あさおん・オブ・ザ・デッド   作:夢野ベル子

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ハザードレベル67

 女将さんの娘さん、多々良令子に借りがあるという大山正子ちゃん。

 

 自分たちのことを"人殺し"だと告げた正子ちゃんは悲痛の表情をしている。

 

 ゾンビモノとしては人殺しになったりするのはお約束ではあるけれども、女子中学生から出る言葉としては物騒だ。たとえほんのちょっと大人びたというか、不良っぽい雰囲気がある女の子だとしてもだ。

 

 だって、案外重いものだからね。

 

 ボクにも人間を哲学的ゾンビにしたという、ある種の殺人的行為をやったことがあるわけだし、他にも幾人かをゾンビにしてしまうという前科があるわけだけど、やっぱりちょっとは思うところがある。人として、良くないことというかそういうものじゃなくて、端的に言って――。

 

 罪の意識というか?

 

 汚れてしまったというか?

 

 そんな感じのもの。

 

 ゾンビから人間に戻せるって知って、少しはそういう重みもなくなったけれど、正当防衛だろうがなんだろうが、人間が人間のカタチをしたものを破壊するという行為にはなにかしら汚れたという意識がつきまとうものだと思う。

 

 まだ、世の中の風塵にさらされたことのない少女ならなおさら、自分が汚れたという感覚を抱いただろう。

 

 正子ちゃんの言ってることはまぎれもない罪の告白で、客観的に言えば、かなり勇気のいる行為じゃないかな。

 

 ボクとしてはそう思う。

 

 命ちゃんやマナさんはどうだろう。

 

 ボクは顔を左右に振って、命ちゃんやマナさんがどう考えているか探ろうとした。

 

「じー」「罪の告白を聞くシスターなご主人様も捨てがたいな♪」

 

 あいかわらず命ちゃんは無表情でクールな顔つきで、マナさんはボクのことを性欲的な意味で見ているだけでした。

 

 ダメだ。参考にならねえ。

 

 しかたなしに、普通に聞くことにする。

 

「人殺しって、どういうことかな?」

 

「……ゾンビになった人間を殺したとかじゃないよ」

 

「そう。まあこんな世界になっちゃったわけだし、人間が人間を殺したりするのも、そんなに珍しくないんじゃないかな」

 

 配信のふんわりほんわかした雰囲気は例外的だと思う。

 きっと本来的にはゾンビという外敵だらけの世界で、日々の娯楽も少なく、食糧も少なくなっていくという状況だと、人には自分のいのち以外を気にかける余裕なんてものはない。

 

 もしくは、ホームセンターのときみたいに、ゾンビよりも人間のほうが敵になるということもありえる。

 

「ずいぶんと淡白なんだね。引くと思ってた」

 

 少し不満そう。

 真剣に聞いてないと思われたのかもしれない。

 まあ実際、中学生の言葉だと思って、侮っていた面はあったかも。

 反省です。

 

「引くとか引かないとかの次元じゃないと思ってるだけだよ」

 

 人の生死にかかわる以上、ボクはその人なりの事情というものを考えたいと思ってる。他人のこころなんてものは見えないし、感じ取れないし、本当のところはわかりようもないのかもしれないけれど、できるだけ耳は傾けたい。

 

 ボクにはゾンビから人間に戻すという力があるから。

 つまり、ある意味で、ボクは人間を生き返らせる力があるといえるから。

 嫌でも人の生死に関わってしまう。

 人の生死をちゃかしたりはしたくないけど、ゾンビから人間にもどりましたとかギャグでいってるのかそれって感じだよね。

 

「ふうん。見た目……小学生だけど、なんだか大人なんだね」

 

 ボクの意見に対して、正子ちゃんはわりと冷静な意見だ。

 

 でもこれだけはいっておきたい!

