とある銀河級スペース蛮族帝国のあれやそれ   作:社畜のきなこ餅

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うーん………。
書きたいネタだったが、いざ文章にすると凄い難しい、いずれ書き直すかリベンジしたいです。

1/27 誤字、及び作中作の名前をそのものずばりから、それっぽい別物に変えました。


【とある帝国の地球訪問】

 

 

 

 『遠く離れた銀河帝国の皇太子一家が地球を来訪する』というニュースは、程なくして地球国際連盟首相からの発表により地球全土を嵐のように駆け抜けた。

 既にそこそこ見慣れてきた、等身大ハエトリソウ植物人なシルドールとはまた大きく違う巨躯のドラゴンという来訪予定者のその姿。

 そして、聞き慣れない名前……銀河ドラグーン帝国、という国家の存在は世界全体の報道攻勢の過熱化を引き起こす。

 

 正式に政府筋へ取材を行い、どのような人種でどのような国家なのか。と適切な報道をする報道局も勿論存在した。

 しかしそれ以上に、無責任に騒ぎ立て。実際にドラゴンや稲荷と対話したことのない無責任な事象専門家らの論調が、正論を押し流していき……。

 中には、違法に宇宙海賊から仕入れた銀河ドラグーン帝国のハーレム文化や宇宙蛮族っぷりを面白おかしく報道する局までもが現れ始めた辺りで。

 

 

 地球国際連盟の首相、ちょっとコレ放置するとパパラッチ起因で地球滅亡するんじゃね? と今更初手の発表で大失敗したことに気付いた。

 

 

「と、言うわけでどうしよう。諸君」

 

「いっそ、直前まで秘密裏に動くべきだったかもしれませんなぁ。ドラゴンの巨躯は隠せないですけども、無責任な報道内容が彼らの逆鱗に触れない保証ないですし」

 

「逆鱗……果たして銀河ドラグーン帝国のドラゴンに、伝承にあるような生物学的な逆鱗ってあるんですかねぇ」

 

「確かに気になるが今は置いておこう、取り急ぎやりすぎた報道局へ圧力と規制をかけるべきでは?」

 

 

 銀河ドラグーン帝国皇帝からの通信から一か月後、さらに頬がこけゲッソリとした首相が途方にくれた様子で議員へ案を求めていた。

 なお、もう一週間後には皇太子一家は地球へ旅行しに来るという時期である。

 

 

「ソレしかないか……しかし、彼らがおとなしくするだろうか?」

 

「まぁ大半は反発してやらかすでしょうなぁ」

 

「地球の滅亡の危機かもしれんというのに、何が彼らを突き動かすというのだ……」

 

「報道の自由と権利とやらでは? その自由と権利で自分らの首をすっとばしては意味がないと思うがね」

 

 

 喧々囂々と話し合う議員達、彼らも大なり小なり報道機関には苦しめられある事ない事を書きたてられた経験から、誰もがここぞとばかりに報道機関への恨み言を呟いている。

 その中で、割と強権をふるっている中国代表とロシア代表は、面倒なら二度と喋れないようにすればよい。という旨を言い出すが、さすがにそれはまずいと人道的見地からそのプランは廃止される。

 

 

「幸い、旅行先は全てホストに一任する。と皇太子が言ってるそうですから、徹底的に情報封鎖したうえで検問しようと思います」

 

「しかし日本、そうすると君のところの野党が黙ってはいないんじゃないかね?」

 

 

 腹を括った表情をした日本代表議員が切り出し、その彼ららしくない強気な態度に思わず振り返る他国の議員達。

 そんな彼の言葉に、遠距離から某ロシア人プロレスラーへ遠距離攻撃を繰り出し続ける逆毛のアメリカ軍人じみた牽制をし続けてきた、中国代表は思わず彼の国事情からそんなことを問いかける。

 

 

「まぁ十中八九与党への攻撃材料にするでしょうけども、我々の国のせいで地球滅亡なんていう十字架背負いたくないですよ」

 

「それもそうだな……」

 

 

 自分だけが死ぬならともかく、他者どころでもない、地球全土の危機の引き金なんざ引きたくないという日本人の民族根性が滲み出る回答に、思わず他国の議員らも神妙な顔で頷く。

 

 

「こちらの工作員をそちらに派遣しよう、日本のマスメディアや野党の対応が得意な連中がいる」

 

「それは助かります……ってちょっと待て、今なんて言った?」

 

