「……出ていきます」
「ふーん……え?」
自宅の自分用の事務椅子に座ってジャンプをボーっと読んでいた銀時に唐突に口を開いたのは
銀時のように死んだ魚の様な目をした志村新八であった。
「もう邪魔者でしかない僕がここにいる意味ないんで、これからは末永く二人でこの家で暮らしてください」
「おいおい何を言い出すんだよ新八君、お前が邪魔者? いつ俺がそんな事を言ったよ? 思った事はあるけど」
「あんのかよ! とにかく! 居辛いんだよここにいると!」
銀時の前にある机を勢いよくバンと叩くと、新八はキレ気味の様子でバッと後ろを指さす。
彼が指さした方向には、膨らんだお腹の上に乗せて赤ちゃん用のグッズが掲載されている雑誌を眺める神楽の姿が
「銀ちゃんヤバいアル、赤ん坊ってオムツやミルクだけじゃなくて服やベビーカーにもめっさ金かかるネ、ちょっとしか使わないクセにガキの頃からすんごい強欲アル」
「そんなもんご近所さんから借りて来ればタダだろうが、ベビーカーは源外のジーさんにも作らせればいいし、服なんか新聞紙で俺が作っておいてやるよ」
「オイ、もうすぐ産まれる娘の為に父親がやる事がそれでいいのかオマエ」
「産まれた時から常に節約すべしという教訓を身をもって体験させる、それが銀さんの帝王学だ」
オムツやミルク……あのあどけなくて天真爛漫な少女であった神楽がそんなモノの事を考えるようになるなんて……
すっかり母親っぽい風格になってしまった神楽と、それに一応は父親らしい事を言うようになった銀時。
二人の間に挟まれた新八は強い孤独感に苛まれ、一人ポツンと立ちすくすのみ。
「マジで居辛い! アンタ等がそうやってほのぼのと産まれる子供の事を相談し合っているのを見るとね! こっちはもう自分がいる意味があるのかどうかって考えちゃうんですよ!」
「はぁ? そんなことで悩んでたのお前? くっだらねぇな、そんなの普通にいればいいだけだろうが」
「普通にいれねぇから出ていくんだよ! アンタ等が結婚した事さえ未だに受け止めてないのになんだよこのイチャラブ空間! 童貞の僕が耐えれる訳ねぇだろ! もう僕はこの家から永久に去ります! 万事屋も辞めますんで!」
「おいちょっと待てって、いくらなんでもそりゃちょっと結論が早過ぎんだろ」
あんなにも頑なに万事屋の看板を守って来た男が、こうもあっさりと辞めると宣言されては、銀時も椅子から立ち上がってすぐに止めに入るしかない。
「確かに俺は数年前に武者修行だのなんだの上手い事言ってお前をこっからしばらく追い出したよ? けどな新八、俺はお前がここを辞めて欲しいだなんて事は一度も考えてねぇんだよ、俺が留守の間この店を護ってくれたのはテメェだろ?」
「それはただ僕だけお二人と違ってやる事が無かっただけです……今はもう二人がここにいる、僕の居場所はもうここにはありません」
「バカな事言ってんじゃねぇよ、お前がいなかったら誰がこの家を掃除するんだ、誰が俺達を朝起こしに来るんだ、誰がビデオの録画してくれるんだ」
「ほぼほぼアンタ等の世話しかしてねぇじゃねぇか! てかビデオの録画ぐらい自分達でやれよ! 家政婦扱いする気かコノヤロー!!」
そういえば昔から彼等の身の回りの世話を引率してやっていた様な気がする……それをふと思い出すと新八はますますここにいる事が嫌になってしまい、踵を返してこの家を後にしようとする。
「もういいです! 僕なんかここにいる必要ありません! こうなったらもっともっと修行して! 自分一人で生きて行きます!!」
「待てよマーク! 小室とKEIKOだけじゃ成り立たねぇんだよ! 俺の隣には常にお前が必要なんだマーク!」
「いやそれ万事屋じゃなくてglobe! 誰がマークだ!」
某有名バンドを引用して例えて来る銀時に対し、つい反射的にツッコミを入れてしまう新八
