あさおん・オブ・ザ・デッド   作:夢野ベル子

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ハザードレベル146

 雄大から教えてもらった"人喰い"の噂。

 ただの興味深い噂としておくにはあまりにもタイムリーな話題だ。

 もちろん現代人たるボクはソースを聞きました。

 ソースといっても、とんかつとか醤油とかそういうものでないのはおわかりですよね。

 

――情報ソース。

 

 その情報の出どころを聞いたのだ。

 雄大からの答えは、これもまた単純で、ある匿名掲示板とのことだった。

 考えてみれば当然で、いま雄大は門司港に向けて山口県あたりをえっちらおっちら徒歩で近づいている途中で、福岡にすら近づいていない状況。

 

 ただ、本州はネット関係はほぼそのまま残存しているわけで、今日のお天気予報よろしく、行く先々のゾンビ情報を調べながら近づいているらしい。

 

 ゾンビ予報とかそんなの知らなかったんで、ボクは『へえ」と感心すらした。

 ヒイロゾンビでもない雄大としては当然の成り行きだ。

 

 それで――。

 

 その一環として掲示板の情報にたまたまぶち当たったというのが正確なところらしい。ボクも命ちゃんもゾンビに襲われないからか、そういう人間側の事情にはうといところがあるんだ。油断しているといわれればそれまでかもしれない。

 

 ともかく、くだんの掲示板を覗いてみた。

 

【福岡いいとこ】ヒロちゃんといっしょにバーチャルで旅しようスレ【一度はおいで】

 

 おい、さりげなくボクの名前が入っているんだけど。

 

 どうやらボクが福岡に行くことはかなり全世界規模で広まっているらしい。アイドルや宗教家や政治家が移動するだけで記事になっちゃう感じかも。

 

 まあそれはいいとして、中身中身。

 

 

 

1: ID:j2TdIVXG9

 

ヒロちゃん来たる!

福岡の諸々、良いところ悪いところを募集中!

当方、福岡在住の一般市民なり(ちな人間)

もしヒロちゃんに福岡の良いところを尋ねられたらと思うと心配なんだよ

ヒロちゃんの定住化を目指すために最強の福岡紹介テンプレートを作成したい!

 

 

2: ID:BXj3I8S8v

 

 

 

3: ID:BDloyks2H

 

前の世界と違うから現福岡民じゃないと答えられんよな 

 

 

4: ID:BP5wYxzzK

 

福岡の良いところ

飯が旨い

博多ラーメン

博多めんたいこ

もつ鍋

鳥刺

ヒロちゃんって食いしん坊なイメージあるからこのあたりで楽勝二コマ堕ち

 

 

5: ID:BrT5uS99O

 

九州内ヒエラルキーでは一位なんじゃないか

 

 

6: ID:mKAr9cXwJ

 

二位は熊本

 

 

7: ID:YrF99Z055

 

は?二位は長崎なんだが

 

 

8: ID:MsofYCXlI

 

アホどもめ。二位の地位は佐賀に決まってるだろ

もはや佐賀が一位まである

 

 

9: ID:0aGUUkKUG

 

ヒロちゃんがいるからって調子のんなよ佐賀民

 

 

10: ID:223FIV194

 

緋色様がいらっしゃる時点で、世界の中心地は佐賀ですよ

そんなの常識でしょう。愚民どもが

 

 

11: ID:nGLvNiK6T

 

また九州内のヒエラルキー論争かよ

暇人どもが

スレチはそれぐらいにして福岡のいいところを出せよ

 

 

12: ID:aYIAhYaX8

 

福岡って秩序の回復はどうなん?

 

 

13: ID:gI4HLB2DU

 

それなりに回復してる

ゾンビ〇

ネット〇

電気〇

お金〇

物流△

 

 

14: ID:9cMYlS8r5

 

ゾンビ〇てどういう意味だよw

 

 

15: ID:W9BeXzgaO

 

知らんけど福岡民でないおまえには関係ないよ

 

 

16: ID:Q4tzXcr5X

 

知らんけど童貞のおまえには関係ないよ

 

 

17: ID:RkM1LuGYm

 

福岡お金使えるのか

お肉券とかお魚券とかしかないうち(埼玉県)って・・・

 

 

18: ID:h0OeRyKmu

 

>>17

 

埼玉のどこ?

