あさおん・オブ・ザ・デッド   作:夢野ベル子

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ハザードレベル86

 壮観としかいえない光景だった。

 

 ボクの目の前には百万人が待機の列をなしている。

 その百万人はおそらく世界中の人たちで、それでもボクが日本語をしゃべってるからか、全員日本語で雑談している。

 

『ヒロちゃんまだかなー』『今日もまたゾンビゲープレイすんのかな』『ヒロちゃんかわいいね。日本人なのかな』『ていうか人間じゃなくて、天使だという説がもっぱら有力』『超能力使えるしな』『わが祖国では昔はこれぐらいできるやつざらにいたぞ』『おそろしあ』『だったら自前でゾンビなんとかしろ』『は?』『なんだ戦争るか?』『うちの大統領がそちらに"お話"しにいくそうです』『やめてくだしあ』

 

 ろ、ロシア?

 ロシアって冷戦時代に超能力開発とか有名だったもんね。

 ボクも中二病が発症したときに読み漁ったものだよ。

 残念ながら、ゾンビを避ける超能力ロシア美少女はいなかったようだけど。

 

『うちの国きてくんねーかな』『ていうか、科学者どもはなにやってんだよ。はよ接触しろ』『急に黒塗りのヘリで来ても怖がらせるだけだろ。小学生相手になにいってんだ』『子猫ちゃんは少しずつ信頼させないと逃げちゃうからね』『うちの国はゾンビが高速列車の中にまで入っちゃってる。これが本当の新感染……』『草』『草』『草』『草はやしてないでヒロちゃん助けて』

 

 できれば助けてあげたいけど、海外進出はまだ早い気がします。

 

『ゾンビ回復能力がどれくらいのものかっていうのが問題よな』『やっぱ科学者は必要だろ。さっさと佐賀に歩いていってどうぞ』『内政干渉は大変遺憾である。ていうかオマエらこっちくんな』『だったらおまえんとこの科学者はなにやってんだよ』『戦力を関東圏に分散させているため九州までいける余力がない』『兵隊さんに守ってもらってないと怖いでちか?』『あおるなあおるな』『日本が美少女だと定義して黒髪ロングの美少女が怖いよ怖いよって震えてる姿を想像するといろいろはかどるな』『度し難いな』『やっぱ初手で関東圏制圧とかしてるのが響いてるんじゃね?』

 

 高速で流れ行くコメントに楽々追いついていっている。

 みんな、国の代表とか頭がいい人たちが集まってるのかな。

 

『知ってるぞ。おまえんところの自衛隊まっぷたつに分裂したんだってな』『クーデター起こってんの?』『そうじゃなくてにらみあってる状態で動かせないらしい』『シビリアンコントロールはどうした。民主国家!』『首相の命令権はあるんだろうけど』『やっぱりクーデターじゃないか』『いや判断停止つーか。首相も言いたいこと言えないらしいよ』『つかさぁ。いい加減、アメリカのいいなりになるのやめろって』『なってねーよ』『九州内の電力止めたのジュデッカ(日米共同経済機構)の指示だろ!』『現場の判断なんじゃねーの?』『アメリカもべつにヒロちゃんと争うつもりはないぞ。そのつもりだったらさっさと核撃ってる』『ゾンビで核ゲーは敗北必至』『そんなことよりスマブラやろうぜ』『わかった。負けたら国土割譲な』

 

 危ないこと言ってるな。

 でも今日はピンクちゃんがいる。

 そう……ボクの横にはピンクちゃんがいるからそんなにひどいことにはならないだろう。

 

 ピンクちゃんは純粋な天才科学者といっていい。

 命ちゃんがパソコンとかそういう方面に詳しい天才なのだとしたら、ピンクさんはオールラウンダーなのかな。まだピンクちゃんのことよく知らないけど、科学者集団に属しているらしいし、知識量はピンクちゃんの倍生きていたボクよりも多い気がする。その中でも人間の精神を解剖する学問には精髄している。

 

 ボクが見ていると、ピンクちゃんがこちらに気づいて、ニコって笑った。

 うーむ。かわいいな。利発そうだし、白衣着てるし。かわいいし。

 ボクの視点だと、八歳児にはさすがに変な気持ちは湧かなくて、純粋にかわいいという気持ちになる。小動物を愛でるようなかわいさだ。

 

「えーっと、ピンクちゃんに最終確認なんだけど、本当に出演していいの?」

 

