あさおん・オブ・ザ・デッド   作:夢野ベル子

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ハザードレベル140

 もともと、神聖緋色ちゃんファンクラブ(この名前もたいがいだけど)の前身になったのは魔瑠魔瑠教とかいう謎の宗教団体だった。

 

 ファンクラブとしたのには理由がある。

 

――脱宗教化。

 

 つまりは、アイドルのファンという属性を得ることで宗教色をできるだけ中和しようという目論見だった。

 

 教団のトップだった荒神神父さんにも退いてもらって、乙葉ちゃんには教祖になってもらって、ともかくボクがご神体とかになるのをできる限り防いでもらいました。

 

 それは一定程度はうまくいってたと思う。

 

 乙葉ちゃん自身も人気があったし、ボクのファンでありながら乙葉ちゃんのファンでもある人が多かったし、掌握できるかなって思ってたんだ。

 

 でも、元から魔瑠魔瑠教にいた幹部の人たちは、どうにも宗教であるという認識から脱却することができないらしい。それに、乙葉ちゃんはメソメソキャラだから、心労が限界値まできてるっぽい。

 

 だったら、ボク自身がなんとかするほかない。

 

「で、幹部の人たちってどこに集まってるの?」

 

「お寺デース」

 

 寺? ファンクラブがなんで総本山を寺にしちゃってるの。

 

 でもまあ、案外寺はいいかもしれない。宗教団体って世俗から離れて集団生活とかそういうのもあるだろうしね。なんというか結束力を強めるとかそういう効果はありそうだ。ボク自身は集団生活に向いてませんけど。

 

「間借りとかそういう感じ?」

 

「誰もいないからいいんデス。いちおう町長さんには掛け合いましたカラ」

 

「ふうん。葛井町長の許可はとってるんだ」

 

「あの町長さんはそういうのにはめちゃめちゃ厳しいデース」

 

「まがりなりにも政府機関だしね。住んでる人にある程度の強制力を働かせるのも道理というか」

 

 税金とってないだけマシという話。

 

 まあそのうち、日本政府と正式に交流をつなげば、そのあたりの正当性もでてくるんだろうけど。

 

「でも、そのお寺の人がわたしん家ですって出てきたりしたらどうするの?」

 

「それは一般的なお家でも同じ話デスね。もし、お寺の持ち主が現れたら、交渉することになると思いマース」

 

「クジで選んだんだっけ」

 

「そうデス。基本的には現在の土地と建物は抽選によって選ばれマース」

 

「つまり乙葉ちゃんたちは例外措置ってこと?」

 

「そういうことになりマスね」

 

「町長さん。本当によく認めてくれたね」

 

「そこは、ファンクラブは家族のようなものだという建前デース」

 

「建前? じゃあ本音は」

 

「袖の下というかなんというかデース」

 

 お金というものが機能しなくなっているけど、それはそれとして人が集まってるだけで権力というものは生まれる。

 

 例えば、いざというときの労働力は提供しますよとか、そういうやりとりがあったんだろう。

 

 それと、前に魔瑠魔瑠教について説明してもらったときに、お寺から信仰を引き継いだとかなんとか言ってた気がする。宗教法人も譲渡できるからね。つまり、お寺に住むのにも完全な正統性がないわけではないのかもしれない。

 

――って、微妙。

 

 思わずセルフつっこみしてしまう。

 

 つらつらと考えてみたけど、ファンクラブがお寺を使うのはさすがに微妙じゃないか。

 

 ボクとしては――、そういう政治的バランス感覚はよくわからない。

 

 えらい法律の先生とか、裁判官を務めていた人ならわかるのかな。

 

 こんな前代未聞なこと、その都度対処するほかないし、よくわからないことは放っておくしかないかなと思っている。

 

 それこそ、乙葉ちゃんを信じてるから。

 

 あれ、でもこれってお友達だからって理由で忖度してることになったりして……。

 

 んんん。考えだすと怖いのでこれ以上は考えないようにしよう。

 

 

 

 ☆=

 

 

