某嫉妬妖怪は出てきませんので予めご了承ください
ある冬の日の幻想郷、と言っても地底は年中暑いし雪が降るわけでもないのであまり季節の流れを読み取りづらいがなんとなく今が冬だってことは俺にはわかる
度々地上に顔を出しているし地上で会った知人に尋ねれば済むことだし白い妖精が飛んでたら春、紅い姉妹が農作業をしていたら秋、雪が降り⑨とその保護者さん(仮)が活発だったら冬、向日葵畑のドSを向日葵畑以外で見かけたら夏という判別方法もある
俺こと銕蒼蔦はいつもと変わることなく地霊殿内に用意された自室のベッドに横になっていつもと変わらぬ日々を送っている
普段と違うことと言えばさとり様達御一行が珍しくお揃いで朝から出かけてしまっており現在無駄に広いこの地霊殿には俺しかいないということくらいだな
あ、あとはさとり様のペット達もこの地霊殿に残っている
ぶっちゃけて本音を言おう、暇だ...
幻想入りする前ならばゲームやらPCやらありとあらゆる娯楽が俺の退屈を払ってくれたのだが、生憎とここは幻想郷
どこかの蓬莱ニートの所か親友の道具屋か河童と協力制作するか不本意に不本意だがスキマ妖怪の力でも頼らない限りはそんな代物はここでは手に入らないだろう
「.....少し出かけよう」
思い立ったが吉日、俺はいつものバンダナを頭に巻きチョーカーの具合を確かめて黒いシャツの上から白いカッターシャツを羽織る
そして鞄に防寒着もといフードの付いたジャケットを押し込みポケットに財布を入れて玄関まで移動する
「じゃあな、ちょっと出かけてくる」
俺は動物たちに見送られて地霊殿を出発した、鍵はきちんと掛けて火のもとも確認したから問題ない!
「久し振りに香霖堂に行こうか」
俺は地上にある香霖堂を目指して歩き始めた
※
その頃...
「うーん、どれがいいかしらね」
「あたい的にあの人ならどんなモノでも純粋に飛び跳ねて喜ぶと思いますけどね」
「でも蒼兄ってあまり甘いの食べるイメージないよね...」
どうも、地霊殿の主にして覚妖怪のさとりです
私たちは今人里までやって来ています、おくうは今席を外していますがもうすぐ戻るでしょう
「ねぇさとり様〜、今日って本当に0214なんですよね?」
お燐が今更不安に思ったのか確認を入れてきました
「えぇ、間違いないはずです」
「でもおくうの情報じゃちょっと私も不安なんだけど」
「.....だ、大丈夫です。ちゃんと私も確認しましたから」
えぇ、ちゃんと「心を読む程度の能力」で人里の人達の心の声を聴かせていただきましたからね!
『今日こそはこーりんに、こーりんに想いを...!』
『俺は今年こそ慧音先生からチョコを貰うんだ!この際義理でも本命でも失敗作でもなんでも構わねぇ!』
『阿求さん、今年こそは貴方の想いはこの僕が!』
.....えーと、何はともあれ間違いなさそうですね、はい
「さとり様〜早苗ちゃん連行してきたよ〜!」
そうこうしている内におくうが現人神こと東風谷早苗(こちやさなえ)さんを連れてきてくれたようですね、首根っこを片手で掴みながら
「きゃん!」と早苗さんはおくうに手を離され落下、うんいい音です
「痛たた、どうしたのよ空ちゃん。急に首根っこ掴んで飛んだりして、ていうか上着着てないから寒い!めっちゃ寒いぃぃぃ!!」
緑色の長い髪に少し幼さの残る顔の早苗さんは何故か下着姿...
「おくう、これは一体どういうことなのかしら?」
「うにゅ?さとり様が早急に連れてくるようにと言ったので超特急で連れてきただけですよ?」
おくうは私の質問に首を傾げる、このままじゃ原因はわからないままなので少し早苗さんの心を見てみましょう...
『寒いぃ、全く空ちゃんは説明もなしに着替えてる途中の私を連れ去るなんて、しかもここ人里じゃん!それに私下着じゃん!!恥ずかしい!ヤバイ本当に恥ずかしい!どうしよ、こんなトコあの鴉天狗にでも見られたらいい笑い者よ...』
.....心中察しました
「おくう、あなたの上着を早苗さんに貸してあげなさい」
「なん、てか怖ッ!?さとり様、今まで見たことないくらい怖い顔でそんなこと言わないでくださいよ!」
「いいから早くしろ、この鳥頭」
「さ、さとり様のキャラがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、てか、ぁん、やめ、む、無理矢理脱がさないでくださいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「お姉ちゃん、あれはマジだね」
「本気ですね」
「そんなことより寒いし恥ずかしいよぉぉぉ!」
※
一方...
