IM NOT MAN.I AM A DEAD MAN 作:HIKUUU!!!
馬鹿共を放り出して数分後程に、SAAからの通信に気怠い気持ちながら、答えるべく骨伝導イヤホンとボディアーマーの喉当てに内蔵されたマイクを起動させる。
「どうした?今ちょうどID登録してない馬鹿共を放り出した所だ。一人はこれから女として生きるしかないだろうが・・」
「え?なんの話ですか?」
「いや・・忘れてくれ」
柄でもない下系統の半死を振るがイヤホン越しにでもきょとんとしている様が浮かぶ様な声音に溜息を吐いて、柄でもない事はするもんではないなと自嘲しつつ用件を催促する。
「で、何かあったのか?」
「んと、私達の指揮官と新婦さん『達』がぜひ披露宴に参加してくれないかって言うお願いで」
「・・・俺の様な奴が参列していいのか?いや、好意でそう言ってくれているのは分かっているが・・」
お人好しな様子の新郎新婦の提案に思わず苦笑いを浮かべながら、イヤホンから相変わらず直接見なくても分かる様な、分かりやすいSAAの現状の、俺に断られないかと不安そうな声音に本当に此処の基地の奴等は、俺の様な血生臭く陰気で、ぶっきらぼう、止めに威圧感しかない大男に、律儀にコミュニケーションを取ろうとしてくれたりと様々な融通をして貰って、心が優しい者が多いのだなとつくづく思い知る。
俺といても楽しくもないだろうに・・・全く、困った奴等だ。ジャベリンにしてもそうだ。仕事の間だけの付き合いだというのに、まるで昔から組んでたかのような来やすい態度に此方もついつい心を許し始めているのを俺は自覚していた。
本来なら、こういう奴等を巻き込まない為にも、俺は・・・殺人の為の、任務にだけ忠実な兵士でなければならないのに。
「すまないが、俺は遠慮しておこう。目出度い日にわざわざ血の匂いが濃い男が出る幕はない」
折角の好意に申し訳ないが、俺が出たせいで他の来賓にまで陰気な雰囲気が移っては堪らないだろうと、後ろ髪惹かれる想いながら断りを入れてイヤホンとマイクの接続を切ろうと操作しようと、キラリと、自己主張するかのように夕日に煌めく義肢の指に、これから一生この指にエンゲージリングを填める事も、愛する女性に送る事もないのだろうとふと思いながらマイクとイヤホンの接続を終了するべく操作しようと指を伸ばす。
兵器としての、側面しか感じられない冷たく熱の通わない武骨なその指を。
「まぁ、待てよデッドマン」
その指を横からジャベリンがついと俺の喉元から退け、間髪入れずに喉元のマイクに口を近づけてSAAへと喋り掛ける。
「SAA。俺達も出るよ。せっかくのお誘いだ。残念ながら俺達は礼服じゃないけど・・」
「わぁっ!本当ですか!みんな喜びますよー!」
「おい勝手に・・」
「けど警備は良いのかい?」
「データベースに登録されてた来賓は全員参列されてますから大丈夫です!若干名は遅れてますけど他のスタッフが対応してくれるとの事ですので、お二人は今から迎えに行きますのでそこで動かさないで下さいねー!?」
マイク越しの向こうで相変わらずその体躯に似つかわない爆乳をブルンブルン揺らしながらジャンプして喜んでいるんだろうなとわかりやすすぎる喜色が浮かんだ声音とドタドタトいう慌ただしい音をイヤホンに拾いながら、これはもう断れないなと眉間に皺を寄せ、指で揉みながらしてやったりの顔を浮かべているジャベリンに問いかける。
「何のつもりだ?」
「何って、折角の目出度い日だぞ?花嫁姿と花嫁を見事射止めた新郎の姿を見て運気を頂戴しようって事だよ。お前、気づいてないかもしれないけど、SAAのお願いを聞いてから凄い形相だぞ」
「当たり前だ。誰が好き好んで、死の気配を振り撒く男を大事な披露宴に呼ぶ?頭が可笑しいんじゃないのか?」
先程の銃撃戦を思い出せば俺が厄介事を運んで来たような物だ。最悪、依頼料全て突き返すつもりでもいた。到底、それだけでは保障にも信用にも関わるから、使い捨て同然の依頼だろうと数回は呑む覚悟も契約することも考えていた。超帝国主義派共は、意外とこの世界に速く順応して、急速にその勢力を増長させているのかもしれない。戻ったら本格的な情報の収集を開始しなければ。今度は手遅れになる前に。
