本編の時間軸とは一切関係ありませんのでご了承ください
楽しんでいただければ幸いです(^^)
「蒼蔦蒼蔦、今日は苦理厨魔厨なんだって!」
「.....一体何があったんだ、クリスマス」
俺が部屋でゆったりと灼熱地獄の変わらぬ熱さを肌で直接感じながら静かに読書しているところに、おくうがノックもなしに制御棒をこちらに向けながら言い放つ
「てか、なんで制御棒をこっちに向けてんだよ、殺す気かよ!」
「え、苦理厨魔厨って火薬を筒に入れてドカーンって盛り上がる日なんじゃないの?」
「あながち間違ってない気もするが本来はもっと小さいやつを使うんだぞ!」
とりあえずおくうに制御棒を仕舞うことを全力で説得する、そうしなければ俺の体が原型を留めることなく綺麗に溶け去ってしまう!
それで、なんでコイツはクリスマスなんてモノを知っているのだろう?
予想としては妖怪の山の現人神が何かしてたんだろうとしか予想できない、紫も無理矢理幻想入りさせそうだが幻想郷の管理人として限度はわかっている....と信じたい!
「そもそもクリスマスってのはだな、イエス・キリストって偉い人の復活するお祝いをする日であって晩餐会を開いたり、カップルでイチャイチャしたりする間違った方向性が最近目立ち始めてる聖なる夜であってだな、」
「zzzz...、あっ、へっ?何か言ってた?」
「話を聞けェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」
「うにゅ!?」
俺はおくうの頭に全力でチョップをする、どうやら鳥頭に説明をした俺が馬鹿だったらしい
俺もここに来る前は彼女とか、それ以前に女っ気ゼロの生活を送っていたので本当に「リア充」とかに分類されている奴らとは毎年戦争をよくしたものだぜ
「蒼蔦、今日は苦理厨魔厨だよ!」
「その台詞は二回目だ、この鳥頭!」
「うにゅにゅ!!?」
何やら驚愕に満ちた表情で衝撃を受けてやがる、何だその劇画タッチ風の顔...
ん、そういえば...
「確かクリスマスって鳥肉を食べる日でもあるんだよな」
「.....え?」
「俺もうろ覚えなんだけど、皆で輪になって鳥を囲んで火を起こして丸焼きにして部位を切り刻んで美味しくいただく鶏の虐殺日とか、ってどうしたんだおくう?なんで涙目でこっち見ながら制御棒出してエネルギーチャージしちゃってんの!?」
「...蒼蔦は私を食べるの?」
「あぁ!そういうことか、いや違うぞ違う違う違うあくまでもクリスマスに食べるのは鶏であって烏は」
「それでも私は立ち上がる、苦理厨魔厨という厄日から鶏達を守るために!!」
「何かっこいいこと言ってんだよ、それで何で怒りの矛先が俺なの!?クリスマスのこと教えてもらったの早苗だろ、だったらあいつにメガフレアを打つべきじゃないのか、あいつはもう山の神達と鳥肉を美味しく食べ始めてる頃かもしれないぞ!!」
「....!!」
おくうがカッ!と目を見開き、俺の部屋の窓を制御棒で盛大に殴り、
「苦理厨魔厨の平和は私が守る!!」
とか言ってどこかへ飛んで行った
....何か言っている内容が若干矛盾していた気がするが、そこはおくうなのでスルーすることに決めた
※
俺はおくうに部屋の窓を破壊され熱さが直接入ってくるのに耐えきれなくなり若干涼しいリビングに移動した
そこにはさとり様とお燐が、
「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおら、さっさと進めやコラ、今夜中に仕事を済ませなければならぬのだぞ!!」
「すみませんすみません、急ぎます、急ぎますので鞭はご勘弁を...」
「フォーフォー、フォーフォ、口答えする暇があるならさっさと進まんかーい!」
「はいぃぃぃぃぃぃぃ!!」
.....ええっと、何コレ?
リビングの扉を開けた先に見えた光景は赤いパンクファッションと帽子を被ったキャラ崩壊等では既に修復不可能なテンションになってしまっているさとり様と四つん這いに這いずり泣きながら鞭を打たれているお燐の姿があった
何やら入ってはいけない雰囲気が漂ってしまっており、入るのを躊躇っていると...
「お姉ちゃーん、頼まれてたもの買ってきたよー!!」
後ろから無邪気でいつもと変わらぬ無邪気な可愛さのあるこいし様が扉をスパーン!と開け放った
ホント、こいし様の無意識は変なところで働くトコロがあるものだ
しかし、こいし様もやはり、
「..............お姉ちゃん?」
「..............そ、蒼蔦さん?」
「..............あ、いや、これは」
うわ、気づかれた!
さとり様顔めっちゃ真っ赤じゃん、そんなに恥ずかしいならするなよ!
こいし様もこいし様で呆然としちゃってるし!