 

 百戦錬磨の中国産狸爺痛恨の失言、どうやら彼も地味に焦っていたらしい。

 そんな中国議員と日本議員のやり取りを尻目に首相は遠い目をして虚空を、そしてその先にあるであろう宇宙を見上げていた。

 これもう、ダメかもわからんね。って思って。

 

 

 そんな具合に地球の政治事情がゴタつきながらも時は流れ、地球にとっては永遠に来てほしくなかった皇太子一家の来訪日。

 首相は痛む胃を、側近は増えた抜け毛を想い頭をそれぞれ抑えながら宇宙基地の、サロンにて刻一刻と迫る銀河ドラグーン帝国の『艦隊』を待つ。

 そう『艦隊』である。

 

 地味にでもなんでもなく、自らの子や孫に惜しみない愛情を注ぐ親バカな皇帝。

 彼は息子であり最も信頼を寄せている、実績に裏付けされた実力を持つ実子の提督とその艦隊を、皇太子一家の送迎の為に動員したのである。

 なお当の便利に送迎に使われた提督は、二つ返事で引き受けたらしい。相変わらず妙なところで軽い一族だ。

 

 

「首相、どうやら銀河ドラグーン帝国の艦隊が太陽系にジャンプアウトし、こちらの地球基地へ接弦の為に向かっているそうです」

 

「とうとう来ちゃったかぁ……アレ、気のせいかもしれないけど。なんか縮尺おかしくない? シルドールの戦艦よりはるかに大きい戦艦が一隻映像に見えるんだけどさ」

 

「なんでも、タイタン級という。この銀河でも所持、運用できる帝国が非常に限られている超巨大戦艦だとのことです」

 

「うわぁい、粗相一発即滅亡が現実的になってきたぞぉ」

 

 

 側近の言葉に胃を痛めつつ白目を向いて、どこかに夢の国へ旅立つための扉ないかなぁ。なんて本格的な現実逃避を始め虚ろに笑う首相を誰が責めれようか。

 側近もまた、自らの頭に手を触れてみれば……ハラリハラリと大事な長い友達が抜けていくのを実感している。

 

 サロンに備え付けられたモニタに映像が浮かび、そこに表示されているのは宇宙時代開始時に見学させてもらった、シルドールの艦隊をはるかに上回る規模の大艦隊。

 その艦隊は、タイタン級宇宙戦艦を中央に配置しその両翼を固めるように、ドレッドノート級がそれぞれ1隻の合計2隻が配置されていて。

 その周囲を取り囲むように、夥しい数の駆逐艦が4機の宙間戦闘機を連結搭載した状態で宇宙を飛んでいた。

 

 

「何あの艦隊、主力艦隊動かして地球滅ぼしにきたの?」

 

「落ち着いてください首相、タイタン級はともかくとしてもシルドールから受け取った銀河ドラグーン帝国の主力艦隊よりかなり規模が小さいです」

 

「数を大幅に減らしてあの規模かよ」

 

 

 白目を向いて呟く提督、すかさず訂正を入れる側近。

 その内容から推察できる、相手のバカバカしいほどまでに強大な軍事力に初老の男性とは思えないほどに乱暴に吐き捨てる首相。彼を誰が責めれようか。

 

 

「ああでも、かつて昔存在したらしいコロッサス級は所持してないようですよ?」

 

「なんだねその、名前から聞くに嫌な予感しかしない艦種は」

 

「惑星を木っ端みじんに吹っ飛ばす、巨大プラットフォームじみた兵器らしいです」

 

「あったとしても持ってこられてたまるか、そんなもん……!!」

 

 

 不幸中の幸いですな、と虚ろな目でワッハッハと笑う側近の脇腹を肘で強めに小突きつつ、血を吐くような呻き声を出す首相。

 

 

「ついでにトドメのご報告が」

 

「なんだね、もう私お腹いっぱいなんだけど」

 

「なんでも、宇宙海賊に援助を受けていたらしい……来訪予定だった皇太子一家を襲撃する計画を立てていた地球出身の過激派団体を、あの艦隊が捕獲したとのことです」

 

「……何その阿呆の集団、何するつもりだったの?」

 

「どうやら、途中の宙域に潜んで皇太子一家を襲撃して地球の意地を見せるつもりだったとか、向こうからの拷問報告書で上がっておりますな」

 

「……君に首相の任授けるから、私逃げていい?」

 

 