 

 お寺は町役場からさほど離れていない場所にありました。

 

 町役場からホームセンターに向かう道を、みちなりに進んでいけば着きます。

 

 普通に徒歩でもいける距離だ。

 あえて歩いていく意味もなかったんで、飛んでいったんだけどね。

 乙葉ちゃんも飛べるし。

 

 敷地の前で着地。

 

 見上げてみると、威容がある。

 

 寺院ってよく考えれば、門構えといい、塀の高さといい、なんというかお城のような趣があるよね。たぶん戦国時代とかの名残で、お寺が僧兵――武力を持ってた時期があって、領主と張り合ってたからだと思う。

 

 苔むした塀が歴史を感じさせる。

 

 考えるにゾンビ対策にも向いているかな――、ゾンビハザードが起こって無人になってたってことは、みんなどこかへ逃げたか、あるいはゾンビになったかしたんだろう。

 

 この町のヒイロゾンビ率はかなりの高さを誇るけど、ノーマルゾンビから人間にはまだ戻していない。物流が回復するまでは、そのほうが有利だからだ。ヒイロゾンビも食べないでいいとはいえ限度がある。

 

 ノーマルゾンビがヒイロゾンビに勝っているのは、燃費がいいところ。

 なにしろなんにも食べないでも活動可能だからね。

 

 まあ、人間に戻したら戻したで、自分の権利を主張する人が増えて、混乱するんだろうなとか思ったりもします。

 

 そういうのは全部、町長に丸投げです。

 そんなのボクに決めてって言われても困るし無理。

 ゾンビのことならなんとかできるけど、人間のことはなんとかできないし、するつもりもない。

 ボクには政治家も宗教家も向いてないっていうのは、わかりきってるから。

 

「さて、ヒロちゃん。覚悟はいいデスか」

 

「いいよー」

 

 お寺の門は開いていて、ちらほらと何人かの人が行き交いしている。

 開放的だし、あやしい雰囲気はしないし、幹部の人以外は、案外普通の人なのかもしれない。

 

――そんなことを思っていたときもありました。

 

 ふと、ボクに視線を向けた人がひとり。

 

「あ、ヒロちゃんだ」「え、マジ? あ、ほんとだ」「ヒロちゃん」「かわいい」「教祖様とヒロちゃん様があわさり最強コラボが最強」「ヒロちゃんといっしょの空気吸いたい」「ちょっとでも近づく……」「いい匂いしてきた」「ゾンゾンしてきた」「すんすんすん」

 

「ひ、ひえっ」

 

 ファンの皆様がじわりじわりとゾンビみたいに近づいてくるんですけど。

 

 いくらなんでも、ファンの人たちをなぎ倒すわけにもいかなくて、ボクは棒立ち状態だ。

 

「はいはい。みんな下がるデース。おさわりは禁止デスヨ!」

 

 ボディガードのようにボクの前に立ちふさがってくれたのは、乙葉ちゃんだった。

 素ではない状態は、陽キャモードだから、こんなこともお手の物だ。

 

「はぁ……教祖様に叱られちゃった……」「好き……」「すこここここここ」「おねロリはいいものだ」「ヒロちゃんグッズ増えるのかな」「オレ対価労働多めにして配食券ためてるんだ」「そうだ写真とろ。写真はいいよね」

 

「写真は、常識的な範囲ならかまいマセン。いいですよね。ヒロちゃん」

 

「うん」

 

 まあ写真ぐらいならと思ったけど、その瞬間に、高速連続撮影のカシャシャシャシャという音があたりに鳴り響く。中には動画撮影をしてる人もいるみたいだ。ちょっとだけ手を振ってみた。

 

「おてて」「おてて民。おまえだったのか」「お姉さんに連れられた気弱な妹って感じがして好き」「お姉ちゃんが守ってあげる」「ヒロちゃんフォルダが充実してく……」

 

 濃ゆっ。

 

 一見すると普通の人たちだけど、ここ総本山にいる時点で、だいぶん一般人を逸脱しているよ。

 

