ロリ魂   作:カイバーマン。

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六ヶ月目 お義父さんと呼ばせて

ある晴れた日の午後、坂田銀時は神楽を病院で検査があるからと彼女を送って行った。

 

そして長くなるし待っているだけの銀時は退屈になるだろうから、終わったらタクシーで帰ると彼女に言われる。

 

という事で銀時は久しぶりに一人での行動となり、彼女が戻ってくるまでゆっくりしてようと自宅へと戻って来たのだ。

 

「いや~久しぶりに自分だけの時間を堪能できるぜ、最近はずっと神楽の奴に付きっ切りで、それ以外の時間は大抵仕事だったし、羽を伸ばす暇も無かったしな~」

 

スクーターから降りた銀時は待ちに臨んだ自由時間を送れる事に機嫌良くしながら、軽やかな足取りで階段を昇っていく。

 

「アイツが戻って来るのも当分時間かかりそうだし、久しぶりに撮り溜めしておいた結野アナ特集でも拝ませてもらうわ」

 

 

最近神楽の前でテレビで結野アナを眺めているとすぐに不機嫌になってチャンネルを変えようとするので

 

生粋の結野アナファンである銀時にとっては何かと心苦しい日々を送っていたのだ。

 

「大体嫁になったからっていきなり嫉妬深くなってんじゃねぇよアイツは、昔は俺がどこで遊んでようが誰と騒いでようが気にもしなかったクセに……」

 

鬼の居ぬ間に居心地悪い雰囲気も無くゆっくりと彼女を満喫しようと

 

銀時はぶつくさ文句を垂れながら自宅の戸をガララを開けると……

 

 

 

 

「おかえりぃぃぃぃぃぃ!!! 銀時くぅぅぅぅぅぅん!!!」

「……」

 

戸を開けた先にある玄関で待ち構えていたのは

 

血走った眼を向けてこめかみにこれでもかと青筋を浮かべた丸坊主の中年の男だった。

 

明らかに自分を出迎えてくれているとは思えないほどの凄まじい殺気を放つその男を相手に、銀時はしばし死んだ目で見つめた後

 

「すんません、家間違えました」

 

何事も無かったかのようにゆっくりと開けた戸を自ら閉めるのであった

 

しかし

 

「逃がすか盗人がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ギャァァァァァァァ!!」

 

 

閉められた戸から二本の腕が勢いよく飛び出て来たと思ったらすぐに銀時の両肩を恐ろしく強い力で掴み込んだ。

 

百戦錬磨の銀時でさえも抵抗する気力さえ起きないほどの凄まじい力で

 

「いや~ウチの娘から”ちょっとした近況報告”を聞いてからさ……! 宇宙の彼方からすっ飛ばしてついさっきこっちにやって来ちゃったんだよ……!」

 

「あががががが!!!」

 

「とりあえず久しぶりに会ったんだしお話でもしようか、銀時君……!」

 

戸を真ん中に隔てた状態でガッチリ逃げられないようホールドしながら、不穏な雰囲気でで話しかけてくる相手に、銀時は両肩から来る激痛に悲鳴を上げながらどう返事すればいいのか迷った挙句……

 

「と、とりあえず逃げないから手を離してくれませんかね! お、お義父さん!?」

「誰がお義父さんだァァァァァァァァ!!!」

「だぶらばぁ!!!」

 

このタイミングで一番言っちゃいけないことをつい口走ってしまい、そのまま戸と一緒に思いきりぶっ飛ばされてしまう銀時であった。

 

銀時を迎えてくれたのは宇宙一のエイリアンハンター・星海坊主。

 

神楽の実の父、つまり銀時にとっては義理の父に当たる存在である。

 

 

 

 

 

 

それから数分後、銀時は星海坊主の襲来に遭遇して早々ボロボロにされながら

 

自宅の居間にて義理の父となった彼とご対面していた。

 

「ったく、来るってんなら連絡ぐらい寄越せよハゲ、もし来るって知ってたら今頃神楽連れてどっか逃げてたってのに」

 

「ふん、例えテメェが宇宙の果てだろうが地獄だろうが、この俺が逃がす筈ねぇだろ」

 

痛む箇所を押さえながら銀時が悪態をついていると、向かいのソファで足を組みながら星海坊主が睨みつける。

 

「てかお前、マジなのか? マジでウチの娘とそうなったのか? マジでウチの娘とガキ作ったのか?」

 

