話すシャルル、憤る一夏、旋焚玖空気、というお話。
裸体なる女(?)とのご対面とかいう、誰が見ても100%男に不利な事案が発生してしまった。しかしそこは百戦錬磨の旋焚玖さんよ。
文豪も唸る激ウマ俳句を詠う事で、まずは被害者(?)をポカンとさせ、悲鳴を上げるタイミングを失わせてやったぜ。やったぜ。
同時に茫然自失な一夏をヒューッ!させる事で、自我を取り戻してやったぜ。やったぜ。
我ながら中々にナイスな先制パンチだったと自負している。まずは満足鬼島津。裸を見られたからって易々と俺が主導権を渡すと思うなよ。というかシャルルお前なんで女なん?(素朴な疑問)
「一夏、俺たちは部屋に戻ろう」
「あ、ああ」
「シャルルも落ち着いたら来い」
「う、うん」
機先を制した後は退却だ。
ここでモタモタしてシャルルに叫ばれでもしたら、何のための歌詠みだーってなるからな。さっさとモドルゾー。
◇
モドッタゾー。
一夏はベッドに腰掛け、俺も近くのイスに座る。
「たまげた。マジでおったまげたよ。まさかシャルルが女の子だったなんて…」
「そうだな」
「ビックリしすぎて喉渇いた。喉渇かない?」
そこそこですね。
だが一夏の方は相当渇いていたようで、俺の返事を待たずに冷蔵庫から飲み物を3つ持って来るのだった。
「アイスティーしかなかったんだけどいいかな?」
アイスティーばっかだなお前な。
「もらおう」
ぐびぐびっと……うん、おいしい!
「すぐに旋焚玖が話を切り出してくれてなかったら、きっと今もまだ俺は呆然ってた自信あるぜ。いやマジで」
「フッ…」
すっぽんぽんなシャルルと対峙した瞬間、ソッコーで【選択肢】が顕現されたからな。この時ばかりは時が止まってくれて助かったマジで。おかげでめちゃくちゃ叫べたぜ。
以下、目を疑うような光景(おっぱい)を目の当たりにした旋焚玖、静止した時の世界で叫びまくっていたの図。
『うわあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!! ゲホッゴホ……うわあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!』
男だと思っていたのに…ッ!
ホモだと思っていたのに…ッ!
シャルルは女だったのだ!
事実は小説よりも奇なり…ッ!!
叫ばずにはいられないッ…!
『わ゛ーっ、わ゛ーっ!!』
だが決して屈しはするな。
この非常をいとも簡単に受け入れてみせるから、俺はしゅごいと評判なんだ。巷で評判なんだ。
しかし何だな。
不思議と欲情はしないもんだな。こんなにもすっぽんぽんなのに。
ああ……そりゃそうか。
だってシャルルだもん。
コイツが元々男の娘っぽかったらまだしも、今までずっとイケメン貴公子でホモだった奴が、いきなり乳をぶりりりんとさせたところでよ。
同じ女でもな箒やセシリア達とは認識力が違うんだよお前はな。
衝撃は芽生えても欲情は芽生えさせない(至言)
よし、何となくカッコ良さげなセリフも唱えて、だいぶ冷静さも取り戻せた。そして時は動き出す。
で、今に至る。
「俺は思わず叫んじゃったけど、旋焚玖はビックリしなかったのか?」
モノクロの世界に5分は居たからな。
時が止まっているのに5分と考えるのはおかしいが、とにかく5分ほどだ……フフ(ディオ)
「如何なる時も冷静に。それが男のダンディズムってヤツだ」
「ヒューッ!!」
「イェーッ!!」
ハイタッチが奏でる心地良い音に紛れ、気持ち控えめな感じで脱衣所のドアが開く音もした。大胆なハモり方させるじゃねぇか。
そしてまた控えめな感じで顔だけをひょっこり出すシャルル君。じゃなくてシャルルちゃんか。
「あ、上がったけど……なんか盛り上がってるね…?」
変に神妙に待たれるよりマシだろ?
こういうさり気ない気遣いが出来る俺は、いずれ必ずモテ期が来るのだ。
「……上がったか。とりあえずコレ飲め。一夏の淹れたアイスティーだ」
「あ、ありがとう。……んく、んく…」
なにゆえカップをわざわざ両手で包むのか。
ホモをヤメた途端に女子っぽさを出してきたなコイツ! ホモをヤメたって何だよ(自問自答)
「えっと……シャルルは女の子、だったんだな?」
一夏が控えめなトーンで問いかける。
相手を刺激しない良いトーンだ。
「……うん。僕は男の子じゃないんだ。ごめんね、一夏…」
ちょっと待って。
謝罪するのは大いに結構。
何故一夏だけ名指しなのですか?
俺には謝ってくれないんですか!