その隙を突いて立ち上がった銀時は彼の肩に後ろから手でむんずと掴む。
「いいからせめてウチのガキが産まれるまではここにいろって! あと一カ月ぐらいで産まれるんだから!」
「知りませんよあなた達の子供なんて! 僕をのけものにして勝手に二人で作った愛の結晶なんて見たら一層惨めになるだけじゃないですか!」
「おい変な言い方すんなよ! なんかちょっと恥ずかしいからオブラートに包み込め!」
「包めきれねぇよ!! 勝手に恥ずかしがってろロリコン天然パーマ!」
自分を行かせまいと説得を試みる銀時に、新八もまたムキになって意地でもここから出て行こうとする。
だがその時
「う……」
「「?」」
二人でギャーギャーと揉めていたせいですぐには気付けなかったが、ソファに座って雑誌を読んでいた神楽が急に苦しそうな声を漏らしてバサッと手に持っていた雑誌を床に落とした。
「く、苦しい……! なんかお腹から突然痛みが……!」
「「!?」」
苦しそうに顔を歪ませながら呻くように呟く神楽、明らかに様子がおかしい
これには銀時と新八もビックリした様子で慌てて同時に彼女の方へ駆け寄る。
「か、神楽ちゃん! しっかりして!」
「おい大丈夫か神楽! なに!? どうした急に! お前まさか!」
「ハァハァ……銀ちゃん、新八……なんか私急に苦しくなったアル……お腹も痛いし意識もフラフラネ……」
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」
ぼんやりと目を開けながら荒い吐息を繰り返し、大きなお腹を両手で支えながら辛そうに自分の状況を話す神楽。
汗ばんだ顔色がどんどん悪くなっている神楽に、これはただ事ではないと銀時と新八は突然の急展開に戦慄する。
「マ、マズいですよ銀さん! もしかして神楽ちゃんコレって! う、産まれちゃうんじゃないですか赤ちゃん!?」
「えぇ!? 嘘だろまだ予定日まで一カ月もあんだぞ!? フライングだろ! 失格だよこんなの!」
「出産に失格もクソもないですよ! とにかくこのままだとマズいですって! 早く神楽ちゃんを病院に連れてかないと神楽ちゃんとお腹の子の身が!!」
「とととととととととととにかく落ち着け新八! とにかくここは俺達二人で協力して!」
「一緒にタイムマシンを探すんだ!!」
「アンタが落ち着けぇぇぇぇぇぇぇ!!! 昔も見たぞそれ!」
自分以上に動揺した様子で銀時は慌てふためきながら、突然事務机の引き出しを開けて頭を突っこみ始める。
妻と産まれる子の身が危ないと知ってすっかりパニックになってしまっているアホな夫をよそに
新八はすぐに坂田一家の為に動き出すのであった。
一方その頃、かぶき町には一台のタクシーが軽やかな速度でのんびりと走っていた。
「どうですか皇子、久しぶりの地球観光は」
運転席にいるのは仕事中にも関わらずグラサンを掛けたふてぶてしいオッサン。
長谷川泰三、かつて一時のテンションに身を任せて落ちる所まで落ちて
最底辺の道を這いずり回りっていたまるでダメなおっさん、略してマダオである。
しかし数年前にかつて働いたことのあるタクシー会社に運よく拾われて、今ではしがないタクシードライバーに再就職する事が出来たのだ。
「ふむー、やはりどこもかしこもパッとせん星じゃのー、せっかく余が救ってやったというのにちっとも発展しておらんではないか」
そして後部座席に座るのは額に触覚を生やし、肥えた体をした偉そうな天人。
央国星の皇子ことハタ皇子であった。
「しかし偶然拾ったタクシーの運転手がまさかお前だったとはのぉ長谷川、お前のタクシーに乗ったのはこれで二度目じゃな」
「え、そうでしたっけ、前もこんな感じで皇子を乗せた事ありましたっけ?」
「おい、すっとぼけても余はちゃんと覚えてるぞ、あの時お前、余の事を思いきりぶん殴ったじゃろうが」
