ピンク理論――Monica Goode Moulding
「うんしょ。はじめての単独配信……。ヒロちゃんがいないからちょっと緊張するな。
ごほん。まずはヒロちゃんに習って挨拶からはじめよう。
ハローワールド。ピンクだ。ドクターピンクと呼ぶ者もいるな。
今日は、ヒイロウイルスによる超能力やゾンビについて考察したい。
まずは、引用からはじめてみよう。
――人は考える葦である。
これは偉大な哲学者パスカルが述べた言葉であるが、ピンクはこの言葉をいま一度現代風に言いなおしてみることにする。
――人は演算する機械である。
人は意識的にあるいは無意識的に演算している。
そのことを否定する者はいないだろう。
この配信を見ている諸君らも、また演算している。
諸君らが思考しているということは、諸君ら自身が証明しつづけていることだろう。
デカルト曰く――、
我思うゆえに我あり。
正確には、我思うゆえに我思うという思考ありが正しいが、いずれにしろその演算自体が存在することは否定できまい。
したがって、この点については証明不要である。
しかし、ここでピンクは人間という存在が『原子がランダムに衝突する単なる物質的存在』であるということを言いたいわけではない。
きわめて卑近的な当たり前のことを言いたいのだ。
人間は、日常生活をするうえにおいても、あるいは単に呼吸をし、会話を交わし、なんらかの感動をしているときでさえも、想像もつかないような膨大な演算をおこなっているということである。
感動に方程式はあるだろうか。
呼吸に我々の想像もつかないような法則があるだろうか。
愛や友情に相関関係は?
それらはいまだ科学的なメスが入っていない部分も多いため割愛しよう。
ひとつ留意してほしいのは、人間には演算力があるという事実だ。
ここでコンピュータに詳しい者は『人よりもコンピュータのほうが演算力は高いのではないか』と思われるかもしれない。
然り――、コンピュータは人間が苦戦するような長大な計算を一瞬で読み解く能力を持つ。しかし、ピンクが言いたい『演算』という言葉は、想像力をも内包するものだと考えてほしい。
演算と一口にいっても、人間にはコンピュータが苦手な分野をカヴァーしている面があるということだ。
ひとつわかりやすい例え話をしよう。
わが国が1998年に新たな神をつくりあげた。
そう、みなも普通に使っている『グーグル』という検索サービスだ。
利用者は神託を求める巫女のように、グーグルに問いかける。
グーグルは演算する。
しかし、ソレは『正解』を知っているわけではない。
黒板に式を書いてみるぞ。
うん。と。ピンク自身が浮く超能力はちょっとまだケイケンチが足りないみたいだ。
届かないぞ!
どうしよう。
ちょっと誰か、誰かピンクをもちあげて。お願い。うん。
以下の条件を満たす数字Pは存在しない
Pはこの言説の妥当な証明のコード番号である。
この言説がなにを指しているのか、数学を勉強した諸君らはすぐにピンときたことだろう。
偉大なる数学者ゲーテルの掲げた着想。
要するに公理系の無矛盾の証明は同一公理系内では証明できないということだ。
すなわち、コンピュータが演算にもたついている間に、人間が一息のうちに理解してしまえるような領域がある。直観という領域が存在する。コンピュータが絶対に直観をもてないのかというと、そういうわけではないと思うが、いま現在時点においてはコンピュータはゲーデルが用意した壁を越えることはない。
グーグルの例に戻ろう。
うん。おろして。ありがとう。
グーグルがいくつもの選択肢を我々に提示するということは、既に経験として諸君らの多くは知っているだろう。しかし、その選択のなかから、実際にクリックするのは我々人間なのだ。あ、ピンクは人間じゃないかもしれないけど、まあそれはそれとして――。
このとき、グーグルという『場』において、人間と機械はひとつの神託機械として動作している。人は機械の苦手な領域を補い、機械は人の苦手な領域を補っている。
人は決して、コンピュータに演算力で負けているわけではない、ということだ。
