選択肢に抗えない   作:さいしん

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交渉開始、というお話。



第116話 懇談-前編-

 

 

 義憤に駆られた一夏。

 世界への嘘ホモ疑惑を流出させたくない俺。

 俺と一夏を守りたい千冬さん。

 シャルの境遇に自身を重ねたヴィシュヌ。

 俺と一夏を理由に立ち上がってくれた箒、鈴、セシリア。

 男の子なシャルに恋い焦がれ恋に泣くだけじゃ怒りが収まらず、俺たちの話に乗りまくった1組の他女子全員もれなく大集合。

 

「何とまァ……揃いも揃ったり、だな」

 

 布仏を皮切りに始まった口撃だったんだが。圧倒されていた筈のシャルの親父さんも、全員が言い終わる頃にはしっかり皮肉を言えるくらい耐性つけやがったか。

 

「烏合の衆だと思ったら大間違いですよ」

 

 想いはそれぞれ違えども。

 此処に集まった目的は一致しているのだ。

 

「シャルを解放してください。これが俺たちの総意です」

 

 何か俺が代表みたいな感じになってるけど、このアホな流れを作った発端は誰だって言ったら俺だしなぁ。いや俺じゃねぇわ、元々はアホの【選択肢】から始まったんだっての。

 

 まぁアレだ。

 こういういかにもってな場面で空気と化す事に邁進してたら、アホの【選択肢】が確実にしゃしゃり出てくるって、経験上読めてるってのもある。そういうのも踏まえて、最初から俺が仕切ってた方が良い気がするのである! 

 

 

(きゃーっ! 見て見てパパ! 旋焚玖が仕切ってるわよぉ! クラスにも馴染めてるみたいでママ嬉しいわぁ!)

(よぉし、ならパパも伝家の宝刀を抜いちゃうぞぉ~!)

(あらあら、パパったらはしゃいじゃってぇ!)

(はははは! 当たり前だよなぁ、はははは!)

 

 

 何かウチの両親がモニョモニョやってる気がするけど、視界に入れてはいけないのである! この交渉の場をパパパッと成功させるには、デュノア夫妻との対話に集中しなければならないのである!

 

 しかし、シャルの親父さんは気になったらしく、ウチの両親を訝しげに見やった。

 

「……ちょっとそこの…あーっと、主車優作さん、だっか? 何だね、その手に持っているモノは?」

 

「え? ハンディカメラですけど? 軽くてとても撮りやすいんですよコレ」

 

 (録画が)もう始まってる!……なんでぇ?

 

「いやカメラの性能とかではなく。何故撮っている?」(そんなもの聞くまでもないか。映像証拠のためだろう。それほど彼らは本気なのだ。本気でシャルロットを我らから守ろうとしているのだ…!)

 

「え、だって息子の晴れ舞台ですよ? 撮るに決まってるじゃないですか」

 

 運動会かな?

 

「……ふむ」(まったく予想と反する言葉が返って来た訳だが……もしや撹乱が目的か? しかし、親の発言としては一応理には適っている。……なるほど、ISを起動した男の親なだけある。とんだ食わせ者らしい)

 

 あ、何かシャルの親父さんから勘違いの気配がする。珍しくその対象が俺じゃないってのがウレシイ……ウレシイ……。

 

「なー、ママ?」

 

「もちろんよぉ。千冬ちゃんなら分かるでしょ?」

 

「はい!」

 

 いや「はい!」て千冬さん。

 相変わらず母さんらの前ではキャラが変わってんな、アンタな。あと息子の俺は全然分からないんですけど。いや分かるけど。オイやめろ、お前ら(主車家を幼い頃から知る箒、鈴、一夏の面々)その生温かい目で俺を見るな。

 

(お前のご両親は全然変わってないな。変わらず大事に思われているじゃないか)

(アンタはこの2人に育てられたもんねぇ。そりゃあウチの離婚も止めようとするわよねぇ)

 

 恥ずかしいからヤメろ。

 

(なぁなぁ旋焚玖。こういう時、どんな気分がするもんなんだ? 俺には両親がいないから分からないんだ)

 

 おっ、セフィロスか?

