ガールズ&ガンダム   作:プラウドクラッド

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いずれ1〜2年生時での出来事を詳細に書いた話を投稿するかもしれませんが今回がアンチョビ外伝の最終回となり時間軸が本編と合流します

時系列的に言うとみほ達が聖グロリアーナと練習試合している日から宇宙で愛里寿達に襲撃された日にかけての話になります


FINAL-PHASE その名はK

 それからまた時は経ち、アンツィオ高校は卒業式の日を迎えアンチョビは去りゆく先輩達4人の見送りに来ていた。共に廃れていたモビル道を再び築き上げ自分に着いてきてくれた彼女達にはこれ以上ない程感謝していた。彼女達がいたからアンチョビは黒森峰を去った後も自分のモビル道を貫けたのだ

 

 

「私が自分の道を進むことができるのは先輩達のおかげです。皆さんには感謝してもしきれません·····本当にありがとうございました!」

 

「あはは、嬉しいね。私らもあんたの下でモビル道やれて楽しかったよ」

 

「最初は遊び感覚でやれればいいと思ってたけどアンチョビに熱くさせられたせいでガチでやる様になったもんな〜」

 

「そーそー!色々大変なことばかりで試合でも全然いい所見せれなかったけど、結果的にこうして心身共に強くなれた訳だし·····私、この学校でモビル道始めれてよかったよ」

 

「それもこれもアンチョビが来てくれたおかげだな。·····ありがとね、アンチョビ。あたしらもプロのパイロット目指して大学で続けるからおまえ達も頑張れよ!」

 

 

 アンチョビから例え勝利できなくとも自分の思うがままに戦うことが大切であると教えて貰った4人は、そのお礼に彼女へ熱い言葉を送り学園艦から旅立って行った。彼女達からの言葉を胸に刻み、アンチョビはついに高校最後の年を迎えたのであった·····

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 4月になり入学式を終えた後、今年もアンチョビはモビル道のメンバー勧誘するためにカルパッチョとペパロニと共に城の隊長室で計画を練っていた。するとアンチョビ達が動き出すよりも先に多くの新入生が部隊への加入を希望し彼女のもとを訪ねて来たのであった。去年の全国大会では一回戦敗退に終わり練習試合も毎度勝てていた訳ではないアンチョビ達であったが、そんな自分達のモビル道へ対する姿勢や心構えは知らず知らずのうちに世間へ知れ渡り評価される様になり、アンツィオでモビル道を始めたいがために入学したという生徒もいる程良く認められていたのだ。アンチョビはその事実に大いに喜び勇気付けられ、より完全無欠な総帥として皆を率いて全国大会優勝を目指し特訓に励み始めた·········しかしそんなある日、アンチョビのもとに一通の手紙が届いた

 

 

 手紙はまほから送られてきたものであった。それを見てアンチョビは驚きすぐに封を開けて内容を確認すると、そこには彼女が黒森峰へ帰ってきたという事と今度の日曜日にアンツィオへ遊びに来たいという旨が綴られていた。まほとはアンツィオへ入学してから電話やメールで互いの近況を報告しあってはいたが、最後に別れた時以来一度も再会を果たせていなかった。そしてこの半年以上まほが宇宙へ修行に出て一切の連絡を取り合う事ができなかったので、現在まほの方から会いたいという連絡が来てアンチョビは彼女の無事に心の底から安堵しすぐ様是非アンツィオへ来て欲しいとの返事を書き送っった。親友と会う約束ができた事でアンチョビはこの2年間まほとは一度たりとも会えず離れ離れであったが、やはり私達の絆が砕けることは無く互いを信じ、感じ合うことができていたのだと改めて確信し感慨深い思いでいっぱいになっていた

 

 

 そして約束の日曜日、アンチョビはそわそわしながら学園艦のヘリポートで待っているとついにまほの乗るヘリが到着したのであった。着陸したヘリから降りてきたまほにアンチョビは全力で駆け寄ると思い切り彼女の身体を抱き締めた

 

 

「まほ!ひっっっさしぶりだな!会いたかったぞぉー!!!」

 

「あ、ああ。久しぶりだな、安斎」

 

 

 突然抱き締められたのとアンチョビのまほは少し驚いたが、その温もりに懐かしさを感じると表情を柔らかくさせアンチョビを軽く抱き返してきた。久しぶりに会ったまほの姿を今一度まじまじと見てみると、羨ましくなる程に自分よりも女性らしいスタイルに成長しており加えて纏っている覇気も以前より遥かに大きくなっている事を感じされられ実力も相当付けている事が伺えた