このことを諸君らには留意していてほしい。
今回ピンクは科学者として、現象から法則を逆算してみたい。
ピンクの目の前には、いま一本の鉛筆がある。
わたしの中にたゆたうヒイロウイルスは、現実に干渉し鉛筆をまるで操り糸でたぐるようにダンスタップを踏ませることができる。――できました。
この超能力。いわゆる念動の力はいったいなんなのかということである。
ピンクは推論として述べる。
この力は――人間の演算能力ではないか、と。
より現実的な路線で言えば、ナノマシンのような小さな機械がピンクの周辺にたむろっていて、ピンクの思考を感知して、そのような現実をもたらしたのだという言い方のほうが受け入れられやすいかもしれない。
つまり、ヒイロウイルスなる物質が――単純にその個体の持つ総量で現実を改変する力に強弱が生まれるという理論だ。
しかし――、後輩ちゃんとの対比で、ピンクはまったく違う知見を得た。
後輩ちゃんは長くからヒイロゾンビをやっている。後輩ちゃんという名前だがピンクにとってはヒイロゾンビ的な先輩ちゃんでもある。ピンクは後輩ちゃんに比べて、わずかだがヒイロウイルスの力を強く使える。
この差異はいったいどうして生じたのか。
ましてや、ピンクは実を言えばヒロちゃんからではなく後輩ちゃんから直接感染している。
ピンクが最初に考えていたモデルは、ヒイロウイルスはヒロちゃんを頂点としたピラミッド型になっているのだと思っていた。要するに、ヒイロウイルスが一番濃いヒロちゃんが強く、第二感染、第三感染になるにつれて弱まっていくのではないかと思っていた。
日本の漫画とかアニメの吸血鬼だと定番の組織図だな。ヒロちゃんが頂点で、その次がエルダー。その次が中級。そしてレッサーみたいな感じのやつだ。
ところが違った。
ピンクが感染してから、わずか数日のうちに、ピンクは少しだけ超能力を使えるようになった。ゾンビを避けることができたり、ゾンビを操る力もついているがそれはヒイロゾンビなら最低限使えるようで、明確な差異はない。
ピンクのほうが単純に上手かっただけなのか?
たまたま個人的な力量差がついて、後輩ちゃんよりも上回っていただけなのか?
ピンクのほうが年下で、よりヒイロウイルスが増殖しやすい体質だったとか、そういうことも考えたのだが、ヒイロゾンビどうしが感じる連帯感のようなものはあっても、ヒロちゃんに対して感じる巨大な存在感のようなものを後輩ちゃんには感じない。
ヒイロゾンビどうしに親と子のような関係は存在しない。
例えば後輩ちゃんに何かしろと命じられても、お願い以上の意味は持ち得ない。
ヒロちゃんに対しては、なんだかマイシスターとして甘えたい感覚はするけど、もともとそんなふうに思っていたから、この点はピンクとしての個人的な感想なのかもしれない。
それで、なにが違うのかを考えて、ある日突然、神託が降りてきた。
ググッたわけじゃないぞ。
ふと思いついたんだ。
後輩ちゃんとピンクの違いといえば、知名度の差ではないかと。
ピンクは言うまでもないが、ホミニスという人類の科学サイドをまとめあげる組織に属している。ピンクがピンクとして表にでたのはごく最近だが、ゾンビに対する対策やヒロちゃんという存在に対する考察ブログなど、後輩ちゃんに比べて積極的に活動してきた。
その結果、知名度的に言えば、ピンクのほうが後輩ちゃんを上回ってしまった。
だから――、だから冒頭の推論に戻る。
この力は――、
いま消しゴムを空中母艦のように浮かせているのは。
人の力を借りているのではないか、と。
人の演算能力を借り受けているのではないか、と。
要するに、こういうことだ。
諸君らは、一人残らずゾンビウイルスに感染している。
ゾンビウイルスに感染してもゾンビにならないのはゾンビウイルスが体内に少ないから、言い換えれば人間的部分を多く残しているからだ。
諸君らの人間的な部分は当然のことながら日々の営みを続けているだろう。呼吸をし、ご飯をたべて、生存に必要なことを文句も言わずに下支えしているばかりではなく、娯楽を楽しみ、遊び、戯れ、時々は配信を見たりもする。
