IM NOT MAN.I AM A DEAD MAN 作:HIKUUU!!!
米神に当てた銃口を横から強引に逸らされ、右側に立つ流れる様な色素の薄い金髪を腰まで結わえた無表情で中性的な細身の男を俺は茫然と見つめる。
「マックか・・・?」
「お帰り、セイジ。また会えて嬉しいよ。でも、まだ、死ぬ時じゃないよ・・・」
思わず力の抜けた俺の右手からオート9をマックは奪い取り、マガジンを外してスライドを引き、チャンバー内の弾丸すら排出し、オート9を遠くへ投げ捨てた彼の姿に震える唇から声を絞り出し、抗議する。
「返してくれ・・・俺はもう死にてぇんだ。もういいだろう。もう十分だ・・・もう休ませてくれぇ」
「セイジ。まだだろ?俺達はまだ任務を終えてない。グラウス達との約束は?俺達が看取っただろ。家族の元へ帰れないで、戦場で果てた戦友達を!俺達の仇を討ってくれ。子供達に戦争のない世界を残してやってくれって頼まれただろう!」
突然の戦友の来訪に更に固まる場の空気を尻目に俺達は言葉を交わす。
「俺には無理だぁ・・・俺は無力なんだ。何時もそうだ。間に合いやしねぇ!」
5-7の戸惑う表情を眺めマックの常に無表情な表情が今は珍しく変わり、眉を顰め語気を荒くして俺に詰め寄る姿を交互に見比べ、俺は頭を抱えて蹲る。頭を抱えながらマックへと叫ぶ様に昔の事を話す。
「サンドストームの時を覚えてるか!?現地に取り残されたダニエル達を助けに行った時の話だ!あいつだけ生き残って俺達を待ち続けたあいつを!」
「覚えてるさ。あいつが最期どうなってしまったのかも・・」
脳裏に浮かぶ賭け事が好きで、ポーカーで良くあいつに有り金持っていかれた時の事を思い出しながら俺は叫ぶ。妙に気の良い、入隊時部隊に馴染めず、孤立しがちだった俺を仲間の輪へと導いてくれた気の良いあいつを。バイクで高速ぶっ飛ばすのが大好きだったダニエルの事を。
「砂嵐でバグダットに足止め食らってた俺達が遅れて到着した時にあいつは両目刳り貫かれてのた打ち回ってた!今でも思い出すんだ・・・大尉、大尉、何処ですか?目が見えないんだ大尉って・・・セイジ、何も見えねぇだって!俺ぁ・・・俺は必死になってあいつの刳り貫かれた目ん玉這いずり回って探した!!!」
俺の激情から溢れ出して止まらない言葉を黙って耳を傾ける一同に、嗚咽交じりに叫び続ける。
「でも見つからねぇんだよぉ!!どれだけ必死に探しても!!!戦友の目ん玉一つすら見つからねぇんだよぉおお!!!!!」
頭を掻き毟りながら脳裏に浮かぶあいつが両足をばたつかせながら叫んでいた横で必死に這いずり回って目玉を探し回っていた俺を思い出し、心の軋む苦痛から泣き叫ぶ。
「あああ・・うあああ!あぁ・・うぐ・・!」
「あの時だって間に合わなかった・・今もそうだ。もう俺じゃなくて良い筈だぁ・・・みんな待ってる。ダニエル、父さん、母さん、リサ。頼れる戦友達・・・みんな、みんな死んでいなくなっちまった」
「セイジ、それでも前へ進んで、あいつらを殺し尽くすって決めたのは俺達だろ。逃れる事は許されない。俺達の戦争はまだ、終わっちゃいない!!」
「死なせてくれ!皆に会いてぇんだよ!!俺だけ置いて行かれた!俺だけ、俺達だけ!みんな何処に消えた!!あああああ・・・・・・うわああああああああっ!!!!!」
子どもの様に噎び泣きながら床へと何度も頭をぶつけ、絶叫を上げる。みんな気の良い連中だった。愛すべき善良な人達だった。みんな惨たらしく殺された。ダニエルは衰弱していって生きる気力をなくし失血したまま搬送される最中に死んだ。他の戦友達だって、みんな状況が違えど俺の前を去っていった。ケツの毛まで毟られたって構わない。あの気の良いダニエルの勝った時の笑い声が、もう一度聞きたい。二人でバイクぶっ飛ばしてサツに追われた時にゲラゲラ笑ってたのをもう一度経験したい。ダニエルにテメェ元サツだろって言われて鼻で笑って返し、ビール片手に意気揚々と二人で酒場に繰り出していったあの楽しかった思い出をもう一度・・・・。
