IM NOT MAN.I AM A DEAD MAN 作:HIKUUU!!!
汗ばんだアンダースーツを車内に放り投げて、念の為に車内にぶち込んであった私服一式を見やり、式場に合わない雰囲気のラフ過ぎる服装に思わず、立ち止まり悩んだ末に替えのアンダースーツを引っ張り出し着用してアーマーを再び装着する。
どう考えてもこの格好で行けば追い返した奴等と同じナンパ師にしか見えなくなるだろうと自己完結して私服よりはマシと自己暗示して、寂しげに座席に引っかかっているコートやGパンを渋面で見やり呟く。
「冷静に考えればこの格好もだいぶやばいよなぁ・・・」
露出狂ととられるかもしれないが、この服装は合理的判断によるものだと弁明させてもらう。前を閉めて携帯武器を隠し持てるし、場合によっては丸腰にしか見えないので馬鹿な敵兵がよく釣れたのだ。だからこその長年の愛着があったのだが・・・。
この場ではどう足掻いても変態のそれになってしまうし、なんならユノ達未成年組にとっての情操教育的にも大変宜しくないだろうと思い、来賓者の顔を見た連中をざっと思い出して着る事のなくなった私服を畳んで座席に押し込んでおく。
お前はオフの時か、昔みたいに潜入や陽動時にまた出番だ。
バタンとドアを閉めて、首を左右にゴキゴキと鳴らしながらブラブラとゲートを突っ切って、ブゥゥゥ!!と鳴らされ、苦笑いしたスタッフに警報をすぐ切られて内心でFuckと毒づく。金属製の義肢も武器扱いかよそうですか。分かっちゃいたけど納得いかねぇ。
事実、敵を始末した場面も一同には見られているので、そんな気はないのは分かっているらしく早く行けとスタッフの一人に手で追い払われながら、どこか納得のいかないささくれ立った気持ちでむっすりしながら奥へと大股で進んでいく。
軽くオフの様な気分だから、戦時ほど冷徹にもなれずに・・・ただただ、納得いかない。俺の手足だぞ全く現在の・・外したらただの肉ダルマだぞ・・・。
只管ずんずんと奥へと進み、空調により快適な室温になっているホール前の厳かな造りの大きな両開きのドアの前に立ち、俺にしては珍しく一瞬躊躇い、中に入るべきか悩んでしまう。
来て下さいとは言われたものの、こんな戦時の格好で、尚且つ、こんな雰囲気の男が本当に式場などという一生に一度の大事な場面に、出席しても良いのだろうかと本気で思いつつ、思わず蝶番に伸ばしかけた手を出してみたり、引っ込めたりと決心の付かない子供のような姿を晒してしまう。
端から見たら不気味な装備に身を包んだ全身義肢の大男が、渋面を作って苦悶の様子で入るかどうか悩んでいるシュールな姿だろうが、俺にとっては一大事だ。
可笑しな話に感じるだろうが、それくらい結婚という物に俺は、かなり幸福で平和なイメージがあるのだ。それを考えても見ろ。俺の様な歴戦の兵士だぞ?それが出席?馬鹿も休み休み言えと当事者に言われても、ぐうの音も出ない正論だ。
花嫁の美しいウェディングドレスに、新郎の凛々しいタキシードと神父の問いに対する二人の固い誓い。そして参列者たちの幸せそうな笑顔・・笑顔なのだ。みんな笑ってるはず。俺は上手く笑える自信がない・・・。
幸せから遠ざかりすぎて、気づけば、逆に幸せに置き去りにされていた男だ。
そうあるべしと覚悟していた。だが、他人のとはいえ・・それを壊してしまうような雰囲気の男が・・・。
グルグルと脳内を同じ思考で同じ答えを出し続け、完璧にフリーズしてしまった俺は背後からの気配に気づかずに、葛藤したまま手の出し入れをし続けており、声を掛けられて我に返る。
「何、愉快な事をしてるんですか?」
「・・・一発芸の練習」
我ながら苦し紛れ過ぎる発言に、内心で頭を抱えながら楽しげな様子の初めて聞く誰かの肉声に、知らない奴かと内心取りあえずどう取り繕うかと思いながら振り向き、思わずその人物の姿を見て本当の意味で固まる。
その子の胸はとても大きく――――