周りがゾンビだらけでなかなかそういった余裕がない人もいるだろうが、生存に必要のない余白ができれば、それは何か楽しいことに振り向けたいと考えるのが人間だ。
そう、余白。
生存に無関係な余剰の演算能力を、諸君らはヒイロゾンビに対して振り分けている。
より知名度の高い個体に対して、より強く想えば想うほど、その個体はヒイロウイルスの力を十全に発揮できるようになるだろう。
わかりやすく言えば、仮想通貨のマイニングのようなものだ。
諸君らのリソースを間借りすることで、ピンクは強くなった。
なぜ演算能力が現実に影響を及ぼすかについての考察は、別項で述べる。
今回の推察は、ピンク理論の基礎になるものだ。
もしも、議論したい場合は、チャンネルの登録をよろしくお願いする。
それでピンクは空も飛べるようになるかもしれない。
ピンクはいつかヒロちゃんといっしょに空を飛ぶんだ!」
【ピンクちゃん。コメント少しは見ようよ?】
「あ、いま。スマホから連絡があったぞ。ヒロちゃんだ。あ、うん。ちゃんとコメント見るぞ」
【最初は緊張してコメント見る余裕ないよね。がんばってね。ピンクちゃん】
「うん。ありがとうヒロちゃん!」
『仲良しだな』『てぇてぇ』『ピンクが喋り続けるだけの講義みたいな配信だったが最後で救われた』『毒ピンがだんだん興奮してきてほっぺたピンクになるの……かわゆ』『知名度っつーかさ……後輩ちゃんをおもんばかって言わなかったんだろうけど、ぶっちゃけ人気だよな』『八歳児の幼女天才科学者のほうが、ヒロちゃんのことしか興味がなくて他が有象無象のゴミ虫みたいにしか思ってなさそうな後輩ちゃんより人気があるのはしかたない』『後輩ちゃんに踏んで欲しい』『そういう少数派は置いておいて』『おまえらに後輩ちゃんのなにがわかるんだよ』
「んー。ピンクのことが好きって言われるのはうれしいぞ!」
『ピンクも最初は有象無象って思ってたんじゃないかなぁ』『まあ天才幼女がヒロちゃんと触れ合って、なんというかより丸くなったんじゃないか?』『ここはピンクちゃんねるだぞ。ヒロちゃんのことをメインで語るのはマナー違反』『ピンクちゃんねるって、なんというか……その卑猥ですよね』
「ピンクも、うぬぼれてた。ヒロちゃんはピンクの友達だしべつに話題にだしてもいいぞ。でも、ヒロちゃんに迷惑をかけたり、ヒロ友のみんなが争うのはあまりしてほしくないと思うぞ」
『なんだただの天使か』『毒ピンの毒が抜けたらただのピンクじゃん』『こうやってかわいいって思わせて想いをマイニングするつもりなんでしょ。えっち』『つーか、ピンクを見に来たんやで』『オレらのこと名づけて~ピンクママ~』
「そっか。ピンクの友達か……。じゃあ、ピン友……というのはなんか語呂が悪いから、ピンクフレンズということにするぞ!」
『友達作戦?』『フレンズか』『わーいたのしー』『既に懐かしい』『けものフレンズは死んだんだ。君も人生と向き合う時なんだ』『ピンクの人気が上がれば上がるほど、パワーが上がるんだよな。その実証を今まさにやろうとしているのか?』『とりあえず課金しとこ……¥50,000』『ヒロちゃん越えもあるのかなぁ』
「ヒロちゃんはインフラそのものだからピンクがヒロちゃんを越えることはないぞ」
『ヒロちゃんはインフラか』『ちょっと待てそれってマルチしょうほ……』『構造的にはそれかwwwオレらは搾取されるだけの存在』『搾取か……まあゾンビになるよりはマシだけど』
「ピンクとしては人間とかゾンビとかそういうのはあまり深く考えないで、みんなが自由に空が飛べるようになる世界を思い描いてほしいぞ。どんどんヒイロゾンビが増えるほうが望ましいぞ」
『やっぱり毒ピンは毒』『幼女らしい小悪魔的発言の可能性』『毒をくらわば皿までってやつなんじゃ』『人間の遺伝子とか物質的なところは変わってないみたいだけど、再生能力とかつくのはちょっとなぁ』『臓器の移植手術とか受けたりするし、そもそも人間だって再生能力はあるぞ。ちょっとそれが強くなっただけ』『でもピンク理論だとヒイロゾンビよりただのゾンビが増えたほうがよくね?』『多田野はゾンビだった?』
