あさおん・オブ・ザ・デッド   作:夢野ベル子

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ハザードレベル94

 話はちょっとだけ巻き戻り、配信の二十分前。

 

 久我さんはひとり――なんというか黄昏ていた。

 

 ほとんどのみんなが居室代わりにしている部屋か、あるいはホールでボクの配信に備えて待機しているというのに、久我さんだけは三畳くらいの大きさの端っこにある喫煙室で、タバコをくわえ片足だけソファに乗せて、(お行儀が悪い!)不良のように座っていた。

 

「はいお邪魔しまーす」

 

 ボクは容赦なく喫煙室に入った。

 久我さんは驚いて、ソファから飛びのくようにして立ち上がったけれど、こんな狭い部屋の中でどうこうできるはずもない。

 

 要するに念動力による拘束で一発アウト。

 ドラゴンボールでチャオズが最強といわれる理由がここにある。

 なにしろ攻撃動作すら入れないんだからね。超能力最強だよ。

 不可視の輪ゴムが身体ごと覆ってるイメージで拘束され指一本動かせない状態にある。

 

 久我さんはボクをにらみつけていた。

 

「なんのつもりだ?」

 

「あ、うん。ゾンビテロの犯人を捕まえようと思って」

 

「ゾンビテロの犯人? なぜオレが犯人だと思う」

 

「簡単だよ。目撃証言があるんだ」

 

「目撃証言?」

 

 実行犯がやったことを思い出してほしい。

 新鮮なゾンビ肉を役場内の人間が手に入れる方法は限られていて、ゾンビルームにいるゾンビさんたちを鉄パイプ槍で突き刺すことだった。

 で、考えたらわかることだけどさ、ゾンビって人間に抱きつきたくてたまらないという習性を持ってるんだよね。人間の出す音とかにおいにも敏感だし、要するに突き刺す際に必ずその人間を見ているはずなんだ。

 

 さて、ここで問題です。

 ボクってゾンビさんに対して何ができるでしょう。

 

 シンキングタイムは20秒。

 そーれ、わかちこわかちこー。はい終了。

 

 そう――、回復です。ゾンビから人間に回復させることできます。

 人間に戻ったら損傷が激しくなければ、ゾンビだったときの記憶も残るみたいなので目撃証言が残っている確率はかなり高いものと思われました。

 

 もちろん、元々ゾンビルームにいるのは犯罪者らしいので、葛井町長には回復していいかを確認したよ。胸に傷のあるゾンビさんは運がよかったということで人間に回復させて――、それからピンクちゃんデータから誰が犯人かの証言を得たわけですね。

 

 え、回復させたその人はどうしたかって? 

 ちゃんとありがとうってお礼をいってゾンビに戻してあげたけど。

 刑期というかなんというかゾンビの時間は半分にしてあげるって言ったら、わりとすんなり受け入れていたよ。

 ゾンビになってる状態って、思考しないで済むからそれはそれで楽ちんなんだって。

 これは刑罰として機能しないかもしれない可能性が微レ存?

 まあ、そういうのは全部、町長に丸投げした。ともかく大事なのは証言が得られたってことだ。

 

「そんなわけで、目撃証言があるから言い逃れはできないよ」

 

「オマエはそんな犯罪者の証言を信じるのか?」

 

「え?」

 

「ゾンビルームにいたのは犯罪者なんだろう。自分が罪から逃れるために適当なことを述べたとは思わないのか?」

 

「ああ。なるほど……」

 

 まあその可能性もなくはないけど、だからといってここまで容疑がかたまってると、拘束しないわけにもいかない。

 

「あとで言い分は聞くから、別室に移ってもらうね」

 

 もちろん、久我さんは不満の表情だったけど、ボクに拘束されている状態から抜け出すことはまず不可能だし、久我さんの身体を人形みたいに動かせば、嫌でも手足は前に進んでしまう。

 

 わっせ。わっせ。あ、念動力うまくいかない。赤ちゃんが人形をもてあそぶような感じで、空中でぐるんぐるんなっちゃってる。

 

「やめろっ! 自分で歩ける」

 

「じゃあ、自分で歩いてね」

 

 はっきりいうと、ボクは怒ってるんだ。

 

