あさおん・オブ・ザ・デッド   作:夢野ベル子

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ハザードレベル96

 ようやく開放感。

 久我さんへの取調べもおしまい。配信もいったん終了。

 

 終わり際に幼女先輩と電話番号の交換しちゃった♪

 

 いざというときは駆けつけるってすごい力強い言葉もいただいちゃったし、ボクはうれしさのあまりに小躍りしちゃった。配信の切り抜き動画で『MPを吸い取られそうな踊りを踊るヒロちゃん』とかいうタイトルをつけられちゃったけど、風評被害だよ!

 

 でもまあ――。

 

 魚の骨が喉の奥に刺さったかのような気持ち悪さもとれたような。

 あるいは花粉症とかで鼻が詰まっていたときに、不意に空気が通ったような爽快感を覚えたのは事実だ。いや、実際はすべてが明らかになったわけじゃないから、そんなに小学生並の安易さで安心しちゃいけないんだろうけど、ひとまず当面の問題は解決したといっていいだろう。町役場内のトロイの木馬とウイルスはいずれも隔離されて、町のみんなも少しは安心できたかな。

 

 久我さんはとりあえず拘束することになりました。

 

 ゾンビにはしなかったよ。高度な政治的配慮ってやつだ。実際にジュデッカがどういう意図なのかさっぱり明らかにならなかったんで、必要以上に事を荒立てると逆に危ないという意見が強かったから。

 

 それに――。

 ヒイロゾンビのこともある。

 

 今のところヒイロゾンビに対する意見というのはなんともいえない感じだ。いくつかのスレッドで既にピンクちゃんのデータを洗い出ししているみたいだけど、専門的すぎてよくわからない。

 

 ゾンビを一種のロボットのように考えて、人間とは似て非なる存在だという見解もあった。ゲーデルの不完全性定理からチューリングテスト。それから、一種の神託装置として起動する器官なき身体。うーむ。ぜんぜんわからん。この発想ってたぶんボクの持つ超能力から来ているんだと思う。どうして現象をねじまげることができるかの推察を一種の演算による現実改変だと考えている理論。その第一人者がピンクちゃんだったりするわけで。

 

 優秀で気が利く命ちゃんがいくつかの小論を英語よわよわなボクのために翻訳してくれている。

 

 だけど、結論はいつもひとつ。

 ヒイロゾンビへの印象は()()()()()()()()()()()()()とみていいだろう。

 ボクは基本的に優しい態度をとったほうがいいと思う。

 自分自身を守るためにも。それに何人かのヒイロゾンビを守るためにも。

 

 そして会議室で今日の配信をマッタリとふりかえっている。

 マナさんが作ってくれた手作りのプリンを食べながら、黄色い暴力の前にボクは早くも負けそうになっていた。

 

「ご主人様のトロ顔……使える」

 

 やっぱりマナさんって料理上手だね。少ない材料で的確にボクのツボを押して来る。これでロリコンでなければ完璧なんだけど、人の性癖ばかりはどうしようもないからね。献血ポスターで後輩キャラから煽られるのに性欲を持て余す人もいるかもしれないし、小さな女の子が好きな女の人がいてもおかしくない。

 

 そういやマナさんみたいな人って、自分が小学生女児だったときには、自分に興奮してたりするのかな。

 

 哲学――か。

 

 ヒイロゾンビだらけの会議室で、命ちゃんもボクもピンクちゃんも黙々とスプーンを進めている。おいしいと、基本無言になる説がますます補強されて、マナさんは主にボクとピンクちゃんを交互に生暖かい目で見ている感じだ。

 

 まあ、見るくらいはいいよ。このプリンに免じて許してあげる。

 そんなふうに傲慢にも思っていると、ニヤニヤ笑ってくるマナさんでした。

 

 数分後に食べ終わったあと、ボクはピンクちゃんに問いかけた。

 主題はいちおう反省会だからね。

 

「ねえ。ピンクちゃん」

 

「ん?」

 