「マジだよマジ、なんなら今アイツ病院にいるから会って来たら? もう6ヶ月だし結構膨らんでるぞ腹」

 

後頭部を掻きながらけだるそうにそう呟く銀時に対し、さっきからずっと苛立ちが収まり切らない星海坊主はカチンと来た様子で

 

「おい、テメェなに冷静さを取り戻してんだ、今俺が何を考えてるのかわかってる? どうやってお前を死なせずに苦しめられるかインスピレーションを沸かせている真っ最中なんだけど?」

 

「すみませんねぇお義父さん、なんかもう他の奴からああだこうだ言われて、こっちも一々説明すんのにだるいんすよ」

 

「一番説明すべき娘の父親に対してだるいとか言ってんじゃねぇ! ていうかオイ! テメェまたお義父さんって呼びやがったな!」

 

ごく自然にお義父さん呼びされて即座に立ち上がる星海坊主に、銀時は「あ~」と短く呟いて考えた後……

 

「じゃあ神楽みたいにパピー呼びにしますか? お久しぶりですねパピー、相変わらずハゲ上がってますねパピー」

「殺すぞ!」

 

親し気な呼び方に変更するかと尋ねてきた銀時に、本気で殺そうかと星海坊主は考えつつ再度ソファに座り直して話を続けた。

 

「あのな、確かに俺は自分の娘をお前の所に預けたよ? 俺と一緒に宇宙の星々を転々とするよりも、この地球で気心知れた連中と一緒に幸せに生きてほしいと思って、お前に大事な娘を託したんだよ俺は」

 

「そういやそうだったな、てことはアレか、あの時点でもう既に俺はアンタに娘さんを貰ってたって事になるな。あー良かった、娘の親父相手に「娘さんを下さい!」なんて古臭いセリフ言わずに済んで」

 

「そういう意味で託した訳じゃねぇよ! なんであそこからああなった! お前等どっちかというと親子みたい関係だったんじゃないの!? なに俺が見てない間に勝手に親子から夫婦にジョブチェンジしてんだよ!」

 

「しょうがねぇだろいつの間にかそうなっちまったんだから、そりゃ最初はただのガキとしか見てなかったけど、年が経つ事に段々色っぽく……ごっへぇ!!」

 

悪びれる様子も見せない銀時に対し遂に星海坊主が怒りの鉄拳。

 

宇宙最強クラスの拳をモロに食らった銀時は派手に後ろに吹っ飛ばされてしまう。

 

「あぁぁぁぁぁ!!! なんでウチの可愛い一人娘がよりにもよってこんな野郎と所帯を持つなんて! 死んだ母さんになんて詫びればいいんだチクショー!!」

 

「いつつつ……詫びたきゃ勝手に詫びてろよコノヤロー、つうかオメェもアレだろ? デキちゃった婚なんだろ? 結婚過程がふしだらな点については人の事言えねぇじゃねぇか……」

 

自分を殴り飛ばした後両手で頭を押さえながら悲鳴のような声を上げる星海坊主に

 

銀時はヨロヨロトと起き上がりながらボソリとツッコミを入れる。

 

「まあアイツもアイツでもういっちょ前の大人なんだし、誰と結婚しようが親父としてキチンと受け入れてやろうや」

 

「なんでそれをお前に言われなきゃならねぇんだよ! 相手がお前だからこっちは受け入れられねぇんだよ! 現実から目を背けたいんだよ!!」

 

 

腕を組んで上から目線で物言う銀時に唾を飛ばしながら叫び、星海坊主は苦々しい表情で舌打ちをした後

 

「おい! テメェもいい加減なんか言えよ! 可愛い妹がこんなダメなおっさんに奪われるんだぞ! 兄貴としていいのか!」

 

勝手に銀時専用の事務椅子に座ってのんびりとこちらの光景を眺めていた”もう一人の来客”の方へと振り返った。

 

その人物は背もたれに身を預け、事務机に足を乗っけながら微笑を浮かべて一言

 

「いんじゃない? あんな出来の悪い妹を貰ってくれるなら兄貴として大歓迎さ」

「神威ィィィィィィィ!!!」

 

星海坊主と共にはるばる地球へとやってきて銀時と神楽に会いに来た人物は、星海坊主の息子にして神楽の兄。

 

そして新生春雨海賊団を率いる海賊王・神威であった。

 

「安心しなよ、俺はこのハゲと違って別に反対する気なんて更々無いから、遠慮なくウチの愚妹を貰って言って構わないから、あと返却はお断りね」

 

