とある銀河級スペース蛮族帝国のあれやそれ   作:社畜だったきなこ餅

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Pixivにも出してる作品を一部改変し、全年齢仕様へ変更しての投稿です。
こんなものをハーメルン初投稿にしていいか悩みましたが、怒られたら消そうと思います。


【とある帝国の婚姻事情】

 様々な生命体や自我を持った機械文明が宇宙へ飛び出して幾星霜。

 そんな中、地球がようやく宇宙に飛び出し異星人と正式に交流を始めた頃の宇宙暦2600年頃。

 

 

「前世から愛していましたぁ!」

 

「へ? ふぇぇぇぇぇ?!」

 

 

 銀河中心を挟んだ地球の反対側にある、二つの軍事帝国同士の記念式典の祝宴にて。

 とある帝国の皇太子が、祝宴の隅で所在なさそうに立っていたもう一つの帝国の末姫に人目を憚らず求愛していた。

 これだけならまぁ、皇室男子の暴走的な銀河あるある百景の一つ程度の珍事であるが……。

 

 求愛している男子は随分と体格が良く……その全長は尻尾含めると8mほど、尻尾含めなくても後ろ足から頭頂部まで約5m。

 更に其の姿形はヒューマノイド型ではなく、後肢が発達気味で背には大きな羽を持つ四足歩行型爬虫類……通称ドラゴン。

 かたや求愛されている女子は身長1.4mほどの小柄な儚い印象の美少女。

 ヒラヒラとしたドレスのお尻部分から伸びているふさふさの尻尾に、頭頂部から伸びている大きな狐耳を除けば一般的なヒューマノイド型である。

 ちなみに、その胸は豊満であった。

 

 

「そのキメ細やかな御耳に御尻尾! 春先にそよぐ風にたなびく花のような美しさ……恥ずかしながら一目で貴方に心奪われました!」

 

「え、えっと。その……ありがとう、ございます?」

 

 

 厳つい体躯に顔付きから出てきたとは思えないドラゴンの言葉。

 そんな彼から次々とかけられる褒め殺しと言わんばかりの言葉に、末姫の方といえば困惑しつつも頬を赤らめ俯く。

 

 彼女が所属する帝国、神聖稲荷騎士団と……皇太子が所属する銀河ドラグーン帝国は双方が宇宙に飛び出した頃から数えて約400年ほどの長い付き合いだ。

 たまにイデオロギーやら文化の違いで拗れかける事はあれども、それでもなお互いに結ばれた防衛協定や移民条約が切れたことは一度としてなく。

 年に何度も合同式典や演習の開催に、今も催しているような宴席を設ける程度に密接な関係を持っていた。

 

 なお、そんなに付き合いがあるのに何故皇太子が初めて末姫に出会い。末姫はといえば人慣れしてない反応を返してるかというと。

 何のことはない、皇太子は割とインドア派で式典参加をいつも理由付けしては出席を断っており、今回とうとう父である皇帝に首根っこ掴まれて参加させられただけであり。

 末姫はといえば、彼女の母であり神聖稲荷騎士団の最高責任者である祭司長の政治的思惑により今まで箱入りとして育てられていたからである。

 

 余談だが、その皇帝と祭司長はと言えば……。

 

 

「えぇいまだるっこしい、余の子なら黙って俺の妻になれくらい言わぬか」

 

「あの娘はいずれ家臣に宛がう予定じゃったのだが……いやしかし、コレは好機かの……?」

 

 

 銀河ドラグーン帝国製の、巨鳥の腿焼きを骨ごとバリバリ齧りながら皇帝はそこだ!押し倒せ!などと見物客気分に無責任に囃し立て。

 隣の席でちびちびと酒を啜っていた妖艶な美貌を持つ狐耳と九本の尻尾が生えた祭司長は、予想外の珍事に頭を抱えつつ政治的なメリットをブツブツと呟いていた。

 

 

 ようするにどういうことかって?