「いいぞ。ピンクはむしろヒロちゃんといっしょに出演できてうれしい」

 

 ああもう本当この子はかわいいな。

 抗えんくなる。

 

「先輩はピンクさんのことが本当に好きなんですね……」

 

 捨てられた子猫みたいな視線になってるのは命ちゃんだ。

 

「ピンクちゃんかわいいしね」

 

「先輩ってロリコンでしたっけ。わたしも八歳児になるべきでしょうか」

 

「なりたくてもなれないからね……。それにボクはロリコンじゃありません」

 

 しかし、ふと思う。

 ボクもいつのまにやら女の子になってて、いつのまにやら小学生程度の外貌。

 これがヒイロウイルスの効力だとすれば、できなくはないのか?

 八歳児の命ちゃんが爆誕しちゃう?

 

 ちっちゃな命ちゃんを夢想すると、それはそれで悪くないって思うけど――。

 

「命ちゃんはそのままでもかわいいよ」

 

「本当ですか?」

 

「本当本当!」

 

 じーっとボクを見つめる命ちゃん。

 ボクもじーっと見つめ返す。

 そして数秒後、ふっと命ちゃんは視線を逸らした。

 

 勝った。

 

 いや、勝った負けたの話ではないけれど、おそらく大丈夫だ。

 

「ピンクとしては、べつにヒロちゃんを後輩ちゃんから取るつもりはないぞ」

 

 おお、いい子だね。

 

「べつにピンクさんにとられるとは思ってません。ただ、少し寂しかっただけです」

 

 命ちゃんがなんだかかわいいぞ。

 ボクより大きくなってしまった身長だけど、やっぱりかわいい後輩で妹分なのはまちがいない。

 ボクは命ちゃんに手を伸ばして、頭をなでた。

 命ちゃんは目を細めて、なんというか……堪能してらっしゃる。

 

「えっと、じゃあいいかな」

 

 マナさんはお部屋の外。

 部屋の中にいるのは、ボクとピンクさんと命ちゃんだけだ。

 

 放送室はラジオを収録するような小さな場所で、プラスチックの透明な窓が前面に開いている。そこから、たくさんの人が覗きこんでいる。

 

 直接ボクの姿を見たいって人たちもいるのだろう。

 

『ああああッ!』『あ?』『どうした?』『ヒロちゃんペディア更新されてる』『うそだろおまえ』『ヒロちゃんの名前でてるんですけど!』『夜月緋色ちゃん』『緋色だからヒーローか』『やっぱおっさんじゃないか』『親父ギャグで草』『緋色ちゃん。スカーレットちゃん?』『つーことは、ヒロ友の誰かと会ったってことか?』『適当に書きこんでるんじゃねー? 前もブラフあったじゃん』『ああ、ヒロちゃんがM78星雲からきたって話な。日本に詳しくねーから最初騙されたよ』『始まったら聞けばいいんじゃね?』

 

 ぼっちさんに教えたボクの名前。

 いましがたボクペディアに編纂されたらしい。

 まあ多少はこうなることはわかってたけど、ボクの出自まで必要な情報なのかな。

 年齢と性別がでたらめだから、戸籍にたどり着けるのかは謎だけど。

 佐賀で生まれたとは一言も言ってないし。

 だいたい、誰かさんも言ってたけど始まったら聞けばいいんだよ。

 ボクだって答えるつもりだし……。

 でも、性急な人も中にはいるらしい。

 

『戸籍調査まだー?』『幼女ストーカーは嫌われるぞ』『日本の戸籍管理って市町村でやってるから、佐賀圏内のどこの市町村か分からん限り調査できんぞ。市役所がゾンビだらけになって死役所になってるところもあるし』『ジャパニーズジョークHAHAHA……』『名前を出してくれたってことはヒロちゃんも少しは人間を信頼してくれてるってことかな』『そもそも信頼してないと配信しないっつーか』『俺らヒロ友だろ。仲良くしようぜ』『オレくん好き』『ああオレも好きだぞ』『ヒロちゃんの枠でホモホモしい展開はやめてください』

 

 なんだかなー。

 でもヒロ友はやっぱりヒロ友なんだなと思って、いつものノリに楽しくなってくる。

 

「ヒロちゃんは緋色ちゃんなのか?」

 

 ピンクさんが早速コメント欄から情報を拾って聞いてきた。

 

