Fate/Extreme Aid   作:オリオンリング

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死んでるように生きたくないので初投稿です。


プロローグ
Accelerator


『才能の旅を、再び始めようじゃないか……』

 

ここは聖都大学附属病院。大勢の名医が在籍する国内最高峰の医療機関だ。

そんな病院の地下に存在する部屋で、僕は思わず大きなため息をついた。

いつも通り病院での勤務を終えてCRで、消滅したゲーム病患者の再生医療の研究をしていたところ。

突然PCの画面が切り替わり、黎斗さんからのメッセージが流れ出したんだ。

画面の中で笑みを浮かべている黎斗さんを見た瞬間、自然と出てしまった。

僕の両脇で黎斗さんのメッセージを見ていた飛彩さんと貴利矢さんも同じようにため息をつく。

 

「…………ったく、全然懲りてないじゃねーか。マイティノベルX以来大人しくしてると思ってたらこんなもの作ってたのか」

 

悪態をつきながら手元のコーヒーが注がれたマグカップを啜っているのが九条貴利矢さん。

アロハシャツの上から白衣を羽織っていて、一見チャラそうに見えるけど実はすごい人だ。

貴利矢さんが開発したワクチンによって、大勢の人の命が救われている。

…………コーヒーの苦さに顔を顰めながら、カップに砂糖とクリームをドバドバと注いでいる姿からは、そんなの想像もできないけどね。糖尿病とか大丈夫なのかな。

 

「小児科医、どうする。またあの時のように罠の可能性がある」

 

糖尿病と言えばもう1人の方、鏡飛彩さんも心配だ。

貴利矢さんと比べたら青いYシャツの上から白衣っていう、見るからに医師っていう格好で、僕と年齢もそう変わらないのに数々の難手術を成功させた名医として知られてる。いつも手術の前にケーキを食べているのを見るけど、流石にホールケーキを1人で平らげるのを見た時はびっくりした。それだけ食べても太らないんだ、手術の時は物凄く脳を使っているんだろうな。

 

そして2人に顔を覗きこまれた僕────宝生永夢はゆっくりと頷いてみせた。

 

「確かにあの日、僕は言いましたから。貴方のゲームを攻略し続けるって。挑戦、受けてたちます」

 

僕の返事を聞いた画面の中の黎斗さんが、満足そうに頷く。

一瞬本当に画面の中に黎斗さんがいるのではと疑ったけど……

その疑問を否定するように直後、動画プレーヤーが映像の再生を止める。

そうだよね、今の黎斗さんは肉体を持ってない。通話なんてできる訳がないんだけど……あの人なら自分の精神をデータ化してパソコンの画面の中に入り込むとかやってのけそうな気がする。

…………って言うか、今のがただの映像ってことはあの人僕がどんな反応をするのか予想してたって事なのかな。

完璧なタイミングで頷いてみせた黎斗さんにほんの少しの敗北感を覚えた。

 

「しかし小児科医、仕事はどうするつもりだ?どういった形式のゲームかは分からないが、マイティノベルの時のように自由にゲームを辞めることのできないタイプでは不味いんじゃないのか」

「確かに。あの時はヤバかったなぁ」

 

貴利矢さんが思い返すように目を細める。

僕自身は覚えていないけど、1年前、黎斗さんの作った「マイティノベルX」の罠に嵌った僕は洗脳されて貴利矢さん達を攻撃したらしい。

結局その時は皆と、僕の中にいる『パラド』の助けもあって僕は解放されることが出来たんだ。

流石に同じことを2回繰り返す訳にも行かないよね。

 

僕らが悩んでいると、パソコンの動画プレーヤーが勝手に作動し始めた。

画面に写った黎斗さんが、ニヤニヤしながら僕らを眺める。

 

『どうやらお悩みのようだな。さては私がまた永夢を嵌めるつもりではないかと疑っているのかな?』

 

その通りだ。……って本当にこれ映像なのかな?いくらなんでもタイミングが完璧すぎる。

 

『神の才能をもつ私にかかれば、君たちの反応などお見通しだァ……』

 

ェハァ……と特徴的な息の吐き方をしながら、画面の中の黎斗さんがニンマリと笑った。

貴利矢さんも飛彩さんも、呆れたような顔をする。

多分、僕も2人と同じような顔をしてるんだろうな。

 

『君たちの不安は私の挑戦を受けることで永夢の仕事に支障が出るのではないか、そしてまた私の罠ではないか。と言ったところだろう』

 

すごい、本当に当たってる。

なんでこの人はこういうのを普段の気配りとかで発揮出来なかったんだろう。不思議でしょうがない。

 