 

 

「絶対に貴方を幸せにします! どうかお嫁さんになってください!!」

 

「ふぇ?! は、はいぃ……」

 

 

 暴走する若い二人を止めるのが誰一人居ないって事である。

 他に止めそうな連中の様子を見てみれば。

 

 

「いやぁ、アイツ……女体に興味ない様子見せてたから兄として心配であったが、いろんな意味で安心であるな!」

 

「うむ、私が開国前の地球でこっそり仕入れたサブカルを幼い甥に与えたせいで、甥が引きこもりになった時はどうしたもんかと思ったがな」

 

「待て、諸悪の根源貴様かぁぁぁぁ!!」

 

 

 勲章を胸に付けた一際大柄なドラゴンがしみじみと頷き、隣に立っていた白衣のような衣を羽織ったドラゴンも追従しながら頷いていて。

 聞き逃せない事をほざいた白衣のドラゴンに、勲章ドラゴンは……。

 

 

「食らえ!超能力ラリアット!!」

 

「それ超能力かんけいなっ……あべし!?」

 

 

 割とその首をへし折りかねない勢いで全力で剛腕を白衣ドラゴンへ叩きつけ。

 死なない程度に致命的命中を食らった白衣ドラゴンは膝から崩れ落ち、どこからともなくやってきた衛兵ドラゴンに担架で運ばれていく。

 一方、神聖稲荷騎士団側はと言えば。

 

 

「ああ、おいたわしやおひいさま……あのような銀河級スペース蛮族の皇族に見初められてしまうなんて……」

 

「あの侍従長、その発言いろんな意味で国際問題です。落ち着いて落ち着いて」

 

「これが落ち着いていられますか! このままではおひいさまが、あのドラゴンの欲望のままにあれやそれやひぎぃなことに……!!」

 

「誰かー!侍従長止めてぇぇぇぇ!!」

 

 

 和装のような侍従服に身を包んだ、妙齢の女性がとめどなく溢れてくる涙をハンカチで拭い……ぎりぎりとハンカチを噛みちぎらんばかりに噛み始め。

 いろんな意味でギリギリすぎる危険発言をぶちまける侍従長を止めようと、一見女性にしか見えない神聖稲荷騎士団の男性貴族が必死に侍従長を止めようとする。

 だがしかしソレが火に油だったのか、侍従長さらにヒートアップ大炎上。色々な意味でヤバイ事を口走り始める始末。

 

 控えめにいって大惨事であった。

 

 なお本来、今開催している式典と宴は彼らの帝国が初めて防衛協定を結んだ記念の式典という……とてもとても大事な催し事である。

 だけれども、この状況においてその事を認識している人物は居なかった。

 

 

「お、皇太子が求愛して姫が受けたであるな。言質とったぞ! おい近衛、録音したな?!」

 

「モチのロンでございます」

 

「ぬぁっ?! しまったぁぁぁぁぁ!! たんま、ちょいたんまなのじゃぁぁ!!」

 

「残念、待たぬわぁ!!」

 

 

 なんせ、式典を進める立場である両国のトップがご覧のあり様なのだから。

 そんな訳で、記念式典自体はクソミソな大騒ぎとなったが、別の意味でめでたい結果に終わったのであった。

 

 

 そんなこんなで時は流れ。

 両国の政治的事情と都合、ついでに諸事情やら諸外国への通達やらなんやらが恙無く終わったことにより。

 神聖稲荷騎士団の末姫は、銀河ドラグーン帝国の皇太子へ嫁入りすることになったのである。

 

 

 

 

 

 

【とある帝国の婚姻事情】

 

 

 

 

 

 

 そして始まる、婚礼の儀。

 会場は銀河ドラグーン帝国の本星にある、巨体を誇る彼らに合わせて作られた皇族専用の巨大で荘厳な祭儀場である。

 

 奉仕種族である、動物の耳と尻尾の生えたヒューマノイド……ケモノ人が演奏する銀河ドラグーン帝国の伝統音楽が演奏される中。

 その演奏にも負けないほどの声量で、皇帝が粛々と祝辞を読み上げ婚礼の儀は進んでいく。

 

 

 ここで改めてであるが、彼ら……銀河ドラグーン帝国がどのような国であるか説明しよう。

 彼らの興りは、今から2600年ほど前にまで遡る事になる。

 

