再アンケートの果てに、というお話。
「あっ、主車く~ん!」
「む」
そういうアナタは山田先生。
校舎に向かう途中でバッタリである。
「ちょうど良かったです。実はですね、主車くんに配布物がありまして」
誰がどう見ても今の俺は不審なステップマンだったのだが。一切それに触れることなく、普段通りに接してくれる山田先生は教師の鑑である。顔も引き攣ってないしな!
(もう慣れました~)
真耶はもう慣れていた!(朗報)
「今朝配られた男性IS起動者用のプリントに記載ミスがありまして」
修正済みのプリントを渡される。
なるほど、このプリントを貰ったのは俺と一夏とシャルルだけだもんな。故にわざわざ届ける必要があったと。
そして山田先生の手には、俺に渡したモノと同じプリントが2枚か。そこから導き出される答えとして、山田先生はまだ一夏とシャルルには渡していないんだな(名推理)
ジェントルマンなら、ここで自然に『俺が渡しておきますよ~』って言うんだろうが。悲しいかな、既に一夏もシャルルも学生寮に帰ってしまっている。
そして俺はソコには入れないのだ。そんな俺が言っても、かえって山田先生を困らせるだけさ。でも俺はジェントルであろうとした。それだけははっきりと真実を伝えたかった。
「あっ、そうだ」(唐突)
「良ければ織斑くん達にも渡してもらえないでしょうか?」
何言ってだこの乳メガネ(ン抜き言葉)
俺を天下の旋焚玖さんと知っての狼藉か?(涙目)
「……オレ、リョウ、ハイレナイ」
悲しさのあまりカタコトになっちまったい。
というかオイ副担任オイ。俺の置かれてる状況は知ってんだろが。何のための副担任だこのヤロウ。ゆるキャラで売ってるか知らんが、それでも言っていい事と悪い事があるんだよこのヤロウ。ソウルフレンドだからって俺が何でも笑って済ませると思うなよ乳が。
「うふふ、実はですね! なんと! 主車くんも学生寮に入って大丈夫になりました~!」
などと意味不明な供述をしており、動機は未だ不明である(リアリスト)
ヌカ喜びというモノは精神衛生の大敵なのである。お肌にも悪いし。
現実とは不都合なもの!
思い通りにいかないからこそ現実!
百戦錬磨の旋焚玖さんはソレを知り尽くしているのだ!……と言いつつ、ちょっぴり期待しちゃってる僕(ぶりっ子)
【うっそだろお前ww】
【うせやろ?】
【嘘つけ絶対嘘だゾ】
【ウソダドンドコドーン!】
疑いすぎィ!!
一分の隙もなく疑ってんじゃねぇか何だお前!? 学生寮に入れるって事はな、少なくとも1年の女子連中は俺を受け入れてくれたって事なんだよ! お前も受け入れるんだよこの現実を!
俺は既に受け入れてるぜ!
ヌカ喜び?
ないない、ソウルフレンドな山田先生に限ってそんな嘘つく訳ないんだよなぁ。今更疑うものか! 私はお前を信じる!(アグリアス)
「ウソダドンドコドーン!」
とはいえ【選択肢】な文言には逆らえないからね、しょうがないね。でも相手は山田先生だもんね。この時点でもう勝ち確よ。
「私は真・仮面ライダーが好きでしたねぇ」
またコアなとこ引っ張ってきたな。
流石はやーまだ先生と言ったところか。
「それで、どうしてまた?」
まぁちゃんと背景は聞いておかないとな。
ナニがドウなって俺が寮に入ってもOKになったのか。
「デュノアくんの転校に伴い、もう一度アンケートをしたんですよ~」
以前一度、学園全体で行われたアンケートがある。
それは旋焚玖と一夏の入学前、『男子二人も学園寮に住んでも良いか否か』という案件だった訳だが。
一夏は別としても、前評判の悪すぎる旋焚玖を女子寮に住ませたらイカンでしょ、という意見が99%を占めており(うち『賛成』に投票したのは1年生では箒のみ)、生徒のほぼ100%が『反対』という結果を出されてしまったら、ブリュンヒルデとしてブイブイいわせている千冬でも流石に覆すのは無理だった。
これが一回目のアンケートである。
そして今回行われたアンケートでは、まず対象を1年生のみに限定し、さらに内容も若干異なっていたのだ(提唱者:ぶりゅんひるで)
『Q.主車旋焚玖の学園寮立ち入りについて以下から選択せよ』
①賛成
②反対
③有り無しでいえば有り(←New!)
「その結果なんと! ③が過半数を超えたんですよ~!」
「やったぜ」
「成し遂げましたね!」
フッ……流石は千冬さんだぜ。
きっと③が無ければ今回も余裕で②が圧倒的だったろう。入学してまだ幾月も経っていないのだ。
何だかんだ1組以外にも顔を出してる(強制)とはいえ、別にそこで他の女子連中とコミュニケーションを取っている訳じゃないからな。
しかしこれは素直に嬉しい。
少なくとも『有り無しでいえば有り』な男になれたんだからな。2か月足らずでこれなら、卒業する頃にはハーレム確定やん。やったぜ。
「では不肖『有り無しでいえば有り』な私めがプリントを届けませう」
「うふふ、はしゃいじゃってますねぇ」
当たり前だよなぁ?
