あさおん・オブ・ザ・デッド   作:夢野ベル子

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ハザードレベル118

「ねえ。マナさん。ボクできることやったよね。みんなのこころの補修できたよね」

 

「それは世界一甘い食べ物といわれるグラブジャムンより甘いですね。なんならご主人様の後頭部あたりから発せられる甘い匂いよりもなお甘いです」

 

 お家での一幕である。

 ボクは中折れしてしまった町役場を補修した。

 普通だったら何か月もかかる補修工事を無理やり浮かせることで、なんと一日に短縮したんだ。

 みんなもほめてくれたし、町のみんなも喜んでた。

 

 人間を差別するこころなんて吹き飛んだと思うんだけど。

 

「例えばゾンビ的に考えて、首ちょんぱした後にその首を無理やり元に戻してゾンビだから大丈夫といったところでご主人様は信じますか?」

 

「どうなんだろう。町役場は首じゃないし、事情は異なると思うんだけど」

 

「同じことですよ。人のこころは思ったよりも可塑性がないということです」

 

「もっとわかりやすく言って!」

 

「移ろいやすいのですよ。秋空のように」

 

「そうかもしれないけど、でもこれからヒイロゾンビが増えていくわけでしょ。いまなんとかしないと、ハチャメチャが押し寄せてくると思うんだけど」

 

「そもそもピンクちゃんみたいに事実を述べただけでは人のこころは変えられません。結果だけを冷徹に見つめると不安を加速させたのは"事実"です」

 

「それはまあわかったよ」

 

 ピンクちゃんのヒイロウイルスに対する無知の知というか。

 ヒイロウイルスについて何もわからない宣言は、科学的事実にどっしりと根を下ろした誠実なものだったとボクは思う。

 

 でもその宣言が、みんなの不安を掻き立ててしまった。

 

 ヒイロゾンビは精神的に安定してはいるものの、人間みたいにちょっとしたことで不安になったりするこころがなくなったわけじゃない。

 

 だから、あの地震が拡大化して、町役場を崩壊させてしまった。

 

「でも、ボクが治したから……ちょっとはみんなも安心するかなって思ったの」

 

「ぷくうってほっぺたを膨らませるご主人様が尊い」

 

 口に手を当てて小刻みに震えてるマナさんが尊くない。

 

「マナさん。ボクがんばったんだよ」

 

 抗議の目でマナさんに言った。

 

「わかりますとも。そのお気持ちはきっと伝わってると思いますよ。けれど足りないかもしれませんね。心のどこかで変わってしまった自分たちに不安を抱いているかもしれません」

 

「ヒイロゾンビになっても単に超能力が身につくだけだと思うんだけどな。正直なところ、なぜみんなが不安なのかよくわからないよ。みんなを動かすだけの感情が足りないの?」

 

「そういうことでしょうね」

 

「じゃあどうすればいいの。またお気持ち作文を作って読み聞かせればいいの?」

 

 差別はいけないと思います、というような一文からはじまる感想文だ。

 自衛隊の人に対するそれはある程度うまくいったと思うんだけど。

 なんだかおバカなことをしているみたいで正直あまり気乗りしない。

 

「それもひとつの手ですが……そうだ。フリーハグというのはどうでしょう」

 

「フリーハグ?」

 

「みんな大丈夫だよ。きっとなんとかなるよと言いながらご主人様が抱き着いたりするのです。人間を差別したらいけないよといいながら身体的接触をするのです。ああ尊すぎます! ひとまず隗より始めませんか。つまり言い出しっぺのわたくしめにフリーハグしてみませんか」

 

「えー、それってマナさんがしたいだけじゃ」

 

「そんなの……そうに決まってます」

 

 じとー。

 ボクは生暖かい目でマナさんを見つめた。

 

「マナさんってどうしてロリコンなのかな」

 

「哲学ですね」

 

「哲学ですか」

 

 もうボクにはマナさんがわからない。

 

「ただですね」マナさんは真面目な顔になって言う。「ご主人様がこれからどうしたいかというのは少し考えたほうがいいかもしれませんね」

 

「これからどうしたいかって? 人間と仲良くヒイロゾンビも幸せに生きてほしいなっていう漠然とした感じだけど」

 