「いらっしゃ、あぁ蒼蔦じゃないか。久しぶりだね」
「よぉ、相変わらず客いねェな」
「....昨日はツケで払う常連さんが来てたんだけどね」
「ご、ご愁傷様で」
地霊殿を出て数分、俺はやっとの思いで親友である森近霖之助(もりちかりんのすけ)の経営している道具屋、香霖堂に到着した
彼は妖怪と人間のハーフで所謂半人半妖と言ったところだ
綺麗な白に近い銀色の髪に眼鏡をかけたいかにも優等生っと言った容貌をしている
あとこの幻想郷でも数少ない男の知り合いなので何かと気も合う
「それで、今日も暇つぶしかい?」
「まぁそんなトコかな」
俺が香霖堂を訪ねる理由は大抵暇つぶしか外の世界の物資調達だ
この香霖堂では幻想郷の外の世界、つまり俺が幻想入りする前の世界のモノを取り扱っている数少ないというかここしか扱ってない気もする
「お茶でも出そうか、どうせすぐに帰る気はないんだろ?」
「まぁね、よくわかってんじゃん」
「君とはそこそこ付き合いが長いからね。それに暇つぶしで来てくれる客の中でも最もマトモな客だと信じてるし」
「.....相変わらず苦労してんだな」
「苦労してるよ」
俺と霖之助は互いに苦笑いをする
霖之助は眼鏡をクイッと上げるとカウンターを離れて奥の部屋に移動する
それにしても、久々に来たがまたモノが増えた気がする
例えば、この浮き付きの釣竿とか前と後ろの両方のタイヤがパンクしちゃってる自転車とか無駄にでかい風車のプロペラとか明らかに廃棄処分された大きな滑り台とかよく見たらどこか懐かしい某モンスターの人形とか時代背景がいまいち読み取れないマク◯ナルドの看板とかクリスマスのときお世話になったケン◯ッキーのカー◯ルさんの人形とか近未来的な電光掲示板とか...
よくもこんなにも物が幻想入りしてくるものだよな
そしてこのカレンダー、なんで無駄に半年分の年月しかないんだよ
しかも1966年っていつの話だっての!
「お待たせ、とそのカレンダーがどうかしたのかい?」
「いや、何でもない」
俺は霖之助から茶を受け取って一気飲みをした
熱かったが外は死ぬほど寒かったので問題なかった
「そういや今って何月なの?」
「今日は2月14日だったね」
「ふーん、2月14日ね...ッ!!」
その時、俺の中の何かが覚醒した
気がつけば俺は大きく目を見開き鋼の握力で湯呑みを粉々にしていた
霖之助は俺の突然の行動に少々驚きを感じているがそんなコトはどうでもいいッ!!
「貴様ッ!今日は2月14日だと言うのかッ!!」
「そ、そうだよ、どうしたんだい、急に...」
「どうしたもこうしたもだなッ!!」
俺は何故か霖之助の胸ぐらを掴み喧嘩腰になっていた
まさか、今日があの恨めしく忌まわしきBARENTAINだと言うのか...!!
この銕蒼蔦、一生の不覚ッ...!!
「そ、蒼蔦、そろそろ離して、くれないかな?」
「うぉぉ、すまん!」
俺は今我に返った、どうやら相当長い時間霖之助の首を絞めていたらしい
「ケホッ、ケホッ、全く君の腕は本当に鉄なんだな。改めて実感させてもらったよ」
「案外大丈夫そうだ...」
俺はなんかもう、霖之助の発言には謝るにも謝りきれなくなってしまう
超今更だが霖之助も俺のことをサイボーグだと知っている人物の一人である
「あぁ、そうそう!」
霖之助が何かを思い出したかのように話し始める
「今朝朱鷺子がチョコを持ってきてくれたんだが」
「リア充、爆発しろッ!」
俺は無意識に霖之助を殴っていた
※
「....なんで私が地霊殿まで連れて来られてるんですか?」
「いや〜あたいは悪いなんて微塵も思ってないけどさ〜、ちょっと利用させてもらいたくて」
「何ここ怖い、超帰りたい!?」
人里から早苗を連れて(半ば無理矢理、服を交換条件に)地霊殿に戻った私たちは普段なら絶ッッッッッッッッッッ対に蒼蔦さん以外使うことのないキッチンにエプロンとバンダナを装備して早苗さんを縛って固定して足を踏み入れてました
動物たちの話しだと蒼蔦さんは出かけてるようですし好都合です
「早苗ちゃん、逃げようとしたらメガフレアね」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、こんな状態で逃げろって言う方が無理ですよ!いくら私が能力を使ったとしても逃げる気なんて元から全くありませんからその制御棒をどうか仕舞ってくださいお願いします!!」
.....早苗さん必死すぎでしょ
「この幻想郷では常識に囚われてはいけないのですね!」とか言っていた方が何をおっしゃっているのだか
「ねぇねぇお姉ちゃん、早く作ろうよ!」
「そうねこいし、蒼蔦さんが帰って来る前に早く仕上げましょうか」
私が包丁を取り出しタオルで拭くと何故か早苗さんは「ヒィィ!?」と言いながら涙を流しています、一体何故でしょう?
