とある銀河級スペース蛮族帝国のあれやそれ 作:社畜だったきなこ餅
やりたい放題やらかしたが、割と満足いく出来になったと自画自賛です。
淫魔管理会の領域の端の方にある宇宙基地で、やらかした出向兵ドラゴンが展望台の天井から逆さ吊りにされていた頃。
銀河の反対側辺りにある地球の、とある投稿式動画サイトにて一つの動画が上げられた。
題名は、『銀河ドラグーン帝国の新兵器映像入手したったwww』という題名の良く出来たCG映像。
その中身は、銀河ドラグーン帝国の正式採用機である宙間戦闘機によく似た宇宙船が宇宙を飛び回り……時に人型ロボットへ変形して戦うという内容だ
その人型ロボットは時に宙間戦闘機形態で弾幕をかいくぐり、人型形態へ変形しては大型戦艦を単独で轟沈させた上に補助装備無しで有人惑星への大気圏突入すらも成功させる代物であった。
当たり前であるがそんな代物、銀河ドラグーン帝国は作ってもいないし考えてもいない、地球の趣味人が作った創作意欲が爆発したネタ映像でそれ以外の何物でもない。
しかし、その出来が良いCGと男の子の中の中学二年生を強く刺激する内容は爆発的な人気を叩き出し、やがて派生作品すらをも生み出していった。
だが……何事もなければ、誰も気に留める事なくそう言えばそんなものもあったね、などと言われたであろう一過性のブームの作品。
だがしかし、本家本元の銀河ドラグーン帝国のとあるサブカル映像好き皇太子がその映像作品を発見した事で風向きと雲行きが怪しい方向へ転がっていく。
それはある、銀河ドラグーン帝国の昼下がりの事であった。
「地球の娯楽文化って凄いなぁ、こんな映像レベルを個人で作れるなんて」
「本当ですね、貴方」
見つけた切っ掛けは、お腹の大きくなってきた妻を行楽に連れ歩くわけにもいかない、だがしかしかつて見てたような美少女満載の映像作品を見せる度胸もない。
そんな折に、叔父である科学庁長官から……地球の面白いホームページのサイトを皇太子は教えられたのである。
ちなみに唐突な余談だが、ドラゴンの大きく爪の生えた手は精密作業に向いていない。
そんな彼らが何故精密機器を操作できるのか、その秘密は今も皇太子の首元にケーブルが刺さっている神経接続コネクタにある。
この、ドラゴンが産まれると同時に植えつけられる神経接続コネクタは、脊椎部にまでその線を体内で伸ばしており接続された機器を思考のみで制御する補佐をする優れモノなのだ。
その制御内容は……家庭の電子機器の操作や、身体洗浄機の操作、更には宇宙船の制御にまでと多岐に渡るドラゴンにとってケモノ人と同じぐらい手放せない大事な一品である。
閑話休題
「あ、貴方! この御仁、まるで稲荷みたいですわ」
「本当だ、地球にも稲荷っていたんだねぇ。CGで構成してるってことは個人情報保護なのかな?」
「きっとそうですわ、声が野太い御仁ですけどソレもあってこのような手法をお取りになられてるんだと思います」
一度新たな玩具を与えられた夫婦は、二人して顔を突き合わせてモニタを見つめ、様々な動画を二人で和気藹々と眺めていた。
ちなみに、皇太子よりはるかに小さな身重の皇太子妃は……皇太子が胡坐をかいたスペースに皇太子妃がすっぽりと収っている。
皇太子妃曰く、守られていると強く実感できてこの格好が好き。との事だ。
そんな時である、オススメ映像にとある趣味人が作り上げた、捏造満載の新兵器(笑)の映像作品が出てきたのは。
「ええっと何々……『銀河ドラグーン帝国の新兵器映像入手したったワラワラワラ』だって……?!」
「え、えぇ?! なんで遠く離れた地球がそんな映像を?!」
余りにもセンセーショナルな題名に、末席に位置するサブカル中毒の皇太子とはいえ皇族は皇族。
その顔を引き締め、首元のコネクタに刺さったケーブルを通し、その映像作品の再生を始める。
「……なんだか、凄く旧式のシミュレーターに出てくる宇宙みたいな映像だね」
「そうなのですか?」