「本来、現実というのはいくつものパラメータがあるわけじゃないですか」

 

「パラメータ……」

 

「そうパラメータです。例えば町のみなさんの不安というのもパラメータのひとつです。ご主人様は、ときメモというゲームを御存じですか?」

 

「話が飛ぶね。知ってるけど」

 

 ボクの11歳くらいの見た目からすれば、かなり昔のゲームだけど、お父さんがやってたゲームの一つにあったよ。恋愛ゲームでパラメータをあげていくやつ。

 

「そのなかのひとつに女の子の不満度という隠しパラメータがありました。実際には爆弾という形で表示されているわけですけど、このパラメータを無視してクリアはできません。そのほかにも学力、体力、ルックスなどいろいろなパラメータを考えなければ意中の女の子は落とせないわけです」

 

「ふぅむ。つまり町のみんなのパラメータを考えなくちゃいけないってこと?」

 

「そのとおりです」

 

 両手をあわせてにっこりと微笑むマナさん。

 見た目だけならふんわりとした雰囲気のとってもキュートなお姉さんなんだけどな。

 致命的なことにこの人は幼女が好きなだけの変態なんだ。

 

「いっぱいパラメータがあったらどうすればいいかわからなくなるね」

 

「そうですね。現実はもっと複雑です」

 

「そういうときはどうすればいいの? 世界の"虚"を知ってるお姉さん」

 

 コンサルタントというなんだかよくわからない職業だったらしいマナさん。

 ボクにはよくわからないことが多くて、周りの人に聞くしかない。

 

「ご主人様は素直で本当にかわいらしいですね。通常はパラメータが多い場合は、適切なポートフォリオを構築し、それに沿ってロードマップを形成します」

 

「英語よわよわガールだから! 忖度が必要だから!」

 

「ご主人様は時々、天然のロリコンキラーですね」

 

「真面目なマナさんが好きです」

 

 ぎゅ。

 はい。ロリコンの前で不必要な発言をしたボクが悪かったよ。

 マナさんが満足したのは、たっぷり三十分後でした。

 

「えーっと、まずポートフォリオというのは、小学生的に言えばランドセルのようなものです。ランドセルのなかにはいくつもの教科書が入っていますよね。どの教科書をいれるべきなのか、優先する順位はなんなのか。どの順番で履修していくべきなのか、そういうパラメータを考えた絵図のことです」

 

「なるほど……」

 

 全然わからない。

 

「大丈夫ですよ。考えるべきパラメータはほとんど人間のこと、ヒイロゾンビのこと。物理的なこと。精神的なこと。この四つです」

 

「それぐらいならなんとかなるかな」

 

「ヒイロゾンビの精神的な安定は最優先事項でしょうね」

 

「そうなの?」

 

「そうでしょう。だって地震のたびに建物をぶっこわしていたら世界の耐久度をお試しすることになっちゃいますよ。ヒイロゾンビが万人単位になったら下手すると地球自体が壊れかねません」

 

「マジで?」

 

「類推ですけどね。百人規模であの町役場が壊れるくらいですから」

 

「やべえ……」

 

「小刻みに震える幼女もこれはこれで素敵な感じです~」

 

「ねえ。マナさんどうすればいいの?」

 

「だからフリーハグですよ。ご主人様が聖女的ポジションになって、みなさんのこころをまとめあげるしかないです」

 

「そんな簡単にいうけど、ボクはアイドルでも聖女でもない一般人だから無理だよ」

 

「ご主人様は立派なアイドルですけどね。ただ、これからのことを考えたらヒロチューバーさんたちのことはもっと気にかけてもいいかもしれません」

 

「気にかけるって?」

 

「きゃっきゃうふふする」

 

「ごめんマナさん。何言ってるかわかんない」

 

「要するに、気に入ったヒロチューバー。ヒイロゾンビ達に声をかけて、それらインフルエンサーたちによって、人々のこころをまとめあげる。そういったことがこれからは必要になってくるのではないでしょうか」

 

「それは洗脳とか誘導とか、ボクがやりたくないことだと思うんだけど」

 

「なにが本当の優しさかということですよ」

 

 マナさんの言葉は難しい。

 でも――、今日もボクの長い髪の毛はマナさんの手によってきれいに整えられた。

 