張っていて――――
――――――あまりにも目立っていた・・・・。
生きてきた中でも見た事のないサイズをその小さな体で見事にぶら下げている二房のツインテールに結んだ416によく似た容姿の戦術人形と思われる子の巨大過ぎる乳房に視線を落としてしまい、我ながら普段はしない事で嘘だろうという思いで目を擦ってからもう一度彼女を見る。
どう見ても現実で、そして衝撃的だった・・・。
ヘルドッグよりデカい子なんていたんだなぁ・・・。思わずどうでも良い事を呆けながら一瞬考えこんでしまい、胸部に移していた視線を不躾だなと思い、謝罪してから目を離す。
「すまん、思わず二度見してしまった」
「クスッ♪良いんですよ。ウチのダーリンも最初の頃はそうやっていてくればまだ、カッコよかったのになぁー。最初は。まぁ、今はダーリンしか考えられないんですけどね」
「・・という事は今回の花嫁は君か・・・それは猶更失礼な事をした」
姿勢を正し、彼女に向って今自分のできる最大限の流麗さで45度に傾けた綺麗なお辞儀をして彼女の目を見て深く申し訳ないと思いつつ、頭を下げて姿勢を戻す。女性に対してするべきことではなかったな全く。いちばんやってはいけない事をした・・。
彼女はくすくすと上品に笑いながら、今はまだ私服なのだろうか。なんというか・・男として死んだ俺が言うと変だが、彼女の盛り上がった胸部のせいで、酷く扇情的に見える衣服にドキリとしながら話題を変えるべく口を開く。
「そろそろ、式の時間では・・?」
「そうですね。だから、本体は今一生懸命ダーリンの為におめかし中♪失礼とは分かっていてもこうしてダミーで申し訳ないけど、今日警備してくれた人にお礼をと思ってねー?」
ニコニコ笑いながら・・・416とは対照的な明るい笑みに、彼女と容姿も顔の造形も似ているので違和感を感じながらも頷き、それに対して返す。
「・・依頼は果たすものだから別に礼などいりません。ましてやまだ終わっていない事であります。重ね重ねお気遣い、痛み入ります・・・」
・・・己の腰に届くかどうかの背丈の彼女と話していたが、今回の件色々と自分のせいで巻き込んだ事案が一件発生している為に、普段ならしない敬語を使って対応する事を決め、再び頭を下げる。俺の軽い頭など、今の社の人間食わせる為なら、どぶに捨てるくらいには軽い。今は信用を得なくては・・・。
働ける場所、いや、依頼が来そうな場所はまだ少ない。依頼という形でも、情報は集まりやすい・・。その為なら、プライドも何もいらない。実利。実利だけが今はいる。
「そんなに堅苦しい言葉使いもいらないですよ?凄い窮屈そう」
「いえ、今回は我等もご迷惑をおかけしております。残り短いですが、それでも態度は改めなくてはと・・・」
彼女の言葉に思わず敬語を崩しそうになるも、徹底してそれを貫く。どう相手が判断しているかわからない現状。弱みは・・出せない。
此処の指揮官には直接謝罪を入れてるが、それでもだ。俺の中の矜持が許さない部分がある。迷惑を掛けたならそれ相応に、何かで報いなければならない。
今回は分かりやすく態度として、それを表した。
「まぁ、あなたがそれで良ければそれで良いんですけど・・」
「・・・性分故、お許し下さい」
表情を微塵も変えずに居心地が悪くなった空間を抜けるべく、何度目になるか分からない頭を下げて、扉に手を掛けてこの場を去るべく力を入れて押す。
「あっ・・・」
まだ何か言いたげな彼女を残して、俺は中へと進入して――――――――
沢山の目に晒されて思わずたじろぐ。いや、俺が来たくらいで一斉に見るな貴様等。俺ぐらいのサイボーグ擬きこの世界ではごまんといるだろ?
来賓の無駄に揃った視線の転換に思わず真顔になった俺は視線を気にせずに取りあえず端の方で突っ立っていることにした。コミュ障?違う。今の俺の仕事は警備だ・・・。
スパス来ない。なんで?(殺意)
※通算10体目のモスバーグちゃん