 ヒロ友のみんなをゾンビにして不安にさせて、久我さんはボクの配信も見ずに、ボクのことを知ろうともせず糾弾している。

 

 そう、鈴木さんと田中さんのふたりが自白した状況を思い出してみると腑に落ちるんだけど、ボクが配信しながらも、久我さんがその配信を見ているとは思わない口ぶりだった。

 

 久我さんが配信を見ているなら、そもそも『あの人に殺される』とか、そういう自白が成立している時点で無駄に終わる。ふざけんなオマエなに自白してんだよと殺されてしまう可能性が高い。でも、そうはならない、まだリカバリが可能だからこそあそこで田中さんと鈴木さんは言い争った。

 

 配信で情報が伝わるのでなければ、たとえ捕まってもあとから言い訳できるからね。

 

 ボクも久我さんが配信を見てないからこそ、ふたりが自白する可能性も高いかなって思ってたんだ。

 

 そんなわけで、今は取調室で最終確認中です。

 

 容疑はほぼ固まっているけど、どうせなら久我さんが嫌で不快でたまらない配信に無理やり出演させてやろうという粋な計らいだ。

 

 隣には命ちゃん。ピンクちゃん。そして、この町の代表者として葛井町長がいる。葛井町長にはボクの狐のお面を被せてあげた。顔にかけるのはまちがいだけど、くっそ似合うのはなぜだろう。

 

 

 

 ☆=

 

 

 

「さて、役者もそろったことだし、続きまして今日は世界初かもしれない取調べ実況配信をおこないます。出演者は実行犯のKさんです。宜しくお願いしまーす」

 

『草』『しかし目撃証言とはな……』『ポンコツじゃないヒロちゃんなんて』『どっちかというと後輩ちゃんかピンクちゃんの策じゃないか』『肝心の実行犯が映ってないやん。どうしてくれるのこれ』『刑事訴訟法をぶっちぎってるな』『いやそもそもゾンビルームって人権的にどうなん』『ゾンビという型枠に思考を閉じ込めるという点で禁固刑に近いんじゃないか?』『政府がガバってんだからしょうがないやろ』

 

「いろいろ思うところはあると思うけど、いちおう、容疑者さんの人権にも配慮して顔は見せません。あと、ここの責任者の町長さんにもきてもらいました」

 

「よろしくお願いしますねぇ……。ようやく犯人が捕まって僕も一安心ですよ」

 

『ねっとりボイスやめろ』『こいつが黒幕じゃね?』『どう考えても怪しさ満点やろ』『こいつが犯人でFA』『町長ってだけで怪しいわ』『町長……ふむ佐賀の町ってどれくらいだったかな』『詮索はNGだっつってんだろ』『でももうほぼ絞り込めてるんじゃないか。隔離地域も少しずつ広がってるわけだし』『ここが分水嶺ではある気がするなぁ……』

 

 ちなみに佐賀県には10の市と10の町があるよ。案外町も多いからまだ半分にしか絞り込めないね。でもピンクちゃんがやったみたいにボクの発言とかからプロファイリングしていけば絞りこむことは可能かもしれない。

 

 ヒイロゾンビという存在が明らかになったことで、干渉の度合いを早めるか。接触をしてくるかはわからないけど、普通に会いたいというんだったら会うのはべつにいいし……なんなら配信やSNSを使って連絡をとってくれたらそれでいい。ヒイロゾンビの情報が知れわたったのはさっきだから、今後どうなるのかはわからないけど。

 

「ではさっそくですけど、Kさん。あなたが犯人ですよね。認めますか?」

 

「……」

 

 久我さんはまったくもって無視していた。

 一言もしゃべらず、視線をあわせようともしない。ちなみに、今の久我さんはロープでグルグル巻きにして、パイプ椅子に固定されてます。身体検査も済んで武器になりそうなものは全部取り上げました。

 

「えーっと、ボクと話すのは嫌なのかな。ピンクちゃん?」

 

 とりあえず、探偵役のピンクちゃんに話を振ってみる。

 

「あー、ピンクとしてはおまえが自白しなくてもべつにどうだっていいぞ。おまえは十中八九ヒロちゃんのことが嫌いなアンチヒロちゃん派なんだろうから。おまえのアイデンティティを破壊するのなんて簡単だ」