 その当時の彼らドラゴンには文明と呼べるモノはなかった、しかし文化は既に存在していた。

 現在は文明の補助なしではその翼で空を飛ぶことは出来ないが、昔のドラゴンらは魔法と呼ばれるものを使い自らの翼で空を舞い。

 時折腕試しとばかりに自分達を討伐しにくる人間や他種族を撃退し、時に知恵を求めやってきた者らに知恵を授けて日々を過ごしていた……だが。

 

 神を騙る高次元生命体らに唆された他種族間で、世界全体を巻き込む大戦が勃発したことにより事情は大きく変化する。

 

 その大戦はやがて、人間対他種族という構図へと変化していき、人間らは戦いのための武具の素材や道具としてドラゴンを狙い始め。

 他種族らは、ドラゴン達を自分たちの仲間へと引き込み大戦を有利に進めようと目論む。

 

 困ったのはドラゴン達である。

 ドラゴン達は総じて強い保守的な性質を持っており、自分たちの縄張りや一族を害されない限りは領域から出ようとしない種族総引き籠りだったのだから。

 彼らが無力で棒にも箸にもかからない存在ならそれも許されたであろう、しかしそうではなかった。

 そして、とうとう人間と他種族は。ドラゴンの我慢の限界を振り切ってしまう事件を引き起こす、その結果。

 

 人間、そして他種族の国家を次々と焼き払い。そして双方を先導していた神を騙る高次元生命体すらも殺害してしまう。

 だが、その犠牲は少なくはなかった。

 当時はまだ力を持っていた魔法や呪い、殺された人間や他種族に神らの今際の時に放たれたソレの狙いはドラゴンという種族の途絶だった。

 放たれたその力は、強い力を持つドラゴンの雄から魔力を徐々に奪うだけで……彼らを殺すには至らなかった、しかし。

 抵抗力の弱いドラゴンの雌はその強大な呪いに耐え切れず……は幼い者も子を抱えた者も関係なく全てが絶命してしまう。

 

 そして、雄しか残らなかったドラゴン達もまた成す術もなく滅ぶ、筈であった。

 だが彼らはとても、そう。 とても諦めが悪かった。

 徐々に失われていく魔力、そして飛べなくなる翼に焦燥を募らせながら彼らは必死に手段を模索する。

 その試みは遅々として進まなかったが、ある時一人のドラゴンが禁じ手とも言える策を提示したことで突破口が開く。

 

 生き残った人間や他種族の雌の胎を使えば良い、と。

 

 当初こそ難色を示すドラゴン達であったが、もはやここに至って一刻の余地も残ってはいなかった。

 結果から言えば、彼らの試みはギリギリの時点で成功を収めたと言える。

 産まれてきた女は母胎に近しい種族であったが、男はドラゴンらと見た目は変わりなかったのだ。

 この、滅亡を回避した記念として彼らは世界の統一暦を変更。この時を元年として文明の道を歩き始める事となる。

 

 その流れの中で、かつては長くあったドラゴンらの寿命は母胎種族とほぼ変わらないという事実が判明したりもしたが、もはや些細な事であった。

 ついでに、母胎として使っていた種族の雄らは年月の間に絶滅。女しかいなくなった奉仕種族をケモノ人として日々の奉仕や労働へと活用するようになった。

 

 

「いやぁめでたい!本当にめでたい! 皇太子よ、よい娘を見初めましたな!!」

 

「ははは、あ、ありがとう」

 

 

 やがて皇帝の祝辞が終わり、婚礼の儀は宴席へと突入。

 開幕から、大樽がごときジョッキ一杯分の酒を飲み干し出来上がった重臣が、宴の主役である皇太子にのっしのっしと近寄るや否や。

 無遠慮にその背中をばんばんと叩いて彼を祝福し、そんな勢いと空気に慣れてない皇太子は若干引きつりながら……。

 給仕として宴席で働いている、ケモノ人の侍従が二人がかりで抱えているグラスを受け取り。皇太子はその中身を勢いよく飲み干す。

 ドラゴン達は総じて酒飲みで蟒蛇である。しかし皇太子は下戸なのでグラスの中身はジュースであった。

 

 

「姫……いや皇太子妃様も、どうかお幸せに!」

 