 ダメです、逃がしませんぞーっと笑いながらガッシと首相の肩を掴む側近。

 その力は思いの外強く首相には振りほどく事はできず、それでも悪足掻きで逃げ出そうと離せー! と叫びながら首相はもがく。

 そんな彼を、側近は今もはらりはらりと残った髪の毛を落としながら、笑顔のままがっしり捕獲。国家の首脳とは思えない酷い光景であった。

 

 しかしそんな事をしてる間にも、銀河ドラグーン帝国の旅行護衛艦隊は地球の宇宙基地へと接舷。

 首相と側近は、宇宙ってこんなに蒼くて綺麗だったんだなぁ。などと宇宙ステーションの窓から覗く光景に心を癒されつつ、職員や議員らと共に……。

 貨物の搬入出用ゲートの前で、ずらりと並ぶ。

 通常の人種向けのゲートでは、皇太子妃や皇太子の子である皇孫は通れても件の皇太子や提督が通れないための措置であった。 

 

 

 なお余談であるが、人間の形すら保っておらずも生命活動は続いていた、元過激派だった肉塊は別口で地球国際連盟の宇宙基地の警備部門へ引き渡された。

 その余りにも情け容赦のない所業に、PTSDを発症した人員もいたとかいなかったとか。

 

 

 

 

 

【とある帝国の地球訪問】

 

 

 

 

 

 そんな具合に地球の重鎮の胃壁を削っていた愉快な来訪者こと、銀河ドラグーン帝国は……。

 当初こそ色んな意味で激しい衝撃を与えていたものだが。

 

 

「こちらが、わが国でも長い歴史を誇る神宮となっております」

 

「ナルホド トテモ オモムキブカイ デスネ」

 

 

 皇太子一家を案内する、日本政府の案内役の言葉に片言の日本語を話しながら頷く皇太子がそこにいた。

 その隣では、全長1mちょいほどのコロコロした体型の皇太子子息を抱き抱えた皇太子妃が微笑みながら、そっと寄り添っている。

 

 その周囲には様々な人種の、国籍豊かな地球特殊部隊ドリームチームによる警戒線が張られているのはご愛敬である。

 一番気の毒なのは、観光してたら予想外な状況に巻き込まれた一般市民なのは言うまでもない。

  

 

「ジシンモ オオイカンキョウト キキマス ソレラヘノソナエモ ジュウブンノ ヨウデスネ」

 

「ええ、昔からの知恵と伝統の賜物です……しかし皇太子殿。日本語がお上手ですね?」

 

「ニホンノ エイゾウサクヒンデ ベンキョウ シマシタ」

 

 

 当初はなんとか中へはいってもらおうと計画していた日本政府であったが、神宮を一目見た皇太子は自分が入ると逆に迷惑かかるなと判断。

 片言の日本語で案内役に外から見える範囲での案内を提案し、今もこうやって案内される形となったのであった。

 ちなみに皇太子妃は少し残念に思いつつも、宇宙に出たばかりの文明にも配慮する伴侶の姿に惚れ直していた。 意外とチョロい嫁である。

 

 ついでに、自国の文化財への配慮をしてくれた皇太子への日本側からの好感度も上がっていた。 実にチョロい。

 

 

「へぇ、どのような作品ですか?」

 

「ソウデスネ ガールズ アンド タンク トカデ ベンキョウシマシタ」

 

 

 皇太子の映像作品という言葉に驚き、同時に自国の文化が遠い宇宙の異星人にも受け入れられている事に喜ぶ日本政府の案内人。

 そして、笑顔の皇太子が口にした作品の名前に笑顔のまま凍り付いた。

 

 日本政府の案内人は、日本が海外へ誇る大手アニメスタジオの作品や映画作品だとばかり思っていたところに、傑作だと評判とはいえ美少女アニメが出てきたことに一瞬思考停止。

 ついでに皇太子は、固まった案内役の様子に首を傾げ。

 その会話が聞こえていた、野次馬の一般市民は携帯でSNSに拡散していた。

 

 余談だが、皇太子子息は退屈そうに皇太子妃に抱き抱えられたまま大きく欠伸をしている。

 

 

「そ、そうですか……」

 

「ニホンノ エイゾウサクヒン スゴイデス ガンドゥム トカ ハジメテミタトキハ オドロキマシタ」

 

「……ガンドゥム作品も見られたのですか。 ちなみにどのシリーズが一番お好きで?」

 

