現在投稿前『1900……何が……起きている?』
お気に入り件数の期待に沿えるよう、楽しんでもらえるような作品書いていきたいと思います。
ある時、私は逃げ出したくなる思いを反故にして食堂へと向かった。
途中で比較的新入りの燕青を捕まえ、来たる
――そう、
はっきり言って休みたい。大抵のことは「なんとかなるよね!」と言うマスターすらイビルウインドに忍術を
とはいえ、どうやら今年は状況が違うらしく、ハロウィンが中止になるかもしれない事。燕青やマシュと共に管制室に行き、諸々の説明を受け私達はチェイテ城がある特異点に向かったのだった。……そういえばこの特異点は何故残り続けているのだろう。ある意味異聞帯じゃないのだろうか、ここ。
そして特異点に訪れると、唐突に「あれ、
私は長い時を生きてきた。
大半は人の世から乖離したため建造物などに知識が疎いとはいえ、これは私がこの世に出で落ちてから得た知識を総動員しても意味が分からない。
よし壊そう、すぐ壊そう。全て跡形もなく消し去ればこんな特異点とは
「おおう、
マスターや燕青、姫路城のサーヴァントらに止められて
だけど慣れなくても特異点解決はできる。マスターは燕青に負ぶってもらい、私とマシュは姫路城サーヴァントの折り鶴に乗せてもらい外壁を上っていった。途中に様々な障害はあったけれども、特異点問題の発生源であるメカドラ娘と言う訳の分からないサーヴァントとも相対し、解決に向かって――
――巨大な
言いたいことは多くあるだろう。
事の発端はなにか。姫路城サーヴァントが裏切っていたとか。そもそもメカの逸話がないサーヴァントが何故メカになっているのか。最近現れ始めているアルターエゴとはなんなのか。何故メカがアルターエゴになっているのか。疑問は様々ある。だけど全ては無に帰せば問題そのものがなくなる。
とあるヤマトの芸術家は「芸術は爆発だ」と言ったそうだ。そして相手はメカだ。ならば全ての終わりは爆発こそ相応しい。
「無に還れ――!」
『気持ちは分かるけど落ち着いて!』
その場にいた全員に止められた。
ごめんなさい、後輩。この特異点が私が居たことによって現れた可能性もあるけれど、シンで会った貴方はこういった特異点を解決してきたかもしれない。そこは素直に尊敬したいと思う。
◆
「ドクターは女が嫌いなのかしら」
「ゴホッ!?」
ある時、私の言葉にドクターはお茶を思い切り咽ていた。
しばらく経って落ち着くと、何故そのような事を思ったのかと疑問を投げかけてきたが、私があの褐色女王を避けて、ダヴィンチにはちゃんと接し、ネットアイドルに逃げていることを挙げるとドクターはバツの悪そうな表情になる。曰く「避けているつもりはない」とのことだが、
「……彼女には、合わせる顔がないからね」
とのことである。……それを避けているというのだが。
ドクターはヘタレだ。
芥ヒナコとしてカルデアに居た頃のドクターは、友を作ることを良しとしないように見え、余裕が少なく、目の下にクマを作ることが多く、時に何かに追われるかのように仕事に没頭するきらいがあった。……あのマリスビリーに連れてこられ医療部門のトップをやっている辺り、ドクターにもなにかしらの事情があるかもしれない。
今の私の立場と芥ヒナコとしての立場は別だ。以前であれば深く関わろうとしなかった私ではあるけれど、今は違うと言えるだろう。それに今のドクターはなんと言うべきか……
と、私が思案しながらコーヒーを飲んでいると、ふとドクターがこちらを興味深そうに見ていることに気付いた。ドクターは何度かこのような視線を私に向けることがある。いつもの自信のない過小評価した焦点の合わない視線ではない、何処か保護者めいた視線。
私がどうしたのかと問うと、ドクターはやはりなんでもないかのように曖昧な返事をして話を逸らす。……なんだというのだろうか。
「――キミもあの頃から変わったんだね」
ドクターが小さく呟いた言葉の仔細は、私の耳には届かなかった。
重要な、ロマニ・アーキマンとしての感傷を取りこぼした気がする。
◆
ある時、馬鹿共が食堂で熱く語り合っていた。
曰く女性のような外見を持つ男性がどれほどの魅力があるか、とのことだ。わざわざ語る必要があるのかと語る黒髭。語ってこそ愛であるとムニエル。絡んでこそ魅力が活きるという刑部姫。――よく分からないが、それらは相容れないものらしい。ちなみにその中には蘭陵王が入るかどうかも話し合われるらしい。蘭陵王がこの場に居なくて良かったと思う。
よく分からないが可愛い外見の話ならエミヤも入れればいいだろうに。確か可愛ければ誰でもよかったと思うけど。
「待て、それは語弊があるぞ。と言うか誰から聞いた!?」
「キャスターのクーフーリン」
「くそ、槍を投影しなかった腹いせか!」
エミヤはそう言うと、キャスタークーフーリンが居るだろうレクリエーションルームへと走っていった。お玉と鉄鍋を持ってどうするというのだろうか。
しかしあの馬鹿共の話は良く尽きないものだ。前には日焼けはどういった形が良いかとか話していたと思うけど。しかしどうでもいいことだと思い、私はそろそろ食堂を去ろうとマスターに勧められ読んでいた漫画を閉じ、立ち上がろうとする。
「では次は、この前手に入れたこの衣装案を見て、異種の恋愛について……」