「そうだよ」

 

「そうか。いい名前だな!」

 

「ありがとう」

 

「ピンクの名前も知りたいか? 知りたいなら教えるぞ」

 

「本名?」

 

「そうだぞ」

 

「教えてくれるの?」

 

「いいぞ。ピンクの本名は、モニカ・グッドモーニングというんだ。MOMOってみんなには呼ばれてる。だからピンクだ」

 

「モモちゃんか。かわいい名前だね」

 

 ボクがかわいいというと、桃みたいにほっぺたを染めるピンクちゃん。

 みんなからかわいがられてるんだろうなと想像できる。

 

 さて――。

 時間いっぱいになりました。

 

 そろそろ配信を始めよう。

 

 

 

 ☆=

 

 

 

「ちゅっちゅ。今日も始まったよ。みんな元気してたかなぁ」

 

『うおおおおおああああああ』『ああああああヒロちゃんあいだがっだ』『おまえら少しは落ち着け』『全裸待機してた』『ネクタイだけはつけてる』『国際的になっても変態度は変わらないなおまえら』『そもそも日本の配信のノリに合わせてるところあるからな』『ちゅっちゅ』『これはキスの擬音であり、つまりヒロちゃんは我々に対して信頼の情を示してくれてるということだ』『ていうか隣にいるヒロちゃんより小さな女の子誰?』

 

「あのね。今日はとてもうれしいことにピンクちゃんが来てくれました」

 

 ピンクさんは親しげを増した視線をボクに送り、パソコンのカメラに向かって一礼する。

 

「ピンクだ。ヒロちゃんに無理をいって参加することになった。よろしく頼む」

 

『は?』『おは幼女』『ピンク、おまえだったのか……』『おいおいおいおいおっさんだと思ってたよ』『ピンクちゃんかわいくて草生える』『草はやしてる場合じぇねえ』『科学者初接触か。ジュデッカの息がかかってないか心配だな』『だから謎の組織名出すのやめろって』『謎でもなんでもないぞ。敗戦直後からある組織に何いってんだ』『日本が何かやるときは必ずジュデッカにおうかがいをたててるらしいぞ』『陰謀論の類か?』『ジュデッカは単なる経済共同会議だよ(にっこり)』『悪い大人の人がいるー』『オレは幼女を信じるぜ』『幼女に貴賎なし』『ピンクちゃんかわいい』『オレ、ピンクちゃんのファンになりそう』『ピンクちゃんのことおっさんだと思っててごめんなさい』『幼女がふたりでイチャイチャしている動画になるんですね』『後輩ちゃんのことも忘れないでください』

 

「とりあえずゾンビについてはピンクちゃんに任せようかなって思ってます。なので、ボクは何も考えずに配信を楽しむ!」

 

『ヒロちゃんはそれでいいと思うよ』『小学生は楽しむのが仕事だしな』『ピンクもエレメンタリィな年頃だよな?』『つーかガチで研究員なら飛び級してんじゃね?』『ゾンゾンしてきた』『いよいよゾンビに科学のメスが』『べつにいままでも調べてなかったわけじゃないがな』

 

 ピンクちゃんもだいぶんなじんでたから、違和感ないな。

 よし。

 

「じゃあ今日は"ワタシのクラフト"略してワタクラやっていくよ」

 

『直訳定期』『直訳しきれてないところがかわいい』『ゾンビゲーじゃないだと』『いやゾンビおるでよ』『ああ、ゾンビいたなそういや』『そもそもワタクラってなにするゲーム?』『みんなで穴掘ってワチャワチャするゲーム』『知らないのか? 雷電』『知ってるのか大佐?』『おまえら、日本のサブカルに詳しすぎw』『50とか60の政府高官が必死こいて日本のサブカルを覚えてる姿想像したらおハーブ生えますわ』

 

「コメントにもあったけど、このゲームはサーバー内の箱庭でいろんなものをクラフトしていくゲームなんだ」

 

『クラフトってなーに?』『クラフトの意味わかるかなぁ?』『ヒロちゃんは英語つよつよガールだから分かるよね?』『ヒロちゃんなら……ヒロちゃんなら訳してくれる』『教えてヒロちゃん!』

 

「そんなのわかるよ! クラフトは……クラフトはあれだよ。こう……掘る的な?』

 

『ああ……』『ピンクか後輩ちゃんかどっちか教えてやれよ』『ピンクは到着したばかりなんじゃないか?』『英語よわよわガール……』

 

 なんだよ英語よわよわガールって。

 ボクがまちがってるの?