 

 

19: ID:+R0x2I/Z9

 

上里

 

 

20: ID:MdYTKkt9s

 

ああ実質群馬の……

 

 

 

 

 ☆=

 

 

 

 なんだ実質群馬って……。田舎ってことか。

 久留米が実質佐賀と言われているのと似ているな。

 

 そのあともどこの県がいいとか悪いとかの話がグダグダと続いている。

 

 ただこれはボクに余裕があるからそう思えるのであって、一般的な感覚だとまだまだ復興中って感じなのかもしれないな。

 

 ええと、例の"人喰い"の噂はもう少し後らしい。

 

 

 

 ☆=

 

 

 

103: ID:zcYCHmvL6

 

そういや福岡には"人喰い"がいるって噂聞いたことあるな

 

 

129: ID:nsCrBgZh/

 

>>103

 

ゾンビの話か?

 

 

133: ID:zcYCHmvL6

 

ゾンビに食われたとかそういう話じゃないらしい

人が人のカタチをしたものを食べるという話

 

 

141: ID:XC6VCg2AZ

 

いったいどこから聞いた話だよwwww

ゾンビじゃあるまいし

 

 

154: ID:wzXaDJwS4

 

カーニバルダヨ!

 

 

185: ID:zcYCHmvL6

 

フツーに友人の友人から聞いた話だが

 

 

202: ID:YQINcY4DO

 

ヒロちゃんが現れるまでの数か月は異常行動に走るやつも多かったからな

カニバルなやつがひとりやふたりいてもおかしくないが

いまの復興期に人肉モグモグする異常性愛者がいるのかって話

いても普通にゾンビ刑にするか刑務所っぽいところに閉じ込めるか

あるいは処分するかだな

 

 

231: ID:Oc4LCpBxF

 

友人の友人とか嘘松すぎる

zcYCHmvL6はNG推奨

 

 

255: ID:C0iqt+Vp2

 

人を喰ったような話だ

 

 

280: ID:ijBed61nO

 

ヒイロゾンビが人間食ったりした例ってあるのかな

いや食べた瞬間にそいつがヒイロゾンビになって抵抗すれば厳しいか?

昏睡させればワンチャン?

 

 

309: ID:7a5jge7gB

 

ヒイロゾンビが人間を食べたって話は聞かないが

刑務所っぽいところに入れられたって話ならあるぞ

 

 

336: ID:ijBed61nO

 

ヒイロゾンビを閉じこめておくとか無理くね?

 

 

352: ID:uWG2QSV9q

 

>>336

 

わしヒイロゾンビだが、クソ雑魚不人気ヒロチューバ―なので、

鉄格子を曲げることすらできません

一部の人気者以外は普通の人間と大してかわりませんよ

 

 

362: ID:7qXN9l63b

 

絵面的にはヒイロゾンビがヒイロゾンビを喰うっていうのも"人喰い"になるかもなー

ヒイロゾンビって再生力えぐいし、不人気でも再生力は普通のゾンビ以上だろ

 

 

370: ID:KFXTSSAkS

 

>>362

無限に食べられるね

ヤバいですね☆

 

 

403: ID:CIdVOiOJR

 

アメリカの大統領が普通にヒロちゃんに連絡とって

ヒイロゾンビの処遇をUSAの法律に基づいて裁いたとか言ってた

なんで日本の小学生に聞いてんのって思ったけど

 

 

428: ID:Av0nV7NW5

 

なんでカーニバルすんだろ

普通に人肉よりうまいのあるだろ

 

 

440: ID:ZJt8Ywayl

 

おまえ人肉食ったことあんのか?

禁忌の背徳感がいいんだろ

 

 

452: ID:pBqGBKfmZ

 

喰われるのがいいって人もいるかもしれない

高校生の娘さんがいる熟れた人妻の家元が

抱きしめられて、おまえを食べたいと耳元でささやかれ堕ちていく

厳格な母として娘を育てた家元が、口元に笑みを浮かべ自嘲気味に言うのだ

「ふしだらな母と笑いなさい」と

家元かわいいよ家元

 

 

473: ID:bAJoq74AT

 

おまえが家元好きなのはわかったから

 

 

 

 

 ☆=

 

 

 

 うーむ。関係ありそうなところを抜き出してはみたものの、正直これだけだとなんにもわからないな。カーニバルだよってことぐらいしかわからない。

 

 それと家元ってなんだよ(哲学)。

 

 ただ、ボクが出てくる前は異常事態だったから、食人行為も行われた可能性はあるだろう。

 

