選択肢に抗えない   作:さいしん

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非はどっち?、というお話。



第131話 vs.ラウラ②

 

「思ったより早く済んだな」

 

 ある意味、引っ越してきてからの部屋の片づけだからな。それが2人分となると結構な時間を割くと思ってたんだが、そんな事はなかった。

 乱はそれなりに色々と持って来ていたが、ボーデヴィッヒがほぼ荷物無しだったのも大きい。1人分の荷物を4人で整理してたら、そら早く終わるわ。

 

 しかし俺や箒はともかく、ボーデヴィッヒが乱の分まで整理を手伝いだしたのは少し驚いたな。俺達に付いて来ただけで『我関せず』を貫くと思ってたから、そういう意味では良い誤算だった。

 

「ふぃ~…っと。コレはアタシ1人じゃキツかったなぁ。あんがとね、旋ちゃん、箒さん。それにボーデヴィッヒさんもね」

 

「気にするな」

 

「うむ」

 

「フン。勘違いするなよ凰乱音。私はただ手持ち無沙汰だっただけだ」

 

 ベジータみたいな事言ってんなコイツ。

 これは後のツンデレキャラですね間違いない。

 

 しかしこれでようやく本題に入れる。

 アレだよアレ。一夏とコイツの謎深い因縁についてだよ。交流も大事だが、ちゃんと殴った理由は聞いておかんとイカンよ。

 

 

【の前に箒に自己紹介させておく】

【そんなモンいらんから話せよオイ!】

 

 

 む。

 これは久々の良質的選択肢ですね。

 

 俺は今日一日ひたすらボーデヴィッヒに絡んでたから良いが、箒とボーデヴィッヒは多分コレが初絡みだろう。となれば、ボーデヴィッヒからすれば『誰だこの女』状態になったままである。

 

「箒、簡単に自己紹介くらいしておいた方がいいんじゃないか?」

 

「む……それもそうだな」

 

 部屋も片付いて落ち着いたし、頃合いと言えば頃合いだろう。むしろこれを機としてそれなりに会話を弾ませつつ、そのままの流れで一夏の事も話してもらうのがベストである!

 

「篠ノ之箒だ。旋焚玖と一夏とは……まぁ幼馴染な関係だ。今のところ、幼馴染な関係だ」(旋焚玖をチラリ)

 

 へぁ?

 ナズェミテルンディス!!

 

 それに幼馴染は不変なモンだと思うんですけど(凡凡凡&凡推理)

 

「とりあえずよろしく頼む」 

 

 シンプルかつ要点も押さえている。

 後半はよく分からんけど、キャッチボールしやすいナイスな自己紹介だったぜ! 相手がボーデヴィッヒじゃなかったら、だけど。

 

 どうせコイツの事だ。

 俺や一夏が自己紹介した時みたいに『興味ないね』で済まされる未来が見えるぜ。

 

「篠ノ之……」

 

 お?

 

「もしや篠ノ之博士の肉親か?」

 

 おお、名前だけでコイツが興味を示したのって、今日初めてなんじゃないか? 千冬さん以外は興味ないと思ってたから、この反応はちょいとビックリだな。

 

「……ああ。私はあの人の妹だ」

 

 む…?

 逆には箒は微妙な表情になったぞ。

 

 ああ、そうか。

 確か前にポロッと零してたな。『IS開発者の妹と分かった途端、周りは私を篠ノ之箒として見てくれなくなった』と。

 

 まぁ想像するに難くはない。

 篠ノ之束の妹、IS開発者の妹。

 

 IS的な意味で美味い蜜を啜りたいが為に、箒と仲良くなろうとする不届き者は1組には居なくても、他のクラスやら他の学年には余裕で居るだろう。

 

 男の俺からすれば、そんなクソ下らん理由でお近づきになろうとするとは、全くもって嘆かわしい事である。女の価値はISじゃねぇ。

 

 顔だ(本音)

 

「ほう……だが勘違いするなよ」

 

「む?」

 

「ISを世に出した篠ノ之博士は流石の私も尊敬せざるを得ないが、だからといって貴様に私が尻尾を振ると思ったら大間違いだぞ」

 

「ボーデヴィッヒ……お前、いい奴だな」

 

 これには箒さんもニッコリである。

 

「む……そ、そうか?」(えっ、そうなのか? 私は別にコイツを喜ばせるような事は言ってないと思うんだが……むぅ?)

