IM NOT MAN.I AM A DEAD MAN 作:HIKUUU!!!
じゃけん、殲滅しましょうね。(M4とMK17持ちつつ)
ガランとしたシャワー室の前の脱衣所、そこで俺は大きな姿見の前でボディアーマーのロックを解除する。肉体事拘束されているかのような出で立ちが徐々に己の手によって外され、秘められた肉体が露になっていく。
――――――皮肉にも、姿見に映った己の上半身は数多の傷痕こそ残っているものの、このカラダになる以前のものだった。
外した装甲や中に着込んでいたラバースーツを無造作に床に放り投げ、姿見に映る自分の姿を見て、沈鬱な気持ちが更に落ち込む。
「なんだよこりゃあ・・・ホントにダルマじゃねぇか」
股間を守っていたプロテクターとラバースーツを脱ぎ捨て、改めて全裸になった己自身を眺める。分かっていた事だった。目を逸らしてきた事だ。義妹に指摘されたのを機に、焦燥感とでも言うべきか、一度シッカリと己自身を知るべきだとシャワーを浴びる目的でシャワー室に訪れて見れば、非情なまでの現実が俺を待ち受けていた。
接合された義肢を除けば、俺の残った肉体は胴体と頭部、そして僅かに残った下半身、嫌もう股間周辺のみか。自然と渇いた笑いが漏れていた。
「くくくく・・・・死に損ないもここまでくれば呆れるな。俺は何時になったら家族の元に逝けるんだろうな?」
被りを振りながら、右手で頭を押さえて呻く。
「あ”あぁぁ・・・・」
見れば見る程、生かされて『兵器』としての面が強調された今のカラダに不快感を隠せない。両親が俺に最後に残してくれた、俺の・・・
「俺の体すら持って行くのか糞がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
映る自分の姿に不快感や怒り、悲哀を感じ、もう見たくない一心で姿見を拳で叩き割る。
バリンと勢い良く拳を叩きつけても皮膚は裂けない。血は流れない。その光景が更にいら立ちを加速させていく。
一度殴れば、更に鏡が砕ける。痛くない。
もう一度殴って今度は鏡を立てかけていた壁が凹む。それでも痛くない。血も流れない。
鏡をグシャグシャにしても、壁をどれだけ壊そうと、凹ませようと痛くない。痛くないんだよ!!感触も!!何もかもないんだよ!!!!!!
「糞が糞が糞が糞がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
頭を掻き毟ると頭皮は義肢の強烈な力に痛みを示す。その事実が更に俺を怒らせていく。
怒りのまま両手を見れば、指にゴッソリと白髪が引っ付いていた。砕けた鏡片から頭部から出血した俺の姿がチラリと映った。それを見ただけでもう耐えられなかった。
「あ”あ”あああああ!!!!!!!!!!!」
絶叫を上げながら何度も何度も砕けた鏡片へと頭突きを繰り返す。ここなら感じられる。痛みもある、血も出る。なら俺はまだ生きてる。こんな姿だろうと生きてる。
流血をそのままに、脱衣所からシャワー室に続くドアを怒りのまま蹴り壊し、タイルを踏みしめる。どんな力で蹴ろうが痛くもない。凹みすらない。そんな義肢の姿にドアから砕けて飛んだ樹脂製の素材を踏み壊しながら手近にあったシャワーのヘッドを引っ掴む。
力加減を間違えたのか、シャワーのヘッドはミシリと軋んだ。荒い動きのまま水道のコックを捻り、湯を流血した頭から被っていく。
頭皮に奔る痛みに顔を顰めながら、コーヒーを浴びた右腕をもう片方の腕で乱暴に濯ぐ。傷口に湯が染みる感覚がこんなにありがたく感じる日が来るとは予想していなかった。
少しずつ頭が冷えてきたが、いつも感じていたあの包まれる様な温かさを全身に感じない。入浴した時のあの多幸感が感じれない。そういう意味でも俺を苦しめるのか。
半減した心地よさに収まって来た筈の怒りが再び燃え上がっていく。
戦闘時に頼りになるこの義肢は、日常生活に置いては殊更不便だった。分かっていた。理解していたつもりでも実際に体験すると愕然とする。
「クソ死にてぇ」
気付けばぽつりと弱音を落としていた。人並みの幸福だとか、そんな物には今更頓着はしていないつもりだったが、辛いの次元ではない。気が狂いそうになる。四肢の感覚がないのはこんなにも心細いものだったのかと。
「う・・おおぉぉ・・・」
頭に感じる温かさとは別に頬に温かさが滴り落ちてくる。
「父さん、母さんごめん・・・!ごめんなぁ・・・!」
俺を愛してくれた最初に贈ってくれた大切な体。色んな愛情を注ぎ込んで貰った思い出も悲しみも、苦楽を共にした体が勝手に他者に作り替えられたのは自分の責任だ。こんな復讐者なんてやっているからいつか死ぬとは思っていたが、これは死より辛い仕打ちだった。親不孝者な自分をお許し下さい。
こんな姿になっても、あなた方の、息子として、あなた方が最期に望んでいたであろう幸せに生きる道に納得せず、戦場を渡り歩き、復讐を続ける不出来な息子をお許しください。
降り注ぐ水滴に混じって瞳から涙が零れ落ちて行く。俺に残された家族との直接的な繋がりが失われたのが、酷く、俺の心を苛ませる。悲しい、寂しい、苦しい、父さんに会いたい。このバカ息子がとこんな時に叱って欲しかった。母さんに頬を打たれても良いから心配して欲しかった。妹に大泣きされてボコボコにされたって良かった。
何時までも。何時までも、俺の心にいるのは温かく迎え入れてくれた家族なんだよ。会いたいよ。寂しいよ。
膝から崩れ落ちて、タイル床へとへたり込む。力なく震える手で頭部を覆い隠す。ああ、大丈夫。泣いて、泣いて、届かない願いを求めて心が張り裂けそうになってもまだ立てる。まだ終わりじゃない。まだ終わってない。『俺達』を絶望に突き落した奴等ははまだ生きている。あいつらは必ず地獄に叩き落す。だけど今だけ、今だけで良い。あなたの方の家族に戻らせてください。
今の俺はデッドマンじゃない。愚かな馬鹿息子だ。だから今だけは心の底から泣かせてくれ。
子どもの様に、無様にみっともなく泣かせてくれ。
「父さん、母さん、リサ・・会いたいよぉ・・・痛いんだよ・・・胸がずっと痛いんだ・・・うああああああ・・うわぁぁぁぁぁあっ!!!」
涙を乱暴に拭った右腕が、シャワーで温められている筈なのに俺には死人のように冷たく感じられた。
俺の傷は癒されない。奴等を殺して止めない限り、永遠に。
んー。不満足な出来。正直ちょっと強引な描写な印象。