「おめぇに応援されるってのも気味が悪くて複雑だわ……」

 

「アハハ、ダメダメ、今後から俺の事は「おめぇ」じゃなくて「お義兄ちゃん」と呼ばなきゃ」

 

「いや義理の兄貴に対してちゃん付けするのもおかしくね?」

 

数年前と変わらず何考えてるかよくわからない戦闘狂人、もとい、義理の兄に対し銀時は顔をしかめながら再びソファに座り直す。

 

「つか別に反対するつもりがねぇってなら、どうしてわざわざこのハゲと一緒にウチに来てんだよ」

 

「そりゃ親族として祝福する為に決まってるだろ、それとアンタに対してお礼かな、現在絶滅危惧種の夜兎に子種仕込んでくれてありがとうって」

 

「変な言い方止めてくんない!? 別にお前等一族の絶滅を防ぐ為に一役買おうと思った訳じゃねぇから!」

 

ニコニコ笑いながら妙に生々しい事を言い出す神威に慌てて銀時が否定するも、神威は表情変えずに話を続ける。

 

「実を言うと今マジで夜兎族って滅びかけててさ、女の夜兎もほとんどいないから子孫も残せないって事で、ウチの所にいる夜兎族はもっぱら婚活パーティーばっかやってんだよね、もう宇宙を征服する前に女一人を征服しなきゃってみんな必死でさ」

 

「夜兎族って今そんな事になってんの!? あの屈強なガタイで婚活!? 違和感あり過ぎだろ!」

 

どうやら夜兎族も数年前に地球で起こった大戦によって多くの同胞を失った事に焦りを感じたらしい。

 

今現在自分達の後を継ぐ次世代の若者が全くいないので、一刻も早く子を残すべきだと皆頑張って結婚活動しているらしい。

 

「阿伏兎の奴なんかここ最近ずっと宇宙中を駆け巡って色んな種族がいる合コンに参加してるよ、もう今更遅いって言ってのに」

 

『いやまだ! まだ希望も俺の種も潰えてないから!」

 

「って必死の形相浮かべて今日もどっかの星に出掛けて行ったよ」

 

「大変だなアイツも……いっそのこと海賊廃業して真面目に就職した方がいいんじゃねぇの? 女は見た目や中身よりもまず職種で判断するって聞いたぞ」

 

神威のお目付け役である阿伏兎はどうやらあの老け顔でまだ嫁さん候補を探しているみたいだ。

 

流石にもう無理じゃね?と思いつつ、銀時はふと神威の方へ目を細め

 

「てかお前はどうなんだよ、ちゃんと嫁探してんのか」

 

「あー俺は絶対にヤダ、めんどくさいし必要ないし、一生独り身の方が自由を満喫出来て楽」

 

「昔の俺と全く同じ考えだな……アレだぞ、ふと隣にいた異性に対して一時のテンションに身を任せたら今の俺みたいになっちまうから気を付けろよ」

 

「ハハハ、心配しなくても俺の傍にはアンタの所みたいな尻軽女はいないから」

 

「いやその尻軽女お前の妹ぐへぇ!!」

 

「誰の娘が尻軽女だぁ!!!」

 

絶滅の危機に瀕している夜兎族にも関わらず、結婚願望の欠片がない神威に対して銀時がツッコ網としたその瞬間

 

いきなり会話に加わって来た星海坊主が雄たけびと共に銀時をぶん殴った。

 

「まだお話は済んでないんだよ坂田君! 俺はな! もう完全にプッツンしてんだよ! 手塩にかけて育てた大事な娘が!! よりにもよってテメェみたいなちゃらんぽらんに貰われるなんて! もうキレ過ぎて地球滅ぼしちゃおうかなって思っちゃったりしてんだよ!」

 

「うるせぇんだよハゲ! 娘が嫁に行くぐらいの事でガタガタ騒ぐんじゃねぇよ! むしろテメェの所の怪力大食い毒舌娘を貰ってやんだからありがたいと思いやがれ!!」

 

「俺だって相手がまともな男だったら笑って見送ってやりてぇよ! でも相手がロクに稼ぎも無くダラダラした生活を送っているお前なら! そらお父さんとして殺してでも反対するにきまってるだろうが!!」

 

殴られた銀時の方も頬を押さえて立ち上がりなら遂に凄い剣幕で反論し始めた。

 

星海坊主も負けじと応戦しながらポキポキと拳を鳴らし始める。 

 