「うん、兄上に無理やり訓練させられた時のシミュレーターだと、もっとちゃんとした宇宙だったよ」
まず真っ先に目につくのが宇宙の作りものっぽさ、そこで皇太子が不思議そうに首を傾げる。
一方、皇太子妃は宇宙に出たのが彼ら夫婦の馴れ初めである宴席と、その後の嫁入りのための航行のみだったのでいまいち違いが分かっていなかった。
「お? これかな、なんか凄いカラフルな塗装だけど。うちの正式採用機に似てる……でもなんか変だなぁ、スラスターの位置とか武装の配置とか」
「でも、かっこいいですわよね。こんな機体が先陣を切って戦果を挙げると、士気が上がりそうです」
見慣れた正式採用機に似てるけども、なんだか違和感を感じる映像内の宙間戦闘機に首を傾げる皇太子。
一方、狂信……もとい熱心な宗教主義軍事帝国出身の姫君は、その機体が活躍することによるメリットに着眼していた。
「あ、敵が出てきましたわ……あらまぁ凄い、こんな弾幕を苦も無くかわしてますわ」
「正規兵なら簡単に潜れそうな弾幕だけどなぁ……あ、なるほど。あの変なスラスター配置はこうやってぐりぐり動かして急制動かける為だったんだね」
口々に好き勝手な感想を述べながら、それでも映像作品に見入る皇太子と皇太子妃。
皇太子妃のふわふわ尻尾も、皇太子の鱗まみれ尻尾のゆらゆらと揺れてる様子から結構楽しんでいるのは間違いない。
そして映像は宙間戦闘機が、敵の大型戦艦へ肉薄するところまで進み。
次の瞬間、起きた内容に夫婦揃って目を見開きあんぐりと口を開く。
「「へ、変形したー!?」」
映像の中の宙間戦闘機が、サブカル中毒の皇太子をしてお前どんな構造してんだよって内容で変形した末に。
腕部から放出した高エネルギー刃によって、大型戦艦をすれ違いざまに真っ二つにする姿に夫婦は二度びっくりする。
「こ、これは凄い……!」
「でも貴方、あんな構造してたら船体の耐久性はかなり落ちそうですわね」
「確かにそうだね、けど……一度も当たらない高機動性と、当てられる前に沈められる火力があれば決して非現実的じゃないよ。コレ」
もしかしてこの拙いCG映像は、帝国の技術部がプレゼン用に片手間に作成したものなのだろうか? などと的外れな推測を始める皇太子。
一方皇太子妃の方は、あんな変形するとパイロットのドラゴンさんが酷い事になりそうですわ。などと思いつつ眺めていた。
ちなみに大真面目に考察し推測している皇太子だが、この映像作品を作った作者はそんな細かい事一切考えていないのは言うまでもない。
そうやって話し合ってる間に映像作品は終了し、続けて別の映像をという気分でもなくなった皇太子は皇太子妃の体へ負担をかけないよう気を配りつつ、そっと立ち上がると。
足早に部屋を駆け出していくのであった。
「んー……でも確かに凄かったのですけども、なんか引っかかるのですよね」
科学庁長官である叔父の下へ、夫は行ったのだろうと思いつつ映像作品の紹介項目のページを、皇太子に作ってもらった翻訳リストとにらめっこしながら確認に入る。
そして、程なくして彼女は見つけるのだ。 ただのジョーク映像作品であるという事実を。
「……意気消沈して戻ってこられるでしょうし、今からお慰めする準備でもしようかしら」
叔父に指さして笑われかねない夫を不憫に思いつつ……おつきの侍従筆頭をそっと呼び出し。
肩を落として戻ってくるであろう夫を慰めるための準備を進める。 出来た嫁さんな、皇太子妃なのであった。
【とある帝国の科学事情】
「ぶはっ、だーーーーっはっはっはっは!!」
「そ、そんな笑わなくてもいいじゃないか! 叔父上!」
「いやぁ、だってお前ぇ! あんなの本気にするヤツ、おらんじゃろ普通……ぶふぅっ! ぶわーーっはっはっはっは!!」
皇太子妃の予想は見事にどんぴしゃり大当たり。
例の映像作品について、科学庁長官を務める叔父の下を訪ねた皇太子は今まさに指を差され大爆笑されていた。
「おま、ぶひゅぅっ! あんなの、嘘八百にきまってんじゃ……らっはっはっはぁ!」
「く、くぅ……この外道ジジィめ……」