「はやくいきマショウ。こんなの序の口デスヨ」

 

「うん……」

 

 幹部の人たちが集まってるのは、門から直線のところにある本堂みたいだ。

 

 石畳の上を歩く。

 

 両側には桜が満開で、見事な絶景だった。

 

 風が舞って、花が散る。

 

「世の中変わっても、自然は変わらないね」

 

 と、なんとなくボクは言った。

 

 なんか、桜を見ていると落ち着く。

 

 ここにくるまでいろいろあったけど、なんか全部許せるというか。

 

 人に疲れたときに、最後に癒してくれるのは、やっぱり自然なんだよね。

 

 日本人としてのDNAが成せる業だ。

 

「そうデスネ」

 

 と、乙葉ちゃんも同意してくれた。

 

 ゆっくりと隣を見上げてボクは言う。

 

「だから、ヒトもそんなには変わらないと思うんだよ」

 

「だといいデスガ……」

 

「ボクは変わらないのが好きなんだ」

 

「わたしはヒロちゃんに救われましたよ」

 

「ボクなにかしたっけ?」

 

「いっしょに歌をうたってくれました」

 

「そんなことで」

 

「そんなことで、デース……。今ではちっちゃな豆電球を消しても眠れるようになったんですよ」

 

 幼女みたいなことをいう乙葉ちゃん。

 けれど、彼女は彼女なりに成長してるっていいたいんだと思う。

 

 ボクはどうなのかな。少しは成長しているんだろうか。

 それともゾンビみたいに、時が止まっているんだろうか。

 そんなことを思った。

 

 

 

 ☆=

 

 

 

「靴脱いでクダサーイ」

 

 浄財と書かれた賽銭箱を越えて本堂前の階段を上がったところで、乙葉ちゃんに指示される。

 

「靴下も脱いだほうがいい?」

 

「いえ、靴下は大丈夫デース」

 

 下駄箱に靴をつっこんで、お堂にあがった。

 畳の匂いが充満していて、なんとなく落ち着いた感じ。

 あえて電気とかロウソクとかつけないで、天然のお日様の光が中まで入り込んでいる。

 

 わずかに暗いけど、光の帯が当たったところは明るくて、悪くない雰囲気だ。

 

 忍者屋敷のようなキィキィと音の鳴る古めかしい木張りの床を歩き、乙葉ちゃんの後を追った。

 

 閉じられた障子の前で、乙葉ちゃんは振り返る。

 

「いいデスか……。気をしっかり持ってクダサイ」

 

「地下アイドル系みたいな感じになってるの?」

 

「まあ、そんな感じデース」

 

 いまさら、彼らの信心にどうこう言うつもりはない。

 

 なにを信じようが自由なのがこの国だしね。ただ、ボクが信仰の対象だっていうのがあまり好ましくないってことで……。

 

 そういえば、マナさんが言っていた、サメにとっては人間はおいしいけど、食べられる人間にとってはおいしくもなんともないって話。もしかすると、このことが言いたかった可能性が微粒子レベルで存在する?

 

「ちらっとだけ見ていい?」

 

「かまいまセンが……」

 

 乙葉ちゃんに許可をもらい、障子を数センチだけソロリと開け、中を覗いた。

 

 古くは平安時代の垣間見、鶴の恩返しなどに通ずる覗き見文化の発露だ。

 

――うわぁ。すごく大きなボク。

 

 逆に驚きすぎて、きつい感じはしない。

 

 縦5メートル10メートルくらいに引き伸ばされたボクの顔写真が目に入った。

 どうやって印刷したんだろうなぁ。いつ撮影されたのかわからないんだけど、とてもいい笑顔だ。

 あ、よく見ると白い布か何かをいっぱいに広げて、プロジェクターで映しているみたい。

 

 遺影かよって思わず突っ込んでしまいそう。

 

 いや、ゾンビは死んでる説から言えば、遺影も間違いないのか?