 

「ボク、小学生じゃないし!」

 

 さすがに中学生から小学生扱いされるのは堪えます。

 

「小学生だぁ……♪」

 

 やめてマナさん。よだれがたれてる。

 

「先輩、否定すればするほど、小学生だということが明るみにでますよ」

 

 命ちゃんの容赦ないツッコミでボクの心は折れそうです。

 

 ちょっとギャグ路線になっちゃったけど、話はきちんと聞きます。

 

 居住まいをただして、正子ちゃんは話をはじめた。

 

 

 

 ★=

 

 

 

 どこから話せばいいんだろう。

 

 令子とのなれそめを考えると、どうしてもそんなことを想ってしまう。

 

 最初はなんてことはない、とりとめのないエピソードから始まった。

 

 友達になるなんて、特別な何かがあるわけじゃないし、ましてや一目ぼれとかそういうような運命を感じたような何かがあるわけじゃない。

 

 ただ、ほんのちょっとだけ特別で、ほんのちょっとだけ珍しいエピソード。

 

 そんなのを大人たちはおおげさに運命なんて言ってるだけなんだ。

 

「体育館倉庫の裏で、モクってたんだよ」

 

「モクる? モクモク?」

 

 小首を傾げて、ゾンビ避けできる小学生――夜月緋色が――わたしの言っていることを理解していないようだった。

 

 小学生はガキでいいよなぁと思う。

 

 なんにも考えてなくて、親のいうことや学校の先生のいうことに素直にしたがっていればいいんだから。

 

 世の中がキラキラと輝いて見えて、将来の夢はパティシエになることだったりするんだろう。

 

 ほんのちょっとだけ嫉妬なのかなんなのかよくわからないけど、マイナスのイメージが湧いた。

 

 でも、小動物みたいでかわいいとも思った。

 

 わたしはこう見えてかわいもの好きだ。

 家では狸をデフォルメしたようなたぬちゃんというぬいぐるみを小学生のころから抱き枕かわりに使っている。それがないと眠れない……眠れなかった。

 

 修学旅行はきっとわたしは三日三晩寝ないで過ごすだろうと思っていた。その機会は永久に来ないだろうけど……。それと、こんな世界になってしまっても、ゾンビだらけになってしまっても、結局眠たくなったらたぬちゃんがいなくても寝れたし、結果的にたぬちゃんなんかなくてもよかったということを、わたしは知ってしまった。

 

 その知ってしまったということが、すごく寂しいんだ。

 

「タバコ吸ってたんだよ」

 

 と、わたしはなんでもないように言った。

 

「やっぱり不良じゃん! 未成年はタバコを吸っちゃだめだよ!」

 

「不良じゃないよ。あのときは少しうまくいかない日で、先生か誰かに叱られたかして、最悪の気分で、だから、親からくすねてきたタバコを一本だけ吸おうって思ったんだ」

 

「退学になっちゃう」

 

「見つかればね」

 

 結果的に見つかったのは、先生にではなく令子だったというだけのことだ。

 それがなれ初め。それがほんの少しだけ特別なエピソード。

 

「令子はチクるかなと思ってたよ。あー、チクるというのは先生とかに告げ口するってことで」

 

「それは知ってます」

 

 いまどきの小学生もチクるっていう言葉はわかるのか。

 基準がよくわかんないな。

 もう、小学生とかの若い連中がなに考えてるかわかんないし。

 

「令子はチクんなかったよ。今になって思えば、令子もいろいろ溜まってたんだと思う」

 

「溜まってたって? ままま……まさか、せ、性欲じゃないよね」

 

 まっしろな顔が急激にトマトみたいに赤くなっていく。

 いまどきの小学生はマセてんなーと、思ったり。

 わたしは首を振った。

 

「大人たちへの不満ていうか、そんな感じのやつ」

 

「あー、そんな感じのやつね」

 

 そう。令子は地元ではそれなりに有名な多々良温泉宿のご令嬢ってやつで、親は――おばさんは一人娘に宿をついでほしかったらしい。

 

 でも、自分には自分の夢があるから、パティシエになりたかったから、温泉宿は継ぎたくないって大ゲンカしたらしかった。

 

 その日はむしゃくしゃしてて、何もかもうまくいかなくて、だから、どこか自分を壊したくて……要するにわたしといっしょだったんだ。

 