皇太子よりも一回り大きい巨体で腹を抱え大爆笑を続ける科学庁長官。
こんな態度と行動であるが、科学庁長官である。
「しかし長官殿、問題はありますぞ?」
「ひー、ひー……問題って、どうしたんかの?」
笑いすぎて出てきた涙を指で拭いながら、控えていた長年の相棒でもある助手を務めると共に何人もの子を作った狼耳尻尾を持つケモノ人へ向き直る科学庁長官。
ちなみに爆笑されまくった皇太子は、部屋の隅っこでうずくまり拗ねていた。
「前に長官殿、酒の席で地球の面白映像と銘打って荒唐無稽な人型ロボット作品の上映会されましたよね」
「あー、そういえばした気がするのぅ。ほとんど忘れておったが」
「アレを本気にした軍部が、合体変形する宙間戦闘機や宇宙戦艦の設計開発要望を提出してきております」
能力と頭脳は銀河ドラグーン帝国トップを誇る科学庁長官ドラゴンであったが、酒が入ると他の追随を許さないダメドラゴンへと転落する男。
ソレが……皇太子の結婚式でも遠慮なく提督にラリアットを叩き込まれたりする、科学庁長官を務めるドラゴンの正体であった。 なお割と彼に近しい人物は皆知っている。
「……え? マジ?」
「マジでございます、どう致しましょうか」
「いやぁ、いやいやマテマテ。 あんなもん、戦術的優位性の確保どころか作る理由もメリットもないぞ」
「はい、私もそう思います。ですが……」
「な、なんじゃよ……」
「……いえ、私が口を出すよりこちらを見て頂く方が早いですね」
それではVTR、どうぞ。という狼耳尻尾ケモノ人がリモコンをピッと押せば部屋が暗くなるとともにプロジェクタに光が灯り。
何かの宴会会場と思しき場所にて、科学庁長官ドラゴンが豪快に酔っ払いながら弁をふるっていた。
『~~と、いうわけでぇ! 可変合体機構は決して無駄ではなくぅ! 十分な効果がみこめるものであるとぉ、主張するぅ!』
『なんと素晴らしい! 必要に応じて形態を変える事で機動性と戦闘力を高い次元にまとめるとは!』
『然り! あの駆逐艦との合体変形もよいですな! なんせ、今のご時世駆逐艦に宙間戦闘機をドッキングさせないといけない事情も、減っておりますし』
『宙間戦闘機ではサイズ上限界のある出力を、駆逐艦サイズの動力で補い。更に複数宙間戦闘機を合体することで動力を連結、出力を倍増させる……脱帽ですな』
そして、VTRの中では酔っ払いのノリノリの妄言理論を脳筋気味な軍人ドラゴン共が拍手喝采しながら大喜びで受け入れていた。
口ではもっともらしいこと言ってるが、映像をよく見るとその目がカッコいいし欲しい、俺も乗りたいと少年のように目を輝かせているのだから、もうどうしょうもねぇ。
余談だが、100m級サイズの銀河ドラグーン帝国の駆逐艦は4機ほどの宙間戦闘機をドッキングし牽引することが可能である。
これは宙間戦闘機の推進剤の消耗を抑える目的もあるのだが、狭いコクピットに長期間閉じ込められっぱなしになる宙間戦闘機パイロットのケアの目的の方が強い。
その為、船体サイズ上宙間戦闘機よりかは頑丈であるものの、火砲を搭載するより居住性を重視した結果……駆逐艦一隻の戦力は言うほど高くないのが実情なのだ。
そして、昨今の銀河情勢から宙間戦闘機を満載した駆逐艦は割と出番のない艦種だったりする。
閑話休題
「…………叔父上」
「………………どうしよ?」
「どうしよ? じゃないですよぉ叔父上ぇ! どこをどう見てもアンタの撒いた種じゃないですかぁ!?」
いつの間にか、拗ねていた皇太子がVTRの内容を見つめたのちに叔父である科学庁長官ドラゴンを詰問。
詰問された科学庁長官ドラゴンはきまずそーに目を逸らしながら、ぽつりと呟きその内容に全力で応じは突っ込みを入れる。
「ちなみにでありますが……」
「やめて、儂それ以上聞きとうない」
「この時に使われたプレゼン資料は宴席に出席していた提督や将軍から一部の部下らへ配布されております」
「聞きとうないって言ったじゃんかぁぁぁぁ!!」