 

 

「本っ当に久しぶりだなまほ〜!全く色々と大きくなっちゃってさ〜!」

 

「ど、どこを見て言っているんだ!··········そういう所は相変わらずなんだな·····」

 

「え?まほ·····?」

 

 

 まほの表情に一瞬陰りが差したのをアンチョビは見逃さなかった。そして何処と無くまほの様子に違和感を感じ何か傷つく様な出来事があったのかとアンチョビは嫌な予感を感じた

 

 

「·····何か嫌な事でもあったのか?私で良ければ幾らでも相談に乗るし力も貸すぞ!」

 

「え·····い、いやそんな事はないさ。久しぶりに君と会ったから少し緊張しているのかもしれない」

 

「親友同士遠慮はしなくていいんだぞ。本当に何もないのか?」

 

「大丈夫だ。心配させてすまない·····」

 

 

 杞憂だったのか、気になる所ではあったが彼女が大丈夫だと言うのでアンチョビは一旦深く考える事を止めた。そして気を取り直すと本来の目的であったまほに自分が今まで過ごしてきたアンツィオ高校を紹介するために彼女の手を取った

 

 

「それじゃあおまえに我が校のモビル道を紹介してやろう!美味しい屋台もいっぱいあるから楽しみにしててくれ!」

 

「ああ、期待してるよ安斎」

 

「違う違う、今の私はアンチョビだ!それじゃあ行こうか!」

 

 

 まほが手を握り返してくれたのでアンチョビは彼女の手を引き本校舎の方へ向かい始めた。まほにこの学園での生活のことや新しい仲間達のことなどアンチョビには話したいことが山ほどあった。しかしこの時彼女は知る由もなかった·····まほがその心中にどんな想いを募らせ今日ここに来たのかなど··········

 

 

 

 

 

 その後アンチョビはまほを連れ学園艦の色々な所を回った。学園内に出ている屋台を食べ歩きながら互いに積もる話に花を咲かせていたのだが、アンチョビがアンツィオのモビル道について色々と紹介していると時折まほが怪訝そうな顔を見せていたのだ。そして例の修行について聞いても頑なに何も話そうとしなかったので、先程は否定されたが彼女に何かがあったのかも明白だった。そんな何も打ち明けようとしないまほがまるで別人に変わってしまった様な気がしてアンチョビは不安に感じていた

 

 

「なぁ、まほ·····さっきは大丈夫って言ってたけど本当はどうなんだ?確かにこうして一緒に遊ぶのはかなり久しぶりだけどさ、もっとあの頃みたいに甘えてくれても·····」

 

「··········君は黒森峰での生活と現在(いま)の生活どちらが楽しいと思っている?·····どちらが今の君にとって大切なものなんだ·····?」

 

「な、なんでそんな事聞くんだよ·····?そんなの選べる訳ないじゃないか·····」

 

「おーい姐さーん!歓迎会の準備もうちょっとでできるっすよー!」

 

 

 するとアンチョビ達のもとにペパロニが大きく手を振りながら駆け寄ってきた

 

 

「ペパロニぃ!まほの歓迎会は内緒だって言ったじゃないか〜!」

 

「あれ、そうだっけ?·····あ!あんたが西住まほっすね!今日の所は歓迎してやるけど全国大会であたしら戦車隊が必ずあんたを落としてやっからその首洗って待っとけよ!」

 

 

 ペパロニはまほに対し全く臆することなく啖呵を切ると元来た方へと駆けて行った

 

 

「戦車·····?君達は試合で戦車を使っているのか?」

 

「ああ。お金が無くてMSが買えないのもあるけどあいつみたいにマゼラアタックが好きな奴もいるからな。各々が自分の心に素直になって勝利のためにやりたい様になるのが私達のモビル道なのだ!」

 

「····················腑抜けている····」

 

「·····へ?」

 

 

 思いがけない言葉を親友が呟いたのでアンチョビは思わず間の抜けた声を漏らした。そもそもあのまほが他者を否定する様な事を言うはずが無かったのできっとただの聞き間違いなのだろう·····とそう信じたかった

 

 

「·····安斎。二人きりで話がしたい。何処かいい場所はないか?」

 

「え·····あ、ああそうだな。それじゃここから近いし私の家に行こうか·····」

 

 

 この時点でまほがその心に傷を負い自分に会うため今日ここへ来たというのは明白だった。だからこそアンチョビは唯一の友としてまほの傷を癒してやらなければと思い、彼女と共に城の方へ向かったのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 城の中へ入りアンチョビは自身の部屋である隊長室にまほを招き入れた