「ゾンビは基盤にはなっているかもしれない。つまり、再生力の源にはなっている。ただ、やっぱりゾンビは考えなしだから演算力はヒイロゾンビとか人間のほうが強いぞ。仮にゾンビが全員ヒイロゾンビや人間に戻ったとしても、ヒイロ力が減ることはない」
『だからってヒイロゾンビになりたいとは思わんがなぁ』『超能力ほしー。すごーい』『頭わるわるになるとゾンビになっちゃうぞ』『ピンクのなんなんだぞって言い方すこ』『オレのピンクちゃんへの想いをうけとってくれー!』
「ゾンビが考えなしって言い方は悪かったかもしれない。滅私――あるいは利他的というほうが言葉の印象としては近いかもしれないな」
『ゾンビは愛でできている?』『ゾンビは利他的存在?』『おなかすいたんで食ってるわけではないのか』『周りに流されやすい共感力の高いやつがゾンビになるってことなんじゃ?』『まあ生き残ってる時点で俺らもけっこう意地汚く生きてはいるわけで』『そういや全世界で人類ってどれくらい生き残ってんの?』
「人類がひとり残らず生存するためには、実はヒイロゾンビよりも不活性なゾンビのほうがいい。それはピンクのママ……所長も書いてる」
『ああ、あれかぁ』『時間的にヒロちゃんの救済方法では間に合いそうにないってやつな』『ご町内から少しずつゾンビ減らしても間に合うわけねーべ』『日本だけならギリギリ助かるんだろうけど、その前にオレら全滅するよな』『餓死はいやだー』『ゾンビにもなりたくねえよぉ』
「だったらヒイロゾンビになるほうがいいと思うぞ。ご町内にひとりくらいのペースでヒイロゾンビがいれば、ゆるやかに調整しながらソフトランディングできる。ゾンビに勝利できるぞ!」
『ううむ。八歳児の誘惑』『ピンクちゃん尻尾生えてないかな。悪魔的なやつ』『でも言うてることは正しいわ。わが国ではヒロちゃんが好みそうな小学生の美少女を選出中』『ピンク理論から言えば人気が出そうなアイドルを選んどくべきだよな』『ちょっと待て。抜け駆けはずるいぞ』『おまえら内政干渉はしてくるなよ』『ヒロちゃんがダメならピンクちゃんからでもよくね』
「そうだな。ピンクはここにいるぞ!」
『なるほど、公海!』『その手があったか』『これはいよいよピンクちゃんのほうが重要に』『毒ピンは自分がタゲとってヒロちゃんの騎士になるか。いよいよてぇてぇ』『ヒロちゃんは佐賀の田舎で配信を楽しんでればいいってことか。身の丈?』『おい身の丈やめろ!』『でもピンク理論にも穴はあるんだよな……』『穴?』『ヒロちゃんがインフラならヒロちゃん次第でいろいろと変わってくるというか』『ヒロちゃん排斥派の根拠もまた提示してしまってるということか』
「ヒロちゃんは管理者なんだ。インフラそのものじゃない。誤解を招くような言い方になってしまったのなら謝る。管理者のいなくなったゾンビたちはどうなるかわからないだろう。この力だってどうなるかわからない。だからヒロちゃんを傷つけたらダメだぞ。ピンクは怒るぞ!」
『ヒロちゃんを傷つけるつもりはないけど……』『ヒロちゃんが突然事故死したらヒイロゾンビがめっちゃ強いゾンビとして暴れまわったりしないよね?』『その可能性もあるか。わが国はいましばらく静観のかまえをしたい』『おまえ手のひらぐるんぐるんやな』
『緋色様が神様になるというのでしたら、使徒が増えるのは喜ばしいことです』『仮にヒイロゾンビが増えまくったらヒロちゃんのパワーもモリモリ増えてモリモリレベルアップしてくってことですよね?』『指先ひとつで地球破壊できるレベルになったらどうしよう』
「ヒロちゃんはただみんなに余暇を楽しんでもらいたいだけだ。人類を救うスーパーヒーローをやりたいわけじゃない。みんなといっしょに配信を楽しみたいってだけだぞ。できれば――、みんながヒーローになればいいと思ってるはずだ」
★=
ツマリ……。
ゾンビが滅びた後で。
夜月緋色とヒイロゾンビをハイセキすれば、ニンゲンの主権をトリモドセル。
★=
「ハローワールド。緋色先輩の動画ではさんざんうろちょろしていた後輩ちゃんです。よろしくお願いいたします」