「……旋焚玖」(旋焚玖にもちゃんと謝らなきゃ…!)
「む」
なるほど、個々に謝っていくパターンか。誠意は言葉ではなく行動とはよく言ったもの。一人一人に謝罪する事で、シャルルなりに誠意を示そうとしてるんだな。
何で手招きしてるのかは分からんけど。
とりあえず寄ればいいのか?……うわ、なんか耳元まで顔近づけてきた! やめろお前まだお前ホモのイメージが払拭されきれてねぇんだよお前!
「ホモじゃなくてごめんね……」(ササヤキー)
これが自分に想いを寄せるホモな旋焚玖(シャルル目線)を騙していた事への、精いっぱいの誠意と言葉だった! 耳元で囁いたのは一夏にバレないように、と心優しいシャルルの気遣いからだった!
「……なるほどな」
マジなトーンで何言ってだコイツ(ン抜き言葉)
謝罪の仕方、内容、共々におかしくないですか?
何で俺が「シャルルがホモじゃなかったよぉ(泣)」みたいな感じになってんの?
どうする、問いただすか?
いや今はダメだ。
そんな事しちまえば、下手すりゃ論点がシャルルの男装事件から俺のホモ疑惑にすり替わってしまうだろが。……ホモ疑惑って何だよ。
何だよッ!!(激おこぷんぷん丸)
「……で、どうして男のフリしてたんだ?」
何にせよ、まずはそこからだ。
目先のホモンダイ(ホモ問題の略)に囚われるな俺。
順序を履き違えたらイカンよ。
「それは、その……実家の方からそうしろって言われて……」
実家とな?
「前にも言ったかもしれないけど、デュノア社の社長が僕の父でね。その人から直接命令されたんだ」
何か他人行儀な言い方だな。
「命令って……シャルルの親だろ? 何か含みある言い方じゃないか?」
ナイス質問だ一夏。
俺は黙すのに徹するからお前が切り込むのだ。
「僕はね……愛人の子なんだ」
Oh……。
いきなり重い話になったでござる。ホモでキャッキャ憤っていた数秒前が懐かしく思えてしまうレベルじゃないか。……戻して(切実)
結果的にシャルルに言わせる事になっちまった一夏の反応は如何に?
「(´・ω・`)」
そらそうよ(残当)
だがここまできて、その先を聞かん訳にもいくまい。俺は場を乱さないように、とりあえず黙しておこう。
「今から二年前に僕は父を名乗る人に引き取られて――」
.
...
......
「――って感じかな」
Oh……。
やっぱり重かったじゃないか。
「(´・ω・`)」
一夏もそうなるわ。
専門的な事は分からんけど、改めてシャルルの話を要約してみるとだな。
シャルルは元々実の母親と2人で生活していたのだが、その母親が亡くなった途端、急に父親を名乗る者が現れて、それが世界的にも有名らしいデュノア社の社長だったと。
ここまでは自分で言ってて分かる。
で、その会社が何やかんやで経営不振になって、そこで引き取られたシャルルが何やかんやでISの適性も高いし、何やかんやで男子2人のデータとISのデータをパクッて来いってなったらしい。なお俺は専用機も貰えないウンチだから、やっぱり要らんとなったらしい。……そらそうよ(哀愁)
俺についての話は悲しいかな、単純明快でとっても分かり易かった。だがシャルルがスパイになるまでの過程がいまいち分からん。一体どういう経緯でなったのか。
『あっ、そうだ(唐突)お前ISの適正高かっただろ』(父)
『いや~そんなこと///』
『嘘つけ絶対Aだゾ』(父)
『そうだよ(便乗)』(本妻)
『じゃけんIS学園にスパイしに行きましょうね~』(父)
『おっ、そうだな』(本妻)
『何でスパイする必要なんかあるんですか(正論)』
『デュノア社が経営危機に陥ってるからだよ』(父)
『そうだよ(便乗)』(本妻)
『あ、そっかぁ(納得)』
『あっ、そうだ(唐突)お前中性的に整った顔立ちしてるだろ』(父)
『いや~そんなこと///』
『嘘つけ絶対ハンサム顔だゾ』(父)
『そうだよ(便乗)』(本妻)
『じゃけん男装してスパイしに行きましょうね~』(父)
『おっ、そうだな』(本妻)
『何で男装する必要なんかあるんですか(正論)』
『男性起動者のデータが欲しいからだよ』(父)
『そうだよ(便乗)』(本妻)
『あ、そっかぁ(納得)』
シャルルの話を聞いている限り、だいたいこんな感じか?(誇張表現)
論破に次ぐ論破で、気付いたら男装スパイになっていたのか。
「父に会ったのもね、ホントに数えるくらいなんだ。普段は別邸で暮らしてたし。その人には奥さんが他にちゃんと居たからね」
便乗おばさんだな。
「本妻の人にはやっぱり嫌われてたんだと思う。初めて会った時は頬を叩かれちゃった。僕の事を『泥棒猫の娘が!』ってね」
「(´・ω・`)」
そら一夏もそうなるわ。
というかお前ずっと(´・ω・`)してんな。分かるけど。
【どういう風に言われたのだ?】
【これまで何回言われたのだ?】
珍しく大人しくしてると思ったらこれか!