「さとり様、火は強火で良かったですかね?」
「そうね、そのくらいの方が火も通りやすくて丁度いいかもね」
お燐はそう言って了解しました、と言って大きな鍋を持ってきました
....まったく、そんな大きな鍋に一体何を入れるんだか
すると後ろの早苗さんの顔色が悪くなったと思ったらダラダラと汗をかきはじめました、まぁたしかにこの辺は地上に比べれば暑いですが...
「さとり様さとり様、冷凍庫の中身の整理もできました!」
「あら、意外に大きいのね。人一人くらいは入るんじゃないかしら?」
本当に大きな冷蔵庫、蒼蔦さんはよくこんなモノを作りましたね
.....それに一体なんなんでしょう、早苗さんがもう泣いてるとかそんなレベルじゃなくてなんでフルフルフルと頭を横に振るって歯をガチガチガチガチと鳴らし震わせてこちらを見ているのでしょう?
え?能力ですか?
今はオフですね、この能力はそこまで好かないのであまり使いたくないのですよ
そして私は買ってきた材料を並べます
「早苗さん、では早速ですがチョコレートの作り方を...」
私が早苗の方を見た時、何故か彼女は泡を吹いて気絶していました
はて、一体彼女に何があったのかしら?
※
「畜生、あの野郎!リア充ライフを優雅に満喫しやがってッ!」
俺はもう香霖堂を出て地霊殿に帰っている途中である
あの後白黒魔法使いまでもが霖之助、もとい男の敵にチョコレートを持ってきたので更に一発ブチかました所、白黒魔法使いが突っかかってきて危うく弾幕ごっこにまで発展するところであった
.....勝負は目に見えているので無謀にも俺は挑もうとはあえてしなかったがな
俺はそんなことを憂鬱な思いに浸りながら大きく溜息を一つ漏らす
思えば幻想郷に来るまでにも女の子から本命(義理はあったようでなかったような...)のチョコレートなんて貰ったことなんてなかったな
俺の周りただでさえ女っ気が少なかったし俺を好きになる物好きなんているはずもないし....
なんだろ、視界が若干ぼけてきたぞ
心なしか目から汗が流れている気もする
(やめだやめだ、どうせ俺は非リアなんだ!画面の向こうにも同志たちは多くいるはずだ、弱気になるな俺は決して一人じゃねぇ!!)
俺は無理にテンションを上げてもう気がつけば地霊殿の目の前までやって来ていたことに気がつく
相変わらず外で元気に遊ぶ犬猫達に見送られて地霊殿の入り口にまで近づくと見知った人影を発見する
赤い髪の上に黒い猫耳をぴょこぴょことさせるここの住人の一人
「よぉお燐、帰ってたんだな」
「あ、うん、ついさっきね...」
「どうしたんだ、何かいつもと雰囲気違うぞ?」
何だか上手くは言えないがいつもと違って返事にキレがない
お燐は何かもっとこう、堂々としているし俺の冗談(じゃないときもある)にも全力で突っ込みを入れてくれるほどテンションが高いのに...
心なしか顔も少し赤い気がする
「お前、もしかして熱でもあんのか?」
「そ、そんなことないよ!だ、だ、だだだだだ第一妖怪が風邪なんか引くわけないじゃないのよ!」
「....すげ〜な妖怪」
やはり妖怪は風邪を引かないようだ
たしかにお燐は風邪を引くようなこともしてないし、風邪を引いているなら外で猫たちと話しているなんてこともまずないだろう
「そ、それよりさぁ、今日はいい天気だと思わない?」
「天気も何もいつもと変わらないが
...」
................................................................................................................................................................................................................................................。
き、気まずい!
な、何でこうも会話が続かないんだ
いつもならばボケとツッコミの応酬が延々と繰り返されるというのに!