これで喜ばないほど天邪鬼じゃないわい。
「こちらがプリントで、お二人の部屋は――」
山田先生から一夏とシャルルのプリントを受け取り、部屋の番号も聞き取り。よし、今から学園寮内へイクゾー。
◇
とまぁ勇んで来たはいいものの。
寮の入口前で重大な事に気付いてしまった。いや、入る前に気付いて良かったと言うべきか。
アンケートの結果は周知の事実として、ちゃんと1年の皆に知れ渡っているのか?
それが一番の問題であり、不安材料なのである。疑う根拠もある。仮に俺が寮に入っても良くなったのなら、誰かしらが連絡してくれるんじゃないのか?
誰かしらっていうか、一夏がいの一番にメールなり電話なりしてくれるだろう。それがないって事は…?
この結果を知っているのは教師陣のみ!
おそらく生徒にはまだ正式に通達されて無し!
どうだこの名推理!
じっちゃんの名にかけてやるぞオイ!
あれちょっと待って。
それじゃあ、俺入ったらダメじゃん。阿鼻叫喚じゃん。いつも通りになっちゃうじゃん。……ちくせぅ。
はー、帰ろ帰ろ。
ああ、その前に乳メガネの眼鏡を伊達めがねにしてやる。どこ行きやがったあのうんこ教師。
いや待てよ?
アンケート自体は行われて、既に集約済みではあるんだ。なら、天下の旋焚玖さんが寮に出入りしても良いという結果が出たのだと、俺自身でアピールしながら入ればあるいは…?
【『勝訴』の張り紙を前と背中に貼って入る】
【『不当判決』の張り紙を前と背中に貼って入る】
ただのアンケートが裁判沙汰になったのか(困惑)
いや確かに、シンプルかつこれ以上ないアピールにはなるけどさ。
もしさ、ここで【下】選んだら、俺はアンケート結果に不満ありだぞって主張しながら寮に入る事になるのか。
いやいや面白すぎんだろ。
なんだその絵面、斬新すぎて逆に選びたくなるわ。いや選ばんけど(リアリスト)
やる事は決まった。
ポケットから七色の道具の一つ、普通紙を取り出しまして~、マジックペンも取り出しまして~、セロハンテープも取り出しまして~。きゅっきゅっきゅっ……よし書けた!
『勝訴』(達筆)
それをもう一枚書きまして~、あとは前と背中にペタペタン。
勝訴男の出来上がりだ。
これで今度こそイクゾー。
◇
「「「!!?」」」
寮内の寛ぎペースで寛ぎまくっていた女子たちは、突然の来訪者に驚き慄いた。が、彼女たちが悲鳴を上げる事はなかった。
何故?
旋焚玖の存在が視界に入ったと同時に『勝訴』の文字も目に飛び込んで来たからである! IS学園はエリート校! 何も考えず恒例よろしく悲鳴を上げるよりも前に、『勝訴』の経緯を察する頭脳を持っているのだ!
「……なるほどな」
騒がれないどころか、何か納得までしてるっぽいぞ。なんだよ、効果てきめんじゃないか。まさか『勝訴』を貼るだけでここまで効き目があるとは。
よし、そうと分かればもう何も怖くない! 今の俺は無敵だ、このまま一夏たちの部屋までイクゾー!
「!!?……!……」
「!!?……!……」
ふはははは!
部屋に着くまで数人とすれ違ったが、みんな同じ反応しおるわ!
ヒャッ→お?→ふむぅ
みんなこんな感じよ!
勝利の方程式が出来上がってるぜ!
舞い上がってたら着いたぜ!
道中かつてないほどに楽ちんちんだったぜ!
呼び鈴は付いてないっぽいし、無難に扉を叩いてノック&ノック。
されど中から反応は無し。
ドアノブをガチャガチャしてみるも鍵が掛かっている。
【ピッキングだ!】
【ピッチングだ!】
初めての女子寮で一人玉投げに興じるとか、そんなモン見られたらお前、女子連中が『不当判決』掲げる案件になるじゃないか。
変人行為より犯罪行為(至言)
俺はピッキングを選ぶぜ!
