田中龍之介に憑依したので全国三本指に数えられるスパイカーになるべく頑張る話 作:龍門岩
『さて、それではインタビューをしていきたいと思います。高坂選手、今どのようなお気持ちですか?』
―――そうですね。ありきたりな言葉に聞こえるかもしれませんが、小学生の頃から支えてくれた両親、監督、コーチ、応援してくれた皆さん、そして何より、三年間共に戦い抜いてくれた六人の親友達への感謝でいっぱいです。
『そうですか。ありがとうございます。えー、大会MVPは高坂選手ですが、何か特別な気持ちなどは抱いていらっしゃいますか?』
―――えー、まぁ、すごく嬉しいですね。今までやってきたことが報われたって感じで、自分の力に自信を持つこともできました。
『これまでは自信はなかったということですか?』
―――はい。油断と慢心は己の身を滅ぼすと、中学生のとき監督から言われてからですかね、決して現状に満足せずに成長し続けられたと感じています。
『なるほど、素晴らしい向上心ですね。それでは最後となりますが、何か一言、全国のバレーボールファンそして、この舞台を目指すバレーボーラーに向けてお願いできますか?』
―――はい。そうだな……今まで応援してくれたファンの皆様、本当にその応援が心強かったです、これからもバレーボールを愛していてください。そしてこのオレンジコートを目指して頑張っている全国のバレーボーラー、努力は決して裏切りません。僕のこの身長でも、こうして大会MVPを取れるほどに成長できました。自分を信じ、仲間を信じ、練習を信じ。中々成果が出なくても、挫折したとしても、最後に蕾は開花すると信じて、日々の練習を頑張ってください。上から目線で申し訳ないですが、応援してます!
『非常に熱いメッセージ、本当にありがとうございました!以上、高坂瑠偉選手でした!』
―――ありがとうございました!
―――懐かしい記憶が蘇ってきたな。
最後のインタビューは、本当に詩人みたいなことを言っちゃってみんなに馬鹿にされたっけな。でもネットでは粗方好評のようで、しばらくバレーボールの人気が上がったらしい。よく知らんけど。
んにしても、なんでいきなりこんなこと思い出して……?
「……?どうしたの、君。バレー部希望じゃなかった?」
あぁそうか、死んだのか。そりゃそうだよな、こんなにも美しい女神様がいるんだもの。おそらくだけど、急ぎすぎた挙句に躓いて、階段の角に頭を思いっきりぶつけたんだろう。それ以外に死ぬ要素が見つからない、誰かに刺されたわけでもあるまいし……。
「……ほんとに大丈夫?」
あぁ、女神様や……あなたの元で一生働きたい……残業代なしでいいので使いパシってください……ああ神よっ!!!
「な、泣き始めた……澤村呼んだ方がいいかな……」
「あー!くっそ俺が一番乗りだと思ったのに!まぁいいや、ここってバレー部ですか!?」
「あ、入部希望者第二号」
「はい、バレー部に入り……は?」
俺は女神様に話しかけ、呆然としている隣のヤツに目を向けた。身長は160cmもなく、金メッシュの入った髪が特徴的で、記憶の中で見たことがある男だった。
千鳥山中のリベロだった西谷夕。ベストリベロ賞を何度も獲得していて、前世を思い出す前の俺も対戦したことのあるスーパーリベロである。まさか烏野だったとは。
にしてもこいつもおそらくだが、何かの拍子に躓いて死亡したのだろう。なんたって目の前の女神が見えているのだからな。
「め、女神…様……俺は、死んだのか?」
「どうして…?なんで皆固まっちゃうの……」
そして俺と西谷は、先輩である二年生と、他の入部希望者が来るまでそこに立ち尽くしていたのだった。
「あっはっはっは、二人とも面白すぎんべ!」
「す、すみません……」
「あまりの美しさに正気を忘れました……」
そして俺と西谷の二人は、一つ上の先輩である菅原先輩に爆笑されていた。
「清水を見て死んだと錯覚って……ぶわっはは!何者だよお前らァ!」
なんだろう、優しくおっとりした感じの雰囲気纏ってるから静かな先輩かと思ったらめちゃめちゃテンション高いじゃん。逆に冷静になってきたわ。