 

(愛してくれてありがとう)

 

「ヒューッ! 旋焚玖ヒューッ!!」

 

 急に声がでけェんだよバカヤロウ!

 

「な、なんだね急に!?」(今度は織斑一夏か! やはりコイツらは私達を動揺させる気なのか!?)

 

 オッタマゲーションな親父さん。そらそうよ。

 親父さんからすれば、何の脈略も無く急に意味不明な叫びを聞かされた訳だからな。誠に遺憾ながら、本来なら俺がそのポジションなのだが、今回は一夏に譲ってやるぜ! 

 

 というか別に一夏だけじゃないんだぜ?

 うちには自然体でも華がある奴らがたくさんいる。俺が不自然かつ強制的に目立つ必要はない全くない。俺はこの場の主役じゃなくていい。

 

 話の主役であれば・・・(魚住)

 

「あ……(´・ω・`)」

 

「な、なんだねその摩訶不思議な顔は!?」

 

 

【シャルにもしてもらう】

【奥さんにもしてもらう】

 

 

 (どちらも華が)ありますねぇ!

 なお初めて会った奥方様にそんな無礼を働ける筈はありません。仮に働けたとしても、奥さんに出来るとは思えんよ。あの顔は限られた種族にしか出来んからな。

 

 という訳で。

 おめぇの出番だ、シャル!(↑X↓BLYRA)

 

(おいシャル)

(なぁに?)

(お前もしてやりな)

(なんで!?)

 

 しwらwなwいwよw

 

(親父さんへのアピールになる)

(なんの!?)

(『僕はもうデュノア社に居た頃の僕じゃない』ってな。俺たちに打ち明けてから、お前はもう吹かれっぱなしの草じゃなくなったんだろう?)

(な、なるほど…! 分かったよ、旋焚玖!)

 

 え、マジで?

 今ので分かったのか(困惑)

 

「と、父さん!」

 

「む……なんだシャルロッ――」

 

「(´・▵・`)」

 

「トぉぉぉ!? お、おいなんだその顔は!?」(シャルロットがフランスを発ってまだ二週間足らずだぞ!? そんな短期間で一体何がどうなればこんな感じになるというのだ! IS学園は魔窟なのか…!?)

 

「あらやだ、可愛いじゃない」

 

 何故か奥さんには好評だが、親父さんはオッタマげたようだな!……だから何だよ、全然話が進んでねぇんだよこのヤロウ! 

 

 誰か知らんが話を大通り大横道まで逸らしやがって! 始まりは誰だこのヤロウ!……ウチの親父だったわ(目覆い)

 

 フッ……俺の存在が希薄になったとろこで、展開が進まず右往左往するいつもの流れってのは、どうやら避けられない運命にあるらしい。しかも今回はウチの親が発端ときた。

 

 なら息子の俺がケツを拭うべきでしょ。話の流れを元に戻すくらい、いつもやってる事だし慣れっ子よ。悔しいかな、アホの選択肢にはまだまだ抗えん俺でも、運命が相手なら分はこちらにある。

 

 俺に分がある(リョーちん)

 運命に抗えってな!(工藤)

 

「デュノア社という名の籠の鳥だったシャルはもう居ないって言ってんですよ」

 

「……なんだと?」

 

 今のは詩人を気取りすぎたか。

 どうやらこの異常な空気感に、俺自身もアテられているらしいが……言っててちょっと恥ずかしかったでござる。やっぱ素の状態の俺ってまともな神経してるわ(再認識)

 

(オイオイ、ウチの息子は吟遊詩人だぞママ!)

(んもうもうっ♪ どれだけママの鼻を高くするのかしら!)

(こんなの撮るしかないじゃないか!)

(あ、パパ、手がブレちゃってるわよ?)

(おっと…………おっとっと)

(は?)

(ヒェッ……)

 

 アーアーキコエナーイ!