『ピンク理論が出た後に即座に動画配信を始める後輩ちゃん!』『後輩ちゃんって健気だよな』『ピンクちゃんのいっしょに空を飛びたい宣言から、わたしも~! となってる確率100パーセント』『その場にヒロちゃんがいなくてもてぇてぇよ……』
「……本音で言えばそうです。わたしも先輩といっしょに空を飛びたいと考えてます。だから皆様、ちゃんねる登録してください。お願いします!」
『初手に頭を下げる後輩ちゃん』『いきなり懇願動画』『お願いするのはいいけど、この動画配信はなにすんの?』『オレたちを楽しませてくれよ。ぐへへ』『後輩ちゃんのパパ活』『リアルにヤバイのはやめろ』
「甘い顔したらすぐこれですか。本当に度し難い。今のような言葉を先輩に言ったらわかってますね。……滅しますよ」
『ひっ』『ひっ』『ふぅ……』『おい』『我々の業界ではご褒美ですから』『しかし真面目な話なにするんだ? ゲームとか?』『配信も幅広いしな。ヒロちゃんと被ってもピンクには勝てんだろ』『人気は偏る傾向にはあるだろうが、ピンクが人気でたからって後輩ちゃんが不人気になるわけじゃないと思うぞ』『しかし、ピンクはかわいいしな……なんつーか素直だし』
「まあそうですよね……、わたしはどうせ重い女です」
『初手に鬱キャラだすのはNG』『配信って大好きなもんを語る場所だからな。自分語りもいいけど、大好きなヒロちゃんについて語ってみれば?』
「あ、それいいですね。採用です。えっとまずは先輩のかわいいところからあげていこうかなと思います」
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「で、後輩ちゃん、ここはね。ブロックするんだよって身体をちょっとだけ寄せてくるんです。柔らかくていい匂いがして、ちょっと照れた顔になるときがものすごくかわいいんです!」
『6時間』『運営会社はヒロちゃんたちの放送時間は無制限にしたからな……』『後輩ちゃんってやっぱり、その……あれだよな』『ヤンデレ』『ピンクに診てもらったら? ヒロちゃん依存症とか診断でそう』
「失礼な。緋色先輩は本当に超絶かっこいいだけです。あ、次は先輩のかっこいいところベスト100を発表しましょう」
『後輩ちゃんが空を飛べる日って来るのか?』『ニッチだけど需要はあるようなないような』『筆頭ヒロ友としてちゃんねる登録数はえぐいことになってるけどな』『ヒロちゃんの普段の生活スタイルとかがわかるのがありがたい』『ていうか……毒ピンとちがってもしかして後輩ちゃんっていっしょに住んでないか?』『百合ですね。ズボンはもう脱いでました』
「百合じゃありません。わたしは先輩を先輩として好きなだけです!」
『百合はみんなそういうんだよ』『ガチレズだろどっちかというと』『ヒロちゃんの貞操が危ない』『そういや思い出したんだけど、お酒飲んでるときに後輩ちゃんキスしてなかった?』『あ……』『ガチだわね』『心神喪失状態だったんだよ』
「そのときは……ちょっと反省してます。先輩の気持ちを考えてませんでした」
『反省できるいい子』『後輩ちゃんが先輩から巣立つときが来るのだろうか』『むしろドロドロのレズエンドだろ』『野獣の眼光がこわE』『後輩ちゃんがオレらのことをゴミ芥以外の何かとしてみてくれることってあるのかなぁ……』
「ちゃ、チャンネル登録してくれたら少しは考えます。わたしはあまり人と話すのが得意なほうではありません。だから、お手わらかにご教授ください」
『ヤンデレな生徒を育て上げる先生役か』『このミッション。難しすぎる』『天才で孤独な少女を救うミッションだぞ』『まあぶっちゃけオレらがいなくてもヒロちゃんがよしよししてくれてれば勝手に救われそうではあるが』『後輩ちゃんの人気出るといいなぁ』
100話到達してしまったので初投稿です!
今日はちょっと毛色が違う話を書いてみました。
SFです。そうこの話はゾンビパニックではなくミステリーでもなく、配信コメディでもなくSFだったのです。
でも、なんかようわからんカオスじゃな……。
まあカオスなのは最初からだったような気もする。