 行こう。

 出発の時間だ。

 ピンクちゃんが待ってる。

 

 ヒイロゾンビの受け渡しまであと一日。

 ボクは――ピンクちゃんの下へ向かう。

 

「行ってくるね。マナさん」

 

「行ってらっしゃいませ。ご主人様」

 

 よーし。今日もがんばるぞい。

 

 

 

 ☆=

 

 

 

 うー。緊張する。

 公海上のお偉い方さんたちに会うというのも、もちろん原因の一つだけど。

 一番なにが緊張するかというと、ピンクちゃんのママに会うことだ。

 ピンクちゃんにはよくしていただいてますと挨拶しなくちゃいけない。

 

 相手がどんな人なのかわからないと緊張する。

 ピンクちゃんにボクとの接触を控えるように言われたらどうしよう。嫌われてしまったらピンクちゃんとも会えなくなっちゃうかもしれない。

 

 音のしないヘリに乗りながらもボクは緊張で沈黙していた。

 

「ヒロちゃん? どうしたんだ」

 

 対面に座るピンクちゃんからいぶかしげな視線が投げかけられた。

 陰キャ特有のムーブだから気にしないでとはいえるはずもなく。

 代わりに口を開いたのはボクの隣に座っている命ちゃんだ。

 

「先輩はどうやら緊張してるみたいですね」

 

「これからピンクのママに会うだけだぞ。みんなヒロちゃんのことは大好きだから大丈夫だぞ」

 

「先輩は人見知りなんですよ」

 

「そうなのか。大丈夫だぞ。ピンクがついてる」

 

 トトトと揺れの少ないヘリの中を歩いて、ピンクちゃんはボクのそばに座った。

 横抱きっ。

 マナさんがロリコンな気持ちが少しわかる。

 

「ありがとうね。ピンクちゃん」

 

「先輩。わたしもわたしも」

 

 横抱きっ。

 命ちゃんも抱き着いてくる。

 右は幼女に左はJK。隣から漂ってくる甘い匂い。

 押し付けられる女の子特有の柔らかさ。

 そこになんの違いもありゃしねえだろうが。

 

――ボクはこんらんしている。

 

 それから一時間ほどしてヘリは海上にでた。

 長崎の近くだろうか。たくさんの島が見える。

 水面がキラキラと輝いて、宝石のようにきれいだ。

 周りに船はいない。ゾンビ的世界だと海上に逃げるというのも手だから、船が漂ってるかなと思ったけど、そうではないらしい。

 

 代わりにあったのは巨大な船。

 ひときわ目立つ灰色のきれいな形をした船だった。

 

「あれがピンクちゃんのお家?」

 

「そうだぞ。エセックスクラスCVS-12。"いんとれぴっど"だ」

 

「イントレピッドって確かニューヨークで博物館になってるんじゃなかったっけ」

 

 スカイママという呼ばれ方をしたりして、日本人にとってもそれなりの知名度がある。

 

「ちがうぞ。日本だって"かが"とか"あきづき"とかあるだろう。あれは――表にはでていなかった箱入り娘。万能航空潜水艦いんとれぴっど、だ」

 

「ん。潜水艦? あれ潜水するの?」

 

「そうだぞ」

 

「波動砲撃ったりしないよね」

 

「さすがにそこまでの機能はないぞ。クラインシールドを張ったりもできない。ただ潜れるのは本当だ。ホミニスの中枢機関でもあるな」

 

 いまさらながら人類の科学サイドホミニス。

 その最高峰機関との評価が伊達ではないということが実感として感じられた。

 

「すごいね」

 

「ふふん。人類だってたいしたものだろう」

 

 ピンクちゃんが胸を張る。

 ピンクちゃんは既にヒイロゾンビだけど、いまだに人類サイドなのは間違いないのだった。

 

 

 

 ☆=

 

 

 

 いんとれぴっどは空母形態が通常モードのようだった。

 

 甲板は小学校の運動場くらいの大きさがあって、空母って本当にでっかいんだなと認識させられる。端のほうにはゲームとかで見慣れた戦闘機。ステルス爆撃機みたいな変な形のはないみたいだけど、みんなお行儀よく並んでてなんだかかわいい。