 

 この幼女、鬼畜につき――。

 

「ヒイロゾンビにして、あえて解放すれば、味方が勝手に処分してくれるんじゃないか?」

 

 なんか三国志とか銀河英雄伝説であった気がする。

 捕虜をあえて何もしないで返すことで、裏切ったんじゃないかと思わせ、相手に処断させるという方法だ。

 

 えぐえぐだよ。

 

 視聴者の皆様もどん引きだ。

 

『おー、毒ピン毒ピン』『毒ピンのいつものご様子』『ヒイロゾンビになってしまったらもう普通には扱えんだろうな』『拘束かよくて……』

 

「ヒイロゾンビ?」

 

 久我さんがつぶやくように言った。

 そういや、久我さんはさっきの自白配信を見てないから知らないんだった。

 ここでも拘束中だったしね。

 

「ヒイロゾンビというのは、ゾンビに襲われず、よくわからないパワーに目覚めたゾンビっぽくない何かだよ。要するにボクのことなんだけど」

 

「オマエはそうやって自分の仲間を増やすのが目的だったのか!」

 

 顔をこちらに突き出し――首だけで飛び掛りそうな勢いだった。

 その様子だけで、もはや自白に等しい。

 でも、犯人かどうかが重要じゃない。こちらとしては犯人であるという確信はもう得られているに等しい。目撃証言もあるし、鈴木さんも実行犯だと告げてるわけだし。

 

 問題なのはなぜそうしたのかだ。

 つまり、久我さんの個人的な怨みなのか。それともジュデッカという謎の組織の関係なのか。

 意思を確認する必要があった。

 

「べつにヒイロゾンビを増やそうとはしてないよ。Kさんがやったみたいな方法で増やそうと思えば簡単に増やせただろうけど、人間には人間の尊厳があるだろうし――、増やすにしろ人間側がそうしたいって思わなければしないつもり」

 

『ヒロちゃんに感染したいです』『わが国にもヒイロゾンビを!』『何人か政府高官を送るというのがよさそうかな』『しかし、ゾンビと人間の区別がつかないとパンデミックが起こったときが怖いな』『え、でもヒロちゃんみたいになれるだけなら別にいいんじゃね?』『人間としての尊厳の問題はあるだろ』『血に穢れを混ぜるな』『緋色様の聖霊を身に宿すのです。なんの問題もありません』

 

 議論がグチャグチャになってしまってる。生配信で議論なんかできるわけもなくて、もうみんな言いたいこと思ったことをその場で瞬間的に投げている感じだ。

 

 犯人のことなんかわりとどうでもいいみたい。

 

「オマエは……人類の敵だ」と久我さん。

 

「敵ではないつもりだけど、そう考える人がいるのも知ってるよ」

 

 憎悪のこもった眼差しにボクはうんざりした気持ちになる。

 嫌いだとか好きだって気持ちはその人の感じ方だから、その感じ方自体を停止させることはできないけれど、やっぱり気が滅入ってくるよね。アンニュイ。

 

「敵だろうがなんだろうがかまわないんですがねえ……。なぜゾンビテロを起こしたんです」

 

 葛井町長が聞いた。

 町長としてはいちばん聞きたいところだろう。

 

「あ、当然だろう。そこのゾンビは人類を滅ぼそうとしている害獣だ。そしておまえらはけがらわしい害獣を囲っている。オレはわからせてやろうと思っただけだ。お前達といっしょにいるゾンビがどれだけ危険な存在なのか。ゾンビになって少しはわかっただろう? そいつを肯定するやつらは全員敵だ。腐った死体になって全員頭を撃ちぬかれて死ねばいい」

 

「発想がそこらのチンピラと同じですね。緋色ちゃんが人類に仇なす敵だというのは、まあ言ってみれば異種族ですしね。そう思う人がいたとしても話としてはわからないでもないですが、そのためにゾンビを増やすというのがどうにも矛盾してませんかねえ」

 