「俺だけがどんな状況でも生き延びてきた。生き延びちまった・・・挙句の果てには死んだと思えたのにこのカラダだ・・・俺にはもう生きる資格なんかねぇのに!まだ生きろとお前らは言うのか!こんなスクラップのダルマに!まだ戦えって言うのか!」
「お前が自分自身で決めたんだぞ!それを忘れるな!俺達の任務は?復唱しろ!セイジ・シノノメ大尉!!!」
「超帝国主義派一派の壊滅・・・最重要目標Z1の殺害ぃ・・・」
マックの珍しい怒声に頭が焼けるように痛い。思い出す最後の任務の内容が、浮かぶ度に激痛が走る。
頭を抱えながら上を見上げればマックの俺を睨みつける視線が、戦術人形達の戸惑う視線が、ペルシカリアの悲しげな視線が俺に突き刺さり、俺の心が激しく揺さぶられる。
「俺を見るなぁ・・・見るな・・・・」
「そんな哀れんだ目で俺を見るなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
その絶叫を最後に俺の意識は暗転した。
「・・・」
「気絶したの?」
「うん、精神的な負荷に耐えきれなくなって落ちた。けど大丈夫直ぐに目を覚ますよ。もう一人が」
「もう一人?」
固まった様に身じろぎ一つなく沈黙する大男の姿を厳しく見つめながら、僕は一つ漸く大事が片付いたかと嘆息する。セイジ、出来ればこんな再会の仕方はしたくなかった。今回は予断を許さない状況だったからこうせざるを得なかったけど・・・。
栗色の髪をツインテールに結んだ子、(UMP9だったかな?)の質問に僕は返しながら頷く。遅かれ早かれ彼女達はセイジの状態を知るだろうし、早くなっただけだし問題ないだろう。
ピクリと動いた大男、セイジがゆっくりと蹲った状態から動き出し、目の前にいる銀髪をポニーテールに結んだ子を一瞥し、自分の涙に濡れた顔を無表情気味に乱暴にコートの袖で拭いながら僕の方に振り向きつつ立ち上がる。理知的な光を宿しながらも全てを諦め切った様な死んだ瞳、以前の彼だ。部隊に入る前のセイジだ。
「随分派手に叩いたらしいなマック。あの様子だと俺はしばらく起きないぞ」
「そうしないと何時ぞやかのように暴れるよ?自殺しようと。今は止めれる余裕もないよ。僕らも」
「それもそうだな。まぁしばらくは私と変わって微睡むだろう。さて、お嬢さん方、改めて自己紹介させてくれ。私はセイジ・シノノメ。このカラダの主人格だ。ほとんどは申し訳ないが、表に出るつもりは一切ないがね私は」
腕を組み立ち上がったセイジはそのまま追及を許さないといったばかりに彼女達に関わる気もないようで颯爽と肩で風を切りながら厨房へと姿を消し、困惑だけが彼女達の間で広がっている。
「え?二重人格・・・?」
「うん、重度のPTSDと精神的ショックの連続による疑似的な二重人格なんだよ。どっちもセイジでいや、君達に分かりやすく言うとデッドマンであることには変わりないよ」
困惑した様子の彼女達に肯定で返してやり、僕は久々に食べる俺じゃなく私のセイジの料理を期待して出されるメニューを待ち侘びながら席について告げる。
「砕けて壊れ切った心を、復讐心と僅かに生き残った仲間との絆、そして義妹の明日香ちゃんの存在と科せられた任務によって死ねないように縛り付けられた男。それがデッドマンの正体だよ」
いつの間にかカウンターに用意されていた温かいコーヒーをすすりながら僕は表情を何時もの無表情に戻し、ホッと一息吐く。本来なら、僕じゃなくてヘルドッグの役目なんだけどなぁ。こういう役割って・・・。
はい、爆弾らしきもの投降した糞作者は私です。まぁ二重人格匂わせる描写はしてたし今更感はすごいだろうけどね。まぁいらないと思うでしょ?必要だから書くのよ。二重人格は