 

 

「何か飲みたい物はあるか?お菓子とかもあるけど·····」

 

「結構だ。··········随分と楽しそうだな。私と共にいた頃よりも·····」

 

 

 机の上や壁にかけられているアンチョビと彼女の仲間達を写した数々の写真を見てまほは暗い表情で小さく呟いた

 

 

「まほ、話って一体何なんだ?·····絶対力になってやるから私になんでも話してくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

「··········安斎。こんな学園は辞めて黒森峰に戻ってきて欲しい。頼む·····」

 

「··········は?」

 

 

 まほの口からまたも信じられない言葉が出てアンチョビは思わず固まった。彼女は確かに自分に一度出て行った黒森峰へ戻って来いと言ったのだ。それは自分にアンツィオの仲間達を捨てろという意味でもあった

 

 

「な、何を言っているんだ?今更戻るなんてそんな事できるはずないじゃないか·····」

 

「心配しないでくれ。以前の様に君を妬み忌み嫌う者達がいるのならば一人残さず学園から追放し排除してやろう。それにお母様の事も心配しなくていい。今こそ私があの人を討ち西住流の全てを手に入れる·····そして君の様な戦士も認められる新しい西住流を作り出そうじゃないか」

 

「違う!私はもうこの学園で最後まで戦い抜くって決めたんだ!今まで沢山の人が私達を応援して力を貸してくれた····だからみんなの想いに応えるために私は此処から出ていくつもりはない!」

 

「安斎·····?何故だ·····どうしてそんな事を言うんだ·····?」

 

 

 幾ら親友の頼みとはいえそんな願いを聞けるはずがなかった。共に戦ってくれた仲間達や自分達を支えてくれた学園艦の皆を裏切ることなどできるはずがない·····アンチョビは確固たる意思をぶつけそれを受けまほは激しく動揺していた

 

 

「おまえこそどうしちゃったんだよ·····あの時私を応援するって言ってくれたじゃないか·····」

 

「·····私には君がどうしても必要なんだ。無理を承知で頼んでいる。この通りだ·····」

 

「そう言われても·····」

 

「帰っていたのかアンチョビ。おや、君は西住まほ君じゃないか。よく来てくれたね」

 

 

 まほがアンチョビに頭を下げその意を懇願する中、丁度トレーズが部屋の中に入って来た

 

 

「あ、トレーズ様·····今ちょっと取り込み中で·····」

 

「トレーズ?そうか貴方か·····貴方が安斎を惑わし堕落させた張本人か。トレーズ・クシュリナーダ·····!」

 

「え!?何言ってんだよいきなり!」

 

「騙されるな安斎。この男は元々連合軍のMS開発部隊のトップに君臨していたが、軍の意向に反したがために現在はその権威を全て剥奪され軍からも追われてしまった身なんだ。そしてこの学園の生徒達を己が望む私兵へと育て上げ再び元の地位へ返り咲くために利用しようというのが彼の心算だ·····」

 

「·····な、何訳の分からない事言ってんだよおまえは!そんなの嘘ですよねトレーズ様!」

 

 

 まほの言う話がアンチョビにはとても事実とは思えなかった。しかし何故かトレーズはまほの言葉を否定する事なくアンチョビの問いにも答えること無く沈黙を貫いていた。事実トレーズはアンチョビと初めて会った時よりも以前、地球連合軍直轄MS開発・試験大隊『OZ』の総帥を務めていたのだが軍の上層部や地球圏代表議会の意向に従わなかったため組織は解体、開発資料や施設は全て後任を任されたアズラエル率いるブルーコスモスに吸収され軍を追われたトレーズは隠居せざるを得なくなってしまったのだ

 

 

「·····黙っているという事は認められたという事ですね?」

 

「一つ気になるのだが一体それは誰の受け売りなのだね?西住師範とは友好的な関係を築いていたと思っていたのだが·····」

 

「それは貴方には関係の無いことです。安斎、この男が君に近づき誘惑し続けてきたのは全て君を都合のいい手駒として使うためになんだ」

 

「嘘だ!そんな訳がない·····トレーズ様がそんな人な訳あるもんか!」

 

「いや、まほ君の言う通り私が君の様な気高き戦士を欲していたのは事実さ。未来のために必要なら以前の地位へ戻りたいと考えたこともある·····しかしだねまほ君。私を何とでも言うのは構わないが、アンチョビは今まで自分の意思で戦い続けてきたのだ。自分の進むべき道を行くためにどんな時も挫けず迷わず純粋に駆け抜けてきた彼女を君は否定したいというのかね?」

