選択肢に抗えない   作:さいしん

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謝罪は謝罪、というお話。



第134話 ラウラの謝罪

 

 

「不意討ち……この私が…?」(あ、ありえん…! 眼帯を外してなかったとはいえ、それでもハイパーセンサーは繋がっていた! なのにどうして…!?)

 

 あらやだ、身体がプルプルプルコギってらっしゃる。

 さぁどういう反応を見せるかな。『嘘だッッ』と喚くか、素直に現実を受け入れるか。器の見せどころだぞ、ボーデヴィッヒ。

 

「……私はいったい何を喰らったのだ」

 

 ええやん。

 そういう反応大好きよ。

 

「ちなみに、どこまで覚えているかね?」

 

「私の前に立っていた貴様が水、いや泥のように崩れ溶けたと思ったら気を失っていた」

 

「……へぇ」

 

 脱力による身体の落下を捉えられていたか。

 ハイパーセンサーってしゅごい(認識)

 

「まぁ、種明かしする気はないけどな」

 

 当たり前だよなぁ?

 

「むっ!? 何故だ、ちゃんと教えろ!」

 

「敗者がアレもコレも与えられると思うなよ。ましてや俺はお前の師匠でも何でもないんだからな」

 

 友好的に接してくるならともかく、今の関係じゃあ教える気にならんわ。俺の器の狭さをナメんじゃねぇぞ。

 

「ぐ…ぐぬぬ……確かに一理ある」(何よりこの男は教官が言ってた通り、本当に只者ではなかった…! 現に気絶させられたのだ、認めざるを得ないだろう。ただのフザけたキチガイだと思っていたが、もしやそれもわざと装っているのか…? 他者を油断させるために…!)

 

 ううむ。

 意外と物分かりは良いんだよなコイツ。

 だからこそ一夏への確執を取り除いておきたい。それさえ無くなれば、きっとみんなとも仲良くなれると思うんだ。そしてゆくゆくは俺の彼女になるのだ、HAHAHA!

 

「話を誘拐の件に戻すぞ。仮に一夏が当時、大勢に囲まれてたならお前はアイツを否定する権利がある」

 

「私なら上手く立ち回れるからな!」(この男はIS技術も相当なモノを持っていると見た。身体能力も申し分ない。……フッ、教官に再びドイツでの指導を請う目的でやって来たが、思わぬ逸材に出会ったものだ)

 

 お、そうだな。

 

「だが、もし一夏が不意討ちを喰らって誘拐されてたなら、お前はアイツを非難できない。理由は分かるな?」

 

「む……確かに私は不意討ちに対応できなかったからな」(とりあえず織斑一夏と教官が惚れた男をポコポコにして、その後落ち着いてからこの男を我が隊にスカウトする方向でいこう)

 

 いぐざくとりぃ。

 この理論でいくと、アイツを否定していいのは俺だけだな!(ドヤァ)

 

「じゃあ確かめに行くか、本人に」

 

「む……いいだろう」

 

 大勢だろうが不意討ちだろうが、予測はあくまで予測。実際はどうだったのか、手っ取り早く本人に聞くのが一番だろう。

 

「不意討ちだったら、とりあえず一夏に侘び入れろ」

 

「いいだろう。だが、大勢だったらお前が私に謝れ」

 

 

【やだよ】

【本当に申し訳ない】

 

 

 どうしてここに【了承】が入ってないのか、コレガワカラナイ。

 かといって【下】は選んだらイカンでしょ。【下】を選ぶは不安の現れ、ここは強気の【上】である!

 

「やだよ」

 

「なに…?」

 

「それくらい自信があるって事だ」

 

「む……そういうものか」

 

「そういうもんさ」

 

 なぁんか……態度が気持ち柔らかくなってないか?

 気のせいかな。

 

 まぁいいや。確か今日はセシリア達と第3アリーナで訓練してるんだっけか。んじゃさっそくイクゾー。

 

「旋焚玖、私と乱はどうすればいい?」

 

 一緒に来ればいいじゃん。

 

 

【あ? お前ら2人で行ってこいよ】

【箒と乱も来てくれないと俺は死ぬ】

 

 

 極端な【選択肢】やめてよぉ!

 こんなの『嫌な奴』か『痛い奴』じゃないか!