 おっきめなキノコみたいな帽子にピンク色をした髪の毛。

 そしてボクを見上げてくるまんまるの金色おめめ。

 この子もヒイロゾンビなんだよなぁ。

 

 なんともいえない罪悪感というか、残念感もあるような。

 ボクは勝手にピンクちゃんが人類サイドに立ってくれるものだと信じていたから。

 まさかボクと混ざっちゃうとは思わなかったから。

 ピンクちゃんと距離が近づいたのはうれしくもあり、でもピンクちゃんが他者として好きだといってくれたのが、よくわからなくなっちゃったのは残念でもある。

 

「いまさらだけど、ピンクちゃんってヒイロゾンビになってよかったの?」

 

「なにが問題なのかわからないな」

 

「えーっと、ほら、ヒイロゾンビって異種族だよね。厳密には人類じゃなくなってるんじゃないかな。例えば――、他の国とかはよくわからないけど、入国審査のときに手の平に針かなんかを刺してさ、再生力が高かったらヒイロゾンビ。そうじゃなかったら人間みたいに区別されるかもしれないでしょ」

 

「差別される可能性か。あるだろうな」

 

 わざわざ言い直すピンクちゃん。

 やっぱり頭がいいな。

 ふるふるとおっきな頭を振る。

 

「あるだろうが、どうせそんなものは多数決の問題に過ぎないぞ」

 

「そうなの?」

 

「そうだぞ。ヒイロゾンビが増殖すれば、何もいえなくなるやつばっかりだぞ」

 

「もしも人類側に対して、譲歩しようとするなら、ヒイロゾンビはあんまり増えないほうがいいんじゃないかな」

 

「ヒロちゃんはヒイロゾンビを増やさないほうがいいと思ってるのか?」

 

「ヒイロゾンビになってもいいって人ならべつにいいと思うんだけど、こうなんというか、なし崩しはヤバイような気がするというか。そもそもゾンビもどういう存在なのかわかってないから、なにをどうやっても忌避感はあるんじゃないかな。天から降り注いだコンピュータウイルスなんだって説もあるみたいだし」

 

「それは自分の制御をはずれるのが怖いということか?」

 

「そうかも。うん。そうだよ」

 

「後輩ちゃんが言ってたように、ヒロちゃんが独占するのはかえって危ない面もあると思うぞ。ゾンビに襲われなくなるお手軽な方法がひとつ増えたってだけで、人類側はリスクマネジメントするから好き勝手やらせとけばいい。ヒロちゃんからしかヒイロゾンビになれないという状況より、誰か適当なヒイロゾンビから血を分けてもらえればヒイロゾンビになれるという状況のほうがこちらとしてはリスクが少ない」

 

「まあそりゃそうだろうけど、ヒイロゾンビは自由意志があるんだから――、例えば好き勝手に増えるかもしれないよね」

 

 ピンクちゃんみたいな例もでてくるかもしれない。

 ボクにカプって噛みついてきたら、超能力をつかって対処できるかもしれないけど、まだヒイロゾンビになりたてのピンクちゃん自身は、幼女だしそんなに抵抗できないっていうか。

 

 そうだよ。たとえばピンクちゃんが浚われたらどうすればいいんだ。

 

「自由意志があるなら、なにかあってもそいつの責任だぞ」

 

「でもいわば、ボクが最強のコンピュータウイルスでもなんでもいいけど、それを持っているなら、ボクが管理者だよね。ボクの責任もあるような気がするんだけど」

 

「管理者権限を持ってない人間が他人のパソコンを好き勝手使ってウイルスを拡散させたりすることもあるから、べつにヒロちゃんがアドミニストレイターだからといって全部の責任を負う必要はないぞ」

 

「そうかなぁ」

 

「そうだぞ。不思議な力を持ってるからって――、人類を救える力があるからって、イエス様みたいに人類を救わなきゃいけないなんて思う必要はないぞ。むしろ、イエス様自身はみんなといっしょに配信を楽しんでほしいって思っていたのかもしれないしな。ピンクはヒロちゃんが配信を純粋に楽しんでくれたら言うことはないぞ!」

 