「あ、あのさ」
お燐の一言が沈黙を打ち破り小さな小包を俺に差し出してくる
「こ、これどうぞ」
「お、おぉ。ていうかこれって何?」
「えと、えーと、ネズミの死体!」
「嫌がらせか!しかもご丁寧に包装までして!?」
「あ、ま、間違えた!ごめん、そ、それはあれよ!人間の小指!」
「余計怖いわ!」
「あーうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!ちょっと苦くて甘い茶色い固形物よ!!それじゃあね!」
「あ、お、おい!」
俺の声が届くことはなくお燐は地霊殿とは反対方向へと走り去ってしまった
とりあえず中身が気になったので俺はプルプルと手を震わせながらゆっくりと包装を解いていく
「....ッ!」
そこで俺の思考は止まった
そして無意識に頬が緩んでいるのが自分でも理解できた
「お燐、ありがとう」
俺は小包を包装し直して鞄に仕舞う
そして地霊殿の中にやっとのことで帰宅した
※
「あ、蒼蔦〜!」
「おぅおくう、ただいま〜!」
俺が地霊殿に入ってリビングにいたのは地獄鴉兼八咫烏のおくうだった
相も変わらず元気な様子だった
俺とおくうは軽くハイタッチを交わす、これはいつの間にか恒例となってしまい二人でよく行うことが多い
「そういや今日は朝からどこに行ってたんだよ、久しぶりに山の神様達から休暇貰ってたんだろ?」
「うん、だからさとり様達と出かけてた!」
「うん、それも知ってる」
まぁ、これがおくうの平常運転なのだから仕方ない
俺もこのペースにスッカリ慣れてしまい最初こそ突っ込みの応酬だったのだがもう軽く受け流せるまで成長している
案外彼女と漫才でペアを組んだら結構イイ線までいきそうな気もする
すると突然おくうは立ち上がったかと思ったら俺の顔面、具体的に言うのであれば鼻先三ミリあたりのギリギリの位置まで制御棒を突き出してきた
「え、ちょ、待っ、ええ!?これどういうこと!?」
「フフフ、さぁ蒼蔦!貴様は今からこの渾身の新技の実験台となるがよい!」
「俺何かしましたかッ!?」
まったく意味がわからなかった!
おくうが予測不能かつ奇想天外な行動を行うのは今に始まったことではないがここまで笑顔を浮かべて楽しそうにしながら割とガチで恐怖を感じるのは初めてである
「お、落ち着けよおくう。は、話せばわかるさ」
気がつけば俺はダラダラと冷や汗を垂らしながら無駄とも無謀とも言える交渉をあの鳥頭相手に行っている自分の愚かさに気づかされる
奴に話しは通用しない!俺ももはやここまでかッ!
「どーん!」
「ふゴッ!?」
ある意味意表を突いた攻撃だった
制御棒を横に振りバットのように俺を打ち上げたのだ
まさかの不意打ちに対応できずモロにその一撃をくらってしまう
何度でも言うが俺はサイボーグであるが超絶中途半端な改造を施されたサイボーグで首から下の左上半身と右腕以外は生身の人間とまったく変わりのない構造と防御力なのである
もちろん頭は後者である生身のままである
「痛てて、こんなのくらったら普通の人間は痛いじゃすまねぇぞ...」
「大丈夫、蒼蔦は普通じゃないからね!」
「お前が殴ったトコロは普通の部分なの!」
俺は涙目でおくうに訴える
こんなの理不尽すぎる、俺が一体いつ何をしたと言うんだ!
「あ、そうだ蒼蔦に渡すものがあったんだ!」
おくうはそう言って制御棒の側面部分をカパッと開けて何かを探すようにゴソゴソと手探りする
.....一体どういう構造してるんだろう
「はい、コレ!」
「これは?」
「今日はバレンタインデーだからね!蒼蔦にはいつもお世話になってるから日頃の感謝を込めてのお礼だよ!」
おくうは笑顔でそう告げた
なんだろう、嬉しい反面少し悲しい気もする
俺は笑顔でおくうからの感謝の気持ちを受け取った
「ところで中身は一体何なんだ?」
「忘れた!」
※
「ん?」
俺が自分の部屋に向かっている途中、俺の部屋の前で何やらハート型の小包を両手に抱えて立ち止まっているさとり様がいることに気がつく
どうやら能力も使っておらず、こちらに気がついている様子もなさそうだ
以前までの俺ならば「え、何この可愛い生物?お持ち帰りしたい!」とか言って部屋に連れ込むのだが生憎、俺はもう昔の俺ではなかった!