ぬわぁぁぁ、と頭を抱える科学庁長官ドラゴン。清々しいまでに見事な自業自得であった。
先ほどまで指差しで大爆笑された皇太子はといえば、そんな叔父の姿に若干溜飲を下げつつそっと部屋から退出しようと抜き足差し足移動し始め。
「こーうたーいしぃぃぃ、ちょぉっと手伝ってくれないかのぅ?」
「は、放せぇぇぇぇぇ?!」
ぬるりと姿勢を直した科学庁長官ドラゴンに肩を掴まれ捕獲された、地味に不憫な皇太子である。
「大丈夫大丈夫、痛くしないから! ちょっと皇太子から皇帝陛下に上奏してもらうだけだから!!」
「叔父上がしろよ?!」
「無理だ! 儂、皇帝陛下に既にこれ以上お前の無理難題は聞かんって釘刺されてる!」
「何やったの?!」
下手しなくても不敬罪まっしぐらな行為と発言を繰り返す科学庁長官ドラゴンの言葉に、皇太子思わず突っ込んだ。
細かい事情は省くが、真っ当な帝政社会だとこの科学庁長官ドラゴン。3回は斬首される程度の事をやらかしている。
有能だという理由で、裁かれるべき存在が裁かれないという帝政独裁政治の闇が、地味にそこにはあったりするが。今は関係ないので割愛する。
で、結局どうしてどうなったか。
「えー、というわけで。 兵器進化のブレイクスルーの為、という名目で予算と期間をもぎ取って参りましたー」
「やったー」
「作っていいんですか? 完全変形宙間戦闘機作っていいんですか?!
「合体変形もいいぞ!」
「ヤッター! 皇太子殿下ばんざーい!!」
「ばんざーい!」
ゲッソリとした顔つきで、集められた科学庁の研究者ドラゴンらの前に立ちプロジェクト発足について報告する皇太子がそこにいた。
ちなみに諸悪の根源である科学庁長官ドラゴンは、関係各所への根回しと資材調達。ついでに政治力学の調整に相棒の狼耳尻尾ケモノ人と一緒にコキ使われていた。
「で、その上でですが諸君には以下の最低要求スペックを実現できる船を作っていただきます」
「えーっとなになに?」
「『意味のある変形機構の実装』に、『パイロットが操縦できる構造』」
「それに、『船体耐久と装甲は正式採用機より同等かそれ以上』」
「中々に無理難題ですなー。お、宙間戦闘機と駆逐艦双方ともある程度のサイズアップは容認頂けるのですね」
「……あ、大剣型携行装備は許可できないって書かれてる。がっかりである……」
ふむふむなーるほど、とホログラフィックモニタに表示された要求スペックのめぼしい個所を読み上げてく研究者ドラゴン達。
そんなに無茶を感じない要求に、研究者ドラゴン達わーりと余裕を見せていた。次の瞬間に口を開いた皇太子の言葉を聞くまでは。
「なお、実地試験機体のロールアウトはジャスト一年後であるものとする」
「「「「「ファーーーーーーーーーー!?」」」」」
研究者ドラゴン共の絶叫じみた悲鳴が研究室に響き渡る。
一年間もの開発猶予、と思われるかもしれない。だがしかし。
既に仕上がった船体に、新型兵装をぽんぽん付け替えるならまだしも……完全に一からの船体設計の開始である。
更にコルベット級サイズである宙間戦闘機は生産に約一か月、駆逐艦は約二か月も生産に要する。これは即ちだ。
「せ、設計に10か月かけれるから。余、余裕では?」
「ふへへ……何言ってんだ、実機の変形テストや試験考えるともっと早く終わらせねーと……」
「もうだめだぁ、おしまいだぁ」
無理無茶無謀を通して道理をこじ開けるデスマーチ、それが今この瞬間確定したのである。
なお、何故一年後なのか……何故かといえば、丁度一年後に銀河ドラグーン帝国のみならず彼らが属する『光明協定』全国家を挙げての記念週間と式典があるのだ。
どうせやるなら、そこで出そうぜ。コレは余の勅命である。 などと悪魔のような笑みで皇帝が言い放ったとかなんとか。
泣きたい逃げたい放り投げたい、だが皇帝陛下直々の勅命だから泣いてもいいけど逃げれないし放り投げれない。
そんな悲痛な空気に包まれる研究員達、そんな彼らを……巻き込まれたとはいえ皇太子は見捨てる気はなかった。