『勿論、その辺は抜かりない。私が開発したこの新作ゲーム《GrandOrder》は体感時間を加速させる機能が搭載されていてね。重加速現象やタキオン粒子による作用を解析することによって完成させたシステムで思考を高速化、機械による補助を行うことで……現実での1秒をゲーム内での約12時間に拡大することに成功したのさァーーッ!!!ゔぅぇぅはっはっは!!』

 

 

自慢げに語り、画面の中で黎斗さんが高笑いをする。

……ええと、よく分からないけど。それって物凄い事なんじゃないかな?精○と時の部屋だ。

貴利矢さんも飛彩さんも、唖然とした様子で画面を見つめている。

 

『つまり、これで君たちの懸念は取り除かれたという事になるなァ……』

「いやいやいや、アンタが永夢を嵌めるかもっつぅ方はどうなってんだよ」

 

画面の中の黎斗さんへ、唖然としていた貴利矢さんが慌ててツッコミを入れた。

と、同時に僕の体が熱くなる。全身から噴き出した《バグスターウィルス》が空中で人の形になり、CRの床に着地した。

 

バグスター・パラド。僕の中で生まれ、黎斗さんと僕の父親によって僕の体から分かたれた分身。

色々あったけど、今は最高のゲーム仲間にして大切な相棒だ。

そんなパラドが、僕を咎めるような目で見ていた。

 

「永夢。本当にやる気か?」

「……うん。言わなくても分かってるだろ、パラド。僕はお前で」

「……お前は俺、か。でも今回は俺もついていくからな。最悪また黎斗の罠でも俺だけなら抜け出してブレイブ達を呼んでこれる」

 

僕とパラドの意識は繋がっている。

この相棒が僕のことを心配しているのは痛いくらい伝わってきた。

……でも分かってるぞ?パラドも黎斗さんが作ったゲームに興味があるんだ。

パラド自身、感情が僕へ筒抜けになっているのは分かっているので揶揄うように笑いかけると僕からサッと視線を逸らした。

 

「んじゃ、心配なさそうかな。自分も行きたいけど、紗衣子先生とデートがあるからさ」

「時間なら心配する必要ないって言ってたじゃないですか」

「気持ちよ気持ち。デートの前に別の事に気を取られるのは相手に失礼ってね」

 

貴利矢さんは行ってらー、と手を振っている。

それじゃあ、と飛彩さんの方を向くと既に首を横に振っていた。

 

「CRを無人にする訳には行かないだろう。開業医はまたアメリカに行ってしまったしな」

 

そう。ここにはいないもう1人の医師、花家大我さん。

マイティノベルの騒動の時は相方のニコちゃんが風邪を引いたからって渡米していたんだけど、ニコちゃんが今度はインフルエンザに掛かったとかで数日前にまたアメリカへ飛んでいってしまった。

呼ぶ方も呼ぶ方だけど行く方も行く方だと思う。何を考えてるんだろう。

お陰でこのCRに所属するもう1人のバグスター・ポッピーが大我さんが不在の間、花屋ゲーム病クリニックを管理することになってしまった。

まあ、ゲーム病の治療は貴利矢さんが完成させたワクチンのお陰で殆ど手間が掛からないんだけどね。

…………と、話が逸れてしまった。

 

『話は纏まったようだなァ……』

 

画面の中の黎斗さんが指を鳴らす。すると、CRの扉が開いて院長が入ってきた。

 

「あ、宝生君。またウチの病院の屋上に正体不明のドローンが着地していてね、しかもまた君宛ての小包を運んでいたんだよ 」

「あっ。ありがとうございます!」

 

慌てて受け取る。嘘でしょ、院長がここに来るタイミングまで計算してたのかこの人。

見ると、PCの画面の中では黎斗さんが得意げにふんぞり返っていた。

気を取り直して小包を開ける僕の手元を、室内にいた皆が覗き込む。

出てきたのはやはりというか何というか、ガシャットだった。

青空のような色の外装筐体(アウターガードケース)にツインタイプの透明基盤(RGサーキットボード)が付いている。

形状としては、ダイヤルを無くしたパラドや大我さんのガシャットギアみたいな感じだ。

タイトルは《グランド オーダー》。そのロゴの下には剣や槍を持った男の人や女の子が描かれている。

 

『そのゲームは地球を救うために編成されたチームの一員となり、英雄達の力を借りて戦う……というゲームだ。クリア条件は地球を救うこと。宝生永夢、君にこのゲームがクリアできるかな?』

「…………当たり前でしょ。パラド!」

 

