東方地底生活記   作:Cr.M=かにかま

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凍結中とは言ったが更新しないとは言ってない(謎の言い訳)


二一/友達の友達と二人きりになることほど気まずいことはないと思うんだ、これならまだ知らぬ他人の方がマシだと思えることもある!!

「...........」

 

「...........」

 

「...........」

 

「.....クッキーあるけど、食うか?」

 

「ん、もらう」

 

俺がスッと手渡したクッキーを無表情でピンク色の長髪少女が受け取り、小動物のようにポリポリと食べ始める。

少女の周囲に浮かぶお面(?)がくるくると移動しており、とても摩訶不思議な光景には見えなかった。

まだ幻想郷に流れ着くまでは奇怪な光景に見えたかもしれないが、今は慣れてしまい何とも感じなくなってしまっている。

全く、慣れとは恐ろしいものである。

 

「うまかった、ぐっじょぶ☆」

 

グッ!と少女は無表情のまま親指を立てる。

表情の変化がなく、感情を読み取りづらいため俺も絡みにくい。

 

「そいつは良かった。ていうか、こいし様は一体どこに行ったのだか」

 

「わからない。でも我々はこいしに連れてこられた。我々としてもここがどこかイマイチわかっていない」

 

「.....ホントあの人は自由人というかお転婆というか」

 

「性格はアレだが、我々の友になってくれたのはありがたい。青年もそうなのか?」

 

「いんや、俺は居候だ。たしかに一緒にいて退屈はしないけど」

 

俺が言葉を続けると少女、秦こころ(はたのこころ)が興味深そうに俺の言葉に耳を傾ける。

 

 

こころがこいし様によって地霊殿にまで連れてこられたのは今から約10分前、俺が部屋で体の簡単なメンテをしているといつものごとくスパーン!と扉が開かれたと思うとそこにはこころを拉致したかのように首根っこを掴んで引きずってきたこいし様が現れたのだ。

 

『蒼兄!今日は私の友達を紹介するね!ふふん、私はお姉ちゃんと違っていつまでも引きこもりのぼっちでは終わらないんだよ!私はお姉ちゃんを越える!!』

 

『.....とりあえずその手を離してあげてください、死相が見えます』

 

占い師でもないのに死相が見えてしまったのだから相当ヤバイ状態であると判断せざるを得なかった。

 

『わ、我々の生涯に、一片の悔いな、し!!』

 

『こころちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!?帰ってきてぇぇぇぇぇぇ!!』

 

『一旦その手を離しなさいな!それと落ち着いてください!!』

 

俺は強行手段でこいし様からこころを引き剥がした。

我々という独特な一人称を使う少女、こころはケホケホ、とやっとの思いことで通った酸素の通り道に酸素を吸い込むようにして必死で呼吸をしていた。

 

『はじめまして、我々の名前は秦こころと申します。一応こいしの友人という扱いになってる』

 

『あ、ども丁寧に。銕蒼蔦です』

 

『ちょ、一応って酷くない!?』

 

『友達とは自分の家に問答無用で拉致していいものなのか?そうか、では我々も今度聖と太子にやってみよう』

 

『いーんじゃない?』

 

『いや、待て待て待て!何でそこから話が進んじゃうの!?』

 

『何を言うか青年、がーるずとーくとはこのようなものであろう?』

 

こころはキョトンとした様子で俺に問い返す、無表情で。

 

『こころちゃん、蒼兄は男だからガールズトークのルールがイマイチ把握できてないんだよ』

 

『そうであったか、失礼した』

 

『なんで俺が悪いみたいな雰囲気になっちゃってんのかなぁ?』

 

僅か数秒足らずで俺はこの場で孤立してしまった、まぁ元々男性率の低いこの幻想郷で孤立してるようなものだけど、それでも孤立は寂しいものである。

こころの周囲に浮かぶお面の一つである、あれは火男だろうか?

火男らしきお面がこころの頭上にまで移動していた。

 

『蒼兄説明するね!こころちゃんは今楽しんでるよ!』

 

『そうなんですか?表情に変わりはないですが』

 

『私にはわかるんだよー、すごいでしょー!』

 

エヘン、と最近ややさとり様よりも発育が良さげだがそれでも慎ましく小さな胸を張る。

それにつられてこころも無表情でエヘン、と胸を張る。

サイズはこいし様といい勝負をしていた。

−−−それからはこいし様と仲良く(こころは無表情なのでとてもそうは見えなかったが、こいし様曰く楽しんでるらしい)話をしており、俺は蚊帳の外となってしまった。

一人用のソファに座りながらフラン嬢に続いて仲の良い友人が出来たことに微笑ましく思い頬を緩めてしまっていた。

そういえば、さとり様にはレミリア嬢がいた。

ボッチではなかったことを思い出した。

 

『それよりもこいし、何故我々をここに連れてきたんだ?』

 

こころの頭上のお面が狐を模したお面に変わる。

もしかしたら、頭上に来た仮面によって表情を見分けるのかもしれない。

彼女のことは何も知らないし、種族も定かではない。

もちろん、年齢や人脈、能力に関しても今日ここで初めて会ったのだから。

 

『そうだった、実はね−−−』

 

こいし様が言葉を紡ごうとした瞬間、俺とこころの目の前からこいし様が消えた。

 

『こいし様!?』

 

『こいし!?』

 

こいし様の能力である「無意識を操る程度の能力」であれば、俺たちの前から姿を消すことは造作もないことだが、それはあくまでもこいし様が無意識に溶け込み一体化したときのみである。

俺たちは確かに先ほどまでこいし様と話しており、意識の中に捉えていた。

 

それなのに、何故?