 

「アンタ達の言いなりのまま、俯いてるだけのシャルル・デュノアなら守る気にはならなかっただろう」

 

「ほう…?」

 

 よーしよしよし。

 親父さんも雰囲気が元に戻ったな。俺も詩的な表現をした甲斐があったぜ! もちろん、コレを見越しての言葉だったんだぜ!

 

「前へ進む事を選んだシャルだから俺たちは守ると決めた。母親の事を含め、自身を隠さず打ち明かす勇気を見せたから、此処に居る面々もシャルを守りたいと思った」

 

「……ふむ。守りたい、か」

 

「デュノア社だろうが、俺たちは一歩も引く気はないって事です。ただのガキの戯言だと侮ってたら足を掬われますよ?」

 

 なんてったって、こっちには千冬さんと箒が居るもんね! なんかカッコが付かないから言わないけどね! それにいちいち言わんでも、この人なら理解ってるだろうし。

 

「フッ……そのようだな」

 

 おっ?

 鼻で笑う訳でもなく、かといって悔しそうな表情も無しときたか。

 

 これは昨夜の推測が当たってる可能性…! あると思いますよマジで! 

 

「話は変わりますが、デュノアさん。アナタ方は本当にシャルを道具としか思っていないのですか?」

 

「……どういう意味かね?」

 

「昨日の電話のやり取り。アンタからはシャルを道具ではなく、一人の娘を気に掛ける親父の意気を感じた。それは単なる俺の希望的観測なんですか?」

 

 希望的観測。

 自分で言っててなんだが、そういう表現になっても致し方無い。だって俺の言葉通りなら、デュノア社との全面戦争なんていう空恐ろしいイベントを丸っと回避できるんだからな。

 

「その話をしに、私と妻は此処へ来た。と言えば、君は信じるかね?」

 

「信じます」

 

「あら、即答するのね。この人が嘘ばかりを並べる可能性は考えないのかしら。それとも嘘か真か見極める自信があるの?」

 

 なんだこのおばさん!?

 いやシャルのお義母さんなんだけど。急にいっぱいしゃべりだしたから少しビックリしたぞ。

 

「俺だけじゃ難しいでしょう」

 

 無理無理。

 俺はハッタリ専門であって、別に嘘を見抜く天才って訳じゃない。

 

 だがシャルの親父と交渉するなら、どこかのタイミングでこういう展開が来ると思っていた。

 だぁーからわざわざ人数集めたんじゃい! 伊達や酔狂で1組全員を巻き込んだと思ったら大間違いだぜ! 下準備には定評のある旋焚玖さんをナメんじゃないよぉ!

 

「此処に居るのは俺だけですか?」

 

「なるほど、全員で判断するという訳か。……もしや、この人数。最初からこうなると分かっていたのかね? いや、それを狙っていたのか?」

 

「フッ……」

 

 多くは語らず。

 そっちの方がデキる男っぽいのである!

 

「どうやら私は君を甘く見ていたようだ。娘からは人外なる身体能力の持ち主、とだけ聞いていたが」

 

 これは褒められる予感!

 いいよ! こいよ! 

 遠慮せず言ってくれよ!

 

「中々どうして、頭の方もデキが良いらしい」

 

 で、でへへ。

 本質的なモンを褒められるのはやはり気持ちがいい。

 

「では、話してもらえますね?」

 

「ああ」

 

 

【その前に俺の事を話す】

【一夏に話してもらう】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

 

「一夏」

 

「おう?」

 

「まずは俺の事を話してくれ」

 

「へ? まぁいいけど」

 

 テキトーに2、3個俺のしゅごいトコを言ってくれたらいいよ。その話で親父さん達にプレッシャーが掛かったら儲けモンだ。

 

 最近の事でいいぞ最近の事で。

 生身でセシリアを圧倒した話とかあんだろ。

 

「旋焚玖と初めて会ったのは……小学生の時……」

 

 wow war tonightかな?

 





旋焚玖:俺の事を話してくれ

一夏:おかのした。出会いから今までの全てを話すぜ!

旋焚玖:違うそうじゃない


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