俺はさとり様にバレないようにそろ〜り、そろ〜りとゆっくり気配を限界にまで殺して近寄る
そしてさとり様の肩に両手をセッティングすると同時に...
「さ〜とり様〜!」
「ひぃぃ、にやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
ちょっとしたドッキリを披露してみた
と言っても普通に話しかけただけなんですけどね
「どこが普通なんですか!?危うく心臓が止まるかと思いましたよ!?」
さとり様が物凄い涙目でこちらを睨みつけてくる、第三の目からも若干だが涙が流れてる
顔を真っ赤にしてさっきまで持っていた小包を背後に隠しながらゼェーハァーゼェーハァー、と呼吸を整える
「で、それなんですか?」
「そ、そそれとは?」
「今さとり様が手に持ってる物ですよ、それに何か俺に用があったみたいですけど?」
「うぅ...!」
俺は自分でもわかるくらいにニヤニヤしながらさとり様に質問をぶつける
実はこの地霊殿で一番弄びがいがあるのはさとり様なんだよね
耳まで顔を真っ赤にさせたさとり様は明らかに目を泳がせて焦点は合ってないがこちらを見ている
....外の世界では俗にこれをロリコンという性癖になってしまい、警察にも通報されかねない状態だがここは全てを受け入れる世界幻想郷
受け入れてはいけないものまで受け入れてしまうという欠点はあるが心が広いことは真っこと良いことである
「.....さっきから全部聞こえてますよ?」
「はて、ナンノコトヤラ」
俺は目を逸らしながら必死に誤魔化す
やはりこの人の「心を読む程度の能力」は侮れないな...
俺はそんなことを言いつつ頬を赤らめる純真乙女心のさとり様に一言放つ
「そう言えば今日はバレンタインデーでしたね〜」
「ッ!!」
「いや〜俺もうお燐とおくうから貰ったんですよね、初めて貰いましたけど嬉しかったですわ」
「そ、そうな、の、よよよよかったですね」
「そういうわけで俺はそろそろ部屋に入らさせていただきますね」
俺はさとり様を片手で持ち上げて扉から遠ざける
そしてドアノブを回して部屋に入る
「ちょ、ちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょ!!え、えっちょ、待ってください!私そ、蒼蔦さんにわ、わわわわわわわわ渡すものがありまして!」
「渡すものですか」
「貴方にはいつもお世話になってるのでそのお礼ですよ!では私はこれで失礼しますッ!!」
さとり様は俺に小包を渡すなりどこかへと顔を真っ赤にして走り去ってしまった
おそらく自分の部屋だろうがなんか階段から転げ落ちる音が聞こえた気がする
「.....大丈夫かな、さとり様」
俺は若干心配しつつも一先ず部屋に荷物を置いてさとり様の様子を見に行こうとした瞬間、俺の視界は真っ暗になった
更に言えば背中に何かが張り付いてる気もする
「だ〜れだ?」
「こいし様〜」
「へへへ、正解!」
視界が元に戻ると俺はゆっくりと振り返る
そこにはさとり様の妹のこいし様が無邪気な笑みを浮かべて立っていた
「はい蒼兄、バレンタインデーのチョコだよ!」
「ありがとうございます!」
何かこいし様めちゃくちゃ素直!
今日で一番時間が短かった
「みんなもっと素直になればいいのに、特にお姉ちゃんのあれは..........ププッ」
「こいし様、笑っては悪いですよ」
とか言っている俺も笑いを堪えるのに必死なんだけどね
「じゃあね蒼兄、また感想聞かせてね!」
こいし様はそう言って部屋を出て行った、というかいつの間に入って来たのだろうか?
ある意味この地霊殿で最強なのはこいし様なのかもしれないな
「さて....」
俺は机に今日の戦利品を並べた
そして高らかに虚空に向かってドヤ顔で宣言する
「悪いな、今年は俺お前らの敵だわ」
自分でもわかるくらいのゲスい顔で誰にも告げるわけでもなく独り言のように呟いた
一方...
「こ、ここここーりん、私はわた、しはわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「と、とりあえずその八卦炉を仕舞ってくれないか!?み、店が、商品が灰になってきまう!」
白黒魔法使いは鈍感リア充の半人半妖に想いを伝えようと恥ずかしさのあまりに暴走をしてしまい、
「............早苗、中々帰ってこないね」
「そうねぇ〜」
妖怪の山に建つ守矢神社の茶の間では二人の神の現人神兼巫女の帰りを待つ会話があったらしいとか
リア充爆発しろッ!!