ジャベリンの言葉に固まっているであろう顔の力を意図して抜き、目に集い始めていた力を殊更平時を意識して抜きながらにしっと気楽に笑うジャベリンを睨みつける。
「あんた、目元から一瞬血管が浮き上がって凄い事になってたぞ?さっきまで。今は精神を落ち着けでもしてるのか初対面の時の様な雰囲気に戻ったが・・」
「何が言いたい?回りくどい事はなしにしよう」
「そうカッカしなさんな。俺が言いたいのは、此処の基地の指揮官も人形達も、あんたの雰囲気や姿なんて気にしないって事だよ。見て見ろよ。余所者の俺達にだってあんなにみんな気を使って歩み寄ろうとしてくれてるんだ。それを突っぱねるってのはちょっと違うんじゃないのか?」
「それはお前のスタンスの問題だ。俺には関係ない」
ジャベリンの言う事も正しく、間違っていないだけに俺には耳が痛く、言葉の端々に怒気を滲ませながらそれはお前の社風であり、うちとは関係ないとピシャリと言い放つ。依頼は依頼だ。命賭けるのも、敵を殺すのも金を、報酬を貰ってるなら是が非でも喜んで果たすし、くれてやる。だが、仲良くする必要はない。
そう思いつつも、脳裏には初めて車を降りてから物怖じせずにこの鋼鉄のカラダや傷だらけで威圧感のある凶悪な相貌。オマケに完全武装と来た大男をまるで普通の人間の男の様に、叱ってきたSAAの姿を思い出す。俺を一目見てぎょっとしたような様子で挙動不審になりつつも、平時からそうなのかイサカM37にしなだれかかられながら励まされつつ俺に挨拶してきたスタッフの一人や、他のスタッフ達の徐々に俺に慣れていって話しかけてくる姿を思い出す。
やめろ。俺の心はもうこれ以上何かを背負いたくない。俺はもうこのままでいい。この状態が最高でこれが最も、パフォーマンスを発揮できるんだやめろ。俺を哀れな男の残滓に戻さないでくれ。
「お前を否定なんてしないよ。受け入れてくれてるのさ。この会場に来た来賓だって見ただろ?誰もお前を否定的な目で見てなかっただろ。この世界じゃあんたの様な奴は探せばいるさ。全身ほぼ義体化は珍しいけどさ・・・」
ジャベリンの諭すような言葉に、揺らぐ。揺らいでいく。兵器が、兵士が、殺人機械が崩れてIKU。YAめロ・・・。もう、KUルSIみたくないンダ・・・!
「何が変わるって訳でもないけど。少なくとも、誰かの幸せな光景を見ればそれは心が・・救われるような感覚がするらしいぞ。俺は社長にそう聞いた事がある。だから行ってみようぜ。俺達戦う者達にだって幸せになる権利ぐらいあるぜ?」
ジャベリンのその言葉にギギギと錆びた機械部品を無理矢理駆動させていたような異音を発する心が解放されたような気がした。何処か、ヒトであった頃の温かくて純粋だった頃の気持ちを少しだけ取り戻せたような気がした。
「・・・今回だけだ」
「やりぃ!実は部下と約束したんだよな!披露宴のご馳走持って帰るって!」
「・・・・・お前も意外と豆というか面倒見がいいというか、人生の先達として一つだけ言っておく。お前に女難の運命を感じる」
「なんだそりゃ!?」
「俺の勘は良く当たるらしい。下手な占いより当たるぞ・・・まぁ女に気を付けろ。若いの」
「そんなに歳離れてないだろ!俺達!」
「こう見えて29だ。コールドスリープをした年月も含めれば129歳か。もう年だな・・」
「まだ30いってないだろーがっ!十分若いだろ!」
二人でギャイギャイと言い争いしながら遠くに見えたSAAがぴょんぴょんジャンプしながらこっちへ小走りで来る姿を見つけ、ふと小さく笑みを浮かべながらどこか晴れやかな気持ちで横で未だに噛みついてくるジャベリンをあしらいながらSAAの元へと俺達はオン軸小走りで彼女の元へ向かった。まるで在りし日に、友と語らって下校した楽しかった頃の遠い昔を何となく思い浮かべながら・・・。
ジャベリンが主役食ってる。主人公交代かな?(すっとぼけ)
キャラが動かしやすいんですよね。あとブルンバストの遺志は俺が引き継いでいく・・!
ただ単にエロおやじです本当にごめんなさい皆さん。