.......お燐に至っては顔真っ赤ってレベルじゃない、全身真っ赤だ
恐らくあの変態天人と同じ趣味を持っていると思われたのが最大の屈辱なのだろう
「.....こいし様、戻りましょうか」
「.....お、お姉ちゃん、また後でね」
俺たちはリビングの扉を静かに閉めた
『こ、これには訳がーーー!』
断末魔の叫びがリビングから響いた気がする
俺とこいし様はとりあえずリビングに戻ることにした
「今日は栗守升って聞きましたので」
「.....何でも当て字にすればいいってモンじゃねぇっすよ、誰からそのこと聞いたんスか?」
「勇儀さんが『食離須麻州って言うのは赤い服着た王女様が奴隷を鞭で打つ行事』とおっしゃっていたので....」
「どうやったらそんなことに!?」
「あ、あたいは無縁塚で偶然会った小町から『愚利酢蔴素って言うのは四つん這いになった獣が空を走る競技』って聞いたから...」
「だから、何でそうなるわけ!?」
俺は頭を抑えながら涙を流す
外の世界を生きる画面の向こうの皆さん、どうやら幻想郷のクリスマスはそちらの世界よりも腐っているようですぜ
「蒼兄、じゃあクリスマスって何なの?」
「ありがとうございます!」
『何が!?』
俺は嬉しさのあまりお礼を言ってしまう、何せ今日初めて正しいクリスマスの文字を見ることができたのだから!
「簡単に言うと、モミの木に飾りして家族で美味い飯食って、サンタクロースっていう赤い服着たおじさまがトナカイの引くソリに乗っていい子にプレゼント配る行事かな」
俺はおくうに言ったことと新たに説明を加えた
「お燐、今すぐ地上からモミの木を!こいしは私とここで待機、蒼蔦さんはおくうの捜索と飾りの準備をお願いします!」
「あいあいさー!」
「ヤル気満々かお前ら!」
どうやら思いの他ノリが良かったらしい、いつの間にか回復したお燐に至っては既に出発してしまっている
俺はそれらしきモノが置いてそうな香霖堂へと向かった
.....ついでにおくうの捜索と
※
五時間後...
「蒼兄遅い!」
「全く、いくら空が飛べないとはいえ時間が掛かり過ぎです!」
「ホント、人間はダメダメだね〜」
「蒼蔦蒼蔦、早くやろうよ!」
「悪かった、だがおくう!お前を探してて遅くなったからお前に文句を言う資格はない、ついでにお燐テメェ途中で俺のこと抜かしただろ!お前だろ、あの火車に四メートルくらいの大木持って爆走してた奴!」
おくうはきょとんと、お燐に至っては舌を出して手を合わせている
.....コイツラは
軽く怒りを覚えたがここで怒ってしまえばクリスマスが終わってしまうかもしれない
「ツリーの飾りは?」
『もう既に』
「早過ぎだろ!」
驚くもツリーを見るとしっかりと飾り付けされていた、さっき持って帰ったばかりなのにどうやったらこんな超スピードで飾り付けができるんだ、そこは人間と妖怪の違いがあるかもしれないので突っ込まないことにする
「料理は...」
『ロイヤルタワーケーキ!』
「すげェな、オイ!」
『ケン◯ッキーフ◯イドチ◯ン!』
「何故あるんだ!?」
「先程、紫さんがスキマで...」
「納得だ」
まさか外の世界の超メジャーグルメがここに来て食べれるとは思わなかった!
何だかんだですげェ豪華になってしまったな、地霊殿、恐るべし!
いや、この場合は楽しいイベントであれば平気で外の世界にスキマを繋ぐ紫が恐ろしいのか?
はたまたこれから共食いをするのに気がついていないおくうが恐ろしいのかはわからない
「それでね、蒼兄...」
「どうしたんだ、こいし様?」
何やらこいし様がもじもじしながらこちらに声をかけてくる
少々の時間はあったもののこいし様は手に持った包みをこちらに差し出す
「これは?」
「クリスマスプレゼント!」
俺はその言葉を理解するのに少しの時間が必要だった、何せその単語を聞くのは実に久しぶりな気がするからだ
すると、
「あたいも」
お燐も
「私からも」
さとり様も
「私も!」
おくうも
皆、笑顔でこちらを見ていた
「それは私達の気持ちだよ!」
「いつもお世話になってるし、今日という日を正しく教えてくれたしね」
「いつも居候って言葉を使って私達以上に一人で頑張ってくれてますしね」
「蒼蔦、ありがとうね!」
俺は言葉が出なかった
驚きよりも先に嬉しさが表情に出たようだ
「あ、あり、ありがとう、でも俺何も用意できてない...」
「何言ってるんですか」
さとり様はヤレヤレといった様子で、
「今日という素晴らしい日を用意してくれたじゃないですか、サンタクロースさん」
俺はその言葉を聞いた途端、頭が真っ白になった
俺は本当に嬉しかった、気がつけば涙が流れていた
幻想入りした時に外の世界で過ごした一部の記憶を失った俺をここに住まわせてもらった彼女達にいつも何かしたいと思っていた、恩返しをしたいと思っていた
「蒼蔦さん、あなたはもう地霊殿の一員、私達の家族です」
さとり様は俺の手を取り優しく語りかける
「貴方のいない生活なんて、私達は考えることができません」
こいし様達も笑顔で頷く
俺は家族、という言葉に再び涙を流す、その言葉が俺にとってどれくらい嬉しいことか...
さとり様はですから、と繋げ
「居候を理由に一人で無茶するのはもうやめてください、私達も力になりますから」
「はい!」
俺は涙を拭いて最高の笑顔を浮かべた、皆が笑顔だった
俺達はとりあえず席に座り、ワイン(紅魔館仕入れ)の入ったグラスを手に取った
クリスマス...
外の世界ではキリストの誕生を祝う祭り、カップル達の聖夜...
「では、今日という聖なる夜に...」
しかし幻想郷、特にこの地霊殿は少し違う
『カンパーイ!』
家族の絆を深め、最高の笑顔というプレゼントをする特別な日であった
その夜以来、地霊殿から家族の暖かい光が消えることは決してなかった
メリークリスマス!