長年一緒に住んでいた銀時と人知れずファイナルファンタジーになっていた神楽。
その上更に彼との子供までお腹に宿す事となり、遂に銀時も重い腰を上げて責任を取ってくれることに
しかしそう自分で言ったクセに、未だにその責任、延いては籍を入れるという事を散々渋る始末。
責任感の欠片も無いゲスの極み銀時に呆れた神楽は、遂に最終手段に移ったのであった。
あくる日、神楽は銀時を無理矢理連れ、電車を使ってある場所へと来ていた。
それは前々から電話越しでいつか挨拶に出向くと言っておいた志村邸。
「よく来てくれたわね神楽ちゃん、いつ遊びに来てくれるのかとずっと待っていたのよ」
「ごめんねアネゴ、銀ちゃんを引っ張って来るのに時間掛かっちゃって」
「いいのよ別に、私はまた元気な神楽ちゃんに会えただけで満足だわ」
彼女を笑顔で迎えてくれていた人物はこの家に住む、志村妙。神楽にとってはまさに姉的存在で心優しき女性だ、怒ると怖いが。
現在は次世代のかぶき町の女帝と呼ばれるようになり、多くのキャバ嬢を従えるドン的な存在にまで上り詰めている。
「それよりお腹の方は大丈夫なの?」
「順調に育ってるってお医者さんに言われた、でもまだ2カ月だから詳しい所まではわかってないみたいだけど」
「あらそ~ところでちゃんと食べてる? なんなら安定するまでしばらくウチにいてもいいのよ? 沢山食べさせてあげるから」
「だ、大丈夫……銀ちゃん相変わらず稼ぎもロクに無いけど、一応私の事を気遣って食費の方はちゃんと押さえてるみたいだから……」
志村邸の客室でテーブルを挟んで向かい合いながらお妙に近況報告をする神楽。
彼女にこの家でゆっくり養生し、その間自分が食事を出してあげると笑顔で言ってくれたお妙であったが
彼女の創造する独創的な料理は昔から何度も味わって死にかけているので、頬を引きつらせながらやんわりと断る神楽であった。
「この状態であの暗黒卵焼きを食べたら流石に洒落にならないわ……」
「なんか言った?」
「何も言ってません!」
「それより神楽ちゃん、ちょっといい?」
「はい!」
そっと目を逸らしながら小声でボソリと呟く神楽に対し、お妙は改めてちょっと遠慮しながら尋ねた。
「あの、こんな事を私が聞くのは野暮ってモンだと思うんだけど、結婚式とか挙げる予定はあるのかしら?」
「あーそれは難しいと思う、私はやろうがやらまいがどっちでもいいんだけど、銀ちゃんはあんま私との関係を大々的に公開したくないみたいだし、それに私達お金の方もあんまり無いから……」
金銭的に問題あるし、きっとロリコン疑惑をかけられている銀時は、自分との結婚をそんな大々的に取り扱いたがらないだろうとちょっと寂しく頷く神楽。
しかしお妙はそんな彼女の心境を悟ってか、優しく微笑みながら再度口を開く。
「どっちでもいいって言ってる割にはお顔が寂しそうよ? なんなら私が負担してあげるから、これでもかぶき町の2代目女帝としてそれなりに稼いでいるのよ」
「アネゴ! それは流石に受け取れないわよ! アネゴにだってお金を稼がないといけない理由があるのに!」
「遠慮なんて神楽ちゃんらしくないわよ、心配しなくても父上の道場復興は順調だから、それに花嫁姿の神楽ちゃんが見れるというなら、それぐらい安いモノよ」
妹分の結婚式をこの目で見てみたいと、粋な心遣いで神楽に金銭的なフォローさせてくれと志願するお妙。
そんな心優しい姉貴分に胸を打たれて、神楽が正座したまま呆然としていると
「妙ちゃん、そこは僕に任せてくれ、彼女達の結婚式の費用は柳生家が全額負担するよ」
「って九ちゃん!?」
「まあ、太っ腹ね九ちゃん」
お妙と神楽の話を一緒に聞いていた名門・柳生一族の跡取りである柳生九兵衛が援助金を快く引き受けようとする。