 奇妙な連帯感だった。

 

 わたしたちのなかに友情が芽生えたような気がした。

 

「タバコ吸わせてくれない?」

 

 令子は、肩口くらいまである髪と、粉雪みたいな肌をした見た目お嬢様然としたやつだったけど、口を開けば案外サバサバしていて付き合いやすそうだった。

 

「タバコこれしかないんだけど」

 

「ふうん……ちょっとでいいからちょうだいよ」

 

 おかしなやつだった。

 いや、わたしは愉快な気分だった。

 正真正銘のお嬢様で、実際にクラスメイトにもそんなふうに思われているやつが、わたしに吸いかけのタバコ一本を恵んでくれと言ってきてるんだ。

 おもしろくないわけがない。

 

 わたしは半分くらいまで減ったタバコを令子に渡した。

 案の定、一口吸っただけで、盛大にせきこんでいた。

 

 せきこみながら、

 

「間接キスだね」

 

 なんていうもんだから、わたしはお腹を抱えて笑ってしまった。

 

 そんなわけで――、わたしは令子と友達になった。

 

 

 

 ★=

 

 

 

「いっしょに食事したら仲良くなるものだからね。タバコは食事とは違うけど……同じ行為をして仲良くなるっていうのは人間の性質らしいよ。確か、ピンクさんがシンクロシニティとかいってたような気がする」

 

 そう言って、目の前の女の子はひとり勝手に納得している。

 

 腕を組んでうんうんとうなずいている様はやっぱりかわいらしい。

 

 言ってることはわりと難しいことみたいに思えたけど、たぶん正しいと思う。

 

 そのタバコの件がきっかけで、令子とはよく話すようになった。

 

 令子と仲のよかったクラスの委員長の昭川和美(あきがわ・かずみ)と常に後ろ向きでおどおどしている平野早成(ひらの・さな)のふたりともよく話すようになった。

 

 いままで、べつに不良とかそんなんじゃないけど、目つきが怖いとか思われてぼっちになっていたわたしにとっては、友人が増えるのは願ったり叶ったりだった。

 

 べつにタバコを吸ったりはしたけれど――、そんなに不良してるってわけでもないし、大人たちの世界を絶対の悪だとか、矛盾しているとか、まちがってるとか、そんなふうに思ってるわけでもない。ただ、ほんのちょっとの間だけ、ほんの少しだけ反抗したくなっただけだ。

 

 委員長は、わたしのスカートがちょっとでも校則より短いと、鬼になる。

 そりゃもう鬼の首をとったかのように、自分が絶対の正義ウーマンになる。

 そんなところが煩わしかったりもしたけれど、そのたびに令子がとりなしてくれた。

 

 早成はなぜかわたしに殴られるんじゃないかと、いつもびくびくしていた。目つきが鋭いだけで鬼のような扱いをされるのはどうかと思うが、こればっかりは生まれ持った性質だからしかたない。たぶん、令子がいなければ、わたしは早成と話すこともなかったと思う。

 

 令子と、委員長と、早成と、わたしは、グループになった。

 

 中学のクラスでは、小学校のときと同じようにつるむ仲間みたいなのが固まってくる。わたしたちは四人でひとまとまりになって、その中心にはいつも令子がいた。

 

 令子の家に夏休みに遊びにいくことになったのも令子の発案だ。

 温泉なんて家族旅行くらいしかいったことがないから、わたしたちはみんなワクワクしていた。

 

 半分遊びの半分仕事。

 仕事ってよくわからないけど、令子の家で、ただの御客様として行くのもどうかという話になって、一部屋を自分たちで仕切ることになったって話だ。

 

 ベッドメイキングとか、料理を運んだりとか――、そんな他愛のない仕事だったけど。

 

 自分のことを自分でやるっていうのは新鮮だったように思う。

 

「令子ちゃんは家を継ぎたくないって思ってたのにどうして?」

 

