選択肢に抗えない   作:さいしん

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一進一退、というお話。



第109話 日日仏会議

 

 

 シャルロットのメンタルに喝を入れる作業は終わった。

 さっきも言ったが、やっとスタートラインに立っただけで、問題はまだまだ山積みである。

 

 故に、その対策会議を今からやっていく訳である!

 

「とりあえず意見をドンドン出していこう」

 

 それを3人で検討して、また考えて。

 シンプルだが多分それが良いと思う。

 

「はい!」

 

 腕がピーンだな一夏。

 これは期待出来そうだ。

 

「はい、一夏くん」

 

「まず不自然にならないようにする!」

 

「ああ、自然体を貫くってヤツな!」

 

 確かにそれは大事だな。

 

「……どゆこと?」

 

 端的に言い表し過ぎたか?

 俺はまだしもシャルロットには言葉足らずだったらしい。

 

 バシッと説明してやりな一夏よ。

 

「えっとな? 俺と旋焚玖はシャルロットが女だと分かった訳だが。それで今までと違う態度を皆の前でしちまったら、そこからシャルロットの正体がバレちゃうかもしれないだろ?」

 

「だから俺と一夏は、学校では今まで通りに接する必要があるって訳だ」

 

「あ、そっかぁ」

 

 そうだよ。

 匿うツってる俺たちが原因でバレたら、笑い話にもなんねぇからな。今は誰もいないから良いが、学校ではもちろん、この部屋を出てからは要注意だな。

 

 しかしソレを意識しすぎてもダメだ。

 それこそ不自然な形で表に出てしまうからな。

 

 ううむ。

 そう考えると意外と難しいミッションになりそうだ。それにそれを踏まえた上で問題点も浮かんでくる。

 

「……いや、でもなぁ」

 

「(´・ω・`)」

 

「!?」(しょんぼり一夏だ!)

 

割と先程から何度もしていたのだが。

それに気付けるだけの余裕が、先程までのシャルロットにはなかった。しかし今、気付いたという事は、心に余裕が出来たという表れなのである。

 

「バレたらどうする? 自然体でいなきゃいけないのは、俺たち2人だけじゃないだろ?」

 

「あ、そっかぁ…」

 

 俺と一夏の視線がシャルロットへ注がれる。

 つまりはそういう事である。

 

 どうやらシャルロットも理解したようで、手のひらをポンっと叩いて頷いた。

 

「大丈夫だよ旋焚玖! 僕もちゃんと男の子のフリを心掛けるから! 不自然にならないように!」

 

「ああ、シャルロットも自然体を貫くってヤツな!」

 

「そうそう! 自分で言うのもなんだけど、僕の男装っぷりは完成度が高いからね、えへへ!」

 

「……いや、でもなぁ」

 

「(´・▵・`)」

 

「……何だその顔は?」

 

「えへへ、一夏の真似だよ!」

 

 なんか微妙に違うんだよなぁ。

 何で口が△になっているのか。

 

 とりあえず。

 

「もっかいやってみ?」

 

「え~っと……(´・▵・`)」

 

「ぶはははは! どうしたらそんな顔になるんだ!? ぶはははは!」

 

 言ってる事はすげぇ分かる。

 俺も実際同じこと思った。

 

 でもな?

 生きとし生ける者全てに於いてお前だけは笑っちゃイカンでしょ。

 

「んもう! 笑いすぎだよ一夏ぁ!」

 

 しかし良い雰囲気だ。

 やはり最初にメンタル回復に努めて正解だった。

 

「さて、話を戻そう。シャルロットは自分の男装に自信ありげなんだな?」

 

「うん!」

 

「……いや、でもなぁ」

 

「(´・▵・`)」

 

「ぶははははは!」

 

「ひどいよ一夏!」

 

 やめろその流れ!

 話が進まねぇだろ! 

 何ループさせてんのお前ら!?

 

 えぇい、はっきりくっきり言ってやる!

 

「お前、全然男のフリ出来てないじゃん」

 

「えぇ!? そんな事ないよぅ! だって実際女の子たちにはバレてないじゃんかぁ!」

 

 いや、それはいいんだよ。

 キャーキャー群がる女子連中の受け流し方だけは、まさに見事の一言に尽きる。文句の付け所などないさ。

 

「俺たちへの接し方はどうなんだ?」

 

「へ?」

 

「いいか、シャルロット。普通の……と言うかノンケの男は着替えでいちいち恥ずかしがらんし、俺の超絶肉体美を見てうっとりしないし、トイレでアタフタもしない。お前の俺たちに対する接し方は、完全に異性のソレだ。ソレをバリバリ男装でしちまうんだから、もう完全にホモだ。少なくとも1組の女子連中は確実にそう思っているだろう。実際俺もお前の事をホモだと思ってたし」

 

 お前も何故か俺の事をホモだと思ってるみたいだし。

 誠に遺憾である。いやマジで。

 膨大な事情さえ控えてなかったら、お前訴訟も辞さないレベルなんだからな、おう? 分かってんのか、おう? 

