IM NOT MAN.I AM A DEAD MAN   作:HIKUUU!!!

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サボるって言ったな?あれは場合によってだ。熱下がらんのじゃいぼけこらぁ


ヒトか機械か

この職場に来たときのことを私は思い出していた。我がG&K社と連盟しているGSカンパニーの橋渡し兼、一技術者として彼らの扱うテクノロジーに興味を惹かれて、候補に名乗りを上げ、見事そのポストに収まることに成功した。確かに苦労の割に、本部からの覚えも余り良くなく、彼の会社との橋渡しもうまくいっているとは言いづらい。本部に召集された私に待っていたのは、重役達の虚偽は許さぬと鋭く光らせた瞳と、重苦しい雰囲気だった。

 

「ジム・カートマン。報告は以上かね?」

 

「はい・・」

 

重役の中でも特に、嫌、この会社に入っているものなら知らぬ者はいないであろう人物。わが社の社長、クルーガー氏が会議室にいる面子に配られたレジュメを会議室のデスクに放り投げ、未だに黙読する重役達の一人に声を掛ける。

 

「ヘリアン、所感を聞こう」

 

「はい、まず間違いなく我が社にとっても極めて重要な・・いえ、我が社の商品以上に欲しがる輩は多いかと」

 

「で、あろうな・・。嬉しい事に彼らは、我々に彼をレンタルという形で派遣してくれるそうだ。だがこのテストの結果だけで実戦投入する事態は避けたい。現場で指示を出す指揮官や、それを支えているスタッフ、それこそ戦場に立つ彼女達の事も考えれば反感も一入(ひとしお)だろう」

 

 

溜息を吐き、片眼鏡の奥に潜む懐疑的な視線をクルーガー氏と私へと彷徨わせながら読み終えた資料をデスクの上に置き、隣で熱心に熟読しているペルシカ氏に意見を求める。

 

「どう見る?ペルシカ、他の重役達が納得しそうか?人間としての彼を、君の娘たちと同じように扱うんじゃないのか?」

 

「そんな事、君が良く解ってるじゃないか。私にいちいち意見を求めないでくれ。どうせ私と同じ意見だろう?」

 

「ああ、率直に言って彼は、私達の大事に扱ってる彼女達と同じ扱いかそれより酷い扱いを受ける可能性が高い」

 

「だろうな・・。我々人類の為に尽力してくれている彼女達に申し訳ない話でもあり、彼にとってこの世界の歪さを知る事になるだろう・・。ヘリアン、ペルシカ、それにカートマン君、この件は私を含め此処にいるメンバーで基本対応に当たろう。人権擁護団体の格好の的だろうからな。彼は」

 

丁度映像資料として観察を始めたデッドマンの縦横無尽な暴れ振りにクルーガー氏は顎髭を撫でながら不敵な笑みを浮かべ、ヘリアン氏は驚愕の表情を浮かべ、ペルシカ氏はどう動いているのか分からない頭頂部の猫耳を頻りに左右へと動かしながら、興味と歓喜に溢れる熱を帯びた視線を画面の中の彼へと向けていた。

 

「誰よりも痛みと悲しみを知り、それでも戦い続けるヒトか・・。いいなぁ。ステキだなぁ」

 

「あら?あなたみたいなのでも好みのタイプってのはいるみたいね?ペルシカ」

 

「合コンで負け続けてる誰かみたいにがっついてないだけさ。見る目はあるつもりだよ、私は」

 

「なっ!?」

 

「はぁ・・下らない言い合いはやめないか・・」

 

 

早く家に帰ってゆっくりとコーヒーでも飲みながら、昔の映画が見たい。厄介事の報告だけだと思ったら更なる厄介事を引いてしまうとは、私はこのポストに志願しないほうが良かったのかもしれない。徐々に瞳が潤み始めたペルシカ氏の反応を盗み見ながら、痛くなってきた胃を私はそっと抑え込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・まぁまぁだな、鮮度やらが悪い食材にしちゃ上等な調理の筈だ。食ってみろ」

 

「おお、早速・・いただくぜ」

 

「頂きます。お兄ちゃん」

 

「頂きます!指揮官様!」

 

「・・その指揮官って呼ぶのをやめろ。カリーナ、良いから食え」

 

スタッフが働く厨房に無理を言って入り込み、サッサと飯を作れと五月蠅いスケイルと再会したからか俺の手料理が食べたいと控えめにお願いしてきた明日香の訴えに根負けし、使って良い食材を、俺のヒトとは思えぬ異様な出で立ちにおっかなびっくり教えてくれるスタッフに謝罪を入れ、作り上げたハンバーガーとフライドポテト、ハンバーグステーキ定食をテーブルの前で今か今かと待ち構えていたみんなの前に置く。