しかもなんの躊躇いも無く全額出すと言うので神楽も目をギョッとさせてしまう。
「今まで二人には何度も助けられた、だからここは恩を返すという事で、君達の式を柳生家総出で取り組ませてくれないかな?」
「いやいや! そこまでしなくていいってば!」
「当然柳生家が取り仕切るのだから式の内容も豪華にさせてもらうよ、それを踏まえて尋ねるけど」
金の縁より人の縁を重んじる九兵衛らしく、友の為ならば抵抗あるセレブの力を惜しみなく使う事を宣言する。
そしてたじろぐ神楽相手に、彼女は結婚式の内容に関する質問を投げかけた。
「神楽ちゃんは火の輪を潜った事はあるかい? それと空中ブランコと玉転がり」
「どんな結婚式挙げるつもりぃ!?」
「僕としては剣を喉の奥に入れる奴と箱の中で串刺しにされるって奴が見たいなぁ、どういう仕組みなのか知りたいんだ」
「腹に赤ん坊入れた新婦にサーカスさせるつもり!? ていうかもうそれアンタが楽しみたいだけでしょ!」
腕を組みながらうんうんと頷きあれこれ提案する九兵衛だが、結婚式としてはどこか方向がズレている。
そんな事を妊娠中の身体で出来るかと、神楽がテーブルを叩いて一喝しながら却下すると、そこへ突然口を挟む者が一人
「フ、九兵衛、やはり式以前に男を知らぬおんしでは、式の内容をプロデュースするなど十年早いでありんす」
「なんだと!」
「ツッキー!」
そこへ同席していた吉原の死神大夫改め、天道大夫・月詠であった。彼女も九兵衛と同じく神楽がお妙の所に来たと聞いてすぐに駆けつけてくれたのだ。
今も昔もクールな雰囲気を放ってはいるが、妊娠している神楽の前では喫煙はご法度と、いつも持ち歩いているキセルは懐に仕舞ったままだ。
「神楽、式を挙げるのであればこの吉原に任せなんし、男も女もよくしるわっち等であればきっとぬし等を華やかに送る事が出来よう」
「いやだから……式を挙げるかどうかなんてまだ決めてすらないんだけど……てかツッキーだって男の事なんかロクに知らないでしょ……」
「式の内容はこうじゃ、まず新郎は全身にローションを塗りたくり、新婦はマットの上で同じように全身にローションを……」
「それただの大人のお風呂屋さんでしょ!」
「そして式に参加した友人・知人・親戚関係なくローションを塗りたくり……」
「参加者までローション塗れになる理由が何処にあんのよ! そんなのただのローション祭りじゃない! 一体誰がそんなモンに参加するっていうのよ!」
「あ、ウチの東城なら喜んで参加すると思う」
「知らないわよ!」
真顔でなにとち狂った事を言い出すんだと指を突き付けてツッコむ神楽。
式を挙げてくれようという善意は嬉しいが、一般的な結婚式の事でさえわかってなさそうな特殊な環境に生きた九兵衛と月詠ではやはり無理な話であろう。
というか今回は結婚式とかそういう話を神楽はしに来た訳ではないのだ。
「銀ちゃん! さっきからずっと黙ってないでなんとか言ってヨ! このままだと私達面白半分で変な式を挙げされちゃうアルよ!」
「おう、そいつは大変だな……けどよ……」
助けを求めるかのように銀時に向かって叫ぶ神楽、しかし銀時は何故か彼女達がいる客室にはいなかった。
彼がいる場所、それは客室から見える……
「銀さんの方が、現在進行形で大変な目に遭ってるんだよ……」
神楽達からバッチリ見える庭で、大きな木に吊るされ、全身ボロボロな状態で宙ぶらりんしながら放置されている銀時がそこにいた。
すっかり力を失ったか細い声を上げながら、逆に助けを求めるかのように訴える目を向ける銀時であったが
「ほう、まだ息が合ったか……生きていて何よりじゃ銀時……殺してしまっては神楽に悪いしな」
「しかし喋る気力があるというのなら、もっと痛めつけても問題ないんじゃなかろうか……?」
