IM NOT MAN.I AM A DEAD MAN 作:HIKUUU!!!
「臨時ニュースです。先週から引き続きC-3地区で起きていた武装蜂起した市民とG&Kの社の治安維持部隊との激しい抗争が先日、GoodSmileカンパニー所属の傭兵並びにC-3地区の防衛指揮官により鎮圧。市民側が勝利し、G&K側の治安維持部隊が超帝国主義派と裏で繋がっていた証拠をケント・フジサワ指揮官が確保しました。これにより治安維持部隊を紛争幇助のテロリストと断定し、現地に派遣されたGoodSmileカンパニー所属の傭兵と結託し市民を弾圧する治安維持部隊を壊滅にまで追いやり、この抗争に終止符を打ちました」
TVモニターに映る金髪をポニーテールに結んだ清楚な雰囲気のする若い女性がスーツ姿で抗争の起きた地区の市街地の弾痕が刻まれた壁や建物を背にカメラ目線で報道を行っている。
「この抗争を終わらせた功労者の一人であるケント・フジサワ氏とのコンタクトに成功しました。早速インタビューをしたいと思います」
マイクを片手に緊張した面持ちの女性が、市民と共に作業着姿で建材を運ぶケントの姿を見つけ駆け足で彼の元へと訪れる。
「失礼します。ケント・フジサワ氏ですね?ぜひ一言お願いします」
「ん?ああ、レポーターですか。お疲れ様です・・。構いませんよ。ごめん、みんなちょっと外れるよ!」
「あいよぉ!ちょっと早い休憩だと思ってのんびりして下さいなぁ!指揮官様!」
「分かりましたぁ!お気をつけてぇ!」
土汚れや汗で汚れた作業着を纏ったケントがTV越しに額の汗を拭い、一息つきながらカメラの前で堂々と腕を組み荒い息を整えている。ケントの声に復旧作業を行っていた市民達は口々に了解の意を告げて作業に没頭している。
「フジサワ氏、今回の抗争、当初は貴方が首謀者として疑われていたにも関わらずに何故市民の為に行動しようと?」
「軍人としての義務だからだよ。それと弱き者を守るのはこのご時世には珍しい事だろうさ。だけど例え不利な状況になろうと俺は正しき道を背く事は出来ないよ」
「何故です?」
「今は亡き両親の墓前に誓ったからです。正しき為に力を使うと、父と母が幼き時から俺に口を酸っぱくして言っていた言葉がずっと俺の胸にあったからです」
レポーターのマイクに一呼吸置いたケントが柔らかな笑みを浮かべて自信満々に胸を張りカメラ越しに映る人々へと伝える。
「人として正しき行いをしなさい。俺がずっと言われて今も胸の中に生きる両親の言葉です。だからこそ俺は自分の行動を恥に思う事はしない。そして無念の中で死んだ市民の皆さんに今一度追悼の意を表します。それと・・・ありがとうデッドマン」
「デッドマン?」
レポーターの女性が訝しげな眼で死人に礼なんて何を言っているんだと言わんばかりの表情にケントは画面の中で苦笑し、レポーターにその名前の意味を告げる。
「俺の戦友ですよ。GoodSmileカンパニー所属の傭兵のコードネーム。彼は独りで大多数の治安維持部隊を相手に一歩も引かずに自身が瀕死になりながらも戦い抜いた英雄ですよ。本来ならインタビューは彼にこそ相応しいのに・・・」
ケントは寂しそうな表情を浮かべ遠くを見据え、又額に浮かび上がった汗を作業着の右袖で乱暴に拭い、溜息を付く。
「なるほど、今噂で持ち切りになっている傭兵の名前ですね?」
「ええ、今彼は集中治療室で大怪我を治している最中です。次期に元気な姿で現れてくれるでしょう」
「失礼ですが一般公開されたVTRを見ましたが本当に彼は・・その・・・人間なんですか?」
「誰が何と言おうと、熱い心を持った正しい行いが出来るヒトだ。鋼鉄の体を身に纏い、他者の為に立ち上がれるそんな人間だ。それのどこに疑問の余地が?」
「い、いえ・・失礼しました・・!」
むっとした表情のケントの表情に怒りを感じたのかレポーターは自身の迂闊な発言を謝罪し、慌てて話題を切り替える。
「して、そのデッドマン氏ですが容体の方をお聞きしても?」
「前面面会謝絶中ですよ。彼は心臓を失った。予備の心臓が届くまで暫くベッドの上かとげんなりしていたよ」
「心臓を失った重傷なのにもう起きてるんですか!?」
「彼曰く昔から打たれ強かったらしいよ。打たれ強いとかそういう次元じゃないと思うけどね」
「し、失礼ですがまだ戦闘が終了して24時間しか経ってませんよね?!」
「まぁ、彼だからねぇ。早く元気になった姿で一緒に一杯やりたいくらいさ。じゃあ失礼。95式がお昼ご飯持ってきてくれて待ってるみたいだから俺は行きますよ」
笑うケントの姿にデッドマンの驚異的な生命力に恐れ慄いたレポーターが慌てて尋ねるが笑ってその質問をやんわりと躱したケントは作業員達の近くでバスケット片手にケントの姿を探しているらしくキョロキョロと辺りを見回しているの95式の姿を発見したケントはカメラの前から立ち去る。
「あ、ちょっと!もう・・・!以上、キャサリン・マグワイヤーのインタビューでした。一旦スタジオに中継をお返しします」
追及のにべもなく遠ざかるケントの姿にまだ聞き足りないらしいレポーターはぷりぷりと怒りながらカメラが回っているのに気づき、中継をスタジオへと返す。
TVモニター押しに場面が切り替わり円卓を囲んだむさいおっさん達が熱い議論をあれやこれやと熱論している光景が映し出され興奮気味に一人の頭頂部が禿げたおっさんが叫ぶ。
「彼こそが我々、人類の新たなる象徴!ヒトと機械との完全な融和だ!素晴らしい!!!!」
「だがあのような姿では戦術人形より兵器らしいではないか!何が新たなヒトの象徴か!