「いやー覚えてませんね、いやマジに覚えてません、ホント覚えてませんねそんな過去」
つい昔にあったエピソードを蒸し返してきたハタ皇子に、ヘラヘラと笑って誤魔化しながら長谷川はすぐに話題を切り替えた。
「それにしてもはるばる地球に来て動物園に行くなんて、相変わらず皇子は動物好きなんですねー」
「ああ? 当たり前じゃろうが、この地球にはパンダという珍しい生き物がいるんじゃろ? 余はそれを是非とも見ておきたいのじゃ、前はお前にぶん殴られて見れんかったからの」
「アハハ、随分と冗談が上手くなりましたねー皇子」
「いやぜってぇ覚えてんだろお前、わかってるから、こっちもう見抜いてるから、そのグラサンの奥で目がバタフライしてんのバックミラーから見えるから」
あくまでシラを切る様子の長谷川をバックミラー越しに見つめるハタ皇子。
どういう因果か、この男とはホントによく遭遇するなと考えながら
「ていうか長谷川、おぬし就職出来たんじゃな、てっきりまだ無職のままか、もしくはその辺で野垂れ死んでると思ってたんじゃが」
「ま、この星も救われたし俺もいい加減マダオは卒業しようと思いましてね、最初は退屈でしたが、こうしてのんびりとアホな客を乗せて遠回りしながら、代金を多くせしめるって仕事も悪くないなと思えるようになりましたよ」
「おいちょっと待て! 今コレ遠回りしておるのか!? ふざけんなよテメェ! 早くパンダに会いてぇんだよ! そのグラサンといかにも仕事してる感を醸し出してるニヤケ面をアッパーでかち割るぞ!」
よく見るといつの間にか長谷川は、片手でハンドルを回しながらもう片方の手でタバコを吸い出すという
明らかにタクシードライバーがやっちゃいけない事を堂々とやっていたのだ。
いくらお客がハタ皇子だからと言って、コレは流石に調子に乗りに乗りまくっている。
「実は最近知り合いが結婚しましてね、しかももうすぐガキが産まれるって聞いたんで、アイツ等には色々と借りがあるしこうして一生懸命働いて、俺から出産祝いの一つでも出してやろうかと考えてるんですよ」
「どの辺が一生懸命働いてんの!? さっきから車内がお前のタバコのせいで煙いんだけど!? 窓開けて窓!」
「どうしたんですか皇子? 窓を開けてこの町の光景をもっとじっくり見たくなったんですか? フフフ、アンタもすっかりこの国がお好きになったようで」
「な訳ねぇだろ! 煙いから窓開けろつってんだよ!」
こうして日々働いて金を稼ぐことにも長谷川なりに理由があったらしいが、ハタ皇子からすれば車内でモクモクと煙を吹きだす彼の姿は、どう見てもふざけてるようにしか感じられなかった。
すると突然
「ってあれ? おい長谷川、なんか前方で誰かがこっち向かって叫んでおるぞ?」
「え? あ、ホントだ、ってよく見たらアイツ等……」
窓を開けて新鮮な空気を吸っているとハタ皇子はふと気付いた。
前方でこちらに向かって必死に両手を振る人物がいる事に
「すんませぇぇぇぇぇぇぇん!! そこのタクシーと待って下さぁぁぁぁぁぁい!!!」
長谷川も何があったのかと車のスピードを緩めると、その人物が見知った顔だとすぐに気付いて運転席の窓を開け
「もしかして新八君!? おいおいなんだよ久しぶりだな! 銀さんからは武者修行の旅に出たって聞いてたけど帰って来てたの!? いやーすっかり大人っぽくなってて最初わかんなかったよ!」
「あ! 長谷川さんじゃないですか! なんで長谷川さんがタクシーを運転……もしかして再就職出来たんですか! おめでとうございます! ってそうじゃないだろ僕!」
運転席から顔を出してすっかり大人びた雰囲気になっている新八に陽気に挨拶する長谷川に、新八もすぐに彼に気づいて嬉しそうに祝福するが、今はそんな場合ではないと思い出し