「え、えぇと……ありがとうございます」

 

 

 豪快に笑い、酒臭い吐息を隠そうともせず言い放つ重臣に。

 嫁入りしてきた姫……もとい皇太子妃は若干引き気味になりながらも、微笑み祝福を受け取る。

 今も宴席で給仕で忙しなく働いているケモノ人と、皇太子妃の種族である稲荷は非常に似通った種族であるが成り立ちは大きく違う。

 

 

 彼女達は当初は野山を駆け巡る、野の獣とそう違いのない外見をしていた。

 しかし、ある時を境に恒星への信仰へと目覚め……当時星を闊歩していた人間に近しい美しい姿形を取るようになる。

 だが似ているとはいっても、その隠しきれない耳や尻尾から最初は強い迫害を彼女達は受け……それでも人間が大好きな彼女達は歩み寄りを止めなかった。

 

 その努力は、決して短くはない時を要しつつも実を結び。やがて彼女達は人間に寄り添い恒星を信仰しながら文明を築く手助けをし始め……。

 その中で、彼女らと人間が交わって産まれるのは女子だけだと判明したりしたその時。

 そんな時に彼女と人間が住まう星を、ある病が襲った。

 

 非常に感染力と致死性が強いそのウィルス性の病は、情け容赦なく星の人間と彼女達……稲荷達の命を次々と刈り取っていく。

 無論、稲荷達もまた、己に出来る事を必死に模索し人間らの病を癒そうと祈り、治療し、互いに寄り添い続けた。だが。

 その努力が結実した時には、星に人間は誰一人として生き残っていなかった。

 

 大好きだった人間がいなくなった絶望と悲しみに嘆き、信仰対象だった恒星に救いを希う稲荷達。

 そしてその時……奇跡が起きた。

 妊娠していた当時の祭司長が産み落とした子が、男の子だったのだ。

 元気な産声を上げる、狐耳と尻尾を持つ男の子……何故女子しか生まれなかったのに突然男子が産まれたのか。

 ソレはぎりぎりで克服できた病の置き土産だったかもしれないし、滅亡に瀕した世界の免疫だったかもしれない。

 

 だが、稲荷達はその事実を、信仰対象の恒星が齎した奇跡と受け取った。

 稲荷達は居なくなってしまった人間達との思い出を護るように文明を保持し、そして育み……その努力はかつての人間達は出来なかった星の海への進出を果たすまでとなった。

 その結果信仰対象だった恒星が、神でもなんでもない恒星だと判明して大きな社会問題を引き起こしたりもしたが……稲荷達なりにその事実をなんとか受け止める事も成功。

 

 男子の出生率の低さから、自然と女性優位の社会となったりもしているが、彼女達は今も文明を回している。

 

 

 なお、そんな稲荷達とドラゴン達の馴れ初めは。

 とある星系で互いの調査船がばったり鉢合わせた事だったりもする。

 

 

閑話休題

 

 

 そんな、少々歪な歴史と社会構造を持つ二国であるが。

 第三者は口を揃えてこう評する。 

 『戦争と美女美少女にしか興味のない銀河級スペース蛮族』と、『後ろ手に凶悪な得物を隠し持った狂信者』と。 双方ともろくでもねぇな。

 

 

 始まって数分こそ粛々と進んでいた婚礼の儀であったが、気が付けば飲めや歌えや踊れやのドンチャン騒ぎと化した婚礼の儀。

 銀河帝国同士の大事な婚礼の儀、あまりの無礼講に皇帝が待ったをかけると思いきや……。

 止めるべき皇帝が真っ先に、ノリノリで酔っ払いながら宇宙艦隊の提督と肩を組んで国歌を歌いだしたのだからタチが悪い。なお歌声は酷い様子。

 

 中には、ケモノ人の侍従に鼻の下を伸ばしながらセクハラをするドラゴンまでおり……。

 そんなセクハラをかましてるのが科学庁の長官であるから始末が悪く。

 ついでにセクハラされてるケモノ人に拒絶の意志が見えるかといえば、割とノリノリで受け入れ悦んでいるのだからもうどうしようもない。

 

 お世辞にも上品とは言えないそんな有様に、嫁入りしてきた姫が……。

 