覚悟を決めた顔で研究員達に一旦退出する旨を皇太子は伝えると、急いで宮殿へと戻り……。
しょんぼりしながら皇太子が帰ってくると思っていた皇太子妃は、悲壮な覚悟をキメた夫の様子に侍従筆頭とともに困惑。
更に、しばらく研究室に泊まり込みで手伝いをすると言われたのだから皇太子妃の困惑は更に加速する。当然だ。
まぁ、夫婦の話し合いは多少長引くも、出産が近づいたら必ず帰ってくるという約束と引き換えに皇太子は、嫁から手伝い出張を許可された。既に尻に敷かれているのかもしれない。
そうやって舞い戻ってきた皇族の風格を纏う皇太子の様子に、右往左往していた研究員たちは気合を入れ直す。
そして、銀河ドラグーン帝国の技術史に残る……無駄に高い技術を無駄のない無駄な設計に使い込んだ、と言われる開発プロジェクトがスタートした。
「元々の事の発端だった、地球のサブカルチャー映像を資料としてとにかくかき集めてみる。何か突破口が開けるかもしれない」
「お願いします、皇太子殿下!」
「ちょっとー主任ー! ここのフレーム、変形するとぽきゃってシミュレータで折れたんだけどー!?」
研究者としては門外漢な皇太子、彼は自分が出来ることを必死に模索し。研究員が必要とするものを?き集める。
時には自分の趣味から、時には無茶ぶりをしてきた腐れ外道な叔父である科学庁長官ドラゴンを更に酷使して調達し。
「誰だぁぁ、こんなアホな計算式ぶち込んだヤツ! こんなんじゃ戦闘機動に耐えれんだろ!?」
「誰がアホだ! 限界ギリギリまで追い詰めないと他に影響出るんだよ、ここは!!」
時には協力し、時には互いの持論と意見をガンをつけ合いながらぶつけ合い。
研究者達は、目標すらもしっかり定まっていなかった代物への道筋を固め、そして一歩ずつ確実に作り上げていく。
「皇太子、大至急宮殿へお戻り下さい! 皇太子妃様が産気付きました!!」
「えっ!?」
「皇太子殿下、お戻り下さい! ここは俺達でなんとかします!」
「み、みんな……」
「何、ここで完成させてしまっても。構わないだろう?」
実機生産を含めると、ぎりぎり。本当にギリギリのタイミング。
あと少しで、可変合体式宙間戦闘機と可変合体式駆逐艦の設計が仕上がるというところで、皇太子妃が産気づいた旨を侍従筆頭が報告。
命よりも大事な妻との約束、しかしともに戦い続けた仲間を置いていくかのような行為に一瞬葛藤する皇太子であった。
だがしかし、彼らとて一人前の銀河ドラグーン帝国の研究員。不敬罪一歩手前な勢いで乱暴に皇太子の背中をひっぱたき、急いで妻の下へ戻れと送り出した。
後ろ髪を引かれながら研究室を飛び出していく皇太子、それを満足げに笑みを浮かべながら見送る研究員達。
さぁ、最後の追い込みガンバルゾー!と彼らはその逞しい腕を突き上げた、その瞬間。
そして、致命的な設計不具合を示す絶望のエラー音が研究室に鳴り響いた。
妻が無事、元気な男の子。ドラゴンを産み落としたのを見届けた皇太子が、一週間後研究室に戻って見た光景は。
真っ白に燃え尽きた研究員ドラゴン達が、完璧な設計図を仕上げ死んだように崩れ落ち爆睡している姿だった。
そう、彼らは間に合わせたのだ。己の命と睡眠時間を丸々削る事で。
そして、4機の可変合体式宙間戦闘機と1隻の可変合体式駆逐艦は秘密裏に辺境の宇宙基地で建造が開始され。
予期せぬ形で、銀河にその姿を見せ活躍する事となるが。
科学庁長官ドラゴンのポケットマネーで、ド派手な打ち上げパーティを日夜繰り広げ続ける皇太子と研究員ドラゴンにとってはまた別の話であった。
色々と不備もあったけど、そんなわけで銀河ドラグーン帝国の科学庁は今日も多分平和です。
今回も拙作をお読みいただき、誠にありがとうございます。
なお、12月16日現在。私の知る限りにおいても合体変形戦艦はどのMODにもありませんし、作者もそんなMOD作れません。
娯楽に乏しい銀河ドラグーン帝国のアホ達が、頑張ってごり押してやらかしちゃった感じです。
酷い話だ。