「長谷川さん! 急で悪いんですけどこのタクシーで僕等を大江戸病院に連れて行ってください! 早くしないと神楽ちゃんがマズいんです!」
「ええ!? あのチャイナ娘に何かあったの!? 妊娠してるとは聞いてたけどもしかして!」
「そうなんです! 予定日よりも一カ月も早く産まれそうなんです! だから早く病院に連れて行かないと!」
「おいおい! そりゃあ確かに一大事じゃねぇか!」
必死な様子で神楽が大変だとなんとか説明し終えると、仰天する長谷川をよそに新八はすぐに後ろに振り返り
「銀さん! 神楽ちゃんを早くタクシーに!」
「よし待って神楽! 今すぐ病院に連れて行ってやるから!」
苦しそうに呻く神楽の肩に手を回して、あまり衝撃を与えないよう注意を払いながら銀時が現れる。
そしてタクシーに歩み寄った所で彼はふとピタと足を止めて
「あ、あれ? タクシーってどっから乗せるんだっけ? やべぇ急にど忘れしちまった、と、とりあえずこの後ろ側のトランクに入ればいいんだっけ……?」
「オイィィィィィィ!!! 今にも子供が産まれそうな女房をどこに押し込めようとしてんだ! どんだけテンパってんだよアンタ!」
「うるせぇな仕方ねぇだろ! 俺は生まれつきの天然パーマだコノヤロー!」
「その天パじゃねぇよ! なんなんだよアンタ! もうすぐ父親になるのにいい加減にしろよ!」
神楽を抱き寄せながらタクシーのどこに乗せればいいのかと混乱してしまっている銀時を、新八が彼の頭をはたきながらなんとか落ち着かせようとする。
そんな光景を車内から眺めていた長谷川は少し困った様子で
「マズい事になっちまったな……つうか前にもこんなシチュエーションがあったな確か……」
「そうじゃの、そんでそん時にお前、余を思いきり殴り飛ばしたんじゃったな」
昔も同じようにタクシーでハタ皇子を乗せていたら、これと全く似たような出来事に遭遇した事を思い出す。
そんな長谷川に対し、後部座席で他人事のよう万事屋を眺めていたハタ皇子は唐突に懐から財布を取りだし
「おい長谷川、もういいから余をここで下ろせ、釣りはいらん、とっとけ」
「皇子……!」
「こんな煙たいタクシーなどこれ以上いていられるか、最近お腹も出っ張って来たし丁度いい、余はここからダイエットする為に歩いて動物園に行く事にするぞ」
そう言ってハタ皇子はぶっきらぼうに財布から札を十枚も取り出して長谷川に押し付けると、すぐに後部座席のドアを開き
「少し払いすぎたかもしれんが余にとってははした金じゃ、そこの品の無い夫婦に出産祝いにでもしてやってくれ」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!? アンタ本当にあのバカ皇子!? なにそのイケメンな心遣い! 惚れるんだけど!?」
「おい、今さりげなくバカつったろ」
数年の時を経てハタ皇子も地球人に対する態度も変わったというのだろうか、それにしちゃ随分と気前のいい味な真似をしてくれる。
彼から無理矢理押し付けられた札を握り締めながら長谷川が信じられないと口を開けて驚いてる中
皇子は颯爽とドアを開けてキラキラとした威光を放ちながら銀時達の方へ振り返り
「おい貴様等、今丁度タクシーが空いたぞ、乗るんなら今……ぶへぇ!!」
「邪魔だどけぇ! 早くカミさん連れてかねぇといけねぇのになにノロノロと出て来たんだ係長!」
圧倒的カリスマを醸し出すハタ皇子に対し、神楽の事で頭が一杯になっている銀時はそんな彼を躊躇なく乱暴に蹴飛ばしてしまうと、彼女を運んで急いで後部座席へ
「よし! 長谷川さんすぐに出せ! 前方に通行人がいようが他の車がいようが構わねぇ! 全力でアクセル踏んで病院に行ってくれ!」
「構わねぇじゃねぇよ! いい加減アンタはもう黙っててください! 長谷川さんお願いします!」
「え!? あ、うん!」