『そりゃそうだよな』『ゾンビテロ起こす時点で発想がゾンビだわ』『お気持ち案件か?』『というか、Kにとっては町のやつらは全員ゾンビなんだろ』『だが人類のことを考えてるというのも一考の余地ありなんじゃないか? ヒロちゃんアンチってわけじゃないけどさ』『ヒイロゾンビという呼称がよくない。ハイヒューマンとか天人族になるんだというのだったらもっと受け入れやすいと思うが』『名前とかどうでもいいだろ。要は人とは違う存在になるってことだよ』『利益しかなければクラスチェンジしてもいいだろうが』『ヒロちゃんのアンニュイ顔が加速しているからみんなやめよ?』

 

 久我さんは怨みを視線に乗せて、噛みつくように口を開く。

 

「お前達が人類を危機に陥れている。オレの考えはべつにオレだけのものじゃない。5万人近い自衛隊員がそいつを殺そうと狙っているんだぞ。わからないのか。これは民意だ。オレは尖兵に過ぎないが、民主主義的に正しいことをしている。オマエたちがやってるのは多数の意思を無視することだ」

 

「自衛隊は確か真っ二つに割れて、残り5万人は違う意見のようですが」

 

「そいつが世論をそちらに傾かせるように誘導したに違いない」

 

「単に配信活動を通じて、自分の考えを精一杯伝えようとしているだけだと思いますが」

 

「それがそいつのやり口なんだよ。ゾンビには感染能力がある。おまえたちはすっかりそいつに感染させられてしまい思考までゾンビと化してしまっているんだ」

 

「だそうですが?」

 

 町長がボクに話を振った。

 

「まあ思考感染ということだったら、ぶっちゃけみんなゾンビ感染しているし、もう手遅れだよね。しないけどさ」

 

「オマエを排斥したいと願っているのは人類の意思だ。オマエもすべての人間を操れるわけじゃないんだろう」

 

 この場で久我さんを哲学的ゾンビにするということはさすがにできないな。

 配信中だし。みんなを怖がらせることになるだろう。

 

「ボクがしないっていってもそっちは信じないだろうし、ボクとしてはどうしようもないよね」

 

「当たり前だ。唯一信じるとしたら、オマエやヒイロゾンビとかいうやつらが全員自殺すれば考えてやるよ」

 

 おうおう。邪悪な顔だこと。

 

「ボクだって隔離地域を拡大したりしてるし、科学的な実験だっていろいろしてもらってるよ。人類側が怖いっていうんなら、ヒイロゾンビは極力増やさないようにするし」

 

『ヒロちゃんって協力的だよな』『まあ少なくとも配信なんかしないで世界が滅びるのを待っていれば安牌だしな』『ヒロちゃんがその気になれば、ゾンビを回復させるついでにヒイロゾンビ化させれば世界救済RTAは可能です』『救済の時間が遅いのは人間側が怖がるからか……うーん、控えめに言って天使』『すこ』

 

「配信のコメントとか見ると、わりとみんな肯定してくれるみたい」

 

『笑顔がかわいいヒロちゃんであった』『ヒロちゃんの眷属になりたいのであった』『あの、もしかしてですけど、キスで感染というのもありですか?』『おまえ天才かよ。いますぐヒロちゃんに会いにいくぞ』『おまえはヒイロゾンビになったオレが感染させてやるよ』『アッー!』

 

 もうなにがなんだか……。

 でも、少しだけ気持ちが軽くなったよ。

 もちろん、ヒロ友だからっていう贔屓目はあるかもしれないけどさ。

 みんなもそれぞれに心があって、いろいろ考えた結果、肯定してくれてるんだと信じることができるから。みんながボクのことを信じてくれるから、ボクも信じることができる。

 

「くだらないな」久我さんは履き捨てるように言う。「そいつらは全員ゾンビだ」

 

「へえ……」

 

『ひっ』『ひえっ!』『ヒロちゃん怒ってる』『神力マシマシな格好でそれは怖い』『ヤンデレになっちゃう?』『ヤンデレは後輩ちゃんの特権だろいい加減にしろ』『でもオレらもゾンビ扱いか。もう何言っても伝わらんだろうな』

 

 葛井町長がクツクツと笑っている。

 まるで黒幕の笑いだ。

 

「それは君の考えなのかな?」

 

「当たり前だ」

 

「いや、よく伝わってないようだからもう一度言い直そう。君のその考え方は君の所属している組織の考え方なのか、それとも君自身の個人的主張なのかな?」

 

「組織とオレの主張は同じだ」

 

「なるほど、しかしそうだとすれば、自衛隊の半分はなぜこちらに攻撃してこないんでしょうね。あなたはここに来てから一度も外部に連絡をとらなかったんですか?」

 

「お前達を一斉に殺すための機会をうかがっているだけだ」

 

「残りの半分の自衛隊に牽制されているからこちらに来れないんでしょう。内戦状態になったらもはやどうしようもありませんからね」

 

「彼らは小山内に騙されてるだけだ!」

 

 小山内?

