IM NOT MAN.I AM A DEAD MAN 作:HIKUUU!!!
ふんわりと辺りを漂う香ばしいコーヒーの香りが緊縛した雰囲気を和らげ、カウンターに着いたマックが緩やかな笑みを浮かべながら、先ほどの出来事がなかったかのように振舞う姿に戦術人形達やペルシカリアが困惑する中、上品にカップを音を立てずにカウンターの上へと置き、女と見間違う様な美貌を崩し、呆れた様に溜息を付いたマックは口を開く。
「ボケっと突っ立ってないで座ったら?」
「・・・そうだね。じゃあ遠慮なく」
覚悟を決めた様にマックの左隣にペルシカリアが座り、カウンターの奥からチラリと見える薄暗くなった厨房から音もなく件の大男がぬっと現れ、ぶっきらぼうにコーヒーの入ったカップをペルシカリアの前に置き、又厨房へと消えていく。ペルシカリアは自身の前に置かれた温められたカップと湯気を出すコーヒーにごくりと生唾を飲み込み、目の前の誘惑に負けずにマックに問い詰める。
「何時から何だい?」
「それを聞いてどうする?僕はスケイルの次にセイジと組んで長い。それ以上は言うつもりはないよ。聞きたければ本人から聞くべきだね」
ペルシカリアの真摯な視線も何のその、ぴしゃりと言外に自分は話すつもりはないとマックは切り捨て、自分のコーヒーにカウンターの上に無造作に置かれていた砂糖とミルクが入ったバスケットから砂糖を二本、ミルクを一個取り出すと封を切りティースプーンを同じくバスケットから取り出し、丁寧に混ぜ合わせる。
「・・・この世界で会うのは初めてだけど、変わらないね。機械化しようと、優しい味・・・僕の好きな味だ」
眦を下げ、後頭部の後ろに結わえた儚い色合いの金髪を楽しげに揺らし誰に言うでもなく混ぜ終えたコーヒーを味わうように嗜み、マックは独り言ちる。コーヒーの雫が形の良い唇を湿らせておりマックはそれを舌先でペロリと嫌味にならない色気を醸し出しながら拭う。その所作に、ペルシカリア達は何故だか居心地が悪くなり椅子の上で小さく身じろぐ。
「たかが、コーヒーだろ。そんなもんで喜ぶな。下らねぇ・・・シッカリと手順通りにやれば誰でも出せる味だ。私の母上だけは別だが・・・」
再び死んだ瞳のセイジが心底どうでも良いとばかりに吐き捨てながら、人数分のコーヒーカップをそれぞれの席に置き、腕組みしたまま片手で煙草を取り出し火を付ける。
「少し待て、今短時間だけだが肉を柔らかくするのに下ごしらえは済んだが、時間が欲しい。一服ぐらいはさせろ・・・」
答えは聞かないとばかりにマイペースに煙草に火を付けたセイジは目を閉じながら関わるつもりはないといったスタンスを崩さない雰囲気のまま煙草を吹かせ、沈黙する。
「え?もうですか?」
「トロイのは嫌いでな。手早く、静かにだ。・・・殺しも、調理も、な・・・」
以前調理する環境で働いていた経験のあるスプリングフィールドだけが彼の早業に驚愕し目を見開く。その驚愕にセイジは吐き捨てる様に呟き、溜まった灰をいつの間にか左手に持っていたガラス製の灰皿へと乱雑に払って再び口へと咥える。
「早業だったらセイジより早い人はあんまり見たことないよ。クイックドローやリロードも含めてね」
「余計な事を言うな。あんなもの、反復してその場その場で最適化すれば誰でも出来る・・・」
「でも昔から手先は結構器用だし、何事も早かったよね?何時だっけ?入隊前の時にやったサバイバル術の話って」
「・・・マンハッタンだ・・・その場にある物を加工して武器にする。相手より早く相手を殴り倒す。複数人に囲まれた際は前の一人を捕まえ盾にする。そして拘束した相手の武器を奪い使う。ふん、手癖が悪いといえばいいだろう。こんな簡単な事恐怖を押さえればできる。誰でも、容易くな」
「実際にそれをやろうとするのはセイジ位だよ・・・」