「そんなの令子じゃないからわかんないよ。たぶん、本当にやりたくないってわけじゃなかったんだと思う。本当は、したいかどうかもわからなくて、でも、そうしなきゃいけないっていうのが嫌だったんじゃないの?」

 

「決められた道を進むのが嫌だって話ね。あるあるー」

 

 小学生のくせになにがわかるんだって思ったけど、ほほえましい姿に思わず顔がほころびそうになる。

 

 でも――、楽しかったのもそこまで。

 

 

 

 ★=

 

 

 

 世界が変わった。

 

 

 

 ★=

 

 

 

 そのあたりのことは、いまさら語るまでもないことだと思う。

 

 全世界の人間が同時に体験したことだし、火事の避難訓練みたいに、みんながバタバタと走り回った。

 突然、ホテルに泊まっている人たちの何人かがゾンビになって、隣りの人にかみつき始めたんだ。混乱が生じてあたりまえだと思う。

 

 でも、ゾンビ避けできるんなら違うかな。

 

 え、同じようなもの?

 

 そう……だよね。

 

 一番厄介なのはゾンビじゃない。人間だ。

 

 避難訓練のときみたいに整然とお行儀よく並んでなんてことはなくて、みんな突き飛ばしたり、ひとりだけ逃げようとしたり、ゾンビと人間をまちがえて殴り合いを始めたり。

 

 わたしたちは幸いなことに、誰ひとりゾンビになることはなかった。

 でもホテルは人も多くて、ゾンビになった人も多い。

 このまま部屋の中に留まっていたら危険だった。

 

 だから、私たちは令子の発案で、温泉施設の方に向かうことにした。

 温泉施設は夜の十時までしか開いていなかったから、真夜中は閉めきってるはずで、令子は合鍵の場所を知っていたから。

 

 合鍵はフロントにあるらしくて、二階から駆け降りるまで一分かそこらの距離。

 

 でも、そこに向かうまでにゾンビが何匹かいて、狭い廊下で入れ違いにならなくちゃならない。

 

 永遠にも等しい距離だった。

 

 向かう途中でどんくさい早成がゾンビに捕まった。

 

 わたしは――、わたしたちは何もできなかった。動けなかったんだ。

 こわかった。さっきまで温泉に入って楽しそうにしていたデブったおばさんが、早成の腕をがっしりとつかんでいた。

 

 口元からはよだれがこぼれて、早成が青ざめる。

 このままだと殺されてしまう。

 

 でも、自分が動けば、死ぬかもしれない。

 

 結局、友達なんていっても、他人は他人だ。

 

 そんな言い訳が頭の中で数瞬、かけめぐる。

 

 飛び出したのは令子だった。令子だけがとび蹴りをかまして、早成をゾンビから助け出したんだ。

 

 そのせいで、噛まれてしまったけど――、早成は自分が噛まれたわけでもないのに、震えて泣き叫んでごめんなさいごめんなさいって泣きわめいていたよ。

 

 むしろ、令子のほうが冷静だった。

 ゾンビに噛まれたらゾンビになるっていうのは映画でもドラマでも当たり前の知識だったけど、そのときはどうなるかわからなかったから、まだ気丈に振舞えたのかもしれない。

 

 いや、あるいは令子だったら、友達のためなら本当にゾンビになってもいいなんて考えていたのかもしれない。

 

 令子の白い肌は噛まれたところから蒼白に染まっていって、そこからどんどんと汚染が広がっていってるように見えた。

 

 そして、おばさんに会った。

 

 おばさんとホテルの職員さんたちは、客を避難誘導してた。

 

 令子が噛まれているのを見ると、おばさんは取り乱すことはなかったけれど、すぐにわたしたちとともに温泉施設のほうに向かった。

 

 気のよさそうな白髪交じりの支配人さんとか、ちょっとかっこよかったフロントのお兄さんとか、駐車場に向かうように誘導していたお客さんたちとか、みんな全部放りだして、結局のところ、おばさんは令子を選んだってことなんだ。

 

 助けられる側のわたしは何も言えなかったけど、令子は猛然と抗議していた。

 お客様第一主義はどこにいったのかって、いまこのときに言える令子はある意味すごいと思ったけど、ゾンビが溢れた世界でお客様もなにもないと思う。

 

 おばさんは令子を大事にしている。

 それが悪いことだとも思えない。

 確かにみんなを放り出して逃げたのは悪いかもしれないけどさ……。

 

 ねえ、どう思う?