 ピンクちゃんがヒイロゾンビになったのは、ボクの責任感を軽くするためだ。

 

 でも、ボクはヒイロゾンビの位置をこんなにも強く把握できる。

 

 それはゾンビの比じゃない。

 

 ボクの管理者権限は強力だ。

 

 たとえば――、しないし言わないけど。

 

 ボクはピンクちゃんを瞬時に自分の意に沿わすこともできるだろう。

 

 どこまで把握できるかわからないけど、ボクは今のところヒイロゾンビになった人がどこにいるのか把握できる。例えばゾンビ荘のみんながどこにいるのかわかっちゃう。

 人間、ゾンビ、ヒイロゾンビの順で、ボクはなんとなく情報の中継地点になってるような感じなんだよなぁ。ボクからは他人の考えとかは読まないように、たぶん無意識にしているんだろうけど、わりとボクの脳内妄想の類は、緩やかに伝わってる感じがするんだよね。そのうち、ファミキチくださいごっこができるかもしれない。

 

「こいつ直接脳内に♪」

 

 うん。マナさんはもう規格外だよ。

 

 そしてもう一つ。

 ヒイロウイルスの情報網から必然的にわかっちゃうこともある。

 

「ねえ。ピンクちゃん。ヒイロゾンビを増やしたりした?」

 

「ママとおやすみのキスしたら、ヒイロゾンビが増えた気がする……」

 

 ほらぁ。やっぱり!

 

 なんか変な感じがしたんだよ。

 

 いつのまにやら佐賀からだいぶん西のほうの、具体的には長崎の五島列島あたりにヒイロゾンビの気配がいきなり出現するんだもん。ピンクちゃんとほぼ同座標でひとり増えてて、マジかと思ったけど、もうどうしようもないし、それがピンクちゃんとその人の意思なんだったら否定はしないけど。

 

 でも、人間側がどう考えるかわからないしな。

 それが怖いんだ。

 

「当座はヒイロゾンビが各国にひとり派遣されるようなカタチにすれば、人類救済としては十分なんじゃないか? 誰か覚悟のあるやつがヒイロゾンビになって、国はそいつを保護すればいい。救国の英雄になるんだから悪いようにはしないだろう」

 

「自分もなりたいって人がでてくるかもしれない。いつのまにか誰がヒイロゾンビなのかわからなくなって、国は事態を重く見てだれかれかまわずヒイロゾンビを排除したりとか……」

 

「まあそうなったらそうなったで、ヒロちゃんはこの国内での立ち位置を確立していれば問題ないんじゃないか。ヒイロゾンビを排除するような国がこの先生きのこれるとも思えないしな。ちなみに――ホミニス内にもゾンビになった職員が何人かいたんで、ピンクが治しておいたぞ。ものすごい勢いでよしよしされたんで、ピンクはうれしかったぞ」

 

 なんだこのカワイイ生命体。

 

 ゾンビからの復帰は問題がないように思う。

 でも外部からはヒイロゾンビもゾンビから戻った人間もなんらかの交じりもののように捉えられる可能性はある。

 ウイルスに感染し発症した一度ゾンビになった人間は、ボクたちがウイルスを排除したって主張しても、そうは思わない人がいるかもしれない。

 

 でもそんなことを言い出したら、ゾンビになった人間は一人残らず殺さないといけなくなるしなぁ。人類の大多数は――実際に言葉を交わせる以上はゾンビから戻った人間は人間であると思うんじゃないだろうか。

 

「って――、ピンクちゃんってなんかヒイロゾンビの中でも強いよね。ゾンビからの回復って今のところピンクちゃんがボク以外で始めてだし」

 

「ん……ピンクも治したいと思ったらできた感じだぞ。それに……ほら」

 

 その場で椅子から立ち上がり、ふわーんと月の表面を跳躍する宇宙飛行士みたいにゆっくりと空を舞うピンクちゃん。まだ重力には負けているけど、すこし抗ってる感じ。

 

「重力制御している!」

 

 驚きでいっぱいです。

 