呆れたようなマックの呟きに小さくセイジは鼻で笑い、艶のない白髪を揺らしながら傷だらけの彼の顔色を窺いながら恐る恐るコーヒーを啜り始めていた戦術人形達の顔をまじまじと観察しながらフィルターぎりぎりまで喫った煙草を消火し、灰皿に捨てる。
「貴様らに一つだけ言っておく。私に関わろうとするな。俺の時は存分にやってやれ。でないと死にたがるぞ。文字通り、私の死に対する渇望を奴は担っている。皮肉にも疑似的な二重人格である我々はほぼ大差ない人格であるが、私は奴等を始末する時、俺が何らかの理由で微睡む時、そして・・・」
「――――『作品』作りの時しか現れるつもりはない」
「作品?」
「知らぬ方が良いぞ。常人には耐えられん所業だ」
45の様な薄暗い笑みを浮かべ、楽しげに鼻歌を奏で始めたセイジの姿にコーヒーの熱さに涙目になりながら問い返したG11が首を傾げながらナニカを察したかのようにコーヒーを再び啜り、熱さにまた慌てる。
「あちち、したがいひゃい・・・」
「ふっふふーん♪・・・ふふふふ・・・・」
薄暗い笑みを携えたまま鼻歌をのんきに奏でながら厨房へと姿を消したセイジの後姿をマックだけが無表情で厳しい目付きのまま見続けていた。
目の前に豪勢に盛り付けられた一生に一度食えるかどうかといった天然の食材をフル活用したステーキやガーリックライスの食欲をそそる香りや鉄板の上で撥ねる肉汁の弾ける音にいかにも新鮮な水滴の滴るサラダに一同は生唾を飲み込み、この光景を作り出した下手人へと視線を向ける。
「私の許可などいらない。存分に食したまえ。肉は一人もう一枚のみおかわりを許可しよう。ボンゴレを注文した者は私に言うが良い。ハーフサイズでもう一度提供しよう」
まだメニューの全てが全員に行き届いておらず各々のスープを運びながら各自の前に無造作に置きながら忙しなく動く黒いエプロンを身に着け、目が隠れる程深く赤いバンダナを頭部に巻いたセイジがいただきますもなく無言で食い始めたマックの前に特盛のガーリックライスを置きながら動き続けている。
「そういえばブレッドでなくて良かったのか?マック」
「今日は米の気分だった」
「たまに私はお前の方が日本人らしいと思ってしまうよ・・・」
モリモリと口いっぱいにガーリックライスを掻き込む黙っていれば絶世の美女と呼んでも遜色ない中性的な男性、マックの食事の風景にセイジは額に手をやり溜息を吐く。
セイジとマックのやり取りを見て我先にと温かな食事へと手を伸ばしだした戦術人形の姿をペルシカリアは嬉しそうに一瞥すると自身も目の前の巨大なステーキ肉を食すべくフォークとナイフへと手を伸ばし、分厚いながらもナイフで切り分けた瞬間に抵抗無く刃はスルリと肉の繊維を解き、簡単に欠片となって別れる。
(レアか、私は苦手だけど・・・)
欠片の状態をペルシカリアは眺め、焼けた断面とピンクがかった内部の肉との二色のグラデーションに昔に食べた合成ステーキのモチャモチャとしたゴムを噛んでいるかのような弾力を思い出し顔を顰めるが、意を決して口へと運ぶ。
「あ・・・おいしぃ・・・」
「そいつはどうも・・・」
腕を組んでニヒルに口元だけを歪め笑うセイジは何処からか葉巻を取り出し緩やかに煙を吐き出しながら玄関前の離れた木製の椅子へ座り、全員が談笑しながら食べている様子を眺めつつ、普段喫わない葉巻の煙を堪能しながら瓶に入ったウォッカを豪快に飲み続けていた。
「セイジ食べないの?一緒に食べたい・・」
「私は後で食べる・・・一人でゆっくり食べたい気分なんだ。悪いな」
マックの咎めるような視線を少し赤らめた顔でやんわりと拒否しながらセイジは黙々と葉巻とウォッカを嗜み彼女達の食事を見続けていた。まるで、尊い何かを見ているかの様に何処か遠くを見つつ自分は加われないとでも言う様に独り、酒を飲み続けていた。
久々の更新です(?)
そして案の定G11煽り来て草。いいぞ、もっとやれ(憤死)