IM NOT MAN.I AM A DEAD MAN 作:HIKUUU!!!
上空から眺める地平線にはまだ緑がちらほらと見え、荒廃した世界だという事実を忘れそうになりながら手持ちの最後の煙草を喫い終えた俺は灰皿に吸い殻を捨てて、眼下の大地をこの目へと焼き付けた。
その様子を見ながらヘリを操縦するおっさんが、相変わらず笑みを湛えながら声を掛ける。
「緑が残ってるのが意外ですか?」
「ああ、荒廃した世界だと。事前に聞いてはいたからな」
「ここは『人間』が生活できる居住区に近いからですぜ。それ以外の場所だと・・・それは酷いもんです・・。化け物に、訳の分からない環境、かつての栄華の名残の残る廃墟街・・。正直、任務で行っても狂いそうになる。悍ましいなんてものじゃない。文字通り人が住める土地じゃなくなってるんですよ・・」
珍しく苦々しい表情を浮かべて、忌々しげに告げた彼の言葉に深く頷き、疑問を口にする。
「随分と詳しいな。ウチの仕事で行ったのか?」
「いや、正規軍での話でさぁ・・。忘れて下さいや、思い出したくもないんでさぁ」
胸糞が悪いとでも言う様に吐き捨てた彼の強い拒否に追求もせずに、別の話題へとすり替える。操縦桿を操りながら耳を傾けている彼へと。
「何故ウチに?他にも傭兵をやるのなら良い会社があったんじゃないのか?それこそG&Kとか」
「その会社の事は話さないでくれ。頼む・・。色々、色々あったんだ・・」
弱弱しく告げた彼に、思わず口を閉ざし、先程から彼の地雷しか踏んでいない事実に内心、我ながら見事に爆破したなと辟易しながら気まずいコクピットの中、手持ち無沙汰にSCAR-Hの改良されたアイアンサイトを眺め、ヘリの前方遥か先を飛ぶ野鳥の群れにイメージの中でソレを構え、単発射撃へとセレクトファイアを弄り一番ケツを飛ぶ野鳥へと弾丸を放った。
イメージ上の弾丸は上空の気流に逸らされ、右翼を撃った筈の弾丸は野鳥の胴体を貫き、地へと落す。
「補助システムがないと、こんなもんか・・」
所詮イメージ。この通りではなく、実際に撃っていたら外れていたかも知れない。
実戦前にイメージだけとは言え、昔に愛用していたアサルトライフルの癖を思い出して戦闘に備えているが、戦闘は水物だ。絶対もないし、奇跡だって起きる。
こんなカラダになる前に、一番最初に
「旦那、そういやあんた名前は?」
「デッドマン、死に損ないとでも覚えておいてくれ」
「死に損ないね。まぁ一応俺も簡単に紹介しておきましょうか。俺ぁトーマス。トミーと呼んでくれ」
「よろしく、トミー。今生の別れかも知れんがな」
「そこが俺達兵士の辛いところでさぁな。まぁ死ななきゃ一杯やりましょうぜ。旦那」
「期待しないで待っとけ。死んだら、墓には煙草とウォッカを頼む」
「厚かましい男だな、旦那」
「こう言っとけば死にはしねぇよ」
小さく鼻でお互いに笑い、トミーは片手で懐を弄り、俺の方へと封の切られていない新しい赤いパッケージの煙草を放り寄越してくる。
「良いのか?」
「良いんでさぁ。あんた、煙草売ってる場所知らねぇでしょ?っていうか基地から出てねーでしょうし」
「それはまぁ・・その通りだな」
「そいつは選別でさぁ。まぁ・・そろそろ支度して下さい。あと10分弱で目的地上空。降下準備は?」
「見ろよこれ行軍用のバックパックより薄いんだぜ?」
「薄くていいのはコンドームと始末書だけですなぁ」
「違いない。5分前に弾倉を装填して待機する」
二人してニヤリと下衆い笑みを浮かべ、長年の相棒かの様に淀みなくお互いの状態を確認し、俺は貰った煙草を展開した右太腿のホルスタースペースに捻じ込み再び眼下の景色を眺める。
「了解」
チラホラと人の気配がない廃墟が見えてきた遥か先に巨大な防壁に囲まれた都市区がいよいよ見えてきた。あれが、この世界での俺の初めての戦場だ。
「現地到着5分前」
「了解、弾倉装着及び、最終装備点検開始」