何でソコに食いついたお前!
心の底からどうでもいいわ!
「……これまで何回言われたのだ?」
多分、こっちの方がまだマシなんだ。
だって【上】選んだら、シャルルに再現ドラマらせちまう可能性あるし。
「7回くらいかな」
7回も言われたのか(困惑)
「7回も言われたのか」
一夏も食いつかなくていいから。
「うん……」
「そうか……」
「うん……」
「……そうか」
「……うん」
何お前ら控えめにループさせてんの!?
完全に着地点見失ってんじゃねぇか!
とはいえ、発端は発言者な俺になっちゃうんだよなぁ。悲しいなぁ。という訳で展開作りは任せろー。
「シャルルの話は分かったところで、だ。今後の話をしようか」
「そ、そうだな! シャルルはこれからどうするんだよ?」
「どうって……僕は罪を犯したんだし、本国に呼び戻されてその後は……」
シャルル自身、想像に難くないんだろう。
言葉は続かずとも表情は沈んでいる。
難しい事は俺にも分からんが、事の重大さは流石に分かる。それだけの事をシャルルは犯したんだしな。牢屋行きは余裕で確定だろ。
「デュノア社は……まぁどうでもいいかな。それよりも本当にごめんね。旋焚玖も一夏も僕によくしてくれたのに。そんな2人を僕は今まで裏切ってたんだ。……罰は、受けるよ……」
まぁ、しゃーないか。
同情したところで、それで何が変わるって話だ。
「ちょ、待てよ!」
お、シブタクか?
「シャルルはそれでいいのかよ! お前の意思でやったんじゃないんだろ!? 強制的にさせられたんじゃないか!」
「一夏……子供はね、親には逆らえない生き物なんだよ」
やめろバカ!
その痛々しい微笑みはイカンでしょ。そんな表情されたら、悪ぶってても小心者な俺の良心にグサグサ突き刺さるだろバカ! 偽ホモ!
「そんな理不尽な事があってたまるか! 親が何だってんだ! 子供の自由を奪う権利がどこにある!? そんなモン俺は認めねぇッ!!」
「い、一夏……? どうしたの、さっきから何か……」
「あ、ああ……悪い、つい声を荒げちまった」
「それは全然気にしないよ。でも、ホントにどうしたの?」
俺が完全に空気と化している事も、そのまま気にしないでいてくれ。俺は本来こういう立ち位置がとても心安らぐんだ。
「俺と千冬姉は親に捨てられたんだ」
「……ッ……ご、ごめん」
「俺はいいんだ。親なんか居なくても全然寂しくなかったしな!」
そらそうよ。
毎日のように一緒に遊んでたからな。千冬さんが夜遅い時は、母さんと父さんの計らいで、飯も俺ン家で食ってたし。
「でも千冬姉はそうじゃない。親が居ない中で俺を育てるために、いっぱい苦労させちまったからな。絶対に許さない、顔も見たくない」
そうだな。
それに関しては俺も同意見だ。
だが最後の言い方はヤメておこうな。聞く人によっては違う意味で捉えられちゃうからな。
「だから……って訳じゃないけど、どうしても俺はシャルルの話を他人事には思えねぇんだ…! シャルルだって本当は嫌だって思ってるんだろ!? だからそんな悲しそうな顔してるんだろ!」
「でも、僕には抗う事なんて出来ないよ。権利も無ければ立場もない。僕は持たざる者なんだ」
「諦めんなよ! 1人で無理なら俺たちと考えようぜ! 幸い、まだ俺と旋焚玖にしかバレてないんだからな! 俺たち3人で何か対策を考えるんだ! な、旋焚玖!」
一夏はこういう奴だったな。
俺とは違い、決して損得勘定なんか考えない。他人のために熱くなれる、どこまでも真っ直ぐな奴だ。こういう所なんだよ、俺がコイツに惹かれたのは。
改めて誇りに思うよ、お前とダチになれた事をな。
だが……いや、だからこそか。
俺は言わなきゃならない。ダチとして。
現実と理想は違うって事を。
【一夏に賛成する】
【一夏に反対する】
どうやら、この【選択肢】が分岐点になりそうだな。
心して選べ、俺。
シリアス:(-。-)y-゜゜゜
選択肢:(´・_・`)
シリアス:( ´,_ゝ`)プッ
選択肢:Σ(゚д゚)
選択肢:(╬゚◥益◤゚)!!!!!!