「ひーっ、ひーっ、ひーっ……はぁ、笑った笑った。んで、二人とも名前は?」
「あ、田中龍之介っス、よろしくお願いします!」
「西谷夕です、オナシャスッ!!!」
「田中に西谷ね、おっけ。多分そろそろ入部希望者全員揃うからちょい待ってて!」
そう言い残して、菅原先輩は大地ー!!と叫びながら走り去っていった。なかなか勢いのある人だったな、見た目とのギャップが凄まじかった。
「おう、俺は西谷夕!気軽にノヤとでも呼んでくれ!よろしくな!」
「俺は田中龍之介、家族には龍とかって呼ばれてる、よろしくなノヤっさん!」
「おっそれいいな!んじゃ俺も龍って呼ぶぜ!ポジションはどこだ?」
「もちろんレフト!そういうノヤっさんはリベロだよな?中学ンとき見たぜ」
「やっぱりか!?髪生えてるからわかりづらいけど戦ったことあるよな!すげぇ情熱のあるやつだったって覚えてるぞ!」
「ははっそうかそうか!情熱と熱血さだけは誰にも負けねぇぜ俺は!」
「おうよっ!!……して龍よ。あの女神様ヤバいな」
「いやほんとにな。美しすぎるぜあれは」
「龍……俺とお前はもう親友だっ!女神様の名前を聞き出しに行こう!」
「いや待て焦るなノヤっさん!どうせこの後は自己紹介をするだろう、その時にさり気なく聞くんだ、さり気なくな!」
「なるほど……!龍、お前頭いいな!!」
ちなみにさり気なく聞く必要はないと知ったのはそのあとすぐだった。
「二年の菅原孝支、ポジションはセッター、親しみを込めて呼び方はスガさんで!」
「二年の東峰旭です。ポジションはレフト、一応…一応エースみたいな……?あ、普通に旭でいいよ」
「二年、主将の澤村大地です。ポジションはライトです。そして見ての通り三年生はいない。訳あって皆辞めちゃってな、それでもここにいるみんなが入部してくれたら試合ができる……!だからぜひ、バレー部に!!」
「澤村興奮しすぎ、私まだ自己紹介してない。……清水潔子です、マネージャーです。皆よろしくね」
実はヤバい人、スガさん。
見た目恐ろしいのに実は内気、旭さん。
見た目通りだが実は熱い、主将大地さん。
そして言わずと知れた女神様、潔子さん。
そして俺と同じ一年は四人。
最強のリベロ、ノヤっさん。
そしてほかの三人、縁下、木下、成田も皆同様バレー経験者らしい。
これで烏野高校バレーボール部は八人(マネージャーを抜いて)。内一人はリベロで、定員ギリだが確かにこれで試合ができる。
そしてこれから、体験も兼ねた練習が始まるようだ。
女神様にうつつを抜かすのも一度リセットし、俺はバレーボールができる喜びを噛み締める。この三ヶ月、自宅の庭で直上パスをするくらいしかやることがなかったのだ、こんなにも広い体育館でバレーボールができるなんてどれだけ嬉しいことか。
まずは入念なストレッチ。この三ヶ月トレーニングばかりしていた俺とは違い、木下、成田、縁下の三人は受験明けだ、ろくに運動もしていないだろうから体は鈍っているはずだ。ノヤっさんは多分大丈夫だろう(適当)
入念なストレッチが終わり、アップをし、ペアを作り対人パス――ノヤっさんとやったが当然上手かった――まで終えたところで、一度大地さんの号令で集まることに。
「よし、いきなりだがスパイクを打ってもらう。西谷はリベロ希望だから、清水の投げたボールをスガに上げてくれ」
「はい!」
「よし、皆レフトの方に行けー。旭お手本!」
「え、えぇっ!?」
「ほら、さっさとやんべ!」
「だって皆経験者だし、手本とかいらないんじゃ……」
「ほら、さっさとやんべ!」
「いや……」
「ほら、さっさとやんべ!」
「………わかったよ」
二年生二人の押し問答が終わり、どうやら最初に旭さんが打つようだ。確かに皆が経験者であるのだから、手本としてスパイクを打つ必要性はあまり感じないが、まぁ先輩の実力を見せておくっていうことだろうな。
潔子さんが投げたボールをノヤっさんがAパスの位置にいるスガさんに寸分の狂いもなく上げる。ほんのり逆回転のかかった、セッターにとって最もトスを上げやすいレシーブだ、やはりノヤっさんはすごい。
そしてスガさんのトスは、記憶の中にあるものと似ていた。
なぜならそれは―――
ズドンッッ!!!!
