しまりんの幼馴染は、なでしこの飼い主になりました 作:通りすがりのキャンパー
「お待たせ」
「ああ」
週末、俺はまたしてもリンとキャンプに来ていた。
今日こそは積み本を消化しようとコーヒーを準備していたら、今度は玄関から大声で呼ばれた。
そして、結局キャンプに付いて行くことになった。
管理場で、リンが諸々の手続きを終えると、俺たちはキャンプ場に向かう。
「しかし、2千円か」
「学生の身で、2千円は結構な出費だな」
「そう思うと、リンは凄いよな。キャンプに掛かる費用、全部自腹だもんな。俺なんか、小遣いから出してるだけだし」
「いや、月の小遣い3千円で、一ヵ月どころか三ヵ月やり繰り出来るカイも相当だからな」
「小遣いなんて、殆ど自分のためでしか使わないし、あまり使う機会がないだけだ。まぁ、俺もそろそろバイト始めるかな……」
そんな話をしながら、キャンプ場につくと、ちらほらと人がいた。
「へ~、シーズンオフでも、意外といるもんだな」
「まぁ、有名キャンプ場だからな。さて、この辺に張るか」
前回と同じ手順でテントを張り、準備を終える。
「さて、それでは今日のキャンプご飯ですが、インスタントではない、アウトドアご飯を作る!」
「おお……そりゃスゲェ」
「…………と思っていたが」
そこで言葉を切り、リンが袋から出したのは、前回と同じカップ麺だった。
「途中でスーパーがなかったので、結局コレですわ」
「………まぁ、うまいからいいだろ?」
「次から本気だーす」
「それ、本気出さない奴のセリフだから」
椅子に座り、本を読もうとしたその時、スマホが鳴り、取り出す。
見ると、斎藤からのメッセージだった。
ただし前回と違い、俺個人のトークではなく、俺とリン、斎藤の三人で作ったグループトークにだ。
斎藤『リン、カイ、今週はどこ行ってんの?』
リン『富士山の目の前の麓キャンプ場ってとこ』
『てか、なんで俺がリンに同行していること前提なんだ?』
斎藤『なんかそんな感じがして』
斎藤『それより、写真撮ったら送ってねー』
リン『うぃ』
斎藤『ついでにお昼ゴハンも買ってきてねー』
リン『くたばれ』
『買ってやる義理はない』
斎藤『辛辣すぎるぜ、ダチ公共』
斎藤『仕返しだ。貴様らのいるキャンプ場に熊と虎とチワワ100匹放った』
リン『うわっ、何をするくぁwせdrftgyふじこlp』
『俺の喉元をチワワが!?』
リン『死んじまったじゃねーかバカヤロー』
『チワワに食い殺されるとは思わなかったぞバカヤロー』
斎藤『こっちも空腹で死んじまったぞこのやろー』
そこでメッセージ遊びをやめ、スマホを仕舞う。
「なんでチワワに殺されてんだよ?」
「そっちこそ、なんでスマホで、くぁwせdrftgyふじこlpって打てるんだよ」
「なんで発音できてんだよ」
そこで一息入れ、リンがキャンプ場の地図を出す。
「薪は一束500円。ここ直火NGだから、やるなら焚火台も借りなきゃな」
「焚火台?」
「うん。こう言う芝生のキャンプ場だと、火が燃え移るから、台でやらないとダメなんだ。一日で薪三束は使うし、台もレンタルすると合わせて2500円」
「利用料と合わせると4500円か」
かなりの出費だ。
「………寒くなったら寝袋被るか」
「だったら、今日は本じゃなくて散歩でもしたらどうだ?」
「散歩?」
「歩けば温まるだろうし、それに、斎藤に写真送らなきゃだろ?」
「ん~………そうだな。初めて来た所だし、2000円も払ったし」
「じゃ、行くか」
立ち上がり、リンと並んでキャンプ場を散歩する。
「あ、犬だ」
「お、犬だな」
写真を撮りつつ、散策していると、犬を見つけた。
二匹の犬は、俺たちを見るや否や、元気に走ってきた。
だが、残念ながら、俺にタックルしようとした犬は首輪に繋がれており、俺にぶつかる直前で進めなくなった。
その光景に、俺は思わずドヤ顔をした。
そして、リンに向かって走ってきた犬も、首輪に繋がれていた。
だが、縄がもう一匹のより長く、進める範囲も伸びており、その犬のタックルを、リンは正面から受けた。
「ぐふっ!?」
「……大丈夫か?」
「あ、あんまり………」
腹を抑えながら立ち上がろうとするリンに手を貸し、その後で犬を撫で繰り回した。
次に、俺たちが見つけたのはキャンプ場、入り口にある二体の動物の像だ。
片方は色的に虎だとわかるが、もう片方はよくわからなかった。
何故かこっちだけ塗装されていなかった。
ライオンっぽくも見えるが、どうなんだろう?
「あ~……」
リンはと言うと、そのライオンっぽい像の前に立ち、像と同じように口を開けていた。
何してんだ?
取り敢えず、可愛かったので正面から、素早く写真を撮った。
「おい!なんで今撮った!?」
「悪い。可愛かったからつい」
「か、かわっ!?」
「折角だし、俺のスマホの待ち受けにしてやる」
「やめろー!」
俺のスマホを取ろうと、手を伸ばしてくるリン。
そんなリンにスマホを取られないように手を高く上げる。
身長のせいで、リンの手は俺の手に届かず、ずっとぴょんぴょんとジャンプするだけだった。
一通り見回った後、テントまで戻り、本を読み始める。
流石に散歩だけじゃ時間は潰せなかった。
「クシュン!」
リンのくしゃみで俺は本から目を離した。
気が付けば、もう夕方だった。
時間は16:30か。
「リン、ちょっとトイレ行ってくる」
「いってらー」
リンに見送られ、トイレに向かう。
用を足し終え、ハンカチで手をふきながら、トイレから出る。
「さて、戻るか」
「カイくーん!」
「………ん?なんか、各務原の声が聞こえた様な………気のせいか」
「カイくーん!」
「いや、気のせいじゃないな」
確信を持ち、振り返る。
「カイ君!」
「うおっ!?」
振り向くと、そこには目の前いっぱいに広がる各務原の笑顔があった。
まさか、こんな至近距離にいるとは思わなくて、驚いた。
「やっぱりカイ君だった!」
「各務原、お前、どうしてここに?てか、その大量の荷物どうしたんだ?」
各務原の腕には何故か野菜の入った袋があった。
「斎藤さんが教えてくれたんだ。後これは、この前のお礼だよ」
「お礼?」
「リンちゃんも一緒だよね。カイ君、三人でお鍋しよ!」