IM NOT MAN.I AM A DEAD MAN   作:HIKUUU!!!

22 / 50
いくらでも、いくらでも俺は待ち続けるぞぉ・・・。眠り姫ぇ・・・・


生存本能

「なあ、おい!俺達の事さんざん舐めてくれたよなぁ?いい気味だぜロボさんよ?」

 

「何とか言ってみろよ。あれだけ粋がって結局俺達に負けたなぁ?」

 

俺の意思など関係ないと沈黙した義肢に散々動けと念じて生前動かしていた己の手足の様に動かそうともピクリとも義肢は反応せず沈黙を貫いたままで、俺は囲まれた状態から引きずり立たされ膝立ちの状態で両手を片方ずつロクな訓練もしていないと見て取れるお世辞にも鍛えられたと言えない防衛隊の人員の弱っちい腕に拘束される。

マスク越しに怒鳴られ挑発されるが、着弾し負傷した箇所の把握にリソースを割き、奴等の応答に沈黙を貫く。

 

負傷した箇所は貫通した胴体胸部の右下部。そこに数発貰っているらしく熱を持った痛みと出血して負傷個所に異物が埋まっている違和感が押し寄せる。弾丸は肉体を貫通せずに皮肉にも強固な装甲が仇となって中途半端に威力が削がれた弾丸が俺の体に食い込み残留している。浮かぶ脂汗と痛みの波に歯軋りし、俺の眼前でニヤニヤといやらしく笑い続ける隊員達が、反応のない俺に対し業を煮やしたのかストックで俺の顔面を殴打する。

 

「ぶは・・!」

 

ガツンと鼻をマスク越しに殴られ、衝撃に首が仰け反り視界が揺れる。今までの出血と痛みから蓄積したダメージに頭が緩慢としか言えぬ遅さで思考を始める。

 

「おい何とか言ってみろよ。ブリキ野郎」

 

「・・・まるでテメェのフニャチンみてぇな殴打だぜ・・思わず・・・欠伸が出る」

 

何度目かによる煽りに俺はギリギリと異音を発して緩やかに動き始めた右手の指を中指を突き立てた姿勢で固定し挑発し返す。ジクジクと熱を持った胸の痛みに歯が折れそうな程噛み締め耐える。

此処で俺が死んでも次の奴等が、マック達が上手くこの事態を収拾してくれるだろう。俺は何時もと変わらず、前を見据えて死ぬ。

 

本当に?俺は死ぬのが怖くないのか?やれることはもう何もないのか?やり残した事は?

 

突如として不意に現れた胸中の吐露に自身で困惑しながら、目前で怒鳴り散らす隊員の姿を虚ろに眺めながら思考へと意識を傾けてみる。

 

 

何時もそうだ。死ぬのは怖くないと嘯き(うそぶき)ながらも、心底思ったんじゃないのか?死にたくないと。何かやり残したんじゃないか?

 

―――死ぬのは怖いし、何も残せずに死ぬのも嫌だ。誓いはまだ何も果たされていない。やり残した事なんて山ほどある。マックの奴の女にしか見えない顔が、俺の手料理を食べて優しさのある温かい味だとあの無表情が綻んで喜ぶ姿がもう一度見たい。スケイルにだって返しきれてない恩がある。最後まで俺を見捨てなかったあいつに

俺はまだまだ恩を、礼を返しきれてない。ヘルドックにおかえりって抱き締められてもいない。フロッグの曲芸だってまだ、このカラダになってから一度だってない。俺の仲間全員にまだ会ってない。

 

 

ああ、俺が死んだらマックはボロボロと涙を零すのかな。ヘルドックには何時も通りに俺が死体になっても頬にビンタを食らうのかな。それで後から一人で部屋に閉じこもって泣くんだろうな。何時もみたいに。スケイルは泣かないだろうなぁ。きっと俺の遺志を継いでくれる。俺のやり残した任務を完遂してくれるんだろうなぁ・・・。そんで墓前に報告に来てくれるのかな、俺の好きなウォッカと煙草片手に・・・。フロッグは笑うんだろうなぁ。殺しても死なない奴ってずっと言ってたしなぁ。嘘だろって質の悪い冗談はやめろって笑い飛ばすんだろう・・・。

みんなにまだ会ってないんだが・・・。

 

明日香にもまだちゃんと話せてない。謝ってやれてなかったなぁ・・・。

 

ぼんやりとそんなどうでも良い事を考えながら、反応のない俺に怒り心頭な隊員の一人が手に持つ銃器の銃口を俺に向けてくる。人の命を奪う物。俺が戦場に立ってからずっと相手に向けて来た物。向けられた回数なんて数えきれないし向けた数も覚えちゃいない。だけど俺にはそのありふれた光景が酷く心をかき乱した。

 

―――死ぬのか?やっと俺は死ねるのか?

