった。この場にあるお返しのお菓子は、全員分なのだと考えたらグランはいつこれを作ったのか…それが気になるのだ。

 

「因みにグラン、昨日何してた?」

 

「昨日?うーん…まぁいつも通りだったな。朝昼夕方ずっと依頼だったよ、合間合間に船に帰ってきてたから、お返しのお菓子はその間に作ってた」

 

「合間合間……?」

 

 そんな合間、一体どこに存在していたのだろうか。クラリスは聞きたかったところだったが、あまりにも不思議かつある意味で恐怖だったので、これ以上の追求はしないことにしたのであった。

 

「まぁとりあえずお返し返してくるから……あ、なんか用事?」

 

「う、ううん……本当に部屋覗きに来ただけ」

 

「ならごめん、俺は行ってくるよ」

 

 そう言ってグランは、部屋から大量のチョコを担いで出ていく。1人ぽつんと残されたクラリスだったが、顔を赤くしながら、自分の人差し指を唇に当てて、ちょっとだけ後悔を感じているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?グランはん…?どないしたんその大きい荷物…」

 

「…甘い匂いするけど、それお菓子?」

 

「お、正解。という訳で2人にもバレンタインのお返しを配ります」

 

 グランは出会ったユエルとソシエに1つずつお菓子を渡す。2人には、自家製のお饅頭である。

 

「……え、これグランはんの手作り?」

 

「凄いなぁ……もうこれお店で出せる味やで?」

 

「うんうん…すっごく美味しい」

 

 貰ってから、グランに許可をもらって直ぐに食べ始めるユエルとソシエ。本当に美味いお饅頭を、彼女達は美味しそうに食べていた。そして、その光景をグランは楽しそうに見ていた。

 

「もしかしてそんなかのお菓子、全部グランの手作りなん?」

 

「おう、そうだよ?今日の間に、女性団員全員に返すつもりだからさ!」

 

「今日の間にて……依頼でおらん人は除いてなん?」

 

「いや、今日は依頼で出かけてる人も予定だと帰ってくる日だし、今日出るような依頼受けてる人はいないんだよね」

 

 サラッと発言したグランだが、そのセリフにユエルとソシエは首を傾げる。団長なのである程度の予定は把握しているだろうが、今の言葉をそのまま受け取ると本当に全員の予定を覚えていることになりかねない。

 

「……ぐ、グラン?」

 

「ん?何?」

 

「ほんまに全員の予定覚えてんの?」

 

「そうじゃないと団長務まらないでしょ?」

 

 改めて、2人はグランの凄さを思い知っていた。おそらく並大抵のことでは覚えきれないものをなんとかして覚え、鍛錬も欠かさず行い、そして団員達とのコミュニケーションも忘れない。

 団長になってからなのか、はたまたそれよりも前からこうだったのかは2人には分からないが、少なくともグランは並大抵の団長には出来ないことをしていた。

 

「あ、お饅頭また作って欲しかったら言ってね。合間があればいつでも作ってあげるから」

 

「ほんまに!?じゃあまた今度作ってな!!」

 

「そんなに気に入ってくれたら嬉しいなやっぱり」

 

「ぐ、グランはん…」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「あ、厚かましくて悪いんやけど……ウチにもお願い、な…」

 

「気にしなくていいよ、いっぱい作ってあげるからさ」

 

 嬉しそうに、耳と尻尾を動物のように動かす2人。彼女達はグランよりも歳上だったはずだが、グランも自分自身歳上であっても親しい間柄のように、敬語を使わない方針のために偶に年上と年下の区別がつかなくなってきているところであった。

 

「他誰かに渡したん?」

 

「いいや?寝起きにクラリスが部屋にいたからさ、とりあえずクッキーをクラリスに渡して、その後で全員に渡しに行くって言うの伝えて先に出てきたんだよ。

 ユエルとソシエは、部屋から出て初めてあった女性団員だよ」

 

「……あれ?ルリアは?」

 

「ルリアには今みたいに隠しながら……みたいな事が出来ないからねぇ」

 

「へぇ、そうやったん?初めて知ったわ」

 

「魂分け与えてるせいか、感情も大雑把に移っちゃうんだよね。ルリアが悲しかったら俺も悲しくなるし、俺が嬉しいとルリアも嬉しくなる…みたいな」

 