 

(私、とんでもない所にお嫁に来ちゃいました……)

 

 

 ふさふさとした毛並みの大きな尻尾をしょんぼりさせ、狐耳までぺたんと倒した事を誰が責められようか。

 

 だがしかし、あまりにもあまりな光景とは言え銀河帝国同士の婚礼の儀。

 嫁入りしてきた相手が非常に不景気な顔をしているという事に、心無い人物なれば手ひどい言葉をぶつけかねないモノだが。

 

 婚礼の儀の際には大体いつも、みんなこんな顔してるよなー。と呑気なドラゴン共は誰一人気にしない。

 色んな意味でどうしようもない連中である。

 

 だが、そんな皇太子妃となる少女に対して気を配りその憂い顔を払おうとするドラゴンが奇跡的にも一人存在した。

 

 

「……困ったなぁ、父上に兄上。叔父上まであんなにはしゃいじゃって」

 

 

 困ったように頬をかきながら呟くは、嫁入りした姫の伴侶となる巨体の皇太子。 

 そんな声に、少女はハッと耳を立てて上目遣いに隣の男性を見る。

 

 

「ごめんね、姫……じゃなかった我が君。彼らも悪いドラゴンじゃ……うん、多分悪いドラゴンじゃないんだけどさ……ハメを外しちゃうとつい、ね」

 

 

 一般的に強面と称される彼らドラゴン、何も知らない子供が見たら泣きかねない強面の顔つきでなお困ったように笑うという若干器用な皇太子。

 そんな彼の言葉と顔に、姫もまたつられるように笑みを綻ばせる。 

 

 

「皇太子様」

 

「なんだい?」

 

 

 互いに微笑み合いながら見つめ合う二人。

 そんな若干甘酸っぱい空気が二人の間で流れている中。

 

 一方。

 

 

「隠し芸、超能力空中浮遊!!」

 

「おお!? 本当に浮かんでる!」

 

「超能力って公言してる時点で隠し芸もクソもねーよバーカ!!」

 

 

 皇太子の異母兄である宇宙艦隊の提督が後ろ足で胡坐をかき、そのままの姿勢ですぃーっと空中へ浮かんでおり。

 その芸に対して空き瓶やら空のジョッキが投げつけられての、どったんばったん大騒ぎが繰り広げられていた。こいつらどうしようもねぇな。 

 

 一瞬皇太子と皇太子妃がそんな騒ぎへそろって視線を向けるも、互いに向き直ると軽く頷き合う。

 どうやら、とりあえず気にしない事にしたらしい。

 

 

「不束者ですが……よろしくお願いします……ね?」

  

「うん、こちらこそ……幸せになろう、姫」

 

 

 逆に、なんだか恥ずかしくて言えなかった言葉を言うチャンスだとばかりに皇太子妃ははにかみながら口を開き。

 その言葉に虚を突かれた皇太子はきょとん、とした後飛び上がりたい気持ちをこらえながら頷き互いに誓い合った。

 

 なお、超能力空中浮遊を披露した提督は、投げつけられた大樽が頭に直撃しノックアウトされていた。

 

 

 そんな尊くない犠牲を出しつつも、宴は夜が更けるまで続き……。

 皇帝が息子と義娘となる二人へ祝福の言葉を告げ酔い潰れることで、閉宴となる。

 

 そして宴が終われば……。

 

 

 やってくるのは初夜、いわゆる後は若い二人に任せて……という時間である。

 

 

 

 煌びやかではないが、それでもそれなりに調度品が整いつつ……。

 最近宇宙へ飛び出したという、銀河の反対側にある地球のサブカルチャーなゲームや映像作品のポスター等があちこちに張られている部屋。

 

 その部屋の中央にある、ドラゴンが二匹は余裕で転がれそうな寝台にて。

 帝国の若き皇太子は後ろ足で座りながらそわそわと尻尾を揺らしていた。

 

 皇太子の脳内にあるのはただ一つ、花嫁となった姫と今から迎える初夜への期待のみである。

 

 

(あー、やばい。やばい。姫のはにかんだ顔にあのサラサラの髪や尻尾思い出すだけで、滾る)

 

 