 

『.....まぁ、こいしのことだからその内ひょっこり帰ってくるだろう』

 

『いや、でも』

 

『青年、お前はこいしのことを心配しすぎだ。大丈夫、何せ私の初めての友人なのだからな』

 

こころの迫力に押され、俺は何も言えなくなってしまった。

まぁ、実際こいし様はふらっとどこかに出かけて気がついたら帰ってくるような人だ。

地底でもそこそこ顔は広いから誘拐しようとかボコボコにやられて帰ってくるなんてことはまずないだろう。

というか、そんなことがあれば地霊殿の全戦力が総動員されることとなってしまう。

 

『そういうわけだ、互いに親睦を深めでもしながらあいつを待とうじゃないか』

 

狐のお面を頭に乗せたこころは真剣な(無)表情でこちらを見据えていた。

 

 

 

そして、話の話題も尽きてしまい現在に至る。

彼女は付喪神、予想はしていたがやはり人間ではなかった。

幻想郷はたしかに人間と妖怪の共生を目的としたまさに幻想郷なのだが、力量からして妖怪といった類の方が多いのも事実。

俺の知人も人間は数えれるほどの数しかこの幻想郷にはいない。

 

「どうした青年?先ほどから無言が続いてるが」

 

「あ、あぁ。話題がないなぁって思って」

 

なるほど、とこころが先ほど手渡したクッキーを両手で必死にハムスターのように頬張りながら応える。

話題の提示を要求したいのだが、いかんせんこころも対話自体が得意そうな人柄ではない。

大方こいし様に連れられることが多いのだろう。

そしてあちこちで騒動に巻き込まれて巻き込まれて巻き込まれて巻き込まれて巻き込まれて.....

 

「.....どうした青年、急に泣き出して」

 

「いや、お前も苦労してるんだなぁって思ったら、つい」

 

「そ、そうか」

 

若干引かれた気もしたが俺自身は決して気にしない。

慣れてるから、もう他人から白い目向けられたり引かれたりしてるなら慣れてるから!!

.....言ってて何だか悲しくなってきたな、さとり様だったら俺のこの心の叫びを聞いてもらえて会話にもなるのだが、目の前の少女はそうもいかなさそうだ。

首を傾げながら奇異な目でこちらを見つめている気がする。

 

「.........」

 

「.........」

 

と、とりあえずこのまま黙っていても仕方ないので何か話題を出そう。

こいし様もどこに行ったかもいつ戻ってくるのかもわからないわけだし。

 

「なぁ、そういえばこいし様とはどうやって知り合ったんだ?」

 

「こいしと?」

 

「うん。こいし様はこころも知ってると思うけど他人からは普段は認識されない。それなのにこころはこいし様と親しげにしていた、それなりに付き合いがないとできない態度だ」

 

「.....こいしは普段からあんな感じだとは思うが」

 

「それだよ、普段から、ってことは頻繁に会ってるってことだろ?」

 

少なくとも俺が幻想郷にやって来たとき、いや、それ以前から付き合いがあったと考えた方が良さそうだ。

もしかしたら、いつもフラフラ〜とどこかに行ってるのもこころに会いに行っているのかもしれない。

それならばどこかで無茶とか危ないことしてるかよりは安心だし、さとり様の胃痛も良くなるかもしれない。

 

「青年はこいしと出会ってどのくらいなんだ?」

 

「俺は、半年ちょっとかな?」

 

幻想郷に流れ着いたのもそのくらいだし、馴染むのは長い時間を費やしたがそこは今は言わなくてもいいだろう。

 

「そうか、我々は一年くらい前だな」

 

「一年、か」

 

「うむ、それからはしつこく付きまとわれている。舞の練習中だろうが昼飯時だろうがお手洗いの時だろうが風呂に入ってる時だろうが、こいしはどこからともなく姿を現して私にスキンシップを求めてきた」

 

ここで僅かな変化が生じる、今の今まで無表情だったこころの頬が僅かに、ほんの僅かにだが仄かに赤色になっていたのだ。

 

「ま、まぁ、我々も退屈することなかったし、悪くなかったけどな」

 

−−−こころがデレた。

 

この場に守谷神社の巫女がいたなら、「キマシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」とかいう奇声を上げ、暴れ回ること間違いないだろう。

俺もそのギャップに少しドキッとしてしまったのは内緒である。

 

「どうしたのだ青年?顔が赤いぞ??」

 

「な、何でもねェよ!」

 

お前も十分真っ赤だよ、と言おうと思ったのに別の言葉が出てしまった。

その顔で上目遣いはマジ反則だろうが、チクショウが!

幻想郷にやって来て少しは女性耐性が付いたと思ったが、どうやらまだまだらしいな俺。

ここにやってくるまでは女性と関わったことがほとんどなかったと思われる。

俺って今も昔もチキン野郎なんだなぁ、とか思ってると目の前でこころが残ったクッキーをぼりぼりと小動物のようにまた食べ始めた。




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