「フフ、相変わらずゴキブリ並の生命力ね銀さん、コレなら思う存分地獄を見せることが出来るわ」
「待て待て待てぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
お妙は変わらずニコニコと笑いながら恐ろしい事を
九兵衛は真顔で物騒な事を口走り
月詠に至っては侮蔑の込められた目つきで睨み付けながらいつもより低いトーンで呟いている。
そんな三人の雰囲気に圧倒されながら銀時は必死にもがいて抵抗しようとするも、そこへ三人が立ち上がって庭の中へと入って来た。
「気分はどうですか銀さん、これで神楽ちゃんとの約束、護ると誓えますか?」
「え、え~と、約束ってなんだっけ……?」
「とぼけるな、貴様がちゃんと責任を取るかどうかについてに決まっているだろ」
「いやだから! それはいつか取るって言ってんだろ!」
お妙の問いかけに頬を引きつって目を逸らし、ちょっと怒ってる感じの九兵衛にはすぐ様反論。
「なのにテメェ等寄ってたかって、俺が来るなりいきなりボコボコにした上にこんな状態にしやがって!」
「私達の可愛い妹分が困ってたからよ、子供まで作っておいて責任取るのをいつまでも後回しにするんですもの、そんなクソったれなロリコン野郎をその程度で済ませているんだから、むしろ感謝して欲しいぐらいだわ」
「全くじゃ、この世で最も最低な部類に入るロリコンを、半殺しにした程度で放置しているわっち等が実に慈悲深い存在じゃという事を気付いておらんのか」
「一応神楽ちゃんと夫婦となる男だ、例えロリコンであろうが殺してしまっては彼女が悲しんでしまうからな、だから僕達もうっかり殺さないとは言っておこう、ま、貴様の答え次第によってはその約束も反故する可能性もあるが」
「ヤベェよマジで泣きそうだよ俺……寄ってたかってリンチに遭った上にロリコンという言葉のナイフで身も心もすっかりボロボロだよ……あ、ヤバい、今本気で涙出そうになった」
木の上に吊るされたままの状態の銀時に近寄って来て各々言いたい事を全部ぶちまけようとしてるかの様にズバズバと痛い所を的確に突いて来る。そんな女傑三人衆の前に銀時も涙目になって渇いた笑い声を上げるのみ
するとすっかり弱々しくなった彼の下へ、最近重くなってきた身体で神楽がゆっくりと彼に近づいて行く。
「銀ちゃん、そろそろ観念するヨロシ、早く私を貰えヨコラ」
「いやだからそれはいつかちゃんと……」
「アネゴ~、銀ちゃんがもう一回お願いしますだって~」
「だぁぁぁぁぁわかったわかった! 頼むからこれ以上は止めてくれ! 肉体より先に心が壊れちまう!!」
そもそも神楽がここに銀時を連れてやってきた理由は、彼にキチンとこの場で自分との婚姻を結んで貰う為であった。
これ以上うやむやにされたくない、その理由でお妙達に協力して貰った訳だ。
そしてやはり効果は絶大だったみたいで、身も心もすっかり彼女達にいたぶられた銀時はハッキリとした声で叫ぶ。
「近い内! 本当に近い内に市役所行こう! そんで籍入れよう!」
「木の上に吊るされたままプロポーズなんて……とことん情けない男ね」
「誰のせいで吊るされてると思ってんだクソアマ! 俺だってもうちょっとまともな体勢の時に言いたかったわ!」
みっともない状態だというのも承知で、お妙に冷ややかな目で見られながらもなんとか自分から籍を入れる事を認めた銀時。
それを聞いて神楽は一瞬驚いたかのように目を見開くが、すぐに安堵したかのように深いため息をついて
「ちゃんと覚えたんだから絶対忘れないでヨ?」
「わかってるよ、もうコイツ等にとっちめられたくないしな、それに……」
「それに?」
