田中龍之介に憑依したので全国三本指に数えられるスパイカーになるべく頑張る話 作:龍門岩
『それではスポーツコーナー、金丸さーん!』
『はい!先日行われた春の高校バレー、男子の部、優勝は星雲高校でした!そして中でも注目だったのは、星雲高校ウィングスパイカーでエースを務める、高坂瑠偉選手です。私は高坂選手に、直接インタビューしてきました』
『「―――上から目線で申し訳ないですが、頑張ってください」』
『なるほど〜、堂々とした、そして心に響く熱い言葉でしたね!』
『プレイヤーとして、また人間として大きく成長できるのは、高校部活の醍醐味だと私は思いますね。それでは春の高校バレー、ハイライトVTRです、どうぞ!』
―――すごい。
私、清水潔子は単純にそう感じた。
最初は意味のわからない人だった。私の顔を見るなり固まって、涙まで流し始める始末。女神だなんだと、非常に恥ずかしいことを私に言ってくる田中を、少し意識していたのも確かだ。
彼がスパイクを打つと聞いてすぐ反応してしまったのだから、言い逃れはできないだろう。
そして、時は訪れた。
『ズダンッッ!!!!!』
凄まじい勢いで助走に入り、ダイナミックな腕の振りはさながら翼の如し。そして自信を感じさせる美しい
振り絞った弓の弦から放たれる矢の如き強力なスパイクは、轟音を立ててコートへと突き刺さる。軽く1メートルは跳んでいる、いやもはやあれは、
圧倒的ジャンプ力、そこから放たれるパワー、そして溢れ出る自信。
(……エース)
いつだかに垣間見た、鬼か白鷲か、とにかく全国に名を轟かせる大エースたちを夢想する。スパイク一本で流れを持ち込める、その片鱗を私は田中に見た。
「うぉおおおお!!!田中すご!!」
「龍!!お前はやる男だと思ってたぜ!」
菅原と西谷が、田中を褒め称える。もちろん東峰も澤村も、他の新入部員たちも、田中のスパイクを見て目を丸くしていた。私個人としても、田中は今の東峰よりもエースとしての力を備えているだろうと感じていた。
ふと、田中と目が合う。すると人懐っこい犬のような笑顔で、私に向けてピースをしてくる。
ズキューン。
不覚だけど可愛いと思ってしまった。
恋とかしたことはないけど、田中を見ていると少し胸が苦しくなる。
病気かな、と自分を言い聞かせ、火照る頬を隠すように私は俯いた。
潔子さん病気かな。
田中は奇跡的に潔子の照れ隠しを本気だと受け取り勘違いを進めていた。潔子に向けてニカッと笑顔を浮かべた田中だが、実際のところは目が合った恥ずかしさ故であった。
久々のスパイクが上手く決まり潔子は見ているだろうか、と思わず視線を向けたところバッチし目が合ってしまったのだ、笑うしかなかったのである。
「次、縁下!」
「は、はい!」
東峰、田中とエース級のあとに打つスパイカーの気持ちは何たることか。誠に可哀想ではあるが、受験明けとは思えない、しっかりとしたスパイクを打つ縁下ら三人。
そしてさらに驚きがあった。それは160cmにも満たない西谷が、縁下らと同等レベルのスパイクを打ったのである。
リベロとは、チームで最も能力の高いプレイヤーが務めるポジション。そう語ったのは誰であったか。定かではないが、西谷は正に『能力の高いプレイヤー』であることは自明の理。
「今年は豊作だな〜」
「んだな」
「俺は田中にポジション奪われそうで怖い」
「旭は自信を持てば大丈夫だべ!」
「そんな軽く言われても……」
「まあまあ二人とも。よし、集合!」
相変わらず押し問答を繰り広げる菅原と東峰を宥め、澤村は全員を集めた。
「これからサーブ練だ、好きなように打っていいぞ」
「大地さんっ!俺カットしてもいいスか!?」
「そうだな、西谷の力も見たいし頼む」
「アザーッス!!」
よし、じゃあ始め。
その号令を皮切りに、散開した一年生と二年生はサーブを打ち始めた。
オス、オラ田中龍之介!龍って呼んでくれよな!