―――少し高めでネットから微妙に離れた、俺の大好物とも言えるトスだったからだ。
思わず口角が上がる。ニヤつきが抑えられない。始まってしまった、俺の癖。愉快なこと、きついことなどがあると楽しんでしまう俺特有の
俺は前世のパートナーであったセッターと瓜二つのトスを上げるスガさんを見つめ、右の手のひらを思いっきり開く――いつもこれで気合いを入れている――と、スガさんと目が合う。
「え、なに田中笑ってんの」
「いや、いいトスだなって感心したんすよ!」
旭さんのとんでもない威力で放たれたスパイクに唖然とする一年生一同の前で、まさかトスを褒めるなんて誰も思っていなかったのだろう。スガさんですら呆気に取られた顔を晒している。
「ははっ、ありがとな。んじゃ次田中!!」
「え、あ、はい!」
どうやらご指名のようだ。
ここで一発―――皆の度肝を抜いてやろう。
ノヤっさんからケツを叩かれながらの激励を貰い、思わずやる気も上がってくる。たかが一年と少し嘗めている先輩達、そして新入部員達……特にノヤっさんには、あっと言わせたい。
レシーブに絶対の自信を持つノヤっさんを驚かせられたら、俺の中の自信も高まっていくだろう。なぜなら、前世でもノヤっさんレベルのリベロは片手で数えられる程しかいなかったのだ、まぁもちろん高校生での話だけどな。
潔子さんがボールを投げる。ノヤっさんがそれを完璧にチャンスボールにした。
「レフトォ!!」
気合十分。コンディション抜群。肩甲骨のコリ無し。
スピードを付けて助走を始め、バレー特有のステップ――四歩助走だ――で飛翔する。助走とは、人工の翼。誰が言ったかは知らんが、正に言い得て妙。
大きく腕を振りかぶり、最後の一歩で親指の母指球に全ての体重をのせる。ドンッと大きな音を立て空中に投げ出された俺の身体は、何千何万と繰り返してきたフォームで姿勢を整え―――
―――一気に腕を振り下ろすッ!!!
『ズダンッッッ!!!!!』
雷鳴の如き轟音が体育館に響き渡り。
―――唖然とした表情を浮かべるチームメイトの顔を見て、俺は溢れ出るニヤつきを抑えられないのであった。
諸事情により、田中たち入学時に三年生はいないことにしてます。
なんとか早く原作開始できるように頑張ります!
田中って、木下、成田、縁下のことなんて呼んでましたっけ。名字呼びでいいですよね??もし違ってたら感想で教えてくれたら嬉しいです。
田中やっぱバカ!?
田中かっけえ!!
田中強そう!!
そう思った方も思わなかった方も、高評価、お気に入り登録、感想、たくさんお願いします!
それでは次回に乞うご期待!