 婚礼の儀では紳士的な態度をひたすら通す事に成功していた皇太子であったが。

 何のことはない、ストライクど真ん中な好みのお嫁さんの姿にいっぱいいっぱいなだけだった様子。

 

 なお本来は、成長と同時に世話役のケモノ人とニャンニャンな事になるのが当たり前な、銀河ドラグーン帝国の皇族男子であるが。

 酷く残念なことに彼は……幼いころに触れた、科学庁長官の叔父がどこからともなく仕入れてきた地球のサブカルチャーに触れた事で。

 長期間女性と接していなかったインドア派男子がごとく、女性の趣味と童貞を拗らせていた。どうしようもねぇ。

 

 なお、種族男子総パリピ気味なドラゴン共の中では皇太子のような男子はかなりの少数派に属することは言うまでもない。

 

 

「皇太子、失礼致します」

 

「は、はいぃ!」

 

 

 部屋の中にある小さな扉……妻となる女性用のプライベートルームの入口である扉をノックされ。

 声をかけられた皇太子は寝台の上で飛び跳ね、上ずった声を返し……彼の返事を聞いたケモノ人の侍従は、ゆっくりとその扉を押し開ける。

 

 皇太子は無意識に生唾を飲み込みながら、ゆっくりと開かれる扉へ首を向け。

 期待や欲望とかが入り混じった視線で、扉から出てくるであろう女性の姿を待つ。

 なおこの時点で彼の思考は、文章化が憚れる程度に酷い状況である。

 

 

「ささ、中へどうぞ」

 

「はい……」

 

 

 姫の世話役として宛がわれた、竜角と竜尻尾の生えたケモノ人の侍従に促され。

 体の線がわずかに透けて見えるが、大事なところは何故か見えない羽衣のような衣装を纏った花嫁が皇太子の部屋へと入ってくる。

 

 その清楚な仕草と恥じらい、そして自分の性癖と欲望に刺さる仕草と衣装を見た皇太子は。

 全身を、暴徒鎮圧用のイオンディスラプターで貫かれたがごとき衝撃を受け、地味に一目惚れ状態だった姫への想いを倍率ドン、更に倍する。 

 

 

 なお余談であるが、姫の付き人となったケモノ人は侍従筆頭であると同時に、実は皇太子の異母姉でもある。

 婚礼の儀ではあまりな扱いであったが、それなりに姫の存在を帝国なりに重要視はしてるらしい。

 

 

「それでは、ごゆるりと……」

 

「あ、あの……私、本当に大丈夫なんですか……!?」

 

 

 後は若いの二人でゆっくりと……と言わんばかりに下がろうとする侍従筆頭に。

 大丈夫とは前もって言われていたが、そうは言ってもいろんな意味で心配な姫は侍従筆頭の袖を掴み。

 中々に逼迫した表情で問いかける。そりゃそうだ。

 

 

「ええ、大丈夫ですよ姫……いえ、皇太子妃様。 こちらに嫁ぐ際に、処置を受けられましたでしょう?」

 

「は、はい。お薬を打たれた後、なんだかドロっとした液体の詰まったポッドに入れられました」

 

 

 下手しなくても私死んじゃう、と思わず命の危機を感じてしまった姫……もとい皇太子妃であるも。

 侍従筆頭の言葉にうなずいて答え、ならば大丈夫ですよ。とそっと背を押され皇太子の前に差し出される。

 

 色々あった末に、ケモノ人はドラゴンの繁殖相手としてジャストフィット(意味深)する性質を獲得したのだが。

 たまにそうじゃないケモノ人も居たり、姫のように他文明から嫁入りする女性もたまにいる。

 ソレらに対しても対応出来るよう、紆余曲折の末に高い技術をドラゴン達は習得したのだ。

 

 なお、他文明の科学者からは銀河レベルの努力の方向音痴と大評判なのは言うまでもない。

 

 

 

 そんなわけで、皇太子は嫌いじゃないがそれでも怯えを隠せない皇太子妃は。

 ふるふると震えながら、そっと皇太子を見上げる。

 

