ヨッ、俺銕蒼蔦!
年齢はあえて内緒の一応人間だ、俺は今地霊殿から外出する形で旧都と呼ばれる街まで来ている
なぜなら朝飯を作るはずだったのだが、熱かい悩む神の火ことおくうがキッチンの河童特製最新式のコンロの付け方がわからないまま使用しようと、何故か右手の制御棒をコンロに向けてメガフレアを割と全力で放出したものだから居候先のキッチンは大惨事な状態となってしまった!
一応生きている食材を確認したかったが、ここ幻想郷にはまだ外の世界の生活するに必要不可欠の三種の神器の一つ、冷蔵庫が幻想入りしていなかったため殆どの食材は非常に不本意だったのだが⑨の協力で手に入れた氷で保存をしていたのだが、その氷ごと食材の九割が駄目になってしまっていた
お燐は気がつけばどこかに行ってしまい、おくうはおくうで逃げるように間欠泉地下センターに今更戻って行った
そして、現在に至る
未だ眠っているさとり様とこいし様を置いて地霊殿を留守にするのは非常に不本意だったのだが、お燐が外に出掛けていないことを祈りつつ俺は最低でも朝飯を作る程度の食材が欲しかったので旧都に食料調達に来ている
本音を言ってしまえば行くなら人里が良かったのだが、時間が掛かりすぎるし何よりも遠い
それに長年の地底生活の為に太陽の日差しも月の明かりも最近ではまともに浴びていない上に、地底では朝の感覚で行動しているが地上が朝とは限らない
もう時差ボケとかそんなのでは済まされないくらい体内時計と生活習慣が滅茶苦茶になってしまっている、そんな俺が地上に行ってしまえば何か負けた気分になる気がする
.....まぁ、本当のことを言えば幻想入りして半年の間、地上には何度か行ったことはある
博麗神社で開かれた宴会の時や、香霖堂という外の道具を取り扱う店に足を運んだり、妖怪の山付近にある河童の工房に行ったりと、時間の流れもある程度はわかるが本当にそうなのかはわからない、俺は所詮小心者だよ、笑いたきゃ笑えよ!!
そして、旧都には別の用事もある
おくうがキッチンをニュークリアフュージョンしてしまったため、修理もしないといけない
そこで旧都に住む鬼の力を借りる
彼等は力が強く、こういう仕事などもすることが多いらしい
過去に博麗神社を襲ったという大地震で倒壊した神社を建て直したのも彼等と聞く
鬼には一応知り合いもいるためなんとかなるであろう、何しろ俺一人の力ではキッチンのあの惨状をどうすることもできない...
他力本願がここまで役に立つ四字熟語だと思ったことはないかもしれない
そんなこんなで歩き続けること早20分ちょっと、やっとのことで旧都が見えてきた
旧都は地霊殿よりも灼熱地獄から離れている場所に位置しているため、やや涼しめの快適な環境となっている
まぁ、人間の俺にとってはどちらにしても熱いという感想しか言うことはできないわけだが
俺はとりあえず何を買うかを考えながらあいつが居そうな酒場に向かってゆっくりと旧都に足を踏み入れる
旧都は地上の人間や妖怪を嫌う者達の集まり、というか大半が妖怪のため俺は少し浮いてしまうがそんなことを気にしていてはここでは生きていけないので、そこら辺は適当に対応するしかないだろう
焼き鳥屋の前を通って朝から焼き鳥はちょっとな、と苦笑いしながら他の食材を探していると、
「ギャーーーーー!」
「グワァーーーー!!」
....何やら近くの酒場から複数人の叫び声と爆音が響き渡った
もしかしたらあいつ、また暴れてるんじゃ...
俺は内心不安になりながらも食材探しを中断して騒ぎのある酒場に行ってみる、そこには...
『申し訳ございませんでした!』
「わかりゃいいよ、わかりゃ」
.....おそらく鬼と思われる大の男十数人が一人の女性に土下座していた、というか彼女も鬼の一人だと額から生える赤い大きな角でわかった、というか顔見知りということも同時に判明した
彼女は星熊勇儀(ほしぐまゆうぎ)
長い金色の髪に手首には鎖が千切れたような手錠、女性とは思えない豪快な肉体こそが彼女の強さと存在感を表している
一通り落ち着いたところで俺は彼女に声を掛ける
「勇儀さん」
「お、蒼蔦久しぶりだな」
「勇儀さんは相変わらずッスね」
「まぁな、それより何の用だ?」
※
数分後...
「さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!星熊の姉御に人間が勝負を挑むよ!」
やたらテンションの高い酒場の店主が客寄せの為にわざわざメガホンを使い、辺りの鬼や妖怪達に声を掛ける
俺と勇儀さんの周りには既に百を越えるギャラリーが集まっており、テンションも最高潮に盛り上がって...
「...ッて、ちょっと待ていッ!!」
「ん、どうした?」
俺の叫びに勇儀さんは酒を飲みながらキョトンとした表情で尋ね返す
「何でこんなことになってんすか!?俺はただ勇儀さんにキッチンの修理を頼んだだけだった気がするんですけどー!?」
「私が一勝負しよう、って言ったらお前が応じたんだろ?」
「酒瓶差し出して勝負って言ったからてっきり飲み比べかと思ったんすよ!なんで実力勝負なんですか、俺が勝ち目あるわけがないじゃないッスか!」
「最初から諦めんな!私はそういう軟弱者の頼みは聞かないよ!!」
「詰んだ!?」
俺の矛盾を勇儀さんは見事に論破する、クソゥ口喧嘩でも勝てる気がしねぇ!
なんかギャラリーもいい感じに盛り上がっちゃってるし、これ完全に逃げ場なしじゃん!
「それに前々からあんたとは戦ってみたかったんだよ、蒼蔦」
「俺みたいな力もない人間をそんなにサンドバックにしたかったのかよ」
「嘘だね、蒼蔦は戦う力は持ってるだろ?しかもその力は普通の人間よりも遥かに高いはずだ」
「なっ....!?」
俺が戦えることがバレた!?
今までそんな振る舞いした覚えはない、あくまでも普通の人間を装ってこの半年間生活してきたはずだ
地霊殿の皆には話しているが、それ以外に話した覚えもない...
「.....なんで俺が戦えるってわかったんですか?」
「勘」
「えぇ!?」
この人、やはり侮れない!
「それと今回は見逃すが次は気をつけな、私ら鬼っていう種族は嘘とかそういうのが大っ嫌いなんだ、蒼蔦は私に対して嘘をついた、これで戦う理由もできたんじゃないかい?」
「.....いい感じに纏めてますけどそれはあくまでも鬼の見方ですよね?」
「当たり前だ」
勇儀さんはやる気満々な様子で拳をポキポキと鳴らし始める
俺もそろそろ覚悟を決めた方がいいかもしれない、勇儀さんから逃げることはおろか、この流れに逆らえるわけでもない!
「勇儀さん、一戦お願いします!」
俺は勇儀さんを真っ直ぐ見つめる
今まで以上に目をツリ上げて
「いい眼だ、先手は貰うよ!」
勇儀さんは酒を飲み干すと、とてつもない殺気を纏いながら真正面からこちらに突っ込んで来る
勇儀さんの能力は「怪力乱神を持つ程度の能力」、あらゆる力において彼女を越えることは不可能であろう
能力以前に種族の差がある、俺はそんなハンデキャップを背負いつつも勇儀さんの一撃を間一髪の所で避ける
俺はそのまま右ストレートを勇儀さんに向かって放つ
勇儀さんはそれを軽々と受け止め、カウンターのキックを繰り出す
俺は勇儀さんの一撃を一発でも喰らえば戦闘不能になってしまうだろう
だからこそ、俺はどんな姑息な手を使ってでも回避に専念する
まずは勇儀さんに自由を奪われている右手を思いっきり引っ張り、右腕から右手を外す
そして蹴りの範囲外に転がり込み攻撃を回避することに成功する
「え...?」
当の勇儀さんは目の前で起こった現実について行けていない様子だ
そのまま自分の持っている俺の右手を確認する
「あ、あぁぁぁぁ、わ、悪い、お、おおおお前の右手...」
「勇儀さん、とりあえず右手返してください」
「いやいやいやいや、とりあえず治療だ!くっつくかはわからないが永遠亭の医者にでも見せれば、」
ガチャ☆
俺は勇儀さんから右手を取り返し再び右腕にくっつける
「ハァ!?」
勇儀さんは驚きで俺の右手と右腕を何度も見直す
まぁ、この驚きは当然だが勇儀さんは少しオーバーリアクションな気もする
「蒼蔦、あんた一体...」
「そうですね、俺は確かに人間ですけど少し違うんですよ...」
俺は再び右手を右腕から外し、勇儀さんに俺の正体を明かす
「俺は...サイボーグだ!!」
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