 

 そして俺は嫌われたくないでござる。嫌われるくらいなキモがられる方がマシなんだ(涙目)

 

「箒と乱も来てくれないと俺は死ぬ」(震え声)

 

「「!!!!」」

 

 オラ引けよ。

 別に今更キモがられてもヘコまねぇし、だって俺ツエーもん。

 

「バカ旋ちゃん!!」

 

 うぇいっ!?

 

「簡単に命を賭けたりしたらダメでしょ! そんな事言ってたらアテムって呼んじゃうよ!?」

 

 俺はスターチップひとつと…命を賭けるぜ!!(闇遊戯)

 

「で、でも文庫版では修正されたから」

 

「そこまでコアなのは知らないよ!」

 

 やーまだ先生なら知ってた(信頼)

 まだまだ甘いな、乱よ。

 

 しかしまさか怒られるとは思わなんだ。

 やっぱりママは別格なんすねぇ(再認識)

 

「まぁまぁまぁまぁ、いいじゃないか乱」(えびす顔)

 

「うわ箒さん、すっごい笑顔じゃん!」

 

 なんでぇ?

 箒も箒で最近は俺の予測を超えた反応してくるんだよなぁ。

 

「まぁまぁまぁまぁ、いいじゃないか乱」(言い方は確かに少々アレだが、旋焚玖のソレは今に始まった事ではない。重要なのは本質を見逃さない事なのだ。先ほどの発言、裏を返せば旋焚玖はそれほど私達と居たいという事に他ならん。ならば私は大いに喜ばせてもらおう!)

 

 2回言いましたよ箒さん。

 何を思ってんのか、笑顔すぎて逆に読めねぇわ。まぁでも笑顔って事は、きっとマイナスにはなってない筈なんだ。ならば良し!

 

 痛い発言をしたにもかかわらず気分は上々。ヘーイディージェー。

 このまま一夏の元までイクゾー。

 

 

 

 

 第3アリーナまでやって来たゾー。

 

「ここに織斑一夏は居るのだな?」

 

「ああ」

 

 トーナメント戦に向けてセシリア達と頑張っている頃だろう。

 

「よし」

 

 そう呟いたボーデヴィッヒは、おもむろにISを展開して……いや待て待て。

 

「ボーデヴィッヒさんボーデヴィッヒさん」

 

「な、何だ急に、気持ち悪いな」

 

 ノルマ達成(プラス思考)

 

「俺達は何しに此処まで来たんだ?」

 

「織斑一夏に真偽を確かめるためだろう」

 

 分かってんじゃねぇか。

 俺達は話を聞きに来たんだ。

 

「それでどうしてISを展開させる必要があるんですか」(名指摘)

 

「む……むぅ…」(私とした事が気持ちを逸らせてしまっていたようだな)

 

 大人しく仕舞ってくれたか。

 

 話を聞く時は聞く。

 闘る時は闘る。

 

 忘れるな、分別を(石舟斎)

 

 という訳で一夏達の元までやって来たのだ。

 

「おい」

 

「……なんだよ」

 

「貴様が誘拐された時の状況を教えろ」

 

「イヤだ。理由がねぇよ」

 

 まぁ一夏からしたら、あんまりベラベラ話したがる内容じゃないしなぁ。だがここはグッと堪えて明かしてくれると助かるんだぜ。

 

「貴様にはなくても私にはある」

 

「俺にもある」

 

「旋焚玖がそこまで言うなら仕方ないな!」

 

 俺はそこまで言ってねぇよ。

 お前の判定相変わらずガバガバじゃねぇか(呆れ)

 

「あの日俺は道行く綺麗なちょうちょを眺めてたら、後ろから口を塞がれて拉致されたんだ」

 

「はぁ?」

 

「つまり一夏は不意討ちを喰らった訳だな?」

 

「ああ。正直、あっという間すぎて何もできなかったよ」

 

 それもしゃーない。

 日頃から誘拐され慣れてないと、動揺してパニックになるのは当然だ。それはそれとして『不意討ち』論が証明されたんだ、ボーデヴィッヒは潔く謝罪しな!

 

「俺の予想が正しかったな。ほら、ボーデヴィッヒ」

 

「いやいや待て待て、ちょっと待て! 何だそのアホすぎる理由は! 何がちょうちょだバカか貴様! そんなモノに気を取られて不意討ちされただと!? そのせいで教官は大会二連覇を逃したんだぞ! 偉業な! 大会! 二連覇をぉ!」

 

「(´・ω・`)」

 

 怒涛な勢いで詰め寄ってんなぁ。

 しかし俺に焦りはぬぁい。こういう時のために、さっきわざわざ実演してみせたんだろがい。きっかけがちょうちょだろうが何だろうが、キモはそこじゃない。 

 

「気を取られてなくても不意討ち受けた挙句に気を失ったお前が、なぁに一夏にキレてんだ?」

 

「うぐっ」

 

 おう?

