田中龍之介に憑依したので全国三本指に数えられるスパイカーになるべく頑張る話 作:龍門岩
『俺さー、高坂と同じチームでよかったわ』
『……なんだよ急に?』
『いやさ、俺も身長で悩んでたし、割とマジでリベロ転向する気だったんだよ。でもお前のこと見てたら俺も出来るって思えたんだ』
『いや、うん、照れるわ』
『はっ!男相手に赤面されても嬉しくねー!』
『うるせえ。まぁでも、ありがとな』
『おう!俺やっぱりイケメンだよな?』
『脈絡無さすぎだろあとお前はフツメンだ』
————潔子さんと恋仲になってから。
日常は今まで通り流れていた。それこそ最初は先輩同輩関係なく祝福と怨念の祝詞(?)を貰っていたが、それもすぐさまなくなり、俺と潔子さんがカップルというのが日常となっている。
ダダンッッッ!!
「お、田中最近まじで調子いいな〜」
「あざす!愛の力っすかね?」
「ははっ、聞いたか清水~」
「……(かっこいい)」
「…見惚れて耳に入ってない」
カップルになったのは日常ではあるが、俺たちにとっては非日常だ。もうラブラブもラブラブよ、そのおかげで一時期ノヤっさんと不仲になったりもしたが仲直りはしている。
『龍……お前……お前だけは…親友、だと…!!!』
『ノヤ』
『……ンだよ』
『潔子さんの美しい写真は共有しよう』
『親友よ!!!!』
とかなんとかあったりしたが、未だに写真は共有してはいない。
「にしても明日は町内会チームとの練習試合っすか。それにノヤっさんと旭さんが参加するんですよね、大地さん」
「あぁ。なんでも日向と影山が色々やってたらしくてな、まぁ主に日向だけど。これがあいつらの、いや……
そう、大地さんの言う通りだ。このチームにあの二人は必要不可欠、何にと言ったらもちろん全国制覇に、だ。俺から見ても旭さんのパワーというものは頭一つ抜きん出ていると思う。そのパワーを上手く活かせていないだけで、旭さんは全国レベルの選手になれる素質は十二分にあるというのが俺の見解だ。
そのパワーの活かし方……俺が旭さんにアドバイスしていたら、現在の様な惨状にはなっていなかっただろう。俺が勝手に旭さんは大丈夫だと決めつけていた。俺にも多少原因はあるのだ。
「言っとくが田中。加減はするなよ」
「当たり前ッスよ、それこそ意味無いことです、むしろ失礼だ」
「ははっ、心配は無用だったな。んじゃ、今日はあとダウンやって終わりだな。うし、集合!これからダウンに入る!」
———明日の試合。全力を尽くそう。
———バレーボール。
俺がそれを楽しめなくなったのは、いつからだったか。
田中という超高校級の才能に憧れた。
田中という超高校級の才能に嫉妬した。
田中という超高校級の才能に追い縋った。
———俺は、田中に追いつくためにバレーボールをしていたように、今更ながら感じる。
「……ははっ」
全くアホらしい。今までの俺も、今体育館の前でビビって一歩踏み出せない俺も。根本は何にも変わっちゃいない、俺は俺だ。
「俺は、田中じゃない」
なら俺に出来ることはなんだ?
熱いプレーで皆を引っ張ること?
状況を打破するプレーをすること?
全てのスパイクを決めきること?
「違う」
俺に出来ることは———点を取ること。
目の前の一点すら見ずに全て決め切ろうとか、チームを引っ張らなきゃとか、先輩だからしっかりしないととか。そういうことじゃないんだ、きっと。
俺は、俺。東峰旭だ。自信なんてないし、バレーボールが上手くもない。でも、目先のプレーに集中することはできるし、きっと点も取れる。
『ボールの重さが手にズシッと来る感じ、大好きなんです!!』
わかるよ。だから……
「まずは、一本」
よく掛け声で言われる言葉、何も理解していなかったじゃないか。まずは一本だ、そうだよ。
今日俺は、
「なんだ遅刻か舐めてんのか!?早くアップして俺たちのチーム入れ!」
「あ、はいすみません」
「日向ナイッサー!」
「うっす!!」
相手は超速攻の日向が下がり、月島が前衛でブロックの高さが影山と揃って随一に。影山前衛で攻撃は二枚だが、レフトには超高校級スパイカーの田中。隙のない布陣だ。
「ネットイン!!!」
日向のサーブはネットインし、それを嶋田さんが滑り込んで辛うじてあげるが、一本で相手コートに返ってしまう。
(やった、結果オーライ!)
