田中龍之介に憑依したので全国三本指に数えられるスパイカーになるべく頑張る話 作:龍門岩
『それでは解説の牧野さん。今日の龍王ジャパンの勝利の鍵を握るのはなんですか!』
『はい、私はズバリ、期待の新星高坂選手にかかってると思います!』
『なるほど、と、言いますと?』
『高坂選手は今日が初の国際試合ですからね、対戦相手のブラジルにも情報が一切ないと思われます』
『なるほど、飛び道具と言う訳でもないですが、多少のインパクトは出せるということでしょうか』
『えぇ、それに高坂選手は日本の中でもかなり高い最高到達点ですからね、それに上手さもあります。全然世界にも通用するんじゃないですかね』
『なぁるほど!背番号は28!高校バレー界に突如現れた超新星は、日本の救世主となれるのか!今夜、決戦です!!』
日向と影山の神業速攻が決まってから、試合の流れは一転した。オープン攻撃ではブロックを抜けない日向がクイックを使えるようになることで、サイドの田中がフリーになるのだ。
第一セットは大幅に負け越していたが勢いを取り戻し、逆に日向影山田中チームが先取するという波乱の展開に。
第二セットも影山の集中力は研ぎ澄まされていき、月島らもなんとか食い下がろうとするも結果は日向影山田中チームのストレート勝ち。よって同時に、日向と影山の入部が認められたのだった。
「ふぅ〜、田中お疲れ」
「お疲れ様です大地さん」
「いやーにしてもあいつらすげーな」
「そっすねスガさん。まさかあの『なんかこうすごいことできないか』って、あの速攻のことを予期してたんすか!」
「ち、違う違う。俺は日向にもっと打ちやすいトスを上げてやれって意味だったんだけどさ。まあいい意味で裏切られたって感じだよな」
まさにその通りだ、と田中は思う。なにかすげぇことできんじゃないの、と菅原に言われた影山と日向が何を起こすかと思えば、従来のクイックの速度を遥かに凌駕するクイックを打ってしまったのだから。
だが試合途中で木下が言い漏らした通り、影山の疲労度は並大抵のものではないだろう。あの神業を繰り出すには高精度という言葉では括られないレベルの精密さを求められるのだ、頭が―――いや、脳が悲鳴を上げてしまいそうになるはずだ。
さらに言えば、日向も日向で相当疲れているはずである。あの身長で高い壁を躱すには、もちろんクイックというのはいい手だ。だが日向は自身の機動力を生かしてコート内を縦横無尽に動き回っている。予測でクイックに飛びつかれてドシャット食らう心配も少なくなるのだが、如何せん体力を非常に浪費する作戦だ。日向の無尽蔵に近い体力でなければ一セットももたないであろうことは自明の理。
と、その時。
―――ドドドドドドッッ!!!!
バンっ!
凄まじい足音で体育館に何かが近づいてきたと思ったら、いきなり体育館の扉が開いたのだ、バレー部全員少しビビっていた。潔子に至っては田中の右腕に抱きつく始末。また余談ではあるが、それを見た日向が田中と潔子の仲について思考を巡らすのだが、それは別の話。
「皆、練習試合が組めたよぉぉおお」
どうやら、今年から烏野高校バレーボール部顧問に就任した、武田一鉄先生のようである。それにしても、練習試合。月バリで田中が紹介されてからというもの、その認知度が集って練習試合をそれなりに組めている現在、そこまで慌てて伝えに来ることか、と澤村含め一年生以外が思うが、武田のその後の一言に思わず戦慄するのである。
「練習試合、組めたんだ!県ベスト4の青葉城西高校、そして―――東京都ベスト4、梟谷学園高校との!!」
―――青葉城西高校。県内では知らぬ者がいないほど有名な強豪だ。月バリでも紹介されたチームの中心、セッターの及川徹。非凡なそのゲームメイク能力と、選手一人一人の限界を見抜いた絶妙なトスアップはまさに全国レベル。さらに強烈なジャンプサーブも武器に持ち、自らの力で流れを作ることができるという非常に優秀な選手だ。
だが青城――青葉城西の略称――の強みは及川徹、その一点のみではない。エース岩泉一を中心としたスパイカーたちとセッター及川徹のコンビネーションが、青城が強豪と恐れられる所以である。
完成度の高い時間差攻撃。これの根幹を成すのはやはり及川徹であるのだから、やはり青城は及川徹のチームなのかもしれないが。
―――そして、梟谷学園高校。
全国五本の指―――いや、調子さえよければ三本にすら入るのではと謳われる大エース、木兎光太郎を擁する強豪だ。ここ数年は、強豪