「ピンクちゃんもご主人様に近づいてまいりましたねえ。これは命ちゃんもがんばらないといけませんね」

 

 マナさんがなんかよくわからない煽りをいれる。

 

 命ちゃんはクールないつもとかわらない無表情顔だったけど、お兄ちゃんとしては見過ごせない。なにげないふうを装った髪のサイドテールをいじいじする動作。

 

 ひそかに焦っているときの行動パターンだ。

 

「わ、わたしもそれぐらいできますし」

 

 バレバレだった。

 

 命ちゃんもけっこうかわいいところがあるからな。

 

「あのさぁ……、命ちゃんって前にドローンとかと遭遇したときに、どうやったら浮けるのかわからないって言ってたよね?」

 

「いいましたけど。あのときは常識という厚い壁がありました。わたしも浮いてみせます!」

 

 命ちゃんも椅子から立ち上がり、鳥のように羽ばたいて見せる。本当に鳥のようだ。セピア色の動画とかで記録に残っている。ライト兄弟以前の飛行機みたいに。

 手のひらをはためかせている。

 

 が……ダメ。

 

 経験値が足りないのか、それともいまだに常識という名の壁が厚いのか。

 ><な顔つきで必死になっているんだけど、ダメでした。

 

「哀れな後輩を笑ってやってください……」

 

「あ、あの……なんというか……惜しかったよ。ナイスファイト!」

 

「むしろ、フォローされたほうが心にきます」

 

「ピンクとしてはなぜできないのかのほうがわからない。その……すまない。力になれそうにない。後輩ちゃんができるようになるのをピンクは願うものだ」

 

 ピンクちゃんの言葉にとどめをさされて、命ちゃんはガックリしてました。

 

 でもお兄ちゃんとしては、むしろいいことだと思ったりもするんだよな。

 

 命ちゃんもピンクちゃんも天才だし、似たようなタイプだといえる。

 他人がなぜできないのかわからないタイプなんだろう。

 でも、命ちゃんにとっては初めての挫折だったのかもしれない。

 

 挫折は人を大きくするよ。ボクはむしろちっちゃくなっちゃったけど。

 

「わたしも練習します。ピンクさん教えてください!」

 

「いいぞ。まずは気球の気持ちになってみるんだ。気球になれ後輩ちゃん」

 

「はい、わかりました」

 

 ヒイロゾンビどうしって結構仲がいいよね。

 ヒイロゾンビだからかなぁ。

 

「ご主人様のことが好きな人どうしですからね。いわば同志なのですよ」

 

 そんなものなのかな。

 

「そんなものなのです」

 

 いつものようにマナさんにすんなり説得されてしまうボクでした。

 

 

 

 ☆=

 

 

 

「で、それはいいんだけどさ。そろそろ教えてよ」

 

 ボクが聞いたのは当然『カエレ』の文字の犯人についてだ。

 配信時にはいろいろと明らかにするとマズイのかなって思って聞くのを我慢していたけれど、ボクだって真相が知りたい。

 

 場合によっては、次回配信のときにヒロ友のみんなに説明しないといけないかもしれないし。

 

「そうだな。ヒロちゃんも知ってたほうがいいかもしれないな」

 

 ピンクちゃんが命ちゃんへのレクチャーをいったん止めて、ボクのほうに振りむいた。

 どうやらピンクちゃんが教えてくれるようだ。

 

「ピンクはこの町役場にいる人間全員に事情聴取をした。そのときから違和感があったのが『カエレ』という文字と、ゾンビテロとの関係だ。『カエレ』が文字通りの意味で達成されてしまったら、ゾンビテロは起こせないしな。もちろん、エスカレートしてということも考えたのだが」

 

 そのあたりはボクも考えてました。

 そもそも発想としては誰が犯人か――フーダニットではなく。

 どうして犯行に及んだのか――ホワイダニットを重視していたから。

 

 動機からすると、なんか矛盾しているように思えたし、なんか変だなぁと思ってたんだよね。

 ピンクちゃんが言うように、最初は小さな犯罪で、気が大きくなってやりすぎちゃったのかなとも思ってたんだけど。

 