馬鹿馬鹿しい!」
「だがあれこそが我々人権権利団体が目指すべき本当の姿ではないか!?何の為に機械技術が進化してきたと思う!?本来なら人形などいらぬのだ!完璧な機械化された人間の兵士!!これからは彼によって訪れた新しい時代の幕開けが来るぞ!」
「群を個で殲滅する力か・・・。戦術的価値、曳いては戦略的価値にもなりえるぞ。たった一人の機械化された兵士が鍛え上げられた人間の軍団を圧倒する時代・・・」
「素晴らしい。ヒトの可能性を体現した彼は正しく・・・稀代の英雄に成れる・・いや、我々の手でして見せようではないか!!!」
「ひ、評論家の方々の議論が白熱している所ですがここで一旦、拘留所に更迭された治安維持部隊元・隊長フラスゴ・ヴェルニーの様子をレポートして貰いたいと思います。キャサリン?」
白熱して止まない評論家たちの過激な発言にすかさず司会役のキャスターがスタジオから
レポーターへと中継を切り替える様にスタッフに指示を出し強制的にスタジオから、現場へと映像を切り替える。
「やめろぉ!儂を誰と心得る!G&K社所属のフラスゴ・ヴェルニー様ぶふぇ!」
「私達に余計な仕事を、しかも友軍を攻撃させるとは恥を知りなさい」
長身のモデルの様なスラっとした身長の桃色髪の少女に頬を張られ、別の意味で顔が腫れ上がったフラスゴがもう意味のない権力を振り翳しながら何度も少女に頬を打たれている画面が映し出され撮影しているであろうスタッフの忍び笑いが聞こえる。
「儂はぐへ!ちょっ!げへぇ!帝国等知らん!ばはぁ!」
フラスゴの背後にいた眼帯を付けた黒髪をおさげにまとめた凛々しい女性が冷たい表情でフラスゴの頭からバケツに入れた冷水をバシャリと乱暴に振りかけ、イラつきながら吐き出す。
「無駄な抵抗は止めて吐いちまいな。あたしらは人間に対しては限定的にロックが解除されてる。場合によってはもっと苛烈な尋問になるぞ」
「本当に腹の立つ男・・!汚らしくて品性のない・・・!」
桃色髪の少女が何かが気に障ったのか往復ビンタを高速でフラスゴの左右の頬を酷くリズミカルにしばきながら鬱憤を吐き出す様に胸ぐらを掴み凄む。
「次はこの比では無い程の痛みをあなたにあげるわ。痛いのが好みなら黙ってなさい。私が満足するまで付き合ってもらうわよ・・!」
「ひ、ひえぇぇぇぇ!!!だれか!!!だれかぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
拘束された椅子の上で失禁し大声で泣き叫びながら誰かの助けを呼ぶフラスゴの哀れ過ぎる醜態についに耐えきれなくなったのかスタッフの爆笑とレポーターのくすくす笑いが鉄格子内の狭い室内に木霊し、現場の中継は突然切れた。
「え、えぇ・・・」
現場の余りに過激な尋問風景に困惑を隠しきれない視界は未だに議論を繰り広げ挙句の果てには殴り合いに発展している評論家達の姿に額の血管が盛り上がり、それでも努めて画面の前の視聴者に要らぬ心配をさせぬ様に青筋を浮かべたまま笑顔で言い切る。
「それではお時間も良いようなので、臨時ニュースを終了したいと思います。ご視聴ありがとうございました」
「おいテメェら!いい加減にしろよ!視聴者見てんだぞ!」
「新しい時代!希望の幕開け!人類の栄華を再びこの手に!」
「機械になってまで生きたくねぇって言ってんだろうがこのスカポンタン!!」
「やんのかゴラァ!!未来は我々の手に!!!」
「上等だ表出ろハゲェ!!!」
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!AD止めろぉぉぉぉぉぉ!!!この馬鹿共とめろぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
―――――プツン。
珍しく二回更新。