 どうなんだコラ。

 

 反論があるなら言ってみ。

 

「そ、そうだったな。つい熱くなってしまった」(悔しいがこの男の言う通り、私に織斑一夏の不意討ち事情をとやかく言う権利はなかったのだ…!)

 

 思い出したか。

 

 千冬さんを尊敬しまくってるだろうし、熱くなってキレたくなるのは分かるが……まぁアレだな、お前の不運はその対象が一夏だったってとこか。

 赤の他人なら、いくら理不尽にキレられてようが俺も気にしないが、それが一夏だってんなら見過ごす訳にはイカンでしょ。

 

「で、この場合どうするんだった?」

 

「わ、分かっている。織斑一夏、今朝は叩いて悪かったな」

 

「へ?」

 

「貴様が誘拐されて教官が決勝戦に出られなかったのは不服だが、それが奇襲を受けた結果であるならば、私にお前を咎める資格はない」

 

「お、おう…?」(謝ってくれてんだよな…? それにしては何か限定的というか条件付きというか……んん?)

 

 いまいちピンときてねぇな。

 まぁボーデヴィッヒも含みある言い方だし当然だわ。

 

 ここは提案した俺がフォローせなイカンでしょ!

 

「まぁ何だ。謝罪は謝罪だ。細けェ事は気にしないで、とりあえず受け取ってりゃいいんじゃないか?」

 

 ここは過程よりも結果を重視する場面だぜ!

 

「旋焚玖……そうだな」

 

「そうだよ」(便乗)

 

「でも何でまた急にボーデヴィッヒさんは謝ってくれたんだ?」

 

「……ふむ」

 

 それは俺の口からは言いたくないでござる。だって自分で説明するより、他の人から言ってもらった方が、聞いてる奴らの評価上がりそうじゃない?(小者)

 

「「 それについては私(アタシ)が 」」

 

「「 む? 」」

 

 ハモってんなぁ。

 しかし自ら名乗り上げてくれた事に感謝するぜ箒、乱。2人とも変に誇張はしないだろうし、どっちでもいいから言っちゃってくれYO!!

 

 

【乱、頼む(乱の好感度Up・箒の好感度Down)】

【箒、頼む(箒の好感度Up・乱の好感度Down)】

【ボーデヴィッヒ、頼む(一夏以外の好感度軒並みDown)】

【説明は俺に任せろー】

 

 

 バリバリー(憤怒)

 四択に見せかけて実質一択なのホントやめてくれませんかね。

 

「説明は俺に任せろー」(棒読み)

 

 

 

 

「――という訳で、今に至る」

 

 出来れば第三者な乱か箒に熱弁を振るってもらいたかったが、中々そう上手くはイカンものよな。アホの【選択肢】のせいで。

 

 簡略化に次ぐ簡略化、そしてひたすら淡々と説明してやったぜ。自分の功績を具体的に話す男とか普通にキツいだろ。

 だがそのおかげで、俺のしゅごいシーンもとてもあっさり風味な説明さ。これは俺のしゅごさも分かってもらえませんわ(がっがり)

 

「う……うぅ…」

 

 ん?

 

「ウオオオオッ!」

 

 瞬時加速!?

 お前そのまま抱きついてくる気か!?

 

 アホかお前ここを何処だと思ってんだ!

 感謝なら言葉だけで十分じゃい!

 

「旋焚玖ぅぅぅぅ――ッ!!」

 

 だが俺なら…ッ!!

 まだ避けれるぜぇぇぇぇッ!

 

 

【真っ向から右ストレートでブッ飛ばす】

【直立不動を貫く】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

「俺のためにありがとよ旋焚玖ぅッ!!」

 

「気にするなぁッ!! そして抱きつくなぁッ!!」

 

 ふざけんなヤメろバカ!

 

 部屋でも教室でもねぇんだぞコラァッ!! 不特定多数に女子率99.9%なアリーナでナニしてくれてんだコラァッ!!

 

 

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 ああ^~ 」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 どっから湧いてきやがったコラァッ!!

 






オチたので区切ります(*´ω`*)


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