Trinity Fieldを観て思うところがあって脳内の加蓮と話していたらいつの間にかSSが出来上がってしまいました。
オリジナルPとのSSになりますがどうぞよろしくお願いいたします。
夜の他に誰もいないオフィスにぽつんと残されたように俺は一人自席に残っていた。本当は今日チームで忘年会があったのだがそんな気分になれず一人で残っていたのだった。
昼間に頂いたこの前の公演の写真をまた見ていた。写真を見るたびにあのナゴヤドームのTrinity Fieldのことを思い出す。照明で作られた三角錐とそれが広がる光景、会場全体が震えるような観客の熱気と大歓声、そして満員のドームの中で感情をむき出して全力でぶつかり合うようなパフォーマンスをする三人の姿。
目を閉じるだけで最高としか思えないあの瞬間が思い浮かぶ。だけど同時に担当アイドルが俺には届かないような高みに行ってしまったような気がして寂寥を感じてしまうのも確かだった。
「あれー、プロデューサー一人だけなんだ。黄昏ちゃってどうしたの?忘年会行かなかったの?」
「お疲れ様、加蓮。なんだかみんなと飲む気になれなくてな」
仕事を終えて制服に着替えた加蓮が入ってきた。
「そっかー。あっこの前のライブの写真! ねっ、プロデューサーさん、ナゴヤドームのライブどうだった?」
「あ…うん。もちろん最高だったよ!」
「ふーん……」
加蓮はどこか見透かしたような目で俺をみてくる。
「……本当にそれだけ?」
思わずギクッとしてしまう。
「あはは、本当にプロデューサーさんはわかりやすいよね!!」
10以上年下の女の子にそう言われると憮然とするしかない。
「本当は私がどこか行ってしまうようでさみしいとか思っているんでしょ?」
「…………」
何も言い返せなかった。
「あれっ? もしかして図星?」
加蓮はちょっと気まずそうな目で俺をみてくる。
「ちょっと場所を移そうか」
それを言うのが精いっぱいだった。
事務所の広い庭を二人で歩く。クリスマスが近いため事務所の庭もイルミネーションで彩られていた。
「こうしてイルミネーションの中を歩くと昔を思い出すよね」
「大丈夫?寒くないか、加蓮。 一応カイロ持ってきてるぞ?」
「ふふっ、もう、おおげさ! でも、ありがとうね。大丈夫だよ。もう昔とは違うんだし」
「そうだよな。もう昔とは違うんだよな」
「どうしたの?プロデューサーさん。なんだかさみしそうな顔しちゃって」
俺はポツリポツリ話しはじめる。
「今年の加蓮の活躍、本当すごかったなって思って。総選挙だっていいとこ5位くらいかなって思ってたんだけど全体3位になって、前は『今さら人見知りとか…笑っちゃうよね。』って言ってたのに今まであまり関わりがなかった事務所のアイドルとも関わるようになって、本当今年の加蓮をみてるとすごく成長したんだなって感じるんだ。」
俺は続けて話す。
「それにナゴヤドームのTrinity Fieldのパフォーマンスには一人の観客として魅了されたんだ。もう手が届かないところに行ってしまったのかなって正直思っちゃうほどにね」
「プロデューサーさん……」
無言の時間が流れる。
「……確かにプロデューサーさんが言う通り私は変わったのかもしれない。でも変わることができたのはきっとプロデューサーがいつもそばにいてくれるからって信じられたからだよ」
「……そうだといいんだけどね」
「私が言うんだからまちがいないよ。ねぇプロデューサーさん、Trinity Fieldのお披露目ライブで私が言ったこと覚えてる?」
「どれのことだ?」
「『私たちが三角錐なら、最後の頂点は、プロデューサーさんでしょ』ってやつ。その気持ちは今も変わらないよ。私たち3人だけではあのステージには立てなかった。プロデューサーさんがいつも見守ってくれて支えてくれると信じられたからあのステージに立てたんだと思う。凛も奈緒もそれは同じだと思うよ」
「加蓮……」
「なーんてね!なんかクサいこと言っちゃってるな、私。 もう!プロデューサーが悪いんだよ?せっかく私たちが最高のステージをみせたのにさみしそうにしてるんだから!」
「あはは、そうだな!でも俺が三角錐の最後の頂点っていう柄じゃないなー」
「えー、じゃあどこならいいわけ?」
加蓮はぷんすかと口をとがらせている。
「だって加蓮と奈緒と凛が下で三角形を作っているとしたら三角錐の最後の頂点って一番てっぺんの頂点になるだろ?」
「いいじゃん、別に。プロデューサーさんがてっぺんにいてもさ」
加蓮は上空の三角錐のてっぺんで浮かんでいる俺の姿を想像したのか笑っている。
「三角錐って四つの三角形が合わさってできているだろ?ステージからみえる三角形の面に加蓮と凛と奈緒がいて、俺が一番下の面で三人を支える。それが俺のいる場所に一番ふさわしいかなって」