後ろから大声を上げながら無茶な事を言い出す銀時を新八がキレて黙らせていると、長谷川も慌てて車を発進させる。
あっという間に動き出した車は急いで大江戸病院へと向かうのであった。
その場に銀時に蹴飛ばされ大の字で倒れているハタ皇子をほったらかしにして
「……やっぱこの星見捨てとけば良かったかな~……」
それから数分後、長谷川のおかげで銀時達は無事に病院に辿り着くことができた。
急いで神楽を運んで彼女の容態を診て貰うと
「そ、そんな……!」
「嘘だろ……嘘だと言ってくれよ先生!」
「いえ、間違いありません」
震えながら座っている銀時と新八に、神楽を診た医師が恐るべき宣告を突き付けたのだ。
「何度も言ってますがただの食べ過ぎです」
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」
「まー妊娠中の女性にはよくある傾向なんですよね、ホルモンバランスが乱れて食欲が増えてしまうという、と言っても彼女は度が過ぎてますが」
淡々とした口調で報告する医師に銀時と新八は開いた口が塞がらない。
あんだけここまで来るのに必死だったのに、まさかの神楽、ただの食い過ぎ
「しかしあそこまで苦しむ程食べるとは……よほどお腹が空いてたんですかねー」
「そういやアイツ、夜中にコソコソと大量の酢こんぶ食べてる事があったな……腹のガキに酸っぱい匂いが付くから止めろって言ったのに……」
「妊娠中は時期によって食事管理がありますからね、今まで我慢してた分余計に食べたくなっちゃったんでしょう」
頭を押さえて項垂れる彼に向かって医師はあくまで冷静に言葉を付け足す。
母子共になんの問題も無いというのは嬉しいが、あんなに焦っていたのが今となって恥ずかしくなる銀時。
「とんだはた迷惑だよチクショウ……こちとらアイツが倒れた時にどんだけ苦労したと思ってんだよ……」
「ま、まあいいじゃないですか銀さん、神楽ちゃんとお腹の子が無事だとわかったんですから……」
ガックリと肩を落としてため息をつく銀時を見て思わず苦笑しながら励ます新八。
昔から彼が神楽の事を大事に思っているのは知っているが、夫婦となった今では更にその思いが強くなってるんだなと理解しながら
(ホント、昔から大切なモノを護る為ならいつも一生懸命なんだからこの人は)
(そのせいでいつも変な事に巻き込まれてばかりで……だからこっちもほっとけないんだよな、この人を)
銀時を見つめながら新八がふとそんな事をふと考えるのであった。
程なくして医師との相談の結果、神楽は出産予定日までここに入院する事に
単なる食い過ぎで倒れてしまった自分自身に「一生モンの恥だわ……」と顔を赤らめながら病室で嘆く神楽を置いて
銀時と新八はひとまず彼女の着替えを持ってこようと病院を後にするのであった。
すると病院の駐車場には
「おい銀さん、新八君」
ここまで乗せてくれた長谷川がタバコを吸いながらこちらに笑みを浮かべて軽く手を振ってきた。
「いやーついさっき会社の方から連絡あってさ、ここに来るまでにスピード違反やら信号無視しまくったのバレちまったみたいでクビになっちまったよ、ハハハ、まあでも一人の命、いや二人の命を救ったんだからこれぐらい安いモンさ」
「へ、へー大変だね長谷川さん……今度飲み行く時奢ってやるよ」
「いやいやいいって、俺なんかよりもカミさんと子供大事にしてやりなよ、ところでこの俺が助ける事が出来た産まれた子供はどうだった?」
「……」
期待した様子でこちらに尋ねて来る長谷川に、銀時はどう言えばいいのか顔をしかめて考え込んだ後……
「フライングという事で規定によりリスタートになりました、またの開催をお待ちください」
「……ごめんどういう事それ?」
かくして神楽は無事に出産の準備に入り
長谷川も無事に無職になりました
次回、10ヶ月目、いよいよ……