 

 ボクわくわくしてきます。

 男の子的な趣味としてそういうの好きだったからね。

 窓に身をのりだして空の上からガン見してます。

 うーん。どの戦闘機もきれいなフォルムだよね。

 戦闘的合理性は美しさにつながる。空の姫様だよ。

 

 戦闘といえば――、

 

 ポーチの中には一応念のためにデリンジャーって呼ばれるボクの手にも収まるちっちゃな銃は入れてます。どうせ戦闘的な意味合いでは念動力のほうが強いとは思うんだけど、念には念をいれて。慢心はダメ絶対、だから。

 

 ヘリは音もなく戦闘機のお隣のスペースに降り立った。

 すぐにかけよってくる迷彩服を着た軍人さんたち。髪の色が金髪で青い目をした結構若い男の人だった。二、三人くらいの体制で、彼らが運んできたのは移動式のタラップだ。

 ボクたちの能力から考えれば、ヘリから飛びおりるのなんか造作もないことなんだろうけど、賓客扱いらしい。

 

 丁寧にタラップを設置したあとは、一歩引いて、きれいな所作で敬礼している。

 ピンクちゃんがダッシュで先を行き、ボクの手を引いた。

 ピンクちゃん、自分のお家を自慢する幼女らしさがとってもかわいいです。

 抱きしめたいぞピンク。

 いかんな。どうもマナさんに影響を受けているような気がする……。

 いや、このほほえましさは世界レベルだよ。

 ボクとピンクちゃんは連れ立ってタラップを降りる。

 

 そのとき、冬の透明な青空にラッパの音が鳴り響いた。

 軍人さんは軍人さんでも礼式な服を着た人たちが勇壮な音を奏でている。

 ドラクエの勇者になったような気分。

 

「ヒロちゃん。手を振ってやってくれ。みんなヒロちゃんが来るって知ってから猛練習したんだ」

 

「え、うん」

 

 ボクが促されるままでにひらひらと手を振ると、みんな笑顔でラッパを吹きながら軽い礼をした。

 

「もしかしたら町役場よりも人多いのかな」

 

「5000人くらいだぞ」

 

「ご、5000人もいるの?」

 

「そうだぞ。みんなヒロちゃんを待っていたんだ」

 

 待っていた。

 その言葉がボクの中に響く。

 横断幕みたいなのが垂れ下がっていて、「ようこそヒロちゃん」とか書かれてあるし。

 少しずつ緊張感というか羞恥というか、心臓が浮き上がるような気持ちになってくる。

 

 ラッパの音が響き渡る甲板をボクは笑顔のまま歩いた。

 手持ち無沙汰な軍属の人。オレンジ色をした服を着たたぶん整備の人。ドクタースタイルな方々。

 いろんな人が甲板にでてきて、ボクを見定めている。

 いや――なんかアイドルみたいな感じだ。ボクアイドルしちゃってる。

 

 これはわりときついぞ。陰キャ的には限界が。

 天真爛漫に妖精みたいな軽やかさで歩いていくピンクちゃんがうらやましい。

 えらい人たちの気持ちが少しだけわかってしまった。

 顔をロウで固定するような感じじゃないと無理だ。命ちゃんは――ちらっと振り返ると氷よりも冷たいトゥーランドット姫みたいだった。

 命ちゃんもさすがに緊張してらっしゃるようです。

 

「大丈夫だからね」

 

 ボクはピンクちゃんとつないでるのとは逆側の手で命ちゃんを確保した。

 つまり、はたから見れば三人娘が連なって歩いている状況だ。

 

「アメイジング」「オゥ。ジャパニーズトウトイ」「プレシャスワンズ」「ワッザ……」「ガッデスマイガール」「ジャパニーズリリィジャンル……」「はー。マジ尊いっす。完璧っす」

 

 なんか変な日本語も混ざってたけど、おおむね好評のようだ。

 

 ボクたちが向かっているのは空母のちっちゃい管理棟スペース。

 ちっちゃいって言っても大きいんだけどね。甲板が全長300メートルくらいの巨大さがあるなかで、管理棟にあたる部分はちょこんと突き出てるみたいなものだから、そういう表現をしました。

 