「よしわかった、こうなったらシンプルにケリつけよう、決闘だ決闘、俺とやりあって立っていられたらお前に娘をやる」

 

「ふざけんじゃねぇ! 宇宙最強の夜兎族の拳なんざ素直に食らったら即お陀仏じゃねぇか! テメェ絶対娘あげるつもりねぇだろ!」

 

「うるせぇ! ごちゃごちゃ言ってねぇで素直に俺に殺されろぉ!!」

 

こんな男に娘はやれん、というのはよくある話だが、星海坊主に至ってはもはや虚と戦った時よりも凄味のある迫力で銀時に敵意と殺意を燃やしていた。

 

流石に相手が悪いと慌てて後ずさりする銀時に

 

威嚇のつもりなのかさっきから拳をポキポキポキポキと派手にならしまくりながら歩み寄っていく星海坊主

 

そんな二人を「勝った方が俺とね」と笑顔で傍観する神威。

 

そして……

 

 

 

 

「なにやってんのアンタ達?」

「「!?」」

 

ついさっき家に戻って来たばかりの神楽が、膨らんだお腹を両手で抱えジト目で現れた。

 

まさかの彼女の登場に銀時と星海坊主は同時にバッと振り返る。

 

「神楽ァァァァァァァ!! 良かったぁお前が戻って来てくれて!! 助けてくれ、お義父さんに殺される!」

 

「は? てかなんでパピーがいんの? しかもバカ兄貴まで、来るんだったら連絡ぐらい寄越しなさいよ。こっちが今ゴタゴタしてる事ぐらいわかるでしょ普通?」

 

「か、神楽ちゃん! お父さんに対していきなりそんなドライな態度をしちゃいけません! お父さんってのは年頃の娘に冷たくされると! どうしたらいいのかわかんなくなるんだ!」

 

「知らないわよそんな事」

 

間一髪の所で病院から戻ってきてくれた神楽に慌てて駆け寄って、すぐに恥も捨てて彼女の背後に回る銀時。

 

そしてそれをよそに神楽はアポ無しで現れた父親に素っ気ない態度で顔をしかめた。

 

「で? なんか銀ちゃんがビビってるみたいだけど、もしかして私がいない所でパピーが脅したりしてたの?」

 

「脅しじゃない、父親としてのケジメだ! 神楽ちゃん! お父さんは反対ですよ! こんな堕落しきった天然パーマと夫婦になるなんて!」

 

「あーはいはい、なんとなく予想付いてたけどやっぱりそういう理由だったのね。まあどうでもいいけど」

 

「どうでもいい!? 娘を護ろうとするお父さんの覚悟を目の当たりにしてどうでもいいって言った!?」

 

堂々とこんな男と結婚させないと主張する父親に対し娘がまたもや素っ気ない態度でスルーすると、今度は兄貴の方へと振り返り

 

「んで? パピーはともかく、アンタが来るなんてどういう風の吹き回し?」

 

「やだなー、俺はただの可愛い妹を祝福しに来た優しいお兄ちゃんだよ、結婚おめでとー」

 

「とぼけても無駄よ、どうせ良からぬ事企んでるんでしょ?」

 

「わざわざ遠いところから祝いに来た兄貴に対して疑り深いなー、近くにいた男にはホイホイ誘われて子供まで作ったクセに」

 

「うっさいわね私の勝手でしょ! どこが優しい兄貴よ!」

 

心にも無いお祝いをしたと思えばすぐにサラッと毒を吐いて来る神威にムキになる神楽。この兄妹は昔から本当に変わっていない。

 

「全く、バカ兄貴といいパピーといい、何も言わずに勝手に家に来ないでよホントに……」

 

「それはお互い様だろ! 父親に何も言わずにいきなり結婚するなんて! しかもよりにもよってこんな奴と!」

 

「仕方ないでしょ、前々から銀ちゃんには付き合ってる事内緒にしてくれって頼まれてたんだから、あ、そうだ」

 

長い髪を指に巻きながら機嫌悪そうに文句を垂れつつ、まだ抗議している星海坊主に適当な返しをすると

 

神楽は思い出したかのように背後にいた銀時の方へと振り返った。

 

「銀ちゃん、そういえば病院の検査でわかった事あったアル」

「え!? 検査でわかったって何が!? まさかお前か腹の中のガキになにか問題でもあったのか!?」

「違うネ、そっちの方は今の所全く心配ないから安心するヨロシ、わかった事ってのは……」

 

 

 

 