 いまはボクがいるから、ゾンビ禍は収まるだろうという見込みが強い。

 

 つまり、食人がそのまま殺人行為として同値であるならば、通常の刑法199条に基づき、殺人犯として裁かれる算段が強いだろう。

 

 福岡ではお金すらも機能しているって話だし、さすがに裁判まではおこなわれていないかもしれないけど、略式のそれっぽいことはしているんじゃないかな。

 

 もしも、カーニバルがしたくてしたくてたまらない変態さんがいたとしても、いまは我慢するというのが合理的な気がする。食人っていうサイコパスなことをする人って、自分の性欲が満たされることに対して計画的だから、たぶん不合理なことはそんなにしない。

 

 だから――、"人喰い"の噂も過去のことなんじゃないかな。

 いまのことって断言はされてなかったしね。

 

 嘉穂ちゃんの件について言えば、登録者数が100万を優に越え、いまでも伸び続けている。ボクの弟子という立場と、あの特殊なキャラがウケたんだろう。複雑な現代社会ではなにがウケるかは運次第なところがあるとはいえ、ボクと誼があるというのはそれだけ強いということだ。

 

 嘉穂ちゃんをパワーレベリングしちゃった。

 

 多少の不公平感はあるだろうけど――。

 

 ともあれ、これで嘉穂ちゃんはいわゆるスーパーヒイロゾンビになったわけで、さっきまで魔法が使えたといって浮かれていた。すごいでありますと連呼し、ふわふわと浮き上がって光線みたいなのをまき散らしていたからね。

 

 人間の領域が近いから自重してほしいとは思ったけど、とりあえず一般市民に襲われたくらいでは死なない程度には強くなったと思う。究極的には嘉穂ちゃんを生首状態にした犯人について明らかになったほうがスッキリはするけど、みつからなかったとしても犯人に害される可能性はほとんどないだろう。犯人が表では人気者のヒイロゾンビで、裏では人を食べているなんてことがない限りは、ヒイロゾンビのなかでも強い。

 

 当初の目的である嘉穂ちゃんのお姉さんを探しにいっても問題ないだろう。

 

 月夜が照らす真夜中。

 

 ボクは屋根にあがってこっそり"壁"を見ていた。

 ゾンビの世界と人の世界を隔てる"壁"。

 赤錆びた物々しい鉄骨で組まれた"壁"は物々しくゾンビを拒絶する。

 明日は、向こう側に行って、ヒトに会って話をする。

 

 陰キャとしては、少々つらみもあるものの、お姉さんを探したい嘉穂ちゃんにつきあう形だ。

 

 ボクといっしょにいると必然的に嘉穂ちゃんがカオリちゃんだと気づく人もいるだろうけど、ひとりで探しに行って、誰かもわからない犯人に見つかる可能性も考えると、ボクが抑止力になったほうがいいと考えた。

 

「さーてボクも寝ようかな……」

 

 と、そのとき。

 ボクのスマホがプルプルっと震えた。

 ピンクちゃんだった。

 もうそろそろ寝る時間なのに、ピンクちゃんよく起きてるな。

 

「あ、もしもし?」

 

『ピンクは大変遺憾の想いが強い』

 

「え?」

 

『ピンクは残念だ』

 

「ごめん。言ってる意味がよくわからないんだけど」

 

『弟子の件』

 

「ああ、その件ですか」

 

 ピンクちゃん、お怒りのようです。

 とはいえ、理知的なピンクちゃんのこと、ボクが一連の出来事を話すと納得はしてもらえたようだ。八歳児なのにピンクちゃんって理性的だよな。ボクがピンクちゃんと同じころには、お空の雲っておいしそうだなぁとか考えていたよ。

 

『ううむ。"人喰い"か。ピンクは心配だ。ヒイロゾンビも無敵じゃない。食べられてしまったら死んでしまうぞ。死ぬとすごく痛いぞ。違うか。痛いとすごく死ぬぞ』

 

「それはそうだけど、再生する端から食べていくって相当難易度高いと思うけどね。食べるスピードが追いつかないと思うよ」

 

 それに、ヒイロちからの応用で、バリアを薄く常時張っていれば、刃物とか銃弾も通さないしな。

 

「佐賀に帰ってくるのが一番安全だ。誰だってそうする。ピンクだってそうする」

 

「嘉穂ちゃん――ボクの弟子のカオリちゃんなんだけど、彼女がお姉さんを探したいんだって」

 