黎斗さんの挑発に少しムッとしながら、パラドへ呼びかける。

人の姿から、再びウィルスへと戻ったパラドが宿主である僕の体へ流れ込む。

同時に《僕》が《俺》へと変化した。

ゲームをする時はいつもこうだ。普段よりも好戦的になる。

この癖ばかりはいつまで経っても抜けねぇな。

意を決してガシャットの起動スイッチを押し込むと、『グランド オーダー!』と音声が流れる。

直後、まるで電源を落としたテレビの画面のように俺の視界が黒一色に切り替わった。

構わず、ガシャットを腰に付けたゲーマドライバーのスロットへと差し込む。

 

「ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!」

 

俺の意識を、浮遊感が襲う。

自分の体が闇の中を落下していくのを感じながら、俺はゆっくりと目を閉じた。

 

 

 

 

 

「……っ、うーん……」

 

鈍い頭痛に顔を顰めながら、上体を起こす。

白い壁、白い床。なんていうか、病院の通路みたいな場所だ。

でも聖都大附属病院ではないのは確かだと思う。見覚えがある場所じゃないしね。

 

「………………って、アレ?」

 

そう言えば、変化した筈の自分がいつの間にか元の《僕》に戻っている。

どういう事なんだろう。

困惑しながら、僕は自分の中にいるパラドへ声を掛ける。

 

(パラド!パーラードー!)

 

反応がない。嘘だろ、まさかはぐれたのか。

以前、パラドが僕を襲ってきた仮面ライダービルド(襲ってきたのにはちゃんと理由があったけどね)を追いかけて、並行世界まで行ってしまった時の事を思い出す。

僕にとっては数週間のことだったけど、パラドはなんと向こうの世界を2年間もさ迷っていたらしい。

不安だ。ていうかパラドがいないともしもの時に助けを呼ぶことができない。

心の中で何度も相棒の名を呼ぶ。

反応は無かったけど─────暫くして、僕の体からバグスターウィルスが噴出する。

良かった。返事くらいしてよ、パラド。

そんな僕の安堵の息は、次の瞬間喉の奥まで引っ込むことになった。

 

「ヴェァーーハッハッハッハァ!」

 

特徴的な笑い声と共に、バグスターウィルスが人の形を作る。

そこから現れたのは────パラドではなく、黒いスーツに身を纏った男 檀 黎斗その人だった。

 

「く、黎斗さん!?どうして……!」

「宝生永夢ゥ……!久しぶりじゃないかァ……」

 

ェハァ……と、これまた特徴的な吐息を漏らした黎斗さんは僕の方をジロジロと見回している。

 

「パラドは……!?」

「彼には悪いが……成り変わらせて貰ったァ……君達がこの世界へとログインする間にデータを弄ってなァ!!」

 

高笑いする黎斗さん。

くそっ、やられた。

結局罠じゃないか。

仕方ない。パラドを取り戻す為にも、取り敢えず1度ここで黎斗さんを倒して…………

 

「アレ?」

 

一気に《ハイパームテキ》でケリをつけようと思ったのに、ムテキガシャットもマキシマムマイティXも見当たらない。

黎斗さんはニヤニヤとしながら僕へ声をかけてきた。

 

「君の持つガシャットは《マイティアクションX》を除いて没収させてもらった。これはゲームだからなァ……チートを使って無敵状態で進めるゲームなんてものは最高につまらないだろう?」

「くっ…………確かに…………」

 

黎斗さんの言い分は、最もだ。

思わず熱くなった頭がクールダウンする。

確かに、最初からずっと無敵の、スリルのないゲームなんてものはつまらない。

 

「それにパラドは成り変わる際に外へ弾き出させて貰った。先程言った通りこの空間は現実よりも遥かに遅く時間が流れている。再びパラドがここへ戻ってくるまで、こちら側で何日かかるだろうなぁ?」

「…………パラドは、無事なんですね」

「それは間違いなく保証しよう。私はあくまで君にゲームを挑んでいるんだ。自在にデータの中を走れるパラドの存在はチートのような物だからなァ……!」

 

どうやらマイティノベルの時にパラドが裏技で僕を助けに来たのが相当気に食わなかったようだ。

取り敢えず、今は分からない事を気にしても仕方がない。

パラドの無事は黎斗さんの言葉を信じるしかない。

さっきのやり取りからしても、黎斗さん本人が僕へ襲いかかって来る様子はなさそうだし。

こうなったら1秒でも早くゲームをクリアしてやる。

 

 

 

「……ところで、このゲームって中断するにはどうすればいいんですか?」

「残念だったなぁ…………クリアするまで、このゲームから逃れることはできないィ……」

 

 

 

「…………は?」

 




CR組は後から出そうかと思ってます。
エグゼイドやFateの設定で間違っている点があればご指摘お願いします(他力本願)
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