 

 幹部の皆様方は全部で30名くらいだろうか。畳の上に等間隔で正座してたり、あぐらだったり。

 幹部のみなさんはわりといいも悪いも普通の人だ。

 若い人も多いけど、一番多いのは案外、30代とか40代くらいの中年層。

 

 顔は覚えてないけど、たぶん、ヘリに乗ってきた人たちが多いのかな。

 

 ボクのプロマイドを握り締めている人、ボクのエア缶詰を口元に充てて法悦にひたる人、ボクが前に配信したアヤシイ踊りと評される踊りを真似する人。

 

 うーん、宗教って。

 

 そんな彼らが一心に見つめるのは、ボクの顔写真――ではなく、それを背景にした荒神神父。

 

「いよいよ、審判の日が迫っておる」

 

 厳かになにやら言っていた。

 

「我らが神、夜月緋色様からご寵愛をたまわって数か月。我々の努力が実り、信者の数は2億人に達した。しかしながら、まだまだと言わざるを得ない。緋色様の魅力、カリスマ性からすれば、この十倍は信者を獲得していてもおかしくない。ひとえに――我々の努力不足であろう」

 

 まあ二億人もいれば十分だと思うけど。

 

「緋色様は現状を嘆いているに違いない」

 

 いや、嘆いてないどころか、今日はじめてファンの数知ったんだけど。

 

「ゆえに、緋色様はこの地を離れ、随行をお許しにならなかったのだ」

 

 しみじみと語る荒神神父さん。

 信者のみなさま方が、悲しみに肩をふるわせてる。

 

 え、なにこれ。

 そういう話だったっけ?

 

 単に、自分の立ち位置的に外出自粛続きで、引きこもりだってたまには外に出たいって、ただそれだけだったんだけど。

 

「しかしながら――。しかしながらである。緋色様は我々の努力をお認めになるだろう。緋色様は我々とともにある。たとえ肉体的に離れていても霊的な作用によって、連帯しているのだ。しからば、我々が誠実であるならば、必ずや随行をお認めになるに違いない!」

 

 いたたまれなくなって、ボクは障子を開け放つ。

 

 その瞬間、みんなの視線がボクに向いた。

 

 荒神神父が驚きに目を見開く。

 

「ひ、緋色さま。おおっ! 緋色様ぁ!」

 

「緋色様」「ヒロちゃん様……ここに来てくださるなんて」「なんと麗しい」「おてて」「ここにもおてて民が?」「生ヒロちゃん」「ああ、衆生をお助けくださる天使さまぁ」

 

 一斉にこっち向いて、土下座してくるものだから、なんというかいたたまれない。

 拝まれて、涙まで流されてると、どう反応してよいものか、非常に困る。

 

 隣にいた乙葉ちゃんが一歩、中に踏み入れた。

 

「お父さん。ヒロちゃんがきましたヨ」

 

「う、うむ。皆よ。わたしの説法の一兆倍は緋色様のお言葉を聞くほうが大事だろう。ささっ。緋色様こちらにいらしてください」

 

 端っこを通って、奥まったところにいる荒神神父さんに近づく。

 みんなの視線はボクをガン見してて、わずかばかり居心地が悪い。

 

「ようこそお越しくださいました。どうぞお座りください」

 

 なんか豪勢な座布団が用意されたんで、ボクはそこに女の子座りする。

 

 荒神神父と乙葉ちゃんも座った。ボクを見下ろすのはダメらしい。

 

 みんながじっとボクを見ている。話にくいけど、しょうがないな。

 

「あの、乙葉ちゃんに頼まれたんだけど……」

 

「乙葉にですか?」

 

「みんながヒロちゃんについていくって話デース」

 

 乙葉ちゃんが横から説明した。

 

「おお。そうか。ついに我々の努力が認められたのだな」

 

「違うんです。荒神神父さんもファンのみんなも福岡にはついてこないでねって話をするために来ました。みんなの努力が足りないとかそういうことじゃなくて、なんというかプライベートな旅行なんです」

 

「プライベートな旅行ですか。それはぜひとも、我々も随伴したく……」

 

「うーん。ダメ」

 