「女の子だったアル」

「え、何が?」

「だからお腹の中にいる子、女の子だってわかったアル」

「マジでか!?」

 

淡々とした口調で報告する神楽に銀時は口をあんぐりと開けて驚いた。

 

そういえばそろそろお腹の中の子供の性別がわかる頃合いだとは聞いていたが……

 

「間違いないネ、エコー写真でハッキリとわかったアル、チンコ付いてないって」

 

「判別方法がチンコの有り無しなのかよ……間違いねぇのか? 太ももで挟んでチンコとタマ隠してるかもしれねぇぞ」

 

「そんな技を産まれる前から会得しているアホガキなんて嫌アル」

 

真顔で変な事を言い出す彼に神楽が冷めた感じでツッコむと、銀時ははぁ~とため息をついた。

 

「なんつうか、ガキの性別までわかるといよいよ父親になるんだなって実感湧いて来たわ」

 

「それでいいネ、銀ちゃんはあと半年も経たない内にこの子のパピーになるんだから、しっかり自覚持ちなさいよ」

 

「やれやれ遂に俺もパピーか……しかし息子ならともかく娘が相手となるとどう接すればいいのかわかんねぇな」

 

ずっと独り身で生活していたことが遠い昔の事だとさえ思てきた銀時は、産まれる我が娘にどう対応すればいいのだろうと考えた後

 

「で、どうなの義理のパピー? 娘を育てるって具体的にどうやればいいの?」

 

「そうだな、まずは娘に近づこうとするチャラ男は全て抹殺して……ってなに自然に俺の助言を貰おうとしてんだテメエ!」

 

そういえば身近に娘を育てた経験がある父親がいると気付いた銀時は、すぐにその父親である星海坊主に話しかけた。

 

しかし今だこの男は、銀時と神楽が結婚する事さえ認めていない。

 

「何度も言うが俺はこのまま神楽の婿になろうとするなんて絶対に認めねぇからな! 例えガキが産まれてもだ!」

 

「全く、本当に頑固親父ねパピーは、いい加減にしなさいよホント、私も怒るわよ」

 

「娘に怒られようが父親ってのはそう簡単に譲れねぇ事もあるのさ、今回ばかりは絶対に……」

 

「私のパピーであろうと、この子にとってはお祖父ちゃんになるんだから少しは大人しくなって欲しいもんだわ」

 

「え、お祖父ちゃん……?」

 

お祖父ちゃん、その言葉に先程までずっと頑なに譲らなかった星海坊主が僅かに動揺の色を見せた。

 

(な、なんだ……! お祖父ちゃん!? 何故だか知らんがそう呼ばれると胸の奥から熱いモノが混み上がって来る……!)

 

「パピーになる銀ちゃんもそうだけど、グランドパピーになるパピーもこの子の前で変な事しないでよね」

 

「グランドパピー!?」

 

 

パピーから新たなにレベルアップしてグランドパピーになるのだと実感した星海坊主。

 

初孫……つまり自分は孫娘の祖父になるのだと

 

それが徐々に頭の中で理解してくると、不思議と星海坊主の中での銀時に対する怒りがスッと消えていった。

 

代わりに湧き上がる感情は……

 

「もう子供二人がロクなもんじゃねぇからとずっと前に諦めていたが……! ようやく俺に初孫が!」

 

「ちょっと、なんだか私に失礼なこと言ってない?」

 

「うおぉぉやったぁぁぁぁぁぁ!! 遂に俺もお祖父ちゃんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「なんか勝手に舞い上がってるし、なんなのホント?」

 

待望の孫を授かる事をようやく理解した星海坊主は急にテンションを上げてガッツポーズをしながら咆哮。

 

ご近所に迷惑だから止めて欲しいと神楽が呆れている中、銀時もまたようやく解放されたとはぁ~とため息をつく。

 

「やれやれ、急に家に上がり込んで急に人を殴りつけて、挙句の果てに急に一人で喜んでなにがしてぇんだこのハゲ親父は、孫一人産まれる事がそんなに嬉しいもんなのかねぇ」

 

「銀ちゃんだってもうすぐ娘が産まれるんだヨ? 嬉しくないアルか?」

 

「正直に言うと嬉しいと不安の五分五分だな、娘ってかなりデリケートな生き物なんだろ? 年頃になったらお父さんを汚物扱いしたり反抗的になったり、おまけに親の知らぬ所でどこぞの馬の骨と交際とかしちゃったり……」

 