さらに梟谷の強さは木兎光太郎だけではない、それは青城以上の選手間の連携力にあるのだ。おそらくだが、木兎光太郎を抜いてでも東京でベスト4に入れる実力があるのではないだろうか。まあ組み合わせ次第になるかもしれないが、それだけのポテンシャルと連携力が彼らの強みなのである。
ちなみに、今の高校バレー界で全国に名を轟かせる大エースは
白鳥沢学園高校、"東北のウシワカ"牛島若利。
井闥山学院高校、"関東のサクサ"佐久早聖臣。
狢坂高校、"九州のキリュウ"桐生八。
梟谷学園高校、木兎光太郎。
稲荷崎高校、尾白アラン。
そして烏野高校、"東北の龍"田中龍之介。
異名のついていない木兎光太郎と尾白アランだが、二人とも好調時には抜群の破壊力を発揮するため、実際三本指に誰が入るのかは定かではない。が、今現在は牛島若利、佐久早聖臣、桐生八の3人となっている。
元は全国五本の指だったのだが、田中龍之介がその力を月バリで全国に知らしめたので全国六本の指と変化したのである。
ただし、田中龍之介のみ全国出場経験が未だないので、評価は最も低いが。
―――とはいえ。
「青城は百歩譲って分かるとしても……梟谷ってどうしてですか先生!?」
「うーんと、僕が聞いた話だと、田中くんがいるかららしいですよ」
「お、俺スカ!」
たしかに今まで田中のネームバリューのおかげで、何校か県内で声が掛かることはあった。しかし、全国に名を轟かせる強豪。それも全国六本の指擁する梟谷が練習試合を組んでくれるとは驚くべきことである。
「その実力が本物か見定めるため、らしいです。しかもしかも!梟谷学園
「な、なるほど……じゃあ先生、もう土下座はしてないんですよね」
「してないしてない!安心して!あぁ、それと青葉城西高校の方なんだけど、条件があってね」
「条件……?」
「うん、なんでも、セッターとして影山君をフルで出すこと。これさえクリアしてくれるなら練習試合を組んでくれるそうだ」
その一言に、若干名の表情が凍りついた。主に菅原、澤村、田中である。特に菅原は言わずもがな、今まで烏野の正セッターとして試合をしてきたという自信と経験があるのだ、この提案はそう簡単に受け入れられるものでは無いだろう。
しかしその予想に反して、菅原はあっさりと提案を受け入れた。こんな貴重なことはそうそうないぞ、と。だがその内心は想像するにかたくない。
その後、坂ノ下商店で澤村の奢りで肉まんを食べたり、日向のポジションについて話し合うなど色々あったが、そこら辺は割愛しよう。
「これが、とりあえずは青城戦のポジションだ」
大地さんがそう言って取り出したホワイトボードを見ると、懸念していた日向のポジションが明らかになった。
それはミドルブロッカー。ブロックの要で、主にクイックで点を取るポジションだ。故に身長が必須なのであるが日向は約160cm、いくらジャンプ出来ても最も高いところへたどり着くのに必要な時間が他人より多いのだ。
だから日向の役割は、触ること。
月島のように高い壁を早く構築することができないので、日向自身の機動力と反射神経を生かした飛びつくブロックで確実にワンタッチを取り、カウンターに繋げよう、という作戦だ。
まぁもちろん最初から上手くいくとは誰も思っていない。それを試すための練習試合だ、有効活用させてもらおう。
そして俺も―――思いっきり暴れてやる。
実を言うと、影山だけに注目されていることが少々気に入らないのだ。俺も見ろ、俺を警戒しろ、と。
俺が密かに闘志を高めていると、日向と影山の話し声が聞こえてきた。
「つまり、お前は最強の囮だっ!!」
「うぉぉおお!!最強のっ!!!……囮?」
「あぁそうだ。お前がど真ん中で大暴れすれば、サイドのスパイカーが生きてくる。つまりだ、お前がしっかりしなきゃ負けると思え!……いや田中さんなら三枚でもぶっ飛ばすか」
最後の俺への賛辞は日向には聞こえていなかったようで、要約すると『勝利はお前にかかっている』ということを影山に言われたと思った日向は、俺から見ても分かるくらいにガチガチになっていた。
今からそんなんじゃ本番はどうなるんだよ、と危惧するも、もう遅い。
―――練習試合当日。
「ぼぇえええええ」
俺は日向にゲロを吐かれていたのだ。
―――青城戦が、始まる(遠い目)
はい、年末ってことでなんとか投稿!!
え?前回で今年最後って言ってた??……知らないです(ニッコリ)
誰がそんなこと言ったのか…私、気になります!
さて、全国五本の指が、全国六本の指になりました。ちょっと強引かな?とも思ったんですがまあいいでしょう!!笑
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