 

 

「お得意の在庫処理兼整理か?本当にマメな奴だよなお前。顔に似合わず」

 

「放っとけハゲ」

 

ハンバーガーとフライドポテトをスケイルの前に、ハンバーグ定食をカリーナと明日香の前に出し、茶化すスケイルの言葉に頭部についてのヤジを入れてやる。

冷蔵庫の中はお世辞にも状態の良い食材が少なかったので、余っていたであろう牛肉と豚肉の塊を包丁で滅多切りにした後に玉ねぎやニンジンなどを使った野菜多めのハンバーグにしてしまった。卵とかも使っちまったが、文句も言われなかったし、思ったより食糧関係はそこまで悲観的にならなくても、良いのかもなと独り言ちながら早速ハンバーガーに齧り付いたスケイルが満面の笑みで伝えてくる。

 

「ウメェ。ドリンクコーラな」

 

「あいよ、カリーナと明日香は?」

 

「あ、私はお茶がいいな」

 

「し・・デッドマン様、私は食後にお願いしますわ。コーヒーをお願いしても?」

 

「様はいらねぇ。デッドマンでいい。今取ってくる。カリーナは欲しいタイミングで言え」

 

ほうじ茶とコーラを取りに踵を返せば、元々食事の時間外の為少なくなったスタッフの一人が冷蔵庫前に居座り俺に嫌悪感を隠さずに尋ねる。

 

「最近の戦術人形は調理もお手の物ってわけか?今度は俺達の代わりに料理も作ってやるってか?」

 

「あぁ?テメェ何言ってやがるんだ。退けよテメェ、邪魔なんだよ」

 

 

大柄な如何にも外国人のおっさんという風体の調理スタッフのいらだちに反感を覚えた俺は唸る様に退く様に吐き捨てる。

 

「テメェ・・人形風情が人間様にたてつこうって訳かい?」

 

「下らねぇ勘違いしてんじゃねぇよ。俺は人間だ」

 

「ほっほぉ?そのカラダで?そんな戦場に立つしか出来ないようなスクラップの体でか?人様おちょくるのも大概にしやがれよ!!」

 

「ウゼェ・・言っても分らねぇなら一発ぶち込んでやっても構わねぇんだぜ?俺は」

 

「テメェこそ偉そうになんなんだ!人形は人間様に跪いて大人しく言われた事だけやってやがれ!」

 

「聞き分けのねぇオヤジだな。今、ここで、くたばるか?」

 

俺とおっさんの騒ぎを聞きつけたスケイルがハンバーガー片手に呑気にやってきながらおっさんに話しかける。

 

「おい、そこのスタッフ、こいつは人間だ。俺が保証するぜ?それともここの社長の言葉が信じられないか?」

 

「ス、スケイルさん、いや、これはその・・」

 

「まぁ落ち着けって。この野郎は確かに恰好は戦術人形みたいに見えるかもしれないが、紛れもない血が通った人間さ。俺と一緒に戦場を駆けたかけがいのない戦友だ」

 

ハンバーガーを咀嚼しながらコーラをくれと空いた手を差し出してきたスケイルに慌てておっさんが冷蔵庫から冷えたコーラの瓶を引っ張り出し、手渡す。

スケイルは蓋を起用に片手で引き剥がし、コーラを飲み込み、口の中のものを胃袋に収める。

 

「ゲッフ、まぁこれから一般職員にも通知するから焦るなって。行こうぜセイジ、飯は落ち着いて食いてぇ」

 

「ああ・・」

 

「それとコーラありがとよ~」

 

怯えるおっさんを無視し、冷蔵庫からほうじ茶を取り出した俺は食いながら歩くスケイルの背に続く形で厨房を後にした。

 

「悪かったな」

 

「何がだ?」

 

「ま・・これからいろいろ知るさ。気楽に行けよ相棒」

 

「お前ほど気は抜くつもりはない。・・・相棒」

 

「その方がお前らしいよ。俺達が揃えば何でも出来るさ。こんな程度障害にすらならないだろう?」

 

「ふん。・・と言うかお前社長だったのか」

 

「・・・あれ?言ってなかったっけ?」

 

 

 

 

 

 

 




エイシャァ!(ねっとり)人権問題とか色々な描写、又、ドルフロ世界の政治などについて深く掘り下げた内容なども今後出てきますが、一言言います。
別に今の現実の問題とか風刺するつもりないからね?それだけ言っておくよ。別に今の政治家に期待してないし。一部の連中位だね。まぁ複雑な描写とか嫌な描写あったりするかもだけど、戦闘の爽快感みたいなものやらは損なわないようにするから、そこだけ楽しみに待っててくれてもいいよー(投げやり)

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