 もちろん、空母の居住スペースは突き出た管理棟ではなくて、たぶん甲板の下が本体なんだろうけどね。向かった先は地下のほうだった。

 

「もともと空母だから狭いかもしれない」

 

「え、そんなことないよ」

 

「クルーズ船とかだったらよかったんだが」

 

「豪華客船とかゾンビパニック起こったら凄惨なことになりそうだね」

 

 逃げ場所ないし。ゾンビだらけになっちゃいそう。

 

「まあ実際のところ、豪華客船はほぼ全滅してるらしいぞ。5000人乗ってたら少なくともあの彗星が降り注いだ時点で500人がゾンビになるわけだ。しかも当初は、ゾンビを撃っていいのかどうかもわからなかっただろうしな。運よく接岸できた船の住民が数人助かった程度じゃないか」

 

 海の上というのはやはり怖い。

 

 ボクとかピンクちゃんは余裕で陸地まで飛んでいけるけど、命ちゃんはまだちょっぴり浮ける程度だ。もしものときは守らないと――。

 

 ピンクちゃんはボクに途中途中にある部屋をボクに見せてくれた。

 空母の中なんて見たこともないから、修学旅行のすごい版みたいでウキウキする。

 

「ここはレストランだぞ。基本的にはビュッフェスタイルで、みんなは好きなやつを食べていく」

 

 空母の中だけど、そこは町役場の食堂並みに大きなスペースだ。

 天井も普通に日本のお家くらいの高さはあるし、もしかしたらボクもアパートよりも高いまである。空母だけど、生活スタイルは普通よりいい。

 

「ピンクちゃんはオーダーメイドだったよね」

 

「そうだぞ。ピンクの灰色の脳細胞を維持するために、カスタムした食べものを作るすごいやつだ。いまはたぶん昼食を作ってるんじゃないか?」

 

「豚骨くれた人だよね。あとでお礼いいたいな」

 

「いいぞ。彼は――日本語ができないから通訳しよう」

 

 シェフさんとの邂逅を約束しつつ、次々とお部屋を見せてもらう。

 歯科さん。トレーニングルーム。娯楽室。バー。大浴場。理容室。リラックスルーム。

 

 ここ本当に空母だよね。完全な軍属とはいいがたいから戦闘以外のところにも大きな力をそいでいるのだろうけど、なんだか遊びの空間が多いような。

 

余裕(アソビ)があるところに科学が生まれるんだ」

 

 さすがピンクそこに気づくか。

 

「さすがモモ。そこに気づくか。わたしの娘。天才。かわいい」

 

 通路の奥からすっと姿を現したのは、ピンクちゃんと同じく西洋人顔で、すらりとした体形で、涼し気な青色に銀色が混じったような髪色のドクター姿をした女の人だった。

 

 年のころは20代のように思える。

 

 顔つきは命ちゃんと同じく表情に揺らぎがないタイプ。

 

「ママ。お部屋で待ってる手はずだぞ」

 

 ピンクちゃんが抗議めいた声をあげるが、

 

 ピンクちゃんのママは何もいわずに足を折って、そのままピンクちゃんをギュ。

 

「うちの娘がかわいすぎる」

 

「ヒロちゃんの前で少しだけ恥ずかしいぞ!」

 

「む。ヒロちゃん……」

 

「どうも~~ピンクちゃんにはお世話になってます」

 

「こっち」

 

「え?」

 

「こっち来る」

 

 ピンクちゃんを捕獲している片腕がバクンと開いた。

 察した。入ってこいという意味だ。

 

「あっはい」

 

 いっしょにギュっとされてしまいました。

 鉄面皮だと思った顔が『><』ってなってるし。

 堪能されちゃってるじゃん。

 

 それがピンクちゃんのママ。

 のちにヒロチューバーとなる『ピンクママ』との出会いだった。




前回の更新がこうなんというかよくなかったのか、
お気に入りがごっそり減ったのですみませんおこもさんさせてください。

右や左の旦那様ぁ。お嬢様ぁ。
どうかどうか卑賤なる我が身にお気に入りを。評価を。感想を。
お願いいたします。お願いいたします。
ぽちってくださいませぇ。

ここまで読んでいただきまして、ありがとうございますっ!

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