 

「あ、そっかぁ」

 

 そうだよ。

 

「あっ、じゃあさじゃあさ! 今から態度を変えても不自然だし、僕はもうホモキャラでいくよ! んもう、しょうがないなぁ」(旋焚玖もそっちの方が嬉しいんじゃないかな? えへへ、一夏が居るから言葉には出さないけどね!)

 

 え、なにその理論は(困惑)

 押してダメならもっと押す的な感じですか? 

 剛を往きすぎだろコイツ。

 

 しかし女がわざわざホモのフリするとか、これもう分かんねぇな。マジで。しかも何か声弾んでるし。

 

 やっぱ女がホモ好きってのは万国共通なのか(畏怖)

 

「へへっ、これで明日からはバッチリだな!」

 

「うんっ!」

 

「……いや、でもなぁ」

 

「(´・ω・`)」

 

「(´・▵・`)」

 

 ブフッ……お前らもう笑わそうとしてないか? なんかそんな気がしてきたわ。しかし無視だ無視。今の俺は横道に逸れないマンだぜ。

 

「仮にバレなかったとして、だ。俺たちの相手はあくまでデュノア社だって事を忘れちゃイカンだろ。今後、デュノア社からシャルロットに何らかのアクションを起こしてきた場合はどうする?」

 

 むしろこれが対策のメインだろ。

 バレるバレないより、こっちに焦点を合わせなきゃな。

 

「はい!」

 

 はい、またまた腕がピーンな一夏くん。

 

「その時は……あった! コレコレ、見てくれよココの部分!」

 

 生徒手帳を取り出し、何やらページをめくっては俺たちに見せてきた。

 えっと、なになに…?

 

 

『特記事項第21項』:本学園における生徒はその在学中において、ありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする。

 

 

「ああ、特記事項を楯に使うってヤツな!」

 

「おう! 『ありとあらゆる』って書いてあるし、『許可されない』って! シャルロットもホラ見ろよ見ろよ! こんなにもホラ! ホラホラホラホラ! こんなにも明言されてるんだぜ!?」

 

 テンションたけー。

 

「すごいね一夏! 特記事項って55個もあるのに、よく覚えてたね!?」

 

 テンションたけー。

 

 その分、俺は静かに燃える青い炎でいるぜ。

 

 

【しゅごいっっっひぃぃぃぃぃん!!】

【別に大した事ねーし。俺の方がすげーし】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

「しゅごいっっっひぃぃぃぃぃん!!」

 

「うわビックリした!? どうしたの旋焚玖!?」

 

「へへっ、ありがとよ旋焚玖!」

 

「一夏もスルーなの!?」

 

「え? だって、別に普通だろ?」

 

 おっ、そうだな(断念)

 

「そ、そうなんだ。でも確かにこの特記事項を読んだら、僕は3年間は大丈夫って事になるのかな?」

 

「おう! 3年も時間があったら、デュノア社への対策も絶対思い付くさ!」

 

「……いや、でもなぁ」

 

「(´・ω・`)」

 

「(´・▵・`)」

 

 ぶほっ……えぇい無視だ無視!

 

「この特記事項、一見無敵に見えて実は穴がある」

 

「な、なんだってー!?」

 

「!?……な、なんだってー!?」

 

 おいシャルロット。

 お前今一夏の反応を見てから続いただろ。

 

 別にノらなくていいから。

 

 

【特記事項にも穴はあるんだよな(意味深)】

【シャルロットにも穴はあるんだよな(意味浅)】

 

 

 お前アホちゃうかコラァッ!!

 ナニ言わせようとしてんだコラァッ!!