待ちなさい、ムニエル。それは私が深夜に書き、過激すぎるあまり廃棄した項羽様の水着案(ver.14.67)じゃない。何故お前が持っているの。え、リサイクル精神で紙を再利用した際に偶然発見した? なにを余計な事をしやがっているのだ、この男。
あれには項羽様の名前や私の名前がないとは言え、筆跡で私が書いたとバレる恐れがある。くっ、どうやってこの場を凌ぎ切るか――
「あ、ちょうどいい所にマスター殿。この衣装を見てどう思うでござるか?」
「この筆跡は…………えと、虞美人さん……
「違う!!」
その後、弁明するために色々と話し合い、ムニエル達には他言無用の言を敷いた。
◆
「ツボを押してやろうか」
ある時、私は丁重に断り逃げた。
理由はよく分からない。最近召喚されたアサシンの老人にはえも知れない感情が湧いた。
ただ、彼のツボ押しには手加減などない凝りどころか違う何かすら
しかし何故だ。あの男は汎人類史としての英霊ではあるが、姿形はどう見てもシンの衛士長そのもので、恐らくは同一人物。シンに関わるサーヴァントはこうして召喚されるというのにどうして項羽様だけは召喚されないの。
「あら、丁度よかった。私と一緒に写真を撮ってくださらない?」
私は断りを入れてその場を去った。
あのサーヴァントは、記憶の限りではカドックが召喚していた(と思われる)皇女。ダヴィンチに作らせたカメラを手に自撮りをよくやり、今では英霊全員と自撮りを目標とする最近召喚されたサーヴァントだ。楽しそうにしている皇女をカドックが見たら、いつも以上に自身の事を卑下し、遠い目をしそうである。
「どーれーにーしーよーうーかーな……よし、このアイスにしよう」
……あのあずきのバーを手に取った女は最近召喚されたサーヴァント、スカサハ・スカディ。確かオフェリアの異聞帯の王であったはずの女だ。彼女のあり方はカルデアも疑問視していたが、「ま、いっか!」の一言で収束し今ではカルデアを闊歩している。なお、ケルト勢が「あのスカサハが可愛らしい……!?」と言い、スカディではないスカサハに一度消滅させかけられていたりした。そして現在のスカディは食べようとしたアイスの固さに倒れかけていた。
「クク」
……幻聴だろう。あのセリフに反応してはならない。そんな気がする。
おそらく巌窟王かイバラキあたりが笑っているのだ、そうに違いない。
おかしい。このカルデアは色々なサーヴァントを召喚しすぎだ。何故異聞帯のサーヴァントがこうも召喚されるのだ。いえ、召喚されているのは一部を除き汎人類史のサーヴァントだとは理解している。理解しているがいくらなんでも出鱈目すぎないの、この召喚システム。私が召喚された時点で察しようと思えば察せるけど、サーヴァントはどこから引っ張り出しているのだろうか。そしてなんで項羽様は召喚されないの! せっかく自室を改造して項羽様専用のスペースなどを作りいつでもお出迎え出来るようにしているというのに……。
「項羽様……」
「……最近の虞美人さん、元気ないね」
「やはりチェイテピラミッド姫路城が尾を引いているのかな……」
その後、何故かいつもより優しいマスター達に休暇をしても良いと言われた。休暇よりも項羽様を召喚しなさいと言うと、
結果、秦良玉が召喚された。
私はしばらく自室に引きこもった。
◆
ある時、わたしはねつをだした。
それは私が身体を一度再構成しても治るものではなく、身体も脳もうまく働かないような、この世に出で落ちて初めての経験だった。
カルデアスタッフやサーヴァントも軒並み倒れるほどの異常事態。後から聞いた話だと原因はシュメル熱というものだったとのことだ。ついでにサンタのサーヴァントが増えていた。羊に乗る水着衣装のようなサンタであった。熱がひいてまともに思考ができる状態になってから出会えて良かったのかもしれない。
体の節々が身体の繊維を割くがごとく痛み、歩くこともままならず、視界が水中かの様にぼやける。壁に手をついてようやく歩くことができ、普段の数十分の一の速度でしか進めない。
「マス、ター……こう、は、い……」
駄目だ。
今の状態の私ではマスターの面倒を見切れない。それでは駄目だ。
早くこの状態を解決しなければ、いつマスターに危害が及ぶかも分からない。これも敵側の策略ならば、マスターの傍に居なければ……
しかし足がもつれてしまい、カルデアの廊下に私は倒れ込む。ああ、何故だ。なんでこういった時に傍に居られないのか。マスターは今、マシュすらも倒れた状態で、護衛とよべるべき者は居ないはずだ。アイツは一人では基礎魔術も碌に使えない。敵が一人でも来たら命の危険に晒されるようなまさに四面楚――
「いま、いく、から……」
駄目だ。
それだけは駄目だ。それはあってはならない事であり、二度とそのような状態にして最期を迎えてたまるモノか。私は痛みと熱で感覚もない足に力を入れ、再び歩き出す。例え壊れても再生する身体で良かったと、今この状況で刹那だけ感謝した。
例えこれが自己満足でも、後から徒労であったとしても、行った所で戦力にはならなくても構わない。それはそれで私の経験として蓄積する。だから、だからどうか、
「こんな最期はやめて」
――クリスマスの終わりには、マスターの元気な姿を見れた。
――あぁ、良かった
次回、私が意気消沈していたら星に願いをかける少女の召喚に失敗したと思ってください。
次回、私がいつも通りでいたら星に願いをかける少女の召喚に成功したと思ってください。
……頑張ろう。