腰に手を当てジト目で見つめて来る神楽に対し、銀時もまた疲れた様子でため息をつきながらちょっと言い辛そうに
「お前がお妙達と話してる時の会話聞いててよ、俺が責任取るかどうかでずっと悩んでたみたいだからな……」
「気付くのが遅いのよバカ」
「腹のガキにも申し訳ねぇしそろそろ覚悟決めるかって思ったんだよ」
「だから遅いのよ、あーもうホントにバッカじゃないの」
いつまで経ってもヘタレで逃げ腰だった彼だったが、ようやく自分の事をわかってくれたらしい。
呆れつつもやっぱりこの男は相変わらずだな、思わず自然とフッと笑ってしまう。
すると二人の会話を見届けて、ようやく矛をおさめた様子でお妙達も安心した様子で
「ねぇ銀さん、私はね、新ちゃんや神楽ちゃんが立派になれたのはちゃんと銀さんが導いてくれたんだってわかっているわ、まあ神楽ちゃんの方は導いたというより引きずり込んで手籠めにしたから最低だと思ってるけど」
「かつて道を間違えていた僕に、正しい方向に歩を向けさせてくれたのはお前の言葉があったからだ、もっとも今ではお前が道を間違えてロリコン道につっ走ってもう僕等の手が届かないぐらい手遅れになってしまったみたいだが」
「鳳仙を倒し吉原を救った英雄、師を諭しわっちを救ってくれた恩人、わっちはこの先ずっとその大恩を忘れぬじゃろう、もっとも神楽に手を出し孕ませたロリコン、という大罪も決して忘れぬつもりでありんすが」
「あの! 三人揃って上げて落とすの止めてくんない!? 落差激し過ぎるんだけど!?」
三人共、それなりに銀時に対して恩を感じているのだろうが、それでもやっぱり同棲しているのを良い事に神楽と流れ流れで手を出した事に関してはご立腹の様子。
そして散々言いたい事を銀時にぶちまけた後、お妙が代表するかのように一歩彼の方へと歩み寄る。
「でもそんなあなただからこそ、今の神楽ちゃんとそのお腹の子が一番必要な存在だというのもわかっています」
「……」
「だから私達とも約束して下さいね、今まで色んなモノを護って来た銀さんにとって、今一番先に護るべきのがなんなのかしっかりと覚えておいてください」
「……それぐらいテメェ等と約束しなくても、こちとらとっくに覚悟決めてんだよ……」
沢山の存在を護る為に戦って来た彼に向けて、何よりも優先して大事にする存在が出来たのだ肝に銘じておけと忠告してくれたお妙に、銀時は舌打ちしつつしかめっ面で彼女達に誓うのであった。
「俺からすればテメェ等おぼこ三人衆の方が心配だわ、妹分に先越されてイラついてるのはわかるけど、その怒りを男にぶつけ続けてる現状じゃ本当に嫁の貰い手がいなくなるぞ?」
「やっぱり簀巻きにして海の底に沈めてあげようかしら?」
「妙ちゃん、ならその前にこの男で刀が口の中に入るか検証してみたいんだが?」
「ほう九兵衛はこやつの口の中に刀を刺してみたいのか、ならばすんなり入る為にこ奴にありったけのローションを飲んでもらう事にするか」
「待て待て待て! ごめんごめん俺言い過ぎた! こうして見るとやっぱお前等最高の女だよ! こんなべっぴん共ならこれからきっといい人見つかるわ! だから一欠片でも希望がある事を信じて婚活なり見合いなり出会い系なり頑張ってください!!」
減らず口を叩くクセはもはや癖の様なモノになっている銀時はついつい余計な事を言ってしまい
再び三人から強い殺気を覚えると慌てて首を横に振って自分の発言を撤回する
と言ってもその発言の中にも皮肉が込められている様な気もするが……
「ていうかもういい加減木から下ろしてくれよ……いい女はこんな事しないよ? 今時ヤクザの間でもこんな拷問やって無いよ? もはや魔王の所業だってこんなの……」