「そーだね。でもプロデューサーさんも結構クサいところあるんだね。ふふっ」
「うっさいな、もう!」
お互い無言だけどやさしい時間が流れる。
「プロデューサーさん、だいぶ元気になったんじゃない?」
「そうだな」
「私に勇気づけられたお代、高くつくよ?なんてね」
いつも通りのからかう口調になっている。俺と加蓮は湿っぽいよりやっぱりこういうほうがいい。
「ありがとな、加蓮」
「どうしたの?改まって」
加蓮はきょとんとしている。
「おかげで大事な目標を思い出したんだ」
「なーに?」
加蓮はニコニコしながら聞いてくる。
「見たい景色と加蓮といっしょに見に行きたい景色があるんだ」
「どういうこと?」
加蓮は相変わらずニコニコしていた。
「ひとつは広いドームの中のセンターステージで加蓮が『薄荷 -ハッカ-』を歌う姿をこの目に焼き付けること。広い会場いっぱいに満員のファンのサイリウムの煌めきに包まれながら加蓮が『薄荷 -ハッカ-』を歌ったらきっとすごく綺麗な景色が広がっているんだろうなって思ってて」
「そしたらいつかの涙の粒も希望の星になっちゃうかもね」
加蓮はクスクス笑っている。
「それでもう一つは?」
「加蓮がシンデレラガール総選挙で1位になってシンデレラガールになること。今の加蓮ならいつか1位になれるって思っているんだ。その時に担当アイドルがシンデレラガールになった景色をそばでいっしょに見たいんだ。」
「………」
「どうしたんだ?」
「正直前回のシンデレラガール総選挙の3位という順位には実感わくようで、わかないようで。でも授賞式の時にみた菜々ちゃんの顔をみたら私もシンデレラガールになってみたいなと思って。ねぇプロデューサーさん、私なれるかな?シンデレラガールに」
「もちろん。『トップアイドルになる…戸惑いもあるけど…自分で決めた道だから』なんだろ?だったらしてみせるのが俺の努めだしな」
「それじゃあ私も『プロデューサーさんは最高のプロデューサーだって、証明してあげる』んだから!」
「ははは」
「ふふっ」
お互いに笑ってしまう。
「昔は夢を諦めていた私だけどさ、プロデューサーやみんなのおかげで夢を追いかけることができて、アイドルになるという夢がかなって、そしたらどんどん夢が広がって、ついにはドームの舞台にも立って」
「でもここで立ち止まるわけにはいかないだろ?」
「そうだね。こんなところで立ち止まっていたら凛と奈緒に置いて行かれそうだし。最近の奈緒ってすごいんだよ!ちょっと気を抜いたらどんどん置いていかれるなって思うんだ。
「そうだな」
「だからこれからも私は立ち止まらないつもり。ふたりが大きくなったぶん私も大きくならないとTriad Primusの三角形はすぐに崩れるから。それにプロデューサーも本当は思っているんでしょ?私もTriad Primusももっと高く羽ばたいていけるって!」
「もちろん。そしたら俺も立ち止まるわけにはいかないな!こんなところで立ち止まっていたら今度こそ加蓮に置いていかれちゃいそうだし。」
「そうだよ!今度私に置いていかれそうってプロデューサーが思ったら本当に置いていくし全力でビンタするんだから!」
俺は加蓮にビンタされるときのことを想像する。加蓮なら絶対全力でビンタしてきそうだ。バチーンと大きな音がしてめちゃくちゃ痛いやつを俺にくらわせるに違いない。
「ハハハ、それは勘弁してほしいな」
「さーて、仕事に戻るとするか!加蓮をシンデレラガールにするって決めたからバリバリ仕事頑張らないとな!」
オフィスに戻ろうとすると加蓮がスーツのそでをつかんできた。向き合って加蓮の目をみつめる。まるでスノードームのように加蓮の目はキラキラしていた。
「ねぇ、プロデューサーさん。最後に一つだけ言わせて」
「何?」
すっと息を吸って加蓮が言う。
「これからも二人三脚で歩いていこうね!!どこまでも!いつまでも!!」
「もちろん!」
きっと加蓮はあの最高としか言えなかったナゴヤドーム公演すら通過点にして、もっと高くもっと遠くへ羽ばたいていくだろう。少し落ち込んでしまっていたが加蓮と話してだいぶ勇気づけられた。きっと加蓮ならシンデレラガールにもなれるだろうし、もっと先へと羽ばたいていけるはずだ。だとすれば俺のやることは一つしかない。どこまでも羽ばたこうとする加蓮を全力でプロデュースするだけだ!加蓮といっしょに二人三脚で!
人生で初めてSSを書いてみました。
作品を生み出すのってすごく大変だと実感しましたし、世の中のSS作家は本当にすごいんだなと改めて感じました。
小説の作法も知らずに勢いで書いたため不備があれば教えて頂けると幸いです。
次回作があるかどうかは全くわかりませんが、機会があれば次回もどうぞよろしくお願いいたします。