日向は内心心拍数が二百ほど上がっていた。
「チャンスボール!」
大地がチャンスボールをしっかりとセッターの影山に返し、影山は速いタイミングの平行トスを田中に上げる。田中は影山の精密すぎるトスに若干引いていたりもしたが。
(ドンピシャ!ブロック…1.5枚!!)
ズッッッ————パァンッ!!!!
ブロックを振り切ったトスは、圧倒的高さと圧倒的なパワーを誇る田中が超強打したが———コースを読み切り既に飛び込んでいた西谷が完璧にレシーブをした。
う、
「「「ウォォォオオ!!!」」」
そのスーパーレシーブに、思わず烏野チーム側も叫んでしまう。
「旭!」
すかさず菅原は、東峰の得意とするネットから少し離れた高めのトスを上げた。長年共にプレーしてきた信頼感と上げ慣れていることもあって、トスは完璧である。
「行け!旭!!」
「旭さん!!」
「あっちに肩入れして手抜いたら許さないヨ」
「当たり前だ!!」
「本気で止めに行きますから!!せーーの!」
東峰のスパイクは一ヵ月ぶりにコートに入ったとは思えないものだったが…烏野随一の高さを誇る三枚ブロックに捕まってしまう———
———が、それも西谷の手のひら一枚、俗に言うパンケーキと呼ばれるレシーブで乱れるもブロックフォローに成功する。
(どうする、嶋田さんがライトから呼んでる。トスを呼ばない旭より、決定率は——)
(俺が、俺がスパイク何回止められても、何度だって拾ってみせるから、だから!)
「だからトスを呼んでくれ、エース!!」
スパイク一本打つのに、どれだけの過程が必要か。サーブ、スパイクなどをセッターへと持っていくレシーブ。
そのレシーブを、数ある選択肢であるスパイカーの中から、自分を選んで上げてもらったトス。
「スガァァァァァァァァァ!!!」
———もう一本!!!
「悪いけどまた止めるよ」
「当たり前だ!!」
「影山それしか言ってねえな」
「行きますよ!せーーーーのっ」
完璧な三枚ブロック、だがそれがなんだ。俺のためにスガは綺麗なトスを上げてくれた。このスパイクに繋がるトスのために西谷がレシーブをしてくれた。しかもその西谷がバックを守ってくれている、それがどれだけ心強いことか。
(この壁は、ぶち抜くものだ。何度止められたって、西谷が拾ってくれる。恐れるな、全力でぶつかれ!)
「打ち切ってこその———」
…ググッ。空中で肩甲骨を下げる。ブロックをぶち抜くために研究していたもの。
(空中で止まってる……そして、ブロックのタイミングが少しズレる)
一番傍から見ている月島は素早く今の状況を判断する。その眼は流石の一言だが、わかってしまってもどうしようもないの一言だろう。
ズダァァァンッ!!!!
タイミングをズラした一発は、上手く重く掌にミートし、三枚ブロックを吹き飛ばす。そのボールの行方は既に壁だ。
———エースッ!!!
お久しぶりですマジでほんとに。すんませんマジでほんとに。
大学楽しくてつい(言い訳) 気力なくなってつい(言い訳)
久しぶりだと思ったより書けないもんですね…リハビリだと思って多めに見てね…短くてごめんね…甘々なくてごめんご…
こんな作品ですけど気長に待ってくれたら嬉しいゾ……