 

「……特記事項にも穴はあるんだよな(意味深)」

 

「どうして言い直したの?」

 

「気にするな」

 

 ネタを知ってる山田先生(限定)が居なくて良かった。

 あの人なら絶対知ってるだろ(偏見)

 

「ココをよく見てくれ。ここに『原則として』って書かれてあるだろ? 厄介な言葉なんだよ、これはな」

 

「え、そうなのか? 原則って書いてあるし絶対に的な意味じゃないのか?」

 

 そう思っていた時期(前世)が俺にもありました。

 フランス人のシャルロットはもちろん、日本人ですら勘違いしてしまうワードなんだよな。

 

「『原則』ってのはな『一般的に』とか『基本的に』って意味合いが含まれてるのさ。だからこれは『基本的に許可されないものとする』とも言い換えられるって訳だな」

 

「基本的に…? え、それじゃあ『例外』が認められるって事なのか!?」

 

「そういう事だ」

 

 理解が早くて助かるぜ。

 俺も『原則』には痛い目に遭わされた事がある。

 普通免許の学科試験で(前世邂逅)

 

「え? え? どういう事なの?」

 

 ちと難しいか。

 シャルロットも分かるように言わんと。

 

「IS学園の生徒は、あらゆる外的介入から守られた存在である。ただし『例外』的に『やむを得ない場合』、この特記事項は無効化される」

 

「……と、いう事は?」

 

 何となく察したな。

 

「専用機を持ち、3人目の男性起動者として入って来たお前は一般的な生徒か? それとも例外的な存在か? デュノア社はどうだ?……という事だな」

 

 ここまで言えばもう分かっただろうし、はっきり言ってしまおう。

 

「結論、特記事項ではシャルロットを守る事は出来ない」

 

 素人考えと言われればそれまでだが、それでも俺の推論はそこまで的外れではないと思う。事が事だけに、楽観視もしてられんし。

 

 一夏の案が良かっただけに悔しい気持ちはあるが、それでも気持ちを切り替えて違う対策法を模索しないと。

 

 ううむ。

 とは言え、どうしよう。

 思った以上に事は単純にはいかなそうだ。そう考えたらマジでやべぇ爆弾を抱えちまったのかもしれんな。

 

 しかし、下を向く必要は無し。

 一夏もシャルロットも良いテンションで話を進められているからな。俺たちならきっと、すぐに他の対策法も思い付けるさ……ん?

 

「はわわ…! どどどどうしよう旋焚玖!? 俺の切り札が! 兼ねてから隠しておいた特記事項が通用しねぇよぉ!」

 

 ちょ、何だお前目に見えてテンパってんじゃねぇか! さっきまで明るかったのは、それを心の拠り所にしてたからか!?

 

 やめろお前そんなモン見せられたら、俺まで抑え込んでた不安が釣られて爆発しちゃうだろぉ!

 

 

【一夏の隣りで一緒にはわわる】

【まずはシャルロットを見る】

 

 

 はわわるって何だよ!

 はわわってたまるか! 

 

 シャルロットだ!

 無言で耐えているシャルロットの姿を目に焼き付けて奮起するぞオイ!

 

「もうダメだぁ……おしまいだぁ……」

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

 なに膝から崩れ落ちてんの!? 

 黄金の覚悟はどこ行ったお前!? 

 

 あ゛ーもうっ!

 お前らのメンタルガバガバじゃねぇかよ! なんかもう釣られるどころか、お前ら見てたら逆に落ち着いてきたわ!

  

 

【一夏の隣りで一緒にはわわる】

【シャルロットの隣りで一緒にorzる】

【2人を安心させる】

 

 

 【下】一択だオラァッ!!

 この状況で俺まで2人に便乗したらイカンでしょ! それこそ収拾つかなくなるわい!

 

「はわわ」

 

「orz」

 

 うーんこの。

 改めて見るとシュールすぎる。なんだこの絵。

 

 だがこのまま静観してる訳にもいくまい。

 そして、こういう時のために俺が在るんだろう。

 

 ナイス存在意義だ俺。

 選んだからにはしっかり安心させてやる。

 

「特記事項が使えないってなるとなぁ。確かに厄介極まりない話だ」

 

「(´・ω・`)」「(´・▵・`)」

 

 うわはははは!

 その顔で並ぶなバカ!

 

「で、お前らは勝手に絶望して勝手にビビっちまってる訳だが……俺を見ろ。お前らがテンパるほどヤバい局面を前にして、まるで動じていない俺を視界に収めな…!」

 

「せ、旋焚玖…!? すげぇぜ、冷や汗一つかいてないじゃないか!」

 

「ホントだ……むしろ今の旋焚玖からは余裕すら感じられるよ…!」

 

 冷静沈着なフリは任せろー。

 俺が今まで何年ハッタり続けてきたと思ってんだ。不動明王より不動っぽい振舞いなんざ朝飯前よ。

 

「って事は、既に旋焚玖はナイスな対策法を!?」

 

「そうなの旋焚玖!?」

 

「フッ……」

 

 

 そんな訳ないじゃん。

 

 






一夏:(*゚▽゚*)ワクワク

シャル:(*゚▽゚*)ワクワク

旋焚玖:やべぇよやべぇよ…

選択肢:[岩陰]_・。)ジー

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