神楽に嘘偽りなく正直な感想を呟く中、ふと銀時はハッと気づいた。

 

自分と神楽の間に生まれる子供は娘……

 

つまりその娘もいつかはどこぞの知れぬ変な野郎に引っかかる恐れが……

 

 

 

 

 

 

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!! そんなことさせるかコンチクショォォォォォ!!!」

「いやちょっと待って、なんで銀ちゃんまで急に叫び出してんの?」

「認めません! お父さんはそんなふしだらな事絶対に許しませんよ!!」

「やだこの人、さっきのパピーとそっくりアル」

 

先程まで娘の相手にブチ切れていた星海の様に、未だ産まれてすらいない娘の未来の彼氏に父親としての怒りを初めて覚えた銀時。

 

娘を持つ父親というのは皆必ずしもこうなってしまうものだろうか、と神楽が自分の父親そっくりな発言をする彼を遠い目で観察している中、そこへまたしても……

 

「なにぃぃぃぃぃぃ!! 俺の愛する孫娘に彼氏だとぉぉぉぉぉぉぉ!? そんなのお祖父ちゃんが絶対に許さねぇぇぇぇぇ!!」

 

「お前もカ……なんアルか本当に」

 

先程まで孫が産まれる事に歓喜していたグランドパピーこと星海坊主はすぐに鬼の形相を浮かべて怒りに震え始める。

 

「もう娘が誰と結婚しようがクソどうでもいい! けど孫はダメだ! 孫だけは絶対に誰とも結婚させないぞ俺は! 君も同じ気持ちだろ銀時君!」

 

「その通りですお義父さん! 一緒に協力して世の男共を全滅させてやりましょう!」

 

「おい、どんだけずっと先の未来を見据えて妄想膨らましてるアルか、義理のバカ親子」

 

昔からいがみ合っていた二人がまさかの娘と孫の為に結託、将来現れるであろう未来の孫の彼氏を敵と見定め

 

銀時と星海坊主はガシッと手を取り合って協力関係を結ぶ、これには神楽も呆れ顔。

 

「よし、そうと決まったらその辺の飲み屋で作戦会議しよう! ついて来なさい銀時君! 夜兎族のお父さんに伝わる秘伝、娘の彼氏を撃退する方法を君に伝授しよう!」

 

「うっす! 参考にさせていただきますお義父さん!!」

 

「その秘伝で銀ちゃんを撃退しようとしてたんじゃないの? はぁ~」

 

神楽が疲れた様子でため息をつく中、銀時と星海坊主は今までになく意気投合した様子で、二人で勝手に玄関の方へ行ってしまった。恐らく、この下の階にあるスナックお登勢にでも行くのだろう。

 

「……まあいいわ、パピーと銀ちゃんが仲良くなってくれるなら、コレで少しは気持ちが楽になったし」

 

理由はともあれ、いつまでも銀時と父が醜く争い合っていては産まれる我が子にとっても悪影響になると神楽は考えていた。

 

しかしそんな神楽の心配をよそに、二人は共通の敵を見つけた事で仲良くやっていけそうだとホッと一安心。

 

だが最後に、もう一つの問題の種がここに残っている……

 

「それで、アンタはいつまでここにいんのよ? さっさと帰ったら?」

「まあそう言うなよ、姪っ子が産まれるまではしばらく地球にいようって決めてるんだよ俺」

「え、急にどうしたのアンタ……なんかバカ兄貴のクセに様子おかしいわよ……?」

 

銀時と星海坊主が行ってしまってもまだここに居座っている神威の言動に神楽が困惑の色を浮かべていると

 

彼は不意にニッコリ笑ったまま彼女に話しかける。

 

「ところで産まれる子供に名前とかもう決めちゃってる訳?」

「はぁ? 決めてるわけないでしょ、性別が分かったばかりなんだしこれから決めるわよ」

「そっかーなら……」

 

また急に変な事を聞いて来たので、神楽は怪訝な様子で返事すると、神威は人差し指を立て

 

「祖母の名を取って「江華」にしよう」

 

「いやなんでマミーの名前になんのよ! あ! アンタまさか! さてはその名前を私の子供に付けてもらう為に来たんじゃないでしょうね!」

 

「のび太も息子に自分の父親の名前を付けただろ? そんなノリで良いんじゃないかな?」

「どんなノリよ!」

 

自分の我が子に亡き母の名にしようと提案する神威に、神楽はすぐに思い出した。

 

ああ、そういやコイツもコイツでマザコンだったなと……

 

 

 


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