七色の道具を持ち合わせているとはいえ、流石にピッキングセットは持って来ていない。が、護身用に爪楊枝は持って来ているんだぜ。俺ほどの男になるとこんな鍵穴爪楊枝一本で――。
「………………………」
ガチャリ。
そしてニヤリ(絶妙韻踏)
開けられるんだぜ。
よし、【選択肢】な行動は遵守したんだぜ。身体の自由も戻ったし、後は一夏に電話でも――。
【静かに部屋に入る】
【ウホウホ言いながら入る】
ピッキングして侵入するのか。
泥棒行為に次ぐ泥棒行為じゃないか。
まぁ出されたモンは仕方ない。鍵穴いじってる時点で部屋に居たら、一夏なりシャルルなりが出てきている筈だし、きっと居ないんだろう。とりあえず入って大人しくしておこう。
「ウホウホ」
お邪魔しまーす。
「ウホウホ」
やはり誰も居な……んん?
と思ったが、シャワーらしき水音が聞こえてくる。なんだ、2人のどっちかは分からんがシャワー浴びてるのか。そりゃあ気付かんわな。
「フンフンフーン…♪」
「ウホウホ」
シャワールームらしき所から、ご機嫌な鼻唄が聞こえてきたぜ。なるほど、シャワー浴びてるのはシャルルの方だったか。なら一夏はどこか行ってるのかな。
そして俺はいつまで『ウホウホ』言わされるのか。
ん……これは?
テーブルの上に、これ見よがしにボディーソープが。おそらく補充するために置かれているのだろうが。つまり今は切らしている可能性が高いという訳か。
【ならば渡しに行こう! シャルルの裸も見れて一石二鳥である!】
【紳士なので鼻唄のハモりに興じる】
一石二鳥の使い方がおかしい。
男の裸体に興味なし。
ホモの裸体にはもっと興味なし。
「フフーンフフフフーン…♪」
綺麗なソプラノ出してるじゃないか。
俺もハモり甲斐があるぜ。
「フフフーンフフーン…♪」
「マダダーレモー (^p^)」
「ファッ!?」
変な驚き方だなぁ。
それがフランス式か?
「だ、誰!? え、旋焚玖!?」
「ああ、邪魔してる。俺も今日から寮に入れる身分になったんだ」
「そ、そうなんだ! えっと、僕、今、シャワー浴びてて!」
知ってる。
知ってるし別に開けないから安心しろ。
「一夏は? 部屋に居ないようだが」
「あー、えっと、アリーナに忘れ物したとか言ってたけど」
ふむ。
ならもう戻ってくるか。
「あい分かった。なら俺はあっちで待ってるよ」
「う、うん! ゆっくりしていってね!」(これで開けられる心配はなくなった! あとは脱衣所で服を着ればバレずに済むよね!)
お言葉に甘えてゆっくりしていきますよっと。しかし改めて部屋を見渡してみりゃ……しゅごい。豪華っぷりが。
なんか……どうしよう。こんだけ豪華な造りだと逆にソワソワしちまうぞ。どこに座ればいいのか分かんねぇ。
強がってても庶民派な旋焚玖は部屋の隅でこじんまり。体育座りが妙に落ち着く今日この頃。そんな折、部屋のドアが開かれた。
「ただいまー……ん? おぉ、旋焚玖じゃないか!?」
やったぜ。
一夏さえ帰ってきたらこっちのモンだぜ。もう何も怖くない!
「実はカクカクシカジカでな」
事の顛末を説明する。
途中で分かったが、どうやら一夏はアンケートの存在自体知らされていなかったらしい。まぁ同じ男子に聞いてもそんなに意味ないしな。
「そっかぁ! へへっ、そっかそっかぁ! やったな、旋焚玖! これで気軽に寮の食堂も使えるじゃん!」
「フッ…」
「シャルルは……あ、シャワー浴びてんのか」
一夏と視線が脱衣所とテーブルを行き来する。
「シャルルにもこのグッドニュースを教えてやらねぇとな! ついでにボディーソープも渡して一石二鳥だぜ!」
「お、そうだな」
うむ、間違っていない。
これが正しい使い方だ。
脱衣所へのドアを開いて入って行く一夏の背をぼんやり眺めつつ、また一人になったし隅の方に移動しよ――。
「きゃぁぁーーっ!!」(一夏)
「きゃぁぁーーっ!!」(シャルル)
な、なんだなんだ!?
ゴキブリでも出たんか!?
友の危機にいざ行かんッ!!
ひとっ跳びで脱衣所に着地した俺の視界に入ってきたモノ、それは決して想定していたホモの全裸ではなく――。
「せ、旋焚玖……あの…」
「やべぇよやべぇよ……」
シャルル以上に一夏の方が呆然となっている。
そりゃそうだ。だってよ、シャルルにはよ。
チンがねぇ!
タマも!
かわりに何だそのふくよかな乳は!?
やべぇ、理解が追い付かない…!
いや待て、一旦落ち着け一旦落ち着くのだ。まずは目の前の現実を理解しろ。ソッコーで理解してソッコーで一番無難な行動を取るのだ!
【負けじと裸になりましたー!】
【おっぱいの歌を詠む】
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!
旋焚玖:頂に 咲いた一輪 初桜
シャルル:Σ(゚Д゚;)
一夏:ヒューッ!
シャルル:Σ(゚Д゚;)