 

 おばさんはまちがってるのかな。

 

「女子中学生らしい共感性ってやつですな」

 

 目の前のカワイイ生物はそんなふうにとりすまして言う。

 

「共感とかよくわかんないけどね」

 

「悪いとか悪くないっていうのは、感じ方の問題だからね。一言ではなんともいえないよ。ただ、一般的に悪いっていうのは、なにかしらの優先順位をまちがえることだと思うよ。この場合は、自分の血縁とそれ以外の人のどちらを優先するかって話だけどさ。べつに、自分の血縁を選ぶことがいつも悪いことだとは思わないな」

 

「でも――、駐車場の裏手から温泉施設を見つけた客とかがちょっと後に来てさ……」

 

 それ以上は目の前の小学生に伝えるのはどうかと思った。

 

 わたしにだって自重という言葉はある。

 

 地獄の亡者といったらなんだけど……、あの扉を必死になって叩く音。開けてくれ助けてくれっていう声は一生忘れそうにない。わたしたちは必死にバリケードを積んで、それから耳をふさぐしかなかった。ふさいでも、断末魔の声はいくつも重なって聞こえた。

 

 

 

 ★=

 

 

 

「その見捨てたっていうのが正子ちゃんの言う人殺しってこと?」

 

「いや、違う」

 

 見捨てたってことも人殺しだとは思う。

 

 不作為の殺人。

 

 あのときは必死だったから、そんな余裕はなかったけれど、もしかしたらみんな助かる道はあったかもしれない。もっと多くの人を中に入れたほうがよかったかもしれない。

 

 そんなことを思わないでもないけど。

 

 もし中に入れていたら、きっとすぐに内部崩壊してただろうとも思う。

 

 いまのいままで生き残ってこれたのも、あのとき、おばさんがわたしたちだけ助けてくれたからだ。

 

「令子は噛まれてから二日後くらいにゾンビになったよ」

 

「うん」

 

「令子は自分から出ていくって言ってた。おばさんは当然反対した。わたしも反対した。早成は怯えて震えていたからよくわからない。委員長はたぶん令子よりの意見だったと思うけど、おばさんの手前言い出せないみたいだった」

 

「ゾンビになるとみんな危険になるから、委員長ちゃんの意見がもしそうだとするなら、それはそれで正しいと思うな」

 

「まあわたしもそう思う。けど、あのときのおばさんに逆らっていたら、みんなどうなってたかわからないよ。結局、妥協案として、令子は自分から縛られて地下にとじこめられることになったけど……」

 

 おばさんは、怨念のこもった言葉をわたしたちに投げかけた。

 それは呪いとなって、わたしたちのこころを束縛していると思う。

 

 "だれのせいだ?"

 

 "だれのせいで令子はゾンビになったんだ"

 

 "おまえか?"

 

 "おまえか?"

 

 "おまえか?"

 

 早成なんてひどいもんだった。全身が震えていまにも漏らしそうなくらいな様子だった。

 おばさんは何かを察したのか、早成に迫ったんで、わたしはとっさにみんなのせいにした。

 みんなが逃げ遅れたから、その結果、噛まれたことにした。

 

 責任を分散しようとしたんだ。

 

 罪は分散しても消えることはない。

 

 特に早成はそうかもしれない。令子と一番仲がよかったのも早成だ。

 

 だから――。

 

 わたしは令子に借りがある。

 

 わたしたちは、おばさんに逆らうことができなくなった。




ちょっとほんのり百合要素。
百合は中学生くらいが至高。
小学生だと子供すぎて、高校生だと大人すぎる。
はざかいの年齢でこそ百合は輝く。

異論は認めます。
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