「ダメですか……」

 

 意気消沈しちゃう荒神神父さん。

 

 ちょっとだけ良心というか罪悪感がうずくけど、ファンといっしょに旅行するアイドルなんて、ほとんどいないでしょ。そりゃ、ツアーかなんかに無理やりくっついてくるパターンはあるかもしれないけどさ。

 

「ともかくそういうことだから。みんなもよろしくお願いします」

 

 ボクの言葉に、みんなは平服している。

 どうやら、ボクの福岡遠征については、納得してもらえたみたい。

 ここは一気に畳みかけるべきかな。

 

「それともうひとついいですか」とボクは言った。

 

「なんなりと」

 

「あのね。乙葉ちゃんのことなんだけど、いまファンクラブの会長さんなんだよね」

 

「さようでございますが」

 

「乙葉会長の言うことなんだけど、みんなどれくらい聞いているのかなって」

 

「どれくらいとおっしゃいますと?」

 

「例えば乙葉ちゃんと神父さんがまったく違うことを言ったときに、みんなどっちに従うのかな」

 

 立ち位置的にはナンバーツーなはずの荒神神父さん。

 しかして、元からの幹部さんたちを動かせるのも荒神神父さん。

 これだと、乙葉ちゃんは単なる傀儡だ。

 

 もっとバランスをとらないと、乙葉ちゃんが心労で倒れる。

 

「もちろん、乙葉のほうでございましょう」

 

「お父さん。それは違いマース。所詮、わたしはついこの間、会長になったばかりデース」

 

「しかし、緋色様のご推薦でなられたのだぞ。私はあくまで副会長。副ということはナンバーツーということだ」

 

 そのナンバーツーがナンバーワンと心を等しくしてないから困るんだけど。

 

「でも実際に説法しているのはお父さんデース」

 

「では、私は説法もせず、緋色様のすばらしさを広めもせず、黙っていろというのか」

 

「いや、べつにそこまでは言ってないよ」とボクは論調を緩める。

 

「さようございますか」

 

 明らかに荒神神父さんはほっとしているようだった。

 さりげにアイデンティティクライシスだったりして。

 

 べつに何を信じようと勝手だし、誰かが何かを好きになるのを止める気もない。

 誰かがボクを好きだろうが嫌いだろうが、それはその人の勝手だし、その人の内心をいじって洗脳するなんてことはしたくない。

 

 それは荒神神父さんであっても、同じだ。

 

 もし――荒神神父さんに黙ってろといったところで、それはそれで好き勝手に解釈して、ボクの気持ちとかは置き去りにされたところで、勝手に話が進んでいくだけだし。

 

 どうせなら、知り合いのほうが話はまだ通るかもしれない。

 

「まあともかく、乙葉ちゃんが会長なんだから、ファンクラブのトップなんでしょ。もうちょっと耳を傾けてよ」

 

「しかしながら申し上げますと――」

 

「どうぞ」

 

「乙葉はまだ15歳の子どもです。人生経験も少なく、そのため私との"解釈違い"によって、意見がたびたび分かれます。それはすなわち私を説得できるだけのパワーがないのです」

 

「もっと娘さんの言葉を最大限善意解釈して」

 

「しておるつもりですが……」

 

「もっと!」

 

「かしこまりました」

 

 んー。あきらかに困惑というか、わかってないというか。

 そもそも、言葉を受信する側の問題なのか発信する側の問題なのかって話だしな。

 

 荒神神父さんにとってみれば、乙葉ちゃんは血がつながっていようがいまいが娘なのは変わらないはずだし、娘の言葉は庇護している者の言葉。やっぱりどこかで軽く見てしまうんだろう。

 

 乙葉ちゃんと視線をあわせる。

 乙葉ちゃんは首を振り、ため息をついた。

 

 これじゃ、やっぱり元の木阿弥。

 

 あんまりやりたくなかったけど、やるしかないか。

 

――権威づけ。

 

「あー、皆さんに発表があります」




あっというまに一週間経ってしまった……。
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