「つまり、犯人に見つかるかもしれないし、サイアクその姉が犯人かもしれないのに捜そうとしているわけか。ヒロちゃんが付き合う必要はないと思うぞ」

 

「そりゃ……弟子ですしおすし」

 

「だから弟子にしたのか。自分からしがらみを作っていくスタイルというやつだな」

 

「まあ、そんな感じ」

 

「ピンクとしてはヒロちゃんの行動を制限するつもりはないが、その"人喰い"がジュデッカだという可能性はないのか?」

 

 ジュデッカ。

 ゾンビ禍が起こってから、ボクが出現した後。

 ずーっと影のようにボクに粘着している、たぶんボクのアンチ。

 

 そんな言い方をするとたいしたことない組織だと思うけど、あの空母ではテロの手引きをしたりと大変厄介な方々のようです。

 

 自衛隊を半分に割ったり。

 その自衛隊を使って九州を停電させたり。

 ネットが命な陰キャにはひどいことをしました。

 ただ、幼女先輩を基点にして、最近、その自衛隊のにらみ合いは終わった。

 いつのまにか向こうのトップがいなくなっていたんだよな。

 表の日本におけるジュデッカの影はなくなったように思う。

 

「自衛隊の半分は解散したし、ジュデッカの部隊みたいのはいないんでしょ」

 

『そもそも組織というような固いものではないからな』

 

「ボクとしては"人喰い"っていうのはずいぶんと属人的なものだと思うんだけど。そいつの趣味っていうかさ。そいつだからするって側面が強くて、ジュデッカみたいな他者がかかわる領域ではないというか、そんな感じがしない?」

 

『ジュデッカはヒトの心の隙間に入りこむバグのような存在だ。例えば"人喰い"が他人に言えない昏い趣味だとすれば、その隙間を埋めるような甘言を使うかもしれない』

 

「あなたの趣味を肯定しますって?」

 

『そうだ』

 

「ジュデッカって何がしたいんだろう」

 

『ピンクにもわからない。やってることはテロだが、テロにしたって新しいビジョンがあるはずだろうにな。例えば、世界を緑あふれるようにしたいとか。クジラを殺さないとか』

 

「ゾンビを殺せとかじゃないの。ヒイロゾンビも含めて」

 

『だったらもう遅いな。ヒイロゾンビを一人残らず殺すのはもはや無理だろう』

 

「あの船が最後の抵抗だったりして。どうしようもなくなってあきらめたんじゃない?」

 

『ピンクとしてはまだあきらめたという気はしない』

 

 しかし――。

 相手側の首魁がどこのだれかもわからない以上、どうしようもない。

 誰かの悪意が充満していると思うと、この世界は怖い。

 でも、ピンクちゃんみたいにボクのことを心配してくれる子もいる。

 

「おみあげ何かほしいものある?」

 

 とボクは無理やりに話を転換した。

 ピンクちゃんは敏い。すぐにボクの意図に気づいて答えを返してくれる。

 

『ピンクは博多ラーメンの本場が食べてみたいぞ!』

 

「ラーメンを出前するのはちょっと難しいかな。箱のやつでいい?」

 

『箱でいいぞ。あとは――、今回はヒロちゃんのわたくしごとだったから我慢したけど――、次は――、ピンクもいっしょに博多にいっていい?』

 

 きゅぅん。

 思わず胸がしめつけられるような可愛さだった。

 電話の向こう側でちっちゃなおててがスマホを握り締めている様が想像できる。

 さすがピンクちゃん。幼女指数の高さは随一だ。

 

「いいよ」とボクは言った。

 

 

 

 ☆=

 

 

 

 ほっこりするピンクちゃんとの電話も終わり。

 とりあえず、恵美ちゃんや乙葉ちゃんからはまだかかってこない。

 

 ふぅ。弟子という存在にみんながイキイキ反応するから、もしかしたら全力でみんなから連絡くるのかと思ったけど、大丈夫みたいだな。

 

 現代社会は連絡をとりやすいというのが良くも悪くもって感じだ。

 

 そういや、ボクの側からもできることがまだあったな。

 

 せっかくの文明の利器。使わない手はない。

 

「あ、江戸原首相ですか。緋色ですけど。夜遅くにすみません」

 

 そう、ボクはこう見えて、いろんな国のトップと連絡がとれたりする。

 明日行くところの政治形態がどうなってるかくらいはわかっていたほうがいいだろう。

 