 ルリアには、サプライズが出来ないと愚痴るグラン。確かに、心がある程度通じあっている相手では、サプライズでチョコを渡すことは不可能に近いだろう。

 それこそ、お菓子を作りながらほかの全く関連性のないものを考えなければならない。流石にそれはいくらなんでも不可能なので、グランでも出来ないのだろう。

 

「不便?」

 

「いや?全然そんなことないよ。それに感情が伝わると言っても、そんなに事細かく伝わるわけじゃないから、多分わかったとしても…『何かを渡してくれるかな?』くらいだと思う」

 

「それの根拠は?」

 

「俺がそうだから」

 

「なる程なぁ」

 

 グランとルリアにしか分からないこと。この二人の仲は、かなり硬いものでありそれが例えグランの家族や、仮にできたとしても恋人以上に繋がっていられるのだろう。

 彼らの繋がりは、グランを好いている女性陣からしてみれば羨ましさ半分、ルリアだからこその安心半分と言ったところである。

 

「……あ、俺そろそろ他の子達にも渡しに行かないといけないから行ってくるね」

 

「頑張ってな〜」

 

「おーう」

 

 そう言ってグランは2人から離れていく。やけに大きな荷物を抱えているにも関わらず、グランは変わらずいつもと同じように動いていたのであった。

 

「……あれ、重さどれくらいあるんやろうなソシエ」

 

「多分……ウチらには想像つかんくらい重たいと思うよユエルちゃん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、ようやく全員に返し終えたぜ」

 

 全員にチョコを返してきたかつバルルガンにチョコを渡してきたあと、グランは部屋に戻ってきていた。

 その時点で既に夕方になっており、チョコを渡すのに奔走しすぎたと自分でも思ってしまっていた。

 

「もうちょっと早く配るべきだなぁ」

 

「いやいや、早すぎんだろ」

 

「おやビィ君、いたのか?」

 

「ひでぇなぁ、朝から部屋にいたってのにお前オイラをおいてけぼりにするんだもんよォ」

 

 ビィはグランの頭の上まで飛んでいき、その小さな体を乗せる。グランは『悪かった』と言いながらビィの頭を撫でていた。

 

「つーかよぉ、朝から居たのになんでわかんねぇんだ?」

 

「いやぁ、クラリスがいきなり目の前にいた事とか今日がホワイトデーだって事を忘れててさぁ」

 

 朝のことを思い出しながら、グランは苦笑いをしていた。グランの言葉に、ビィはため息をついていた。

 

「ったくよぉ……まぁ、今日はオイラもルリアと一緒に色々してたから良いんだけどよ」

 

 そう言いながらため息をつくビィだったが、実は彼は見ていたのだ。朝からわざわざ部屋にこっそりと侵入し、誰もいないこととグランが寝ていることを確認してからキスをしようとしていたクラリスの姿を。

 呼びかけようと思ったが、直ぐにグランが目を覚ましてしまったため、声をかける間もないままここまで来てしまったのだ。

 因みにグランは全く気づいていないが、ドアの鍵はぶっ壊されていた。

 

「さーて、あとは事務処理だけ終わらせて今日は寝るかぁ」

 

「おいおい、今から仕事すんのかぁ?」

 

「書類仕事だけだし、それなら1時間もあれば終わるでしょ」

 

「まぁそうだけどよォ」

 

 ビィはグランの仕事量をいつも見ているが、ビィ自身が寝るまでの間にグランが休憩した所を確認したことがない。無論、昼食等や依頼途中の休憩は除くが。

 

「そういやよぉ、ルリアにはお返しは渡したのか?」

 

「うん、街中で前に見たすんごい縦に長いホールケーキ。あれ作った」

 

 それはホールケーキではなく、もしかしてウェディングケーキなのではないだろうか。ビィはそう突っ込みたかったが、今突っ込んだところでどうしようもないので━━━

 

「とりあえずオイラもできることがあるなら手伝うぜ」

 

 グランの仕事を手伝う事にしたのであった。




ベリアルはいい悪役でしたね。僕は好きです。
でもそれ(アズラエルとイスラフフィルのことに対する怒り)とこれ(ベリアル大好き)は話が別なので殴ってました。

偶には長編とか書いて欲しい

  • はい(ギャグノリ)
  • はい(シリアス)
  • いいえ

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