 

「お前はそこらの凡愚とは明らかに違う。俺も今はっきり確信した」

 

「見直した! アタシ見直したよ! アンタそんなに悪い奴じゃないじゃん!」

 

「ふ、ふん……何だ急に。そんなおだてても何も出んぞ」

 

 頬が赤くなってるんだよなぁ。

 コイツもしや褒められ慣れしてねぇな?

 

 ボーデヴィッヒが色眼鏡で人を見ないってのは分かった。だからこそ、そんなコイツが一夏を殴った理由を聞きたい。

 

「此処には俺達4人しかいない。今朝聞きそびれた話を聞かせてくれ」

 

「む……今朝?」

 

「ケサランパサラン」

 

「は?」

 

「気にするな」

 

「いや気にするだろ」

 

「ほう……旋焚玖の『気にするな』に抗ってみせるか」

 

「むむ……中々やるね」

 

 何言ってだコイツら(ン抜き言葉)

 

 だが確かに、場を流す効果を持つスペル『気にするな』を防がれたのは久しぶりな気がする。そして俺は思ったね。

 

 何でもかんでも思い付きを口に出してはいけない。

 しかし旋焚玖さんの口先は、隙を見せぬ二段構えよ。

 

「明日にでも山田先生に聞くといい」

 

 困った時のやーまだ先生!

 あの人この前ぬ~べ~知ってるって言ってたしイケるだろ。

 

「む……分かった。しかしドンドン山田教諭に聞くリストが増えていくな」

 

「知識も増えるし休み時間の暇も潰せるし一石二鳥だろ」

 

「それもそうか」

 

 よし、横道終わり!

 本題に戻ろう!

 

 

【ケサランパサランって知ってる?】

【毛羽毛現って知ってる?】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

 

 

 

「――という感じで、コイツは幸運をもたらす妖とか言われてるな。他に毛羽毛現とかてんさらぱさらんとかって呼び方もある」

 

 何でもかんでも思い付きを口に出してはいけない。

 ボーデヴィッヒにしてはいけない(戒め)

 

「ふむぅ……妖の類か。中々に興味深い話だったが、『今朝』とはまるで関係なかったな」

 

「中々に興味深い話だったからセーフ」

 

「む……まぁ確かに知識は増えたしセーフにしておいてやろう」

 

「いやすまんな……ぁれ?」

 

 いやちょっと待て。

 何でコイツが上で俺が下の立場みたいになってんの? 

 

 とか思ったけど、下手に口に出したら、まぁた横道街道爆進するからね。ここは大人の対応でスルーさ。そして今度こそ本題を振るぜ!

 

「ボーデヴィッヒが一夏を殴った理由が知りたい人~!」

 

「む?」

 

 こういう明らかにシリアスっぽい話題の時こそ、あえてノリノリな感じで切り出す方が良かったりするのさ、経験上な。

 

「はーい!」

 

 元気モリモリに乱が挙手。

 

「まぁ当然だな。真意を聞かずして仲良くはなれん」

 

 クール極まれりに箒も挙手。

 俺は既に挙手済み。

 

「という訳で、はいっ!」

 

 そして勢いを付けた振りで完成だ。

 ほら、思わず話したくなる勢いだろ?

 

「う、うむ。では話してやろう」

 

 やったぜ。

 やっぱ俺って話術マスターだわ。

 このままドゥンドゥン話しちゃってくれYO!!