『ヒロちゃん。元気してるかな』

 

 あいかわらずダンディーなおじさまの声。

 ボクのことをこころの底から慈しんでくれているのがわかるというか。

 結構なヒロ友だよな。

 いまではヒイロゾンビであるわけだし、なんだかんだいっても"人気"は結構ある。

 

「はい。元気です」

 

 と無難にお返事。

 

『ヒロちゃんにお弟子さんがいたなんてビックリだよ』

 

「あ、実は今日できたばかりなんです。即席パワーレベリングしたのにも理由があって……」

 

 ボクは軽く経緯を説明する。

 

『なるほど、それで福岡がどうなっているか、日本が国としてどこまで把握しているかを知りたいわけか。ヒロちゃんが頼ってくれて、パパはうれしいよ』

 

 さりげなくパパって……。

 まあいいか。

 

「はいそういうことです。なにか気を付けないといけないことはありますか?」

 

『うーん。特にはないな。今のところ各都道府県知事は既に実効支配しているものは問題がなければ追認、そうでないところは国が派遣する形をとっているわけだが、国に反抗するようないわゆるテロリストのような人物はいないよ』

 

「福岡県知事も問題ないってことですか」

 

『福岡は空席になっていたパターンだな。中眞知事。45歳。若くて人当りの良い感じの男だ』

 

「ヒイロゾンビですか」

 

『県知事クラスは全員そうだよ。いざというときにゾンビになっちゃいましたでは問題だからね。それにヒイロゾンビはインフラ整備が急務なので、そういった地位にいたほうが望ましい』

 

「なるほど……」

 

 人間に比べたらヒイロゾンビのほうがコントロールしようと思えばできる。

 しちゃいけないことだけど、いざとなればできるカードがあるって安心感があるな。

 

「あ、あともう一ついいですか。首相」

 

「いくらでも頼ってくれていいんだよ」

 

 そんなパパ活みたいな言い方やめろ。

 一国の首相が言ってると考えると、ここはぐっとこらえてスマイルだ。

 

「ボクの弟子――、カオリちゃんにはお姉さんがいるんですが、お姉さんがどこで暮らしているかとかわかりますかね?」

 

『国の統合システムとして誰がどこにというところまでは把握していないよ。市町村の住基ネットも損壊しているところがあるだろうし、そもそも空き家にこっそり住んでるかもしれないしね』

 

「カオリちゃんのいたところの市役所はゾンビで埋まってると思います」

 

『だったら、やっぱり中眞くんに会うのがいいだろうね。彼が独自に編纂しているかもしれない』

 

「わかりました。ボク、突然会いに行ってもいいんでしょうか」

 

『問題ないよ。わたしが連絡しておこうか』

 

「お願いします」

 

 これだ。

 これこそが大人の証拠。ボクは根回しができる大人なのです! むふん。

 

『ところで、ヒロちゃん』

 

「ん?」

 

 切ろうとしたところで、今度は江戸原首相から話しかけられた。

 

『わたしにもそのなんだ――ピンクちゃんや乙葉ちゃんみたいに、なにかそう指輪ではなくてもいいのだが何か欲しいのだが』

 

「……」

 

『なんでもいいんだ。なんでも。ヒロちゃんにプレゼントを贈られる。ヒロちゃんに信頼されてるというだけでものすごく違ってくるんだよ』

 

「配信中にパパって呼んだりするっていうのはどうですか?」

 

『キターーーーーーーーー!』

 

「嘘ですよ」

 

『しょぼーーーーーーーん!』

 

 この国、大丈夫か?

 そんなことを思ってしまうボクでした。

 

 

 

 ☆=

 

 

 

 今日は電話が多い日だった。

 そろそろ午前零時を回る。

 みんなとの連絡も終わり。

 

 と、またスマホが震えた。

 誰だろうと思ってみると、非通知設定。

 とはいえ、ボクの電話番号を知ってる人は少ない。

 200国の人たちにも教えてないからね。

 

 陰キャなめんな。

 ネットリテラシーとかそういうんじゃなくて、知ってる人そのものが少ないんだ。

 

 つまり、ボクの知り合いがまちがって非通知でかけてきたのかなと思ったんだ。

 

 違った。

 

「初めまして緋色様。わたしはジュデッカのトップ。イスカリオテのジュディ」

 

 敵の首魁さんからのお電話でした。




寝なきゃまだ日曜日。つまり締め切りを過ぎてない理論。
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