 そんな皇太子の趣味に元々致命的命中を叩き出していた、皇太子妃の儚い姿に。

 その欲望は臨界突破、これが宇宙戦艦のエンジンなら爆裂四散の末に虚空の塵となるレベルにまで高まっていた。

 酷い話である。

 

 

「……うん、すごく綺麗だ……おいで」

 

「は、はい……」

 

 

 内心で拍手喝采ガッツポーズし脳内皇太子たちが万歳三唱する中な、妻となった皇太子妃へ大きな手を差し伸べ。

 ドラゴンにとっては羽のように軽く、そして柔らかな体を持ち上げ……。

 

 

 やがて、二つの影は一つとなり。

 ちょっとケダモノっぷりを暴走させた皇太子の声と、なんとか命の危機なく受け入れた皇太子妃の声が寝室に響き始め……。

 

 

 そこまで見届けた侍従筆頭は、そっと音もなく部屋から立ち去る。

 その際に私を娶ってくれる人はいないかしら、などと世の無常を嘆いた侍従筆頭の声を聞き取る人物は悲しきことに誰も居なかった。

 

  

 ちなみに、皇太子と皇太子妃の体の相性は抜群に良かったせいか。

 後日、新たな皇族が皇太子と皇太子妃の間に生誕したとかなんとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある日、謁見の間にて。

 

 

「……お二人の初夜については、以上です」

 

「うむ、そうであるか。監視と報告ご苦労」

 

 

 侍従筆頭から、皇太子と皇太子妃の初夜と相性について報告を受けた皇帝は満足そうに頷き、侍従筆頭を労う。

 謁見の間には二人とは別に、ドラゴンがもう一人いて……。

 

 

「いやー、弟が性癖と童貞拗らせたって聞いたときは焦ったけども。なんとかなるもんであるな!」

 

「それな。いやー……地球のサブカルチャー舐めておったわ、いやほんと」

 

 

 神妙な顔で呟く、胸に勲章を幾つも付けたドラゴン……皇帝の子の一人であり、帝国が誇る常勝提督。

 そして、その言葉に追従するように皇帝は頷き……二人してHAHAHAHAHA!と豪快に笑う。

 

 

「まー、これで盟約も果たせたし神聖稲荷の方は顔繋ぎが継続できて良し。余らは童貞拗らせてた皇族男子の性癖直撃な嫁とれて良し」

 

「まさにWin-WInであるな!」

 

「……この会話、神聖稲荷の上層部が聞いたらなんて言うのでしょうか」

 

 

 いやーよかったよかった、などと呑気に笑いあう皇族二人の様子に頭痛をこらえる侍従筆頭。

 ちなみに神聖稲荷騎士団は女尊男卑気味の風潮があり、軍事や政治は主に女性が回しており……一見女の子にしか見えない男性は主に家庭に入るのが通例な文明だったりする。

 なお、銀河ドラグーン帝国は……その反対に男尊女卑の風潮が強いスペース脳筋蛮族国家である。

 

 

「まぁ大丈夫じゃろ、今の祭司長って余の婆様の妹の孫娘であるし」

 

「遠いようで近いようで、やっぱり遠いそんな血縁関係!」

 

「兄上は黙ってて下さい」

 

 

 妹である侍従筆頭にぴしゃりといわれ、ソンナーなどと言いつつしょんぼりする提督を他所に。

 余談であるが、神話の時代ならいざ知らず。今世においてはドラゴンらの平均寿命は100年程度だったりする。

 

 

「血縁もあるしまぁ大丈夫大丈夫、それにまぁ帝国は連盟の治安維持やら仲裁やらしっかり働いておるしの」

 

「最近は外銀河からやってきた触手生命体もぶちのめしたであるしな!」

 

 

 仮に文句があっても、吾輩ら切り捨てたりは奴らにはもう出来んよ、と薄ら寒い事を呑気に告げる皇帝。

 おまけに宇宙に出た当初からの付き合いでもあるし、と人情を後付けする辺りがこの皇帝タチが悪い。

 

 

 

 

 そんなわけで、帝国と銀河は今日も平和です。 

 




拙作を読んでいただきありがとうございました。
こんな感じの短編を世界観共通で書いていこうと思いますので、よろしければお付き合い頂けますと幸いです。

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