 ピンクちゃんをチラっと横目で見ると、力強く頷いてくれた。

 

「今からヒロ友間でクラフトの意味は掘るということになったぞ」

 

 ピンクちゃん、そうじゃない……。

 

「知ってましたか? 最近の小学生は英語を習うってことを」

 

 命ちゃん……とどめを刺そうとしないで。

 ボクって小学生以下なのか。

 

「えっと、どういう意味なのか教えてよ。フリじゃなくてさ。本当の意味はなに?」

 

「クラフトは工作って意味だぞ」とピンクさん即答。

 

 ボクも遥か昔というほどでもないけど、高校時代の英語教育を思い出す。

 

「ああ、なるほどね……。そういう意味もあったよね」

 

「そういう意味しかないぞ」

 

「え、ああ、うん。そう……ヒロ友言語としてはそういう意味もあるんだよ」

 

「む……。そうだった」

 

『イキリ小学生』『かたくなに現実を見ようとしない小学生』『認知バイアス』『ピンクちゃんは生粋のアメリカンか?』『知らないことは知らないって言えるようになったらいいね』『そんなことよりゲームはよ』『ゾンビゲーでゾンビ避けスキルのヒントが得られるのか?』『おまえここは初めてか? 力抜けよ』『あ、いや。まさかこんな宝くじみたいな確率に当選するとは思えなくて』『百万人いてもコメントするのは一部だけなんだよな』

 

「まあクラフトの意味はわかった。わかりました! ともかくさ。このゲームは箱庭の中でいろんなものを創っていくゲームなんだ。ゾンビ要素はさすがに薄いかな」

 

『ゾンビゲー要素薄くて大丈夫?』『ヒロちゃんはゾンビゲーしないと死ぬ病じゃないの?』『あ、でも体重測定したりもしてたな』『ゾンビの科学的考察とゲームは切り離そう』『サメゲーはなさらないのですか?』

 

 なんだよサメゲーって。あるのかそんなん。

 

「時間いっぱいになりました。ちょっと接続するから待ってね」

 

『ヒロちゃんに接続したい』『おい消されるぞ』『あれ。あいつのコメントなくなってね?』『あ、本当だ。こりゃ消されたな』『まあ不穏なこといったらモロに国益に反するからなぁ』『ほんまヒロちゃん動画は地獄やで』

 

 ほんとに地獄だな。

 後ろから銃つきつけられながらコメント打ってないよね?

 そんなの嫌なんだけど。

 

「あ、それと――、今日から投げ銭機能を使えるようにしてみたよ」

 

 口座はマナさんに借りました。

 ぶっちゃけ、お金なんて意味ないと思うけど、想いをカタチにできる投げ銭機能っていいかなって思って。

 

『うおおおおおお。最速で最短で一直線にぃぃぃ! \50000』『\50000』『\50000』『なんだこれ。投げ銭に意味ないとわかってるのに止められねぇ。\50000』『あえて100円入れて逆に目立つ! \100』『10億ジンバブエドル』『もうねえよ!』『ヒロちゃんへの愛。プライスレス』

 

 やべえ。一時間くらいの配信で小国家並みのお金が入りそう。

 みんな投げ銭でコメントするのがデフォになるとそれはそれでコメントを拾いづらい。

 投げ銭機能はコメントを色つきで目立たせる効果があるけど、みんながみんな真っ赤だと目に悪いというかそんな感じだ。

 

「あの、この機能はお遊びみたいなものだから、みんなほどほどにね。みんながボクの動画にお金を入れてもいいって思ってくれてるのは、本当にうれしいんだけどね」

 

『うれしいってはにかむ姿がかわいい。\50000』『そういうとこやぞ』『わかったー(素直)』『ヒロ友がじゃぶじゃぶ課金したくなるような射幸心を煽りまくる説明文章を入力したい』『べつにゾンビ利権関係なく投げ銭はしていたと思う』『国家予算を全力投入してもいい。カネならいくらでもある』『おまえんとこデフォルト寸前じゃねーか。マジでやめとけ』

 

「ほんとに気持ち程度でいいからね!」

 

 さて、いつまでもゲーム開始前で停まっていても悪いから、そろそろ始めよう。

 

 実をいうと、電気が停まる前にチマチマと箱庭は作ってたんだ。

 サーバーをたててくれたのは命ちゃんだけどね。

 電気が止まってネットも使えなくなってからは当然接続もしてなかったけどようやく進められるよ。

 

 

 

 ☆=

 

 

 

「はい。接続できました」

 

 ワタクラの世界は、なんというかブロック構造体でできている。

 ボク自身のアバターも同じ。

 なんというか四角い感じなんだ。

 もちろん、それが深い味わい深さをかもし出してるかなぁ的な?