 

「どこまで話していたか…」

 

「千冬さんがモンド何とかの大会を棄権したってトコまでだな」

 

「ああ、そうだ。教官の決勝戦を棄権した理由は、世間的には公表されてないが、実は……」

 

 実は?

 

「決勝戦のその日、織斑一夏が謎の組織に誘拐されたのだ!」

 

 へぁ!?

 一夏が誘拐!? 俺が理不尽すぎる登山ってた時に、アイツはアイツでそんなピンチを迎えてたのか!?

 

 

【嘘だゾ絶対嘘だゾ】

【な…なんだってー!?】

 

 

 いやいや待て待て。

 絶対そういう感じで反応していい話題じゃないだろ!?

 

 ま、まぁ過去の事だし、一夏も無事でいるし、ここで無理にシリアスリアクションする必要はないっていう【選択肢】の考えなのかもしれない。

 

 

「な…なんだってー!?」(乱をチラリ)

 

「!! な…なんだってー!?」(箒をチラリ)

 

 俺も見る。

 

「!?…………な、なんだってー」(小声)

 

 カワイイ!(ブロリー)

 

「(何か思っていた反応と違くないか? 私の気のせいかな)そ、そしてだな! それを知った教官は決勝戦には出ず、織斑一夏を助けに行ったのだ!」

 

「「な…なんだってー!?」」

 

 そして乱と共に箒を見る。

 

「!?」

 

 当たり前だよなぁ?

 お前だけ言ってないからねしょうがないね。

 

「…………な、なんだってー」(小声)

 

 カワイイ!(ブロリー)

 

「いやちょっと待て。何かお前らの反応おかしくないか? いや驚いてるのは驚いているんだが、もっとこう…えっと、何と言えばいいか……何かもっとこう…あるだろ!?」

 

「すまん」(ペコリ)

 

「ごめんなさい」(ペコリ)

 

「(私はコイツら2人に言わされたんだが……ここは空気を読んで謝っておこう)すまなかった」(ペコリ)

 

「ま、まぁ分かってくれたらいい」(むぅ……釈然としないものはあるが、頭まで下げられてはこちらも強くは言えんな)

 

 謝り慣れしてる俺に隙は無し(ドヤァ)

 そんで気になる事もある。

 

「千冬さんが棄権した理由は分かった。でも一夏が誘拐されたって、どうして千冬さんは知れたんだ?」

 

「そこはアレだよ旋ちゃん。きっと織斑先生に犯人から脅迫の電話か何かがあったんだよ!」

 

「……ふむ。つまりこんな感じか? 『一夏を無事に返して欲しくば、決勝戦は辞退しろ』というところか?」

 

 ふむふむ。

 乱と箒の推理は確かに筋が通ってるな。

 

 だがそうなると、また疑問が出てくる。

 千冬さんは助けに行ったんだろ? 

 犯人がわざわざ脅迫電話で場所まで教えたのか? あ、でも場所を教えられたら、千冬さんなら100パー助けに行くわな。って事は、犯人の目的は千冬さんの決勝戦出場阻止だったんかな。

 

「推理しているところ悪いが、教官が誘拐の件を知ったのはドイツ軍のおかげだぞ」

 

 どゆこと?

 

「ドイツ軍の関係者が事件発生時に独自の情報網から、織斑一夏の監禁場所に関する情報を入手していたのだ。その情報を教官に報せ、そして教官は助けに行った。というのが事の顛末だな」

 

 はぇ~、ドイツ軍ってしゅごい。

 あ、分かった。だからそのお礼として、千冬さんはドイツ軍に教官しに行ってたんだな。そんでそこでボーデヴィッヒと千冬さんが出会ったとみた! 