 

 

 アンチョビがトレーズの手駒だと言うのなら、それは今まで自分の意思でその道を貫き続けてきた彼女の全てを否定することに等しかった

 

 

「詭弁を言う·····!その物言いで貴方は安斎をたぶらかし黒森峰から連れ去った!」

 

「まほ!もうやめろ·····一旦落ち着いて冷静になろう·····」

 

「·····私は席を外すとしよう。久々の再会の邪魔をしてすまなかったね」

 

「待て!そもそもアンチョビアンチョビと·····私の友人をそんなふざけた名前で呼ぶのは辞めて貰おうか!」

 

「んなっ!ふざけた名前だと·····?」

 

 

 まほは完全に冷静さを失いその感情を剥き出しに声を荒らげ、更にアンチョビにとって大切な人達から貰った『アンチョビ』という名前をふざけたものと唾棄してしまった。それが当のアンチョビの怒りに触れないはずがなくその拳を震わせていた。トレーズは嫌な予感がし一度二人を引き離すべきと察知した

 

 

「まほ君、少し私と二人で話そうか。不満ならばそこで幾らでも私にぶつけて貰って構わない」

 

「安斎がいて不都合なことがあるとでも?私にはわかる··········安斎が黒森峰にいた頃よりも結果を残せていないのは貴方達が安斎を堕落させているせいだ!」

 

 

 しかしまほは止まろうとせず激発させた感情をトレーズへぶつけ続けた

 

 

「それにこの学園は性能の低いMS達だけでなく戦車まで試合で使っているそうじゃないか·····そんな舐め腐り切った姿勢がモビル道で通用すると思っているとは馬鹿にしているのか!」

 

「··········黙れ·····頼むから黙ってくれ·····!」

 

「アンチョビ·····?待てアンチョビ、落ち着くんだ」

 

「貴方だけじゃない·····この学園の生徒の様な低俗な連中に何時も囲まれているから安斎は惑わされその力を日々失っている·····!安斎にとって貴様達は邪魔でしかないんだ!私の友を返してもらおうか!」

 

 

 

 

 

 

 

 その刹那、アンチョビは怒りを滲ませた形相でその手で思い切りまほの頬を張った

 

 

「·····え?安·····斎··········?」

 

()()()()()まほ·····!おまえは·····おまえは本当に変わってしまったよ!」

 

「アンチョビ!」

 

 

 凄まじい剣幕でまほの襟首を掴み上げるアンチョビをトレーズは引き剥がした。まほは今アンチョビがアンツィオに来てから手に入れたかけがえのない存在の全てを否定したのだ。トレーズのことを、先輩達がくれた名前を、自分達のモビル道を、着いてきてくれる仲間達のことを·····例え相手が親友だろうとそれらを全て否定され我慢できるはずがなかった

 

 

「··········出て行け。·····さっさとここから出て行け!」

 

「安斎·····私はただ君に戻ってきて欲しくて·····また君が傍にいて欲しかったから··········」

 

「黙れ!誰がおまえの傍になんているもんか········もう絶交だ!二度と私の前に現れるな!」

 

 

 

 絶対に言ってはならない言葉をアンチョビは言い放ってしまった。まほがあんな事を本心から言える人物ではないと心のどこかではわかっていた·····だがそれを忘れてしまうほどに込み上げる怒りをアンチョビは抑えることができなかった。彼女から絶交という言葉を受けたまほは一瞬雷に撃たれたかのように固まり、その後何も言わずに部屋の外へ逃げる様に走り去って行った。すれ違う際彼女の頬に涙が伝って行くのが見えたが怒りの最中にあるアンチョビの目には映らなかった

 

 

「アンチョビ·····まほ君は君の親友だったはずだ。絶交だなんて口に出すべきではなかった」

 

「もういいんです!所詮低俗な私と西住流のあいつは友達になれる訳なかったんですよ·····」

 

 

 例えどんなに離れていようとも二人が進む道は同じ、あの日見た遠い星の光の様にどんなに時が経っても二人の絆は繋がり続ける··········お互いそう信じていたはずなのに今アンチョビとまほの道は分かたれようとしていた

 その後本来予定されていたまほへの歓迎会は中止となった。そして自分が弱いばかりに親友に捨てられたのだと感じていたまほは黒森峰へ帰還した後、みほが大洗で新しくモビル道を始めた事を聞き、己が失った物全てを取り戻せる程の圧倒的"力"への渇望を湧き上がらせた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日後、アンチョビは自分のしてしまったことを悔いていた。確かにまほが言った言葉の数々は許せるものではなかったが、それでも親友なのだから彼女の言葉を全て受け止めその上でちゃんと分かり合わなければならなかったのだ。にも関わらず手を上げた上に絶交だとまほにとって一番酷いことを言ってしまったのでアンチョビはただただ後悔していた