 

 その名前は聞いたことがないけど、知らないところでボクを助けてくれてるらしい。

 

「しかし、おかしいですねえ。君の主張だと、そもそもゾンビの味方をするのはゾンビ。だったら、5万人の対立している自衛隊のみなさんもゾンビということになってしまいます」

 

「……いずれは打倒するだろうさ」

 

「ところで、あなたは匿名掲示板のスレッドとかを覗いたことはありますか?」

 

「あ?」

 

「その様子だとなさそうですね。こんなご時勢だからこそ、ヒロちゃんのスレッドはたくさん立っているんですがね、その中でも【入間か】ヒロちゃんを守りたい。【小山内か】というスレッドがあるんですよ。ご存知ありません?」

 

 へえ。そんなスレッドがあるんだ。

 ボク関連のスレッドだけでもめちゃくちゃありすぎて正直全部は目を通せてない。

 小山内さんと入間さん。ふぅむ? よくわからん。

 

「このスレッドは自衛隊内の心情がよく表れてると思います。まあ簡単に言えば自衛隊という組織をひとりの人間と見立てれば、ひどい混乱状態で一歩も動けないといった様子です。入間さんという方と小山内さんという方が事実上組織のトップに立ってるみたいですけれど、あなたが先ほど小山内さんに騙されたということを言っていたということは、あなたは入間さんの命令でここに来たということになりますね」

 

「だからどうした」

 

「いやね。あなたはわりと入間隊長の側近に近い方だったのかなと思いまして……」

 

 そうなるのかな?

 よくわからないけど。

 

『ヒロちゃん話についていけてる?』『そんなことよりスマブラやろうぜ』『わが国が誇る最強の落ちゲーテトリスをやろう』『ヒロちゃんとテトリスしたい』『おまえらが変なこと言うからますますヒロちゃんが困惑してるだろ!』

 

「困惑というか……こっそり教えてくれると助かります」

 

 小声でみんなに意見を求める小心者なボクです。

 

『自衛隊は混乱中で大部隊は動かせない』『命令系統がぐっちゃぐちゃ』『シビリアンコントロールわけわかんない』『入間は総理大臣からの命令らしいが、その総理死んだしな』『え、死んだの? 知らんかった』『内閣総理大臣臨時代理がいま代わりぞ』『入間は命令の前内閣総理大臣の御遺志をみたいなこと言ってる』『ともかく、本丸に潜入している時点でエリートってこった』

 

 うーん。ボクって暗殺されそうになってたのかな。

 それにしたって、変な感じだけど……。

 

「あのー」ボクはおずおずと挙手をする。「だったら、Kさんってボクを暗殺しようとしてたんだよね。なんでカエレとか生ぬるい感じなの?」

 

「はっ。オマエは本当に何もわかってないガキだな。あれはオレがやったんじゃない。この町役場の中にもオマエに思考感染されず、オマエを排除したいやつらはたくさんいるんだよ!」

 

 え?

 

 そうなの?

 

『ヒロちゃんショック』『ウソかもしれんぞ。かまうな』『どうせ最後のあがきだろ』『でも行動からすると確かにカエレは変だよな』『Kの任務はおそらく監視だろうからな。本当に帰っちゃったら困るというか』『だったら、やっぱり犯人は別じゃねえか』

 

 あ……そうなの?

 なんだか久我さんが全部やったんだと思って、ボクが嫌われているのは久我さんだけだと思って安心してたんだけど、それは誤りだったみたい。

 

 じんわりと胃のあたりが冷たくなってくる気がする。

 ボクは誰かに嫌われている。知らないところで誰かに。




自分の能力的には結構ギリギリの線で推移してます。
事態が複雑になりすぎて、ほんわか配信に戻りたひ。

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