「仕方ないわねー、まあ一応口約束だけはしてくれたみたいだし、未来の花婿さんが目の前でこんな目に遭ってるのも神楽ちゃんにとっても恥ずかしいだろうし」
左右に体を揺すって長時間吊るされて疲れている銀時の懇願に、お妙も神楽の事を思って彼を解放してやるかと決める。
だが神楽はというとその心遣いは必要ないと首を横に振り
「私は別に構わないわよ、銀ちゃんの醜態なんてもはや日常風景の一環としてしか見てないから」
「あら、相手のダメな部分を既に把握した上で既に達観してるなんて、なんて素敵なお嫁さんなのかしら」
「本当に立派に成長しちゃったんだね神楽ちゃん、未だに男に触れられないという僕も見習わなきゃいけないな」
「全くじゃ、そしてこんな良妻との良縁を拒み続けていた銀時はまだ許しておけんな、やはりもうしばらくここに吊るす事にしよう」
「なんでそうなるんだよ! もー悪かったと言ってんだからからいい加減下ろしてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
自分のみっともない醜態が既に神楽にとっては日常風景として捉えられてる事に軽く傷つきながらも
未だ下ろそうとしてくれない彼女達に涙目で懇願する銀時、だがそこで
「うぐ!」
突如吊るされてる自分の身体が下ろすとは逆に真上に引っ張られて驚く銀時。
お妙達もすぐ様視線を上に上げて何事かと思っていると……
「オーホッホッホー!!! ようやく私の手の下へ帰って来てくれたわね!! マイスィートダーリン・銀さん!!」
「あ、あなたは猿飛さん!」
「なんか余計ややこしくなる奴来たァァァァァァァ!!!」
銀時を吊るしてるロープを切断し、木の枝に立って自らの手で彼を引っ張り上げながら高笑いを上げるのは猿飛あやめ、あだ名はさっちゃんであった。
数年経っても相変わらずの様子で、銀時に執着してるらしい。
衣装も忍び装束ではなく、神楽を差し置いて美しい純白のウェディングドレスに身を包んでいる。
「わざわざ私の為に銀さんを縛り付けといて礼を言うわ負け犬さん達!! この日が来るのをずっと待っていたわ! 銀さんと結ばれる事を!!」
「ちょっとさっちゃん! 昔は別に構わなかったけど今はもう許さないわよ! 人の男をなに横から奪おうとしてんのよ!」
「お黙り泥棒チャイナ娘! アンタだけは絶対に許さないんだから! ヒロインという名のマスコットだったクセに私の銀さんと結婚ですって!? はん! そんな事絶対にさせないわ!」
「なんですって!」
舞い上がった様子で銀時を縛る紐を自分の手元へと引っ張っていくさっちゃん。
しかしそれに当然、神楽も黙っていられないと怒った様子で彼女に抗議するも
それに負けじとさっちゃんも血走った目つきで彼女を睨み付けながら凄まじい形相で怒鳴り散らした。
「おのれの若さを利用してロリコンの銀さんを誘惑して既成事実を作り! 更には脱落ヒロイン共をけしかけさせて強引に責任取らせる! そんな真似をして真の幸せが掴めると思ってるのかしら!?」
「なによ文句ある訳? この男に正当性の恋愛なんて求める事自体無理な話だってわかってんでしょ、どんな手段でも最終的に勝てれば良いのよ、まあ陰湿にコソコソ人の家の屋根裏から覗いてるだけのさっちゃんじゃ、既に勝負にならなったんだけど」
「開き直ってんじゃないわよ! 否定もしないで人に的確なカウンター打ち込むなんて相変わらずの毒舌小娘ね!」
「もう小娘じゃないわ、人妻よ、それともうすぐ母親にもなる」
「キーーーー!!! なによなによ余裕ぶっこきやがってからに! 私がずっと銀さんを愛していると知っていながら彼の妻になるですって!? 断じて許さない! それだけは絶対に許さない!」
何を言われてもビクともしない様子で平然としている神楽がますます気に入らずに枝の上で足を踏み鳴らすさっちゃん