 

「えっとみんな見える? つながってる?」

 

『見える見えるぞ!』『見えます見えます!』『ここがヒロちゃんの"ワールド"か……ふっ彼女らしい可憐な世界だ』『中二病がおる』『特に初期からいじった様子はないな』『建造物はなさげ。初心者っぽい?』『つながってる。助かる』

 

「うん。見えるみたいだね。このゲームは始めたばっかりで、まだ何も創ってないんだけどさ。とりあえず、今日はピンクちゃんもいるし、ゾンビ避けできる建物を造っていこうかなと思います」

 

「ピンクはどうすればいい?」

 

 ピンクちゃんは急遽参加になったから、アバターも雑に髪の毛をピンク色に染めただけのものだ。金色おめめも完備。リアルには似つかないけど雰囲気でてる。

 

 そういえば、このゲームしたことあるのかな。

 

「ピンクちゃんはこのゲームしたことあるの?」

 

「工作は得意だぞ。リアルで荷電粒子砲とか、量子テレポーターとか作ったことあるから、このゲームもマクロ組んで自動で何か創ればいいのか?」

 

 それじゃゲームが違うよ!

 

「操作方法は知ってる?」

 

「知らないが、そのうち慣れると思うぞ。四十秒で準備できる」

 

「もしかして、このゲーム初めてだったり?」

 

「……? それがどうかしたか?」

 

「うん。ごめん。配慮が足りませんでした。ピンクちゃんがコントロールに慣れるまではボクが教えようか?」

 

「うん? おお……ヒロちゃんのいい匂いがする」

 

 席を近づけて、ボタンの操作を教えていくボク。

 ピンクちゃんの顔が近いけど、接触するほど近くないと教えることができないから。

 

『尊みがマックス値を更新しました』『後輩ちゃんを。後輩ちゃんを忘れないで』『後輩ちゃんがひたすら地面を掘っていってて草』『ヒロちゃんにかまわれないからすねちゃった』『ピンクちゃんが愛の手ほどきを受けている』『あれ、後輩ちゃんの動きが止まった……』

 

「待ってください。ピンクさんにはわたしが教えます」

 

 リアルで叫んだのは命ちゃんだ。

 

「お?」とピンクさん困惑の表情。「後輩ちゃんが教えてくれるのか?」

 

「わたしもこのゲームは猛練習しましたし、教えるくらいできます」

 

 命ちゃんもボクとゲームをするのを楽しみにしてくれてたんだ。

 ちょっとピンクさんにかまいすぎたかな。

 

「じゃあ、後輩ちゃんに任せるよ。ボクは素材集めするね」

 

「はい。任されました」

 

「ピンクちゃんもそれでいい?」とボクは聞く。

 

「ピンクは後輩ちゃんのことも好きだからいいぞ」

 

『ピンクがいい子すぎるな』『後輩ちゃんもかわいいと思いませんか?』『ヒロちゃんがまさかのぼっち』『ん。ちょま……え、ウソだろ』『どうした?』『あ……てぇてぇ』

 

 ウソだろというコメントが見て、ボクもすぐに命ちゃんとピンクちゃんの様子を目にいれる。

 そこには、ピンクちゃんを膝の上に乗せて、レクチャーしている姿があった。

 

 ピンクちゃんはべつに恥ずかしそうにしている様子はない。

 そんな羞恥心を覚えるような年頃でもないということなのか。

 

「先輩をとらないでくださいね」

 

「ピンクは後輩ちゃんとも仲良くなりたいぞ」

 

 なんの照れもない直言。

 命ちゃんは顔を赤く染めて、絶句している。

 んー。こういわれちゃうともう何も言えないよね。

 幼女が最強すぎる件。




ちなみに、ジュデッカもホミニスも架空の組織名なんで、実在する組織うんぬんとはなんも関係ないです。
国名は……ままえあろ。


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