サイボーグ、いわば俺は改造人間という括りに当てはまる人外だ
この幻想郷の中でたった一人の存在であり、イレギュラーな存在
俺がサイボーグだと幻想郷内で知っているのはさとり様、こいし様、お燐、おくう、八雲紫、河城にとり、森近霖之助、そして勇儀さん...
しかし、サイボーグと言っても体の作りはとても中途半端で右腕と左上半身(具体的に言えば首より下、肋骨より上)であり、それ以外は生身の人間と何ら変わらない構造となっている
何故そんな中途半端な作りになってしまったのかは灼熱地獄よりも深い深い理由があるのだが、今語ることではないだろう
まぁ、中途半端は中途半端なのだがサイボーグはサイボーグだ
しかし、いくら体を鋼鉄並みの強度の材質を使っていたとしても、いくら人間離れした力を使えるとしても、所詮本質はただの人間である
そして俺と今戦っている相手、星熊勇儀は女性とはいえ鬼である
更にいえば勇儀さんは鬼の四天王と呼ばれる括りの一人に分類されており、鬼の中でもかなりの手練れであることになる
普通の鬼にすら勝てるかわからない俺がそんな実力者と戦えばどうなるかなど、チルノでも理解できるであろう
つまり、俺が一体何を言いたいのかと言うと...
「勝ったのは星熊の姉御、星熊の姉御に賭けてた人は大当たり!そこの人間に賭けてたやつは残念だったな出直せこのヤロー!」
「おい立てよ人間、ガッツ見せろよー!」
「お前を信じてやった俺が馬鹿だったよ!金返せー!」
「細胞具とかいってても所詮は人間って訳か...」
...手加減なしにボコボコに叩きのめされました
※
「ちくしょう、酷い目にあったぜ...」
その後、俺は勇儀さんとギャラリーの鬼たちに拉致られる形で酒場へと連行された
そして飲むこと一時間半、やっとのことで解放された俺は片手に五つの弁当を袋に入れて旧都を後にし、地霊殿へと向かっていた
そのどさくさに紛れて勇儀さんにキッチンの修理をお願いすることに成功し、今すぐは無理なので後から地霊殿まで来てくれるらしい
これならボコボコにされた甲斐はあったかもしれない
....決してマゾヒストとかいう変態ではないので、そこは誤解しないでいただきたい
それに時間帯的にもさとり様もこいし様も起きてるだろう、おくうも戻ってるだろうし、お燐は、まぁいいか、一番暇そうだし
俺は全身を勇儀さんの一撃で痛めてしまったので急ごうにも急ぐことができない
サイボーグとは言えど体力の回復まですることはできない、というかできたら今すぐやってると思う
俺はやっとのことで地霊殿に到着し、心の準備をしながら扉を開く
...何の準備かはわからないが何となくしとかなければいけない流れだったりするのは気のせいだろうか...
ちなみに玄関に入ると大きな広間に出ることになり、その奥がリビングとなっている
広間にもペット達は集まっており、こちらに歩み寄って来る動物も少なくはない
半年も暮らせばこういう環境にも慣れてくるものだ、と軽く憂鬱な気分になりながらも、リビングに繋がる扉を開け放つ
「ただい...ま...」
ぐ〜きゅるるる〜、ぐ〜きゅるきゅるきゅ〜
.....何だろうこの光景は
いつも皆で楽しく食事をするはずの机が今日に限っては四人の少女たちがハイライトを失った瞳でこちらの持っている袋を凝視している
彼女達は全員妖怪である、本来であれば食事をしなくとも恐れさえあれば生きていける生命体の筈なのだがここは幻想郷、外の世界の常識はどうやら一切と言ってもいいほど通用しないらしい
現に彼女達は腹を空かしているのだから
ぐ〜きゅるるる〜、ぐ〜きゅるきゅるきゅ〜
「.......えと、お待たせしました?」
瞬間、少女たちは俺、正確には俺の持つ弁当に向かって飢えたケダモノの如く表情を強張らせ、眼に光と欲望を宿しながら食欲を満たすために行動を開始した
※
「まったく、今後はこのようなことがないようにしてくださいね」
ホント、すみません...
俺は口には出さないが目の前の少女、地霊殿の主である、覚妖怪の古明地さとり(こめいじさとり)様に自分用に買ってきたトンカツ弁当を食べながら謝罪の意を示す
桃色のショートヘアに水色を基調とした服装、黒いヘアバンドと第三の眼とも言われるアクセサリーのような赤い目玉が特徴的と言ってもいいほどに目立つ
「まぁ、美味しいので良しとします」
さとり様は俺が彼女に買ってきたオムレツ弁当を食べながら俺が心で思ったことを言葉にして返す
彼女は「心を読む程度の能力」を持つため俺が口に出さなくても言っていることがわかるらしい
実際、今俺が思っていることもわかる様子みたいだし
「...蒼蔦さん、あなたは先程から一体誰に私の説明をしているのですか?」
「え、俺そんな感じでした?」
「思いっきり説明口調でしたよ」
マジか、俺は自分の心の中の口調が自分でわからないとはな...
そういえばこいし様が見当たらないな、さっきまでそこで一緒に項垂れていたのに...
「蒼蔦〜、次は日の丸弁当が食べたいな」
「あたいは鮭弁当!」
「お前ら自分で料理する気はないのかよ!」
まぁ、居候させてもらってる身として色々と手伝いはさせてもらっているのだが、彼女達の料理スキルのなさには一番驚かされた
俺が地霊殿に居候するや否や、俺の基本的な仕事は料理くらいである
そして今ではキッチンを我がものにしてしまっている状態である
.....ホント、俺が来る前は一体何を食べて生活していたのだろうか?
「ほぼ毎日がお弁当でした、お金にもあまり困らなかったので」
俺の疑問はさとり様の一言によって解決した
なるほど、恐らくおくうが給料を貰い、さとり様が管理、お燐とこいし様が買い出しと言った関係が一瞬で頭の中でイメージとして完成した、というかそれ以外に考えることができなかった
さとり様も縦にコクリと頷いてるし
ついでにペット達にも実は買ってきていた少量の食べ物を小皿に入れて床に置くと地霊殿内にいる大半の動物達が駆け寄ってきた
「やはり蒼蔦は優しいですね」
「そんなことないさ、必要最低限のことをしてるまでだよ」
「それでも、皆はあなたに感謝していますよ」
さとり様は俺に笑顔で返してくれた
よく見ると、お燐やおくうも笑顔でこちらを見ていた
それを見て俺は本当に必要とされている存在なんだと、ここに居てもいいんだといつも思うことができる
地霊殿に来れて良かった、皆と出会えて本当に良かった
俺は少し気恥ずかしくなり、そっぽを向き苦笑いして誤魔化す
「あ、蒼蔦照れてる!」
「これは意外な一面ね」
うるせぇ、俺だって恥ずかしいと思うことくらいあるんだよ!
別に照れても寿命が縮まる訳でも年を取る訳でもないんだから、ほっとけー!と声に出したかったがあまりにも恥ずかしいので心の中で叫ぶことにした
「ふふふ、蒼蔦さんは私という存在をお忘れのようですね」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ねぇ、もしかして蒼蔦心で何か言ったの?」
「さとり様、是非話してくださいよ」
「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
俺は笑顔で話をしたくてうずうずしているさとり様を全力で止めに入った
.....それにしても何か忘れている気がするのはなぜだろう?
「蒼蔦さんは、ぷくく...」
「油断も隙もないな、この覚妖怪様!」
そんなことよりも俺の赤っ恥黒歴史が暴露されることだけは阻止せねば!
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