 

もう休める。もう戦わなくて良い。もうこれ以上自分の心を壊さなくて済む、やっと楽になる。そんな思いを胸に哀れな白髪のやつれ切った老人の様なみすぼらしい姿をした俺の心とまだ任務は終わっていない、まだあいつらの陰に怯え虐げられる者達に手を差し伸べられていない。超帝国主義派の連中の悪行を、暴走を止めていない。殺し尽くしていない。そんな義務感とも使命感とも何とも言えないものを翳した目だけが異様にギラついて痩せ細って顔の骨格が浮かび上がった俺の姿をした心が争っているのを幻視した。

 

人だかりが割れ、中から丸々太った腹を惜しげもなく左右にリズミカルに振りながら歩いてきたフラスゴの姿を眺めながら幻視した俺達が遂には現実まで進出したのか、隊員達の真ん前で争っているのに誰も気づいておらず二人の俺は殴り合いをしている。

 

老人の様な俺は元々死んでた俺が生きてるのが可笑しい、死ねる内に死のうと叫びもう片方を殴り、ギラついた目

の俺は私の様な者を生まない為に、武器を取り立ったのではなかったのか。自身の欲望のままに楽になりたいがために死ぬのは愚者の教えだと老人の様な俺を蹴る。

 

その光景を眺め続けている俺は目の前で煙草を吹かせて煙を此方の顔面に吐き出してきたフラスゴの姿に今の状況を思い出し、現実へと引き戻される。

 

「情けない格好だなぁ?えぇ?傭兵」

 

「ああ、そうだな・・・」

 

フラスゴの言葉にも適当に返事を返しながら目の前で争う二人の俺の姿がどうにも気になり目で追ってしまう。

 

老人の俺は楽になりたいから死のうと、目がギラついた俺は愛すべき者の悲劇を再び生まぬ為に私は戦場に立っただろう。誓いを忘れるなと遂には殴り合いを止めてフラスゴの左右に立ち俺を見下ろし叫ぶ。

 

『俺も早く家族の元へ行きたいだろう?なぁ、もう疲れたろう?もう苦しみたくない、痛みも怒りだってすべて忘れて横になりたい。それで良いじゃないか!』

 

『始めたのは奴等だ。それは変わらない事実だ。胸に抱いた誓いと義務を忘れて楽になるのか?死んだ戦友達の思いは?この怒りと憎しみの矛先を向ける奴等はまだこの空の下でのうのうと暮らしているぞ!任務を果たせ!兵士よ!!』

 

「哀れだなぁ、儂がガキの頃に足を引き千切って遊んでいたアリのようではないか?ん?」

 

『血も繋がってない、あそこまで勝手に育った明日香なんか放って、本当の家族の所へ・・』

 

『義妹を救ったのはただの自己満足の為だったのか?最後に残った良心のかけらだったのか!?兵士として、一人の人間として弱き者を守る為に義憤に駆られて行った行為ではないのか!?』

 

『この世界は地獄だ。リサも、父さんも母さんもいない。何で俺だけ残して逝ったんだ。痛いよ。苦しいよ。寂しいよ・・・』

 

『思い出せ。最初の心を、最初の願いを・・・。何時だってそこにお前の原点がある』

 

嘲笑を浮かべて煙草の灰を俺のバトルマスクの頭へと振りかけるフラスゴの姿に怒りも湧かずにギラついた目の俺の言葉に耳を傾け、自身の心の内へと没入する。さいしょのこころ・・・?

 

 

 

 

 

 

 

【ぼく、おおきくなったらお父さんみたいなみんなをまもれるようにつよくなる!おとなになったらおとうさんのようなりっぱなけいかんになるんだ!】

 

【ハハ、お前なら成れるさ。俺と母さんの息子だ。セイジ、覚えておくんだぞ。お前が大きくなったらきっと色々知って学んで辛くなるだろう。そんな時はお父さんが言った言葉を思い出しなさい】

 

【他者の痛みと苦しみを知りそれを分かち合い背負えるような大きく、強く、優しい人になりなさい】

 

【むずかしくてわかんないよぉ!】

 

【うーん、まだセイジには早かったかぁ】

 

【けど、つよくやさしいヒーローになれってことでしょ?】

 

【ふふふ、そうだな。そうなってくれよ。セイジ、おとうさんが困ったら助けてくれよ?】

 

【うん!!】

 

 

 

 

ヒーロー・・・・・・・強く優しい人になれと、父が言っていた。俺もそれを目指した。今はでもどうだ。父の言う姿からかけ離れた憎悪に駆られた姿は父が見たらなんといって嘆くか。ヒーローの様に戦友たちを救えなかった。家族だって守れなかった。取り零してきたものはいっぱい、いっぱいあった・・・。後悔もした。何度だって心折れそうになった。それでも、そのたびに父との約束を思い出しここまで来たじゃないか。

 

この世界で目覚めてから、このカラダになってから初めて、俺の心に火が灯った。憎悪の心と恐怖を撒き散らす何時もの俺じゃない。初めての意味で『ヒト』としての俺が目を覚ました。

 

・・・・そんな気がした。けど思い出した。お父さん、あなたの言葉も忘れる様な馬鹿息子ですが、どうか天国から見守り下さい。この世界で、このカラダで、かつて目指した人間になってみたいと思います。

 

 

貴方の様な強く優しい男に。

 

 

 

 

 

 

 

≪被験体の戦意増大。『ヒト』としての目覚めを検知。左大腿部のロックを解除。及び、神経バイパスをメインからサブへ移行≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今までの作風と違うとか思うだろうが中身は一緒やぞ?w
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。