そしてこれからサーブ練だ。大地さんが好きなように打てと言うので、好きに打たせてもらおうかっ!
突然だが、俺のサーブは二種類ある。
一つ目はジャンプサーブ。男子なら誰もが憧れる、スパイクのようなフォームでドライブ回転かけて打つサーブである。スパイクのように打つので、誰がやっても威力の高い、サービスエースを狙いやすくなるサーブでもある。デメリットとしては、単純に打つのが難しく、プロの世界でもサービスエースを取れるような威力だと成功率は高くて七割だということ。そしてジャンプサーブを入れにいこうとして打つと、緩いドライブ回転のかかった、レシーバー的に最も上げやすい球の軌道になってしまうということだ。
まさに諸刃の剣、しかし成功すればチームの士気は十二分に上がること間違いなしである。
二つ目は、ジャンプフローターサーブ。バレーボーラーは略してジャンフロなんて呼んでいる。これは全国共通だと俺は勝手に思ってる。
普通のフローターサーブと違うところはジャンプすることだけだが、これがかなり違う。高い打点から打つことができるので、威力もボールのブレも大きくなるのだ。
そしてジャンプサーブと違い、ジャンフロには人それぞれのフォームというものがある。千差万別と言っていいほど、人の数ほど形があり、最も自分に合ったフォームを探すことが最初にやることであろう。
俺も最初は苦労したものだ。
さて、それでは記念すべき一発目行きますか!
エンドラインに爪先を合わせ一旦停止、そして等間隔の歩幅で六回ボールを着きながら六歩分歩く。左手にボールを収め、少し時間を取る。
これが俺の、何万と繰り返してきたジャンプサーブのルーティンだ。スポーツにおいてルーティンは非常に重要な意味をもつ。これが崩れると一気にプレーの質を落とすことだってあるのだ。
軽く前髪を整え、左でドライブ回転かけやすくするように高く上げ、スパイクと同じように助走に入る。
(―――トス、いい)
いいジャンプは、踏切の音からわかる。そう教えられてから心情にしてきた力強い最後の一歩を踏み出した。
(―――タイミング、ジャンプ完璧)
いつもの、飛んでいると錯覚するようなフォームでボールを見つめ、叩く!
放たれたボールは、久しぶりだからかコースが甘い。代わりと言ってはあれだが威力は申し分なしである。
ど真ん中に向かうボールの先には、目を見開き笑みを浮かべるノヤっさん。俺と同じであるのか、楽しいときににやけてしまっているノヤっさんと一瞬目が合った気がした。
ドッパァァァアンッ!!
凄まじい勢いのボールがノヤっさんに到達すると、恐るべき技術をノヤっさんは見せた。
完璧にボールの落下点に入りボールを正面で捉え、インパクトの瞬間に全体重を踵に持っていき後ろに転がりながら威力を受け流す。
あの猪突猛進な性格からは考えられないほどの冷静で静かな、美しいレシーブ。
―――しかし、レシーブされたボールはそれでも威力を殺しきれず、ネット超えてしまった。
「……はっはは!!龍、すっげえな!!」
「ノヤっさんもさすがだぜ!」
「次は完璧に拾うからなっ!」
「はは、負けねぇ!」
次はジャンフロ行くぞ。
そう伝えると、ノヤっさんも先輩方も皆驚愕の表情をさらに深めたのだった。
はい、田中サーブも強いの回でした。(話進まねえ)
潔子さん視点→三人称→田中視点
で、本日はお送りいたしました。
潔子さん可愛い!
田中かっけー!
ノヤっさん相変わらずすごい!
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