 

 

「アンチョビ。·····やはりまだまほ君のことを考えていたのかね」

 

「トレーズ様·····何かご用でしょうか?」

 

 

 部屋の机に突っ伏しながら自責の念に駆られていると扉の向こうからトレーズの声が聞こえてきた

 

 

「君に見せたい物がある。ついてきたまえ」

 

「·····?わかりました·····」

 

 

 アンチョビは何事かと思い部屋の外へ出てトレーズの後を着いて行った。そのまま彼の部屋に入ったかと思うとトレーズは懐からカードキーを取り出し暖炉上に飾られた置物のライオン像の口に差し込んだのだ。すると暖炉が大きく横へずれ長く下へと続く隠し階段が現れたのだ

 

 

「うわっ!なんですかこれ·····」

 

「·····行こうか。足元に気をつけるように」

 

 

 片手に灯を点けたランプを持ちトレーズが階段を降り始めたのでアンチョビも彼の後に続いた。おそらく学園艦の地下へと続いているその階段はランプの明かりが無ければ何も見えない程の闇に包まれていた

 

 

「トレーズ様·····一体私達は何処へ向かっているんですか·····?」

 

「君の方こそ今何処へ向かおうとしているの?君が選んだ道は、望む未来は一体何を目指しているというのだね?」

 

「·····教えてください。わからないんです·····どうすればまほと仲直りができるのか·····」

 

 

 あれから数日、アンチョビは何度かまほに連絡を試みたが取り合ってもらえずにいた。その上直接会いに行くことは確実に叶わないためどうすればいいのかわからなくなっていた

 

 

「·····その答えを私が示すわけにはいかない。君が自分で答えを見出さなければそこには何の意味もないだろう」

 

「そうですよね·····でも今のあいつに私の声を届けられる気がしなくて·····」

 

「だが声に出さなくともその想いを伝える方法を君はもう知っているはずだ」

 

 

 そしてアンチョビは暗くてわかりづらかったが自分達が階段を抜けかなり広い空間に出た事に気づいた。その闇の中鈍い光を放つモニターにトレーズは近づき画面を操作した。すると激しい光によって空間内は明るく照らし出されアンチョビの目の前に大きな隔壁がある事がわかった

 

 

「今まで私と共によく戦い続けてくれた。そしてこれは私が君へ送る新たなる剣だ」

 

 

 トレーズの言葉と共に隔壁はゆっくりと開かれていった。そしてその中にはアンチョビの愛機であるギャンが膝をつき眠りについていた·····のだがそのギャンの姿は以前のものとは装備や外装が所々変わっておりもはやアンチョビの知る本来のギャンではなかった

 

 

「これは·····私のギャンですよね·····」

 

「君が君の戦士としての意志を貫くために、君の望む未来を切り拓くためにこの機体を使って欲しい。·····だから戦え、戦うのだよアンチョビ。その想いを刃に乗せて·····君の心のままに戦い続けて欲しい」

 

「·····わかりました。ありがとうございますトレーズ様。もう迷いません·····誰よりも戦士として、私の意志でどこまでも戦い抜いてみせます!」

 

 

戦士(クリーガー)の名を持つアンチョビの新たなる機体【MS-15KG ギャンK(クリーガー)】。生まれ変わった愛機を得てアンチョビはより迷いのない戦士として自分の意志を貫き続けることを新たに決意した··········そしてまほに想いを言葉ではなく、その刃に乗せて彼女に届けるために·····

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました

アンチョビ外伝を始めたのも全てこの話を書くためだったので今までお付き合いいただき本当にありがとうございます。ラストはアンチョビの新機体譲渡イベントで締めさせていただきました。ちなみにタイトルの元ネタは知っての通りガンダムWより『その名はエピオンです』

ここまで色々なキャラクターが登場しましたがこれからも本編に引き続き登場し活躍させる予定です。特に前回が初登場だったカルパッチョをニュータイプであるかの様な紹介をさせてもらいました。というのもガンダム作品における早見沙織さん演じるキャラクター達には共通点のような物があるのでそれ故にとご理解頂けると嬉しいです

申し訳ない事に僕が我慢できなかったために投稿期間が前後してしまいました。本当に申し訳ありません。順番的にこの話を読んだ後に此方を読んで頂けると有難いです【https://syosetu.org/novel/176900/22.html








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