IM NOT MAN.I AM A DEAD MAN 作:HIKUUU!!!
必ず、俺は貴方に誇れる様な男になるよ。守りたい人達がいるんだ。帰りたい場所があるんだ。みんな、だからもうちょっとだけ待っててくれ。俺はきっとみんなと同じ場所には逝けない。分かってるけど、もうちょっとだけ抗ってみるよ。
一人の人間として。
バトルマスク内、いや、脳内で囁くように告げられた言葉に一瞬耳を疑い、機械的な音声が告げた内容を噛み締める様にじわじわとその意味を理解して向けられた銃口をなにも恐れずに、今までの荒れ様が嘘だったかのような平静な心境に溜息を一つ小さく付く。
悪運、だけは・・昔から変わらずあるんだな。やはり『私』は。キチキチと何かが義肢内で蠢く小さな音を聞きながら私は何時までも拘束されているままにもいかずに緩やかに手足に力を込める。
「ん?なんだ此奴急に力が・・」
「おい、大人しくしてろ!今なら楽に殺してやるからよ!」
私を拘束する治安維持部隊員にも目もくれずに先程迄の沈黙が嘘の様に素直に駆動する義肢の反応に思わずマスク内で破顔し私を押さえつけようと必死に体を使って拘束する彼らを眺めながら徐々に立ち上がる。左腕を抑えた隊員が顔を赤らめながら必死に私の動きを阻害しようとするが無駄な行為だ。
「テメェ!死にたいらしいな」
「いや、私はもう死んでいるよ」
「はぁ!?」
正面からアサルトライフルを向ける隊員が唾を飛ばしながら恫喝するのに返事を返し、左腕と右腕に張り付いていた隊員を両腕を振り上げて思い切り下ろし、吹き飛ばす。
「ぐあ!」
「いでぇ!」
徐に立ち上がり、そそくさと隊員達の後ろへと隠れたフラスゴの姿に興味も湧かずに放っておき、左手のひらを左大腿部へと伸ばし、右大腿部と同じ様に展開したソレの内部へと手を伸ばし中身を引きずり出す。
「おい・・・なんだよそりゃあ・・・」
「さて、な。私も初めて使う。ただ・・・楽には死ねるだろうさ。苦痛もなく」
左手の義肢に掴んだ余りにも巨大なマグナムとも言えない様な回転式弾倉のリボルバーに目を細め、繁々とそれを眺める。黒光りする武骨な銃身には炎を模した様なレリーフが各所に散りばめられ、それと相まって見事な調和を成す一つの銃器としての力強さをフォルムに感じ、芸術品としても遜色ない見事な造形美に溜息を思わず漏らす。
「あぁ・・美しい」
地面へ投げ飛ばした隊員二人がノロノロと立ち上がるのを尻目に私はその銃を正面でアサルトライフルのトリガーを引きだした隊員へと向ける。
「なんで!当たってるのに!血も出てるのに!!!」
彼の放つ弾丸に私のアーマーの装甲が遂にひび割れ、弾丸を通すが痛みをあまり感じずに血が噴き出る感覚はあるものの私はそれを無視し彼に弾丸を放つ。
ドゴォンと大砲でも発射したかのような騒音に一同身を竦め蹲りだしたが私にはその音が福音に感じられた。私を、漸く長い眠りから覚めたお祝いとでも言うかの様な爽快な発射音が耳に長く、長く残る。
着弾した場所は隊員の胸だが、当たった場所は炸裂砲でも食らったかの様に見事に爆ぜ、大穴を開け肉片と臓器と血液を辺りに雨の様に巻き散らす。
「あの日、ヒトとして私は死んだ。家族を失ってからこの地獄で微睡んで(まどろんで)いた。だが、こんな私を、慕って、愛して待ってくれている者がいる」
スケイルの苦笑いした顔、マックの無表情、ヘルドッグの如何にも私怒ってますと頬を膨らませたあの表情。フロッグの馬鹿笑いした顔。