灰皿の近くに置いておいたマガジンを右手で拾い上げ、空のSCAR-Hにマガジンを差し込み、何時も通りにチャンバー内に弾丸を送り込むべくチャージングハンドルを引き、セレクトファイアが射撃不可になってるのを確認してから抱き抱えるようにして保持。
「手慣れてますな」
「空からの出撃は初めてじゃないからな」
「それは心強い。っと、こちらトミー、HQ現地到着間近。これよりヘリボーンを行う」
≪了解。デッドマン降下後は速やかに当基地へ帰投し、燃料補給を済ませ待機されたし≫
「了解。任務遂行します。旦那、時間です」
「ああ・・じゃあ行って来る」
背中に背負った極薄のパラシュートを確認し、左肩口から展開用にぶら下がったチェーンに絡まりがないのも確認し助手席のシートベルトを外し、ドアを開け放つ。
「なぁ。一言良いか?」
「何です?」
「やっぱり止めだ。俺は行くぞ」
頬を撫でる等とは口が裂けても言えぬ強風の中、嘲笑っているかの様なムカつく髑髏面を無造作に被り、背中の装甲と連動して連結したのを感じながらそれだけ呟き、下で光を乱反射し煌めく都市部の中で断続的に響く銃声を聞きながら降下体制へと入る。
「ドロップシーケンス開始!幸運を!」
「デッドマン、
へリのタラップを蹴り落ち、一瞬の浮遊感の後、頭から真直ぐに最前線を目指してSCAR-Hを右手に、装甲越しに押し寄せる風圧とGに歯を食い縛りながら徐々にマズルフラッシュやら爆炎が見えてきた大通りへと視線を向け、パラシュートのチェーンを思い切り引っ張る。
パラシュートは正常に展開し風を孕んで急に膨らんだ為にガクンと強烈な衝撃を俺の全身に与え、すかさずトグルを操作し、最前線に程近い遮蔽物となっている車両止めを目指して進路を切る。
「んだありゃあ!」
「構うもんか!やっちまえ!」
目敏く降下してくる俺を補足した敵兵・・姿を見るに私服の上に粗雑な手製であろうアーマーやら防具を付けた若年から老人に至るまでもが目を血走らせて銃火を俺へと向けて来た。
だが、こちらもタダでやられるわけには行かない。
右手に握ったSCAR-Hを左手で支え、パラシュート上と言う不安定な状態にも拘わらずセレクトファイアをAUTOへと切り替えた俺は手前でMAC10を乱射してくる敵兵に狙いを付け5連射。2発ほど至近弾として外れるもサイトの先で男は胴体に3発鉛球を食らいもんどりうって倒れる。
7・62㎜弾の強烈な反動をコントロールしながら、次々へと俺に銃火を浴びせる連中を黙らせていき、地面が近くなった所でパラシュートをパージし両脚で衝撃を押し殺し、仁王立ちするように大地へと降り立った俺は、殺気立つ敵兵達を前に弾が切れたマガジンを地面へ投げ捨て、新しいマガジンをタクティカルベストから抜き出し再装填。
無言のままチャージングハンドルを引き、流れる様に発砲。
額に風穴を開け、血の華と脳漿をぶちまけた男を最後に辺りを掃討し終え、付近に味方らしき姿がない事に気づき管制役のカリーナとジムへとどういうことか確認するべく、バトルマスク内の通信機能を立ち上げた。
「カリーナ、ジム聞こえるか?」
≪ええ、ばっちり聞こえていますわよ≫
≪大丈夫です。感度良好≫
「降下は無事成功。手厚い歓迎を受けたが、丁重にお断りした。だが味方がいない。どういうことだ?」
≪どうやら、今デッドマンがいるのは敵後方ですね・・。合流地点を間違えましたか?
≫
「可笑しいな。最前線に降下しているんだぞ?それが後方・・・?」
≪すいません、治安部隊が押されているみたいです。それで降下前との合流地点の変更が今、連絡されました・・・≫
思わず舌打ちし、すぐさま向かい合流する旨を伝えた俺は肩にSCAR-H担ぎ上げ、敵兵の亡骸を一瞥し、新たに視界の端に映る周囲のミニマップに更新された赤く点滅する合流地点へと目指すべく駆け出した。
そんでも、経験による読みはまだ負けねぇ!(QSできなくなった砂の末路。つまり芋砂)