「ワタシハ ショダイ デスネ」

 

「……私もです」

 

 

 吹き出た汗をハンカチで拭いつつ、案内役は案内任務を再開……しようとしつつ、皇太子の言葉に目を光らせる案内役。

 彼もまた隠れオタクで、そして一歩間違うと大惨事になりかねない質問を皇太子へ問いかけ……。

 皇太子の言葉に、渋い顔をし続けていた案内役満面の笑みを浮かべ、皇太子の手に比べとても小さな右手を差し出し。

 皇太子もまた、彼の仕草にそっと右手の大きな人差し指を差し出して、握手をした。

 

 今ここ、遠い異国の地において本来ならば交わる事などなかった二人の友情が産まれたのである。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 マスメディアへの牽制や混乱を避けるため、行先をぎりぎりまで伏せつつの皇太子一家の日本旅行は自転車操業でありながらも無事続き。

 最終日となったその日の事、皇太子が行き先について我儘を述べる。

 ソレは…………。

 

 

「ココガ スベテガツドウマチ アキバ デスネ!」

 

 

 オタクと、それ以外も普通に集う街秋葉原への訪問である。

 当然揉めた、そりゃもう揉めた。

 どのぐらい揉めたかというと、そこそこ仲良くなっていた日本政府の案内役が全力で声を大にして止めたぐらい揉めた。

 

 しかし皇太子もまた、黙っていない。

 自分自身が行使できる最大限の権限を最大限持ち出し、交渉を続ける。

 その結果……。

 

 そろそろ開催が近づいてきた、銀河ドラグーン帝国を含めた光明協定の記念式典に案内役と彼が選ぶ人員を皇太子の名において賓客として招待する、というところで決着がついた。

 後日、この件に関して地球国際連盟の首相と側近がそろって胃壁に穴を開けたのは言うまでもない。

 

 

 それはさておき。

 

 

「皇太子ー! あなたでかいんだから、程々にしてくださいよー!?」

 

「ワカッテマスヨ」

 

 

 拡声器片手に皇太子へ大声を張り上げる案内役、彼の姿に何も知らない特殊部隊人員は何やってんだあのバカと焦り。

 彼の苦労を知っている特殊部隊人員は、今日も彼頑張ってるなぁ。なんて優しい目で見守っている。

 

 ついでに、秋葉原の街を行く一般市民は総じて携帯を皇太子一家へ向けて無遠慮に写真を撮影し……特殊部隊人員に、問答無用で止められている。

 控えめに言って大騒動であった。

 

 

「で、何が欲しいんですか?」

 

「ガールズアンドタンク ノ シュジンコウタチノ ゲンテイフィギュア」

 

「貴方、もう隠そうともしてねぇな!?」

 

 

 赤裸々に恥ずかしそうにしつつ欲しいものをぶっちゃけた皇太子に、案内役全力で突っ込む。

 決して長くない期間であったが、オタクトークは二人の仲を急速に深めていた。 趣味の合う仲間を見つけたオタクは割と早く仲良くなるものである。

 

 ちなみに、もはやそんな二人から置いてけぼり気味な皇太子妃と皇太子子息が何をやっているかであるが……。

 彼女達は彼女達で、鼻歌交じりに雑多な街並みを皇太子の傍らで眺めては楽しんでいた。

 

 

『ねーねーははうえー!』

 

『どうしたの? 坊や』

 

『なんであの女の人、あんな恰好してるのー?』

 

『……さぁ? なんででしょうね』

 

 

 目をキラキラしてはしゃぎながら、割と露出多めなコスプレ姿でゲームショップの呼び込みをしていた店員について母親に尋ねる皇太子氏億。

 尋ねられた母親は、若干教育に良い街ではないですわねぇ。などと思いつつ目を逸らして答えをはぐらかせていた。

 

 ちなみにそんな皇太子妃と、抱き抱えられるサイズの皇太子子息のペアは見物人からは一等人気の被写体となっていた。

 皇太子? ちょっと離れれば見咎められることなく全体図を撮影できるので、割と後回しにされている様子。

 

 そんな具合にワイワイやってれば、当然見物人はさらに増え……増えた見物人は思わしくない連中を引き寄せるのが道理で。

 

 

「お、皇太子。この店にあったみたいです、入手も出来ましたよ!」

 

「スバラシイ! クンショウモノ デス」

 

「ソレ、軍事大国の皇太子としてどうなんですか?」

 

 