そして嫉妬の力で銀時を軽々と持ち上げると、そのままお嬢様抱っこして彼を持ち逃げようとする。
「そんな卑劣な手段で私のダーリンを奪わせはしない! 寝取られるなら寝取り返すまで!」
「おいちょっと待て! さっきから黙ってればなんで俺がテメェみたいなメス豚に奪われる事になってんだよ! いい加減諦めろよドMストーカー!!」
「強いて言うなら銀さんは強引に結婚させられる事に一人悲しむクラリス! そして私は、そんなクラリスを盗みに来たルパン三世よぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「だから人の話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! 助けてフェミニスト伯爵ぅぅぅぅぅぅ!!!」
抵抗する銀時を抱えたまま身軽に飛び上がって、志村邸の塀の上へと着地すると、そのまま狂気の笑みを浮かべながらさっちゃんは逃走を始めるのであった。
韋駄天の足で飛ぶように行ってしまう彼女を、神楽もギリッと奥歯を噛みしめながらすぐに追おうとする。
「く! ようやくまとまったのに! 待ちなさいよさっちゃん! 私の旦那を返せ!」
「ダメよ神楽ちゃん、今の体のあなたじゃルパンを追う事は出来ないわ」
「!」
だが身重の状態である彼女では激しい運動する事は出来ないであろう。
そこでお妙が彼女の肩を掴んで止めると、安心させるかのようにニコッと笑って
「ここはこの峰不二子に任せなさい、あなたの大切な人を盗み返してやるから」
「アネゴ……!」
お妙がそう言いながら拳を握ると、九兵衛も腰に差す剣を取り、月詠も懐からクナイを取り出して見せた
「五右衛門もいるぞ」
「次元もな」
「九ちゃん! ツッキー!」
三人揃って銀時奪取に出向こうとするお妙、九兵衛と月詠。この三人なら心配など無用だと神楽は安堵の笑みを浮かべる。
「神楽ちゃんはここで待ってなさい、すぐにあの人をあなたの下へ帰してあげるから」
「うん、あ、じゃあさっちゃんに私からの言葉を代わりに一つ伝えて欲しいんだけど」
「なにかしら?」
屋敷で待機するよう言われた神楽はそれに大人しく従いつつ、お妙にさっちゃんへの言伝を依頼する。
神楽はそっと微笑んだまま
「今度からは屋根裏じゃなくて玄関から遊びに来てねって、お茶ぐらいなら出してあげるからって」
「わかった……絶対に伝えてあげる」
数十分後、銀時は見事救出された状態で神楽の下へと戻って来た。
お妙曰く、追い詰められたさっちゃんに神楽からの伝言を伝えると、怪訝な様子を見せながらすんなりと返してくれたみたいだ。
そして別れ際に彼女からも伝言を預かったとお妙は神楽にその言葉を贈った。
「まだ負けたつもりは無いわよ、もしまた銀さんを奪われたくなかったら」
「精々私が諦めて折れるぐらいに幸せになって見なさい」
「って言うとでも思ったか腐れビッチがあぁぁぁぁぁ!! アンタが銀さんとくっつくのなんて認めるわけないでしょうがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「今良い感じに締める所だっただろうが!! どんだけ諦められねぇアルかお前!」
しんみりしたのも束の間、志村邸の上空から大量の忍びを引き連れてさっちゃんが再び襲い掛かって来る事態に神楽が遂に激怒。
以後それからしばらく、隙あらば銀さんの前へ現れては
「ねぇ銀さん、最近よその作品ではハーレム婚とか流行ってるんだって? ウチでもやってみない?」
「おいメス豚ぁ! なに銀ちゃんに余計な事吹きこんでんだコラァ!!」
求婚しようとするさっちゃんに頭を悩ませる日々を送る神楽であった。