「実を言うと、いろんな証言を聞いてるうちに、ひとりだけ妙な証言があったんだ」

 

「妙な証言?」

 

「杵島未宇……」

 

 ピンクはボクに言い聞かせるようにその名を告げた。

 未宇ちゃん。

 耳が聞こえない十歳くらいの女の子。

 いまではおばあさんの犬のお世話をぼっちさんといっしょにしてくれているらしい。

 

「その子がまさか犯人?」

 

「あ、いや違う。そもそもあのカエレの文字は未宇の身長じゃ届かないぞ。脚立は外になかったし、いくらなんでも持ち出そうとしたらバレる」

 

「そりゃそうか。未宇ちゃんが何か言ってたの?」

 

 正確には手話か筆談だろうけど。

 耳が聞こえない未宇ちゃんはすごくおとなしい子で、あまり口を開かない。

 発声ができないんじゃなくて、自分の声が聞こえないから、変なふうに聞こえるかもしれないと想像してあまり言わないんだって。

 

 前にぼっちさんも言ってたけど、世界が隔絶しているようなそんな感覚があるんだろうと思う。

 でもそれは、必ずしも寂しい世界じゃなくて、雨宿りをしているような暖かなシールドなんだ。

 

「未宇はおそらく外に出ている可能性が高かったんだ」

 

「カエレの文字が書かれたときに?」

 

「そうだ」

 

「つまり犯行現場を目撃していたということ?」

 

「そうだ」

 

「どうして未宇ちゃんが目撃していたってわかったの?」

 

「直接の目撃証言はなかったんだが……、グランマが覚えていたぞ。未宇が犬を洗いたいって身振りで伝えてきたって」

 

「ぼっちさんといっしょじゃなかったの?」

 

「いっしょじゃなかった。未宇としては犬の世話は自分がしたいことだったんじゃないか」

 

 うーん。なるほど。

 そういやワンちゃんがいつのまにかフローラルの香りになっていたな。

 ぼっちさんか未宇ちゃんが洗ったんだと思ってたけど。

 

「屋上で洗ったんじゃないんだね」

 

「屋上は外に行くのと比べて段違いに人に見られやすいからな。それに屋上で水を得るには貯水タンクを開けないといけない。未宇の握力じゃたぶん無理だ」

 

 あのバルブハンドルみたいなのを、小さな子どもが回すのはめちゃくちゃ大変だろう。

 かといって、屋内の水を使ったりするのもNGだったんだと思われる。

 だって、貯水しているといってもみんなで使って一ヶ月かそこらぶんしかなかったんだ。

 

 みんな節水をがんばっていた。

 生存にかかわりのない犬を洗うということにたいして、みんながどう考えるか。

 非難されるかもしれない微妙なラインだったんだろう。

 

 だから、外でこっそりと――。

 たぶん、たいした水の量じゃないとは思う。

 ポメラニアンの小さな身体を洗うぐらいだ。二リットルのペットボトルでも十分。

 

「じゃあ、未宇ちゃんが犯人の名前を伝えたんだね」

 

「んー。違うぞ」

 

「え、違うの?」

 

「状況から考えて、未宇が犯人を目撃していたのは確かなんだが、誰か見なかったかという問いに対して、未宇は誰も見ていないと答えたんだ」

 

 ふぅむ?

 

 頭がこんがらがってきた。

 

「マナさん。糖分が必要だよ。プリンのお代わりってあるのかぁ」

 

「いっぱい食べるご主人様も大好きですが、カロリー抑え目の杏仁豆腐にしましょうね」

 

 ごそごそと保冷バックから取り出したのは、三分クッキングの要領で既に作られていた甘味どころでした。

 

 さすがマナさん、ボクのこころをわかってくれている。

 

 こころ……か。

 未宇ちゃんは犯人を見ていた。

 でも、誰も見てないとピンクちゃんに伝えた。

 これって――、犯人を庇ってるのかな。




こっそりひとり増えてました。ヒイロゾンビ。

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