 案内役が、ショップ店員と話し合い入手した限定フィギュアが詰まった袋を抱えて皇太子へ見せ、皇太子が破顔一笑大はしゃぎしたその時である。

 

 

「おらどきな役人!」

 

「銀河ドラグーン帝国の皇太子さまですね? 私国営放送の……!」

 

 

 人ごみをかき分け、特殊部隊人員の網を潜り抜けやってきたTV局のスタッフ達が、案内役を突き飛ばし現れたのは。

 

 皇太子の目の前、倒れ込み袋を手放した案内役の目の前、少し離れた位置で様子を見守っていた皇太子妃と皇太子子息。ついでに見物人と特殊部隊員。

 彼らの目の前で、限定フィギュアが詰まった袋がスローモーションさながらに落下。

 

 案内役の脳裏に、限定フィギュア粉砕によって地球滅亡という未来が一瞬のうちに生々しく思い描かれる。

 

 

『アレ壊れたら旦那様悲しみそうですわねぇ。困ったお人ですわ』

 

 

 そして地面に叩きつけられる寸前で、左腕で息子を抱き抱えながら皇太子妃がその右腕を袋へ伸ばし。

 神聖稲荷騎士団の中でも一際強い、祭司長の血族ならではの強力な念力でその袋の落下をふわりと止めた。

 

 

『……はぁぁぁぁぁ……ありがとう我が君、アレ落ちて壊れたら凄く悲しかった』

 

『はしゃぐのも結構ですけど、あまり醜態を晒さないで下さいね? また叔父上様に嗤われちゃいますわよ?』

 

『う゛っ、肝に銘じます』

 

 

 目の前で繰り広げられた超能力による光景に、割り込んできたスタッフらが固まってる中皇太子妃はそっと皇太子へ一言、その言葉に我を失い楽しみすぎていた皇太子は反省。

 妻が超能力で止めていた袋をそっと、潰さないように掴むと倒れたままの案内役へ指を差し伸べる。

 

 

「ダイジョウブ デスカ?」

 

「あ、ああいえ……申し訳ありません皇太子殿、警備が不十分だったようで……」

 

「ナニヲシテモ クセモノハ デルモノデスヨ」

 

 

 我を取り戻したTV局のスタッフらが喚くのを気に留めることなく、二人和気藹々と話し続け。

 業を煮やしたアナウンサーが、再度二人の間に強引に割り込もうとする。次の瞬間。

 

 

「ソレグライニ シテオキナサイ」

 

 

 相手にするのもバカバカしいとばかりにアナウンサーを一瞥し、片言な日本語で警告を発する。

 それならば、と皇太子妃へカメラとマイクをTV局スタッフは向けようとするも、それより先に皇太子は手を皇太子妃と子息へ差し伸べ。

 限定フィギュアを持った手を、反対側の腕で大事な家族を抱え込む。

 

 

「アア ゴアンシンヲ コンナレイギシラズノセイデ ユウコウ ガ クズレタリハシナイデスヨ」

 

「皇太子殿の寛大な心に、深く感謝を……」

 

「キミトボクノ ナカジャナイデスカ」

 

 

 宇宙の蛮族や、薄汚い宇宙トカゲなどと喚くスタッフらが特殊部隊員らに引っ立てられていくのを横目に見つつ。

 顔面蒼白の案内役を安心させるかのように、皇太子はその強面な顔でにこやかに微笑み。

 その言葉に、萎縮しきった案内役の様子に困りつつも苦笑いする皇太子なのであった。

 

 

 ちなみに、この一連の流れを目の前で見る羽目となった……フィギュアショップの店員は後にこう友人に愚痴ったらしい。

 俺の目の前で地球滅亡の危機が始まり、そしてひっそりと解決した。と。

 

 

 

 

 

 

 後日、問題の行動を起こしたTV局の行為が見物客らからのSNS発信によって拡散。

 洒落にならない行為と言動を繰り返したとして、相応の処罰がスタッフと彼らを擁していた局に下されたとかなんとか。

 

 

 

 割と考えなしだった皇太子のせいで、危ういところまで行きかけたけども。

 機転の利いた皇太子妃も居たおかげで、地球はなんとか平和なようです。




【悲報】地球滅亡のお知らせ【おのれマスゴミ】
こんな速報スレが立ったとか立たなかったとか。

なお、本作において特定国家や個人、企業団体を貶める意図は一切ございません事を改めて明記させて頂きます。

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