 

 色々と分かったが、まだ肝心の一夏を殴った理由は出てきてないな。

 

「とりあえず、決勝戦の話は分かった。で、そこから一夏を殴った理由に繋がっていくのか?」

 

「分からんか? 奴が居なければ教官が大会二連覇の偉業を成し得ただろう事は容易に想像できる。だから私は奴を、奴の存在を認めない」

 

 え、なにその理論は(困惑)

 痛いファンみたいな心理してんなお前な。

 

 乱と箒は……ああ、一緒だ。

 『うわぁ…』みたいな顔してる。俺もそーなの。

 

「悪いのは一夏を誘拐した犯人だと思うんですけど」(名指摘)

 

「何をバカな事を。簡単に誘拐などされる愚行を犯した織斑一夏が悪いに決まっているだろう」

 

「いやいや、もしかしたら大勢に囲まれたかもしれんだろ?」

 

「だから何だ? 私なら蹴散らす」

 

 イラッ。

 

 ああ、なるほど。ソレがお前の軸になってる訳だな。自分なら出来るから出来なかった一夏が憎いと。単純に言ったらそういう事だろう。

 

 

【試してみる】

【試さない】

 

 

 もちろん【上】だよね。

 

「乱、箒」

 

 ボーデヴィッヒの言動に微妙な顔したお前らなら、それだけで俺が何をしようとしてるか理解るだろ?

 

(むしろ当然な流れだよねっ!)

(あそこまで言い切ったんだ。私も遠慮はしない)

 

 よし。

 きっかけは俺が作ってやる。

 

「あ」

 

 意味深に呟き、ボーデヴィッヒの背後を指差してみる。

 

「む…何だ?」

 

 かかったなアホが!

 簡単に後ろ振り返ってんじゃねぇよ!

 

「凰乱音、いっきまーす!」

 

「むぉっ!? な、なにを「私も混ぜてもらう」のわぁっ!?」

 

 乱がボーデヴィッヒの腰から下にタックルをカマし、体勢が崩れたところへ箒も更に参戦。結果、余裕で倒れるボーデヴィッヒ。

 

「抵抗しても無駄だよ~!」

 

「大人しくしろ」

 

「な、何だお前ら!? いきなり訳の分からん事を…! だがお前ら二人なんかに負ける訳ないだろ!」

 

 上は箒、下は乱が押さえている。

 なら俺は開いてる腰に乗ってやるか。

 

「何だお前!?」

 

「マウントポジションの使い手」

 

「はぁ!? ちょ、どけ! どけ貴様!」

 

 おーおー、下でピーピーもがきよるわ。

 だがこうなったらもう終いだ。

 

「三人に勝てるわけないだろ!」

 

「馬鹿野郎お前私は勝つぞお前!」

 

 3人掛かりで完全に組み伏せられてんのに無理に決まってんだろ。実際、ボーデヴィッヒは俺達の拘束から逃れられずにいるしな。

 

 つまり、だ。

 ボーデヴィッヒの言葉に則った上で、一夏に非が無い事が証明できたって訳だ。

 

「さっきの言葉取り消せ。お前、3人相手に蹴散らせてねぇだろが」

 

「ぐっ……それが狙いか…! だが、それなら…!」

 

 む…?

 脱出方法なんてないだろうに。

 

「出てこい…ッ!」

 

「「 あ゛ 」」

 

「あ、おい待てい」

 

「待たん! 【シュヴァルツェア・レーゲン】――ッ!!」

 

「「「!!?」」」

 

 ボーデヴィッヒさんがISを顕現させて、拘束から解き放たれました。

 

「フッ……どうだ?」

 

 いやいやちょっと待て。

 

「IS出すのはズルくないですか?」

 

 ドン引きすぎて思わず敬語になるわ。

 生身相手に何やってだコイツ(ン抜き言葉)

 

「出さないとは言ってなかったからセーフだ」(ドヤァ)

 

 む…!

 言動の隙を突いてきたか。

 

 お前中々いい機転させてんじゃねぇか…!

 

 だがまだだ、まだ終わらんよ!

 一夏に非がない事を俺が証明してやるんだ!

 





これは熱い友情(*´ω`*)
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