そして、俺の姿が変わろうと受け入れ、泣いて喜んでくれた義妹の涙を零しながら喜んでいたあの笑顔。
近すぎて、自分の苦しみが辛すぎて私を友だと、家族だと言ってくれていた彼らを私は見失っていたらしい。
力なく仰向けに倒れ伏す隊員の凄惨な死に様に一同が顔を青ざめ、手に持つ銃器を私へと向ける。倒れ伏した隊員の亡骸から血が絨毯のように広がりタイルを汚していく。
「救われぬ者達が、いる。戦火に身を焼かれる弱者が、いる」
続けて二発近くの隊員を撃ち据え、血の花を咲かせる。一人は頭部が砕けたトマトの様にべしゃりと破裂し、もう一人は下半身と胴体が泣き別れて腸の断片が宙を舞う。
思い出されるのは先程出会った子どもと老人達、身を寄せ合い縮こまりながら此方を怯えた目で見ていた彼ら。次は我が身かと覚悟を決め、子供達はどうかと縋り付いてきた彼ら。
自分が苦しい中でも彼らを見捨てずに、自分の身すら犠牲の覚悟で立ち上がったケント。そんな彼に付き従う健気な95式の姿。
思い出せ。戦火に焼かれ、嘆く者が増えぬ様にと願い戦場に立ったのは誰だ。祖国の杜撰な対応に絶望し、故郷を捨て、国境を越え、独り復讐に走った俺を辛うじてヒトへと押し留めてくれた義務を、責任を、戦友達を思い出せ。
兵士よ。義務を果たせ。
「ひ、ひあああああ!!!!!!」
私の凄惨な銃撃に恐怖を感じて武器を取り落とし逃げ出した隊員の姿に私は右大腿部から引きずり出したオート9を構え逃げる彼らの背に向けて何度もトリガーを引く。
何時もと比べて反応の悪い義肢に走るのは無理そうだと、自己判断を下し歩きながら倒れ伏し喚く一人にリボルバーを向ける。
「いやだ!死にたくねぇ!死にたく―――」
「―――そういって無抵抗だった市民も殺したんだろう。彼らを待つ家族がいるのも関わらずに。故に私は、貴様に掛ける言葉は一つしかない」
足元で倒れ伏す男の情けなく鼻水を垂らして意味も無く何事かを泣き喚く男を肉片へと変えてやり、侮蔑の意味を込めて左手のリボルバーをガンスピンを行い大腿部に収納し、空いた左手で自らの首を親指で掻き切る動作を行い地面へとそのまま親指を振り落とす。
「治安維持部隊とは名ばかりのチンピラ共が。私は正義などとは口が裂けても言えぬが、貴様らはただ、藁のように死ね」
逃げ出した全員をすでに撃ち抜いて地面へと倒れ伏しているのが解っている私は、一発一発丁寧に奴等を葬り、蹲って黄色い水たまりを作って腰を抜かして後ずさりするフラスゴの前に仁王立ちする。独特のアンモニア臭にひび割れたマスクから流れ込んだ臭気に思わず顔を顰める。
「そんなはずは・・!なぜだ!なぜそれほど撃たれて立っていられる!?貴様不死身の化け物か!?」
「人間だよ。普通より、ただ死に難い哀れな・・・生き残りさぁ!!」
空いた左手でフラスゴの頭部を殴打し、自ら作った小便の水溜りにばちゃりと顔面から沈んだフラスゴの背部から服を引っ掴み、引きずりながらマスクの通信機能を立ち上げようと念じる。
が、ノイズが混じった音のせいで何も聞こえず、又、カリーナやジムに繋がった状態にもならずに困惑する。
「どういう事だ?」
「みぃつけたぁ♡」
戦地での激務のせいか背後から忍び寄る影に不幸にも追突してしまったセイジ。影が命じる示談の条件とは!?
???「三回回ってワンって鳴くんだよぉ。あくしてよぉ」(田村ゆかりボイス)
セイジ「ワン!ワン!ワァン!!(迫真)」
※こんな展開は訪れません。