選択肢に抗えない   作:さいしん

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絶好調、というお話。



第141話 ラウラv.s.千冬

 

 

「我がドイツで再びご指導を!」

 

「いやだ」

 

 力強いよねぇ。

 短くも断固たる決意感じるよねぇ。

 

「な、なぜですか!」

 

「遠いから」

 

 近いから(流川)

 

「なっ……そ、それは…! た、確かに此処からだと遠いですが…」

 

 遠かったら仕方ないね。

 ドイツだもんなぁ。片道でどれくらい掛かるんだ? 仮に8時出勤だとして何時に日本を出たら……って違うわ!(ノリツッコミ)

 

「ドイツで指導って事は、その間千冬さんもドイツに滞在してると思うんですけど」(凡指摘)

 

「む……」

 

 というか、過去にも千冬さんはドイツに滞在してなかったっけ。その過程でボーデヴィッヒは千冬さんを慕うようになったって聞いてるんだが……よほど学園から離れたくないのかな。

 

「ふつめん…! そ、そうです教官! ですので移動距離はお気になさらずとも大丈夫です!」(これで教官の憂いは取り除かれたぞやったー!)

 

「ふむ……確かに移動の煩わしさはなくなったな」

 

「で、でしたら!」

 

「いやでもなぁ…」

 

「(´・ω●`)」

 

「ドイツに行けば、周りは当然ドイツ人だらけだろう。私はドイツ語なんぞ知らんし、コミュニケーションが取れないではないか」

 

 それはいけない。

 人間、誰かとコミュニケーションを取ってないと、ストレスが溜まってしょうがないからな。そこはブリュンヒルデな千冬さんも例外じゃないだろう。

 

「でもボーデヴィッヒは日本語しゃべれてますよ?」(凡指摘)

 

「む……」

 

 というか、それなら前回はどうしたんだ……って真っ当なツッコミは確実に野暮だろう。相手はあの千冬さんだし。

 もうアレだ、千冬さんはドイツに行った事がないテイで俺も接した方が精神上よろしいな、うん。

 

「ふつめん…! そ、そうです教官! それに軍の人間はみな日本語を習得してますので安心です!」(これで今度こそ教官の憂いが取り除かれたぞやったー!)

 

「ふむ……確かに軍でのコミュニケーションの心配はなくなったな」

 

「で、でしたら!」

 

「いやでもなぁ…」

 

「(´・ω●`)」

 

「テレビ番組はどうなんだ?」

 

「て、テレビ……ですか?」

 

「ドイツ語が分からん私がドイツのテレビを観ても面白くないじゃないか」

 

「うっ……そ、それは……」

 

「実は今、昔のドラマの再放送をやっていてな。私は毎週それを楽しみにしているんだ」

 

 ああ、そういやガキの頃はよく一夏と3人で、ゲーム以外でも普通にテレビ観てたなぁ。意外と千冬さんって、バラエティーとかドラマとかも好きなんだっけか。

 

「日本語じゃないドイツ人の番組など観ても分からんぞ」

 

「くっ……くぅぅ…く、くそ…! ドイツのテレビめ! 何故日本語を話さないのだ!」

 

 ドイツだからだと思うんですけど(凡推理)

 

「それに軍の人間は日本語を話せると言ったが、街中に出たらどうなる? 八百屋さんとかに行ってもドイツ語だと買い物が出来ないじゃないか」

 

 八百屋さんてアンタ…。

 料理できねぇじゃん(辛辣)

 

「くっ……くそぅ! ドイツの街中の八百屋さんめ! 何故日本語を話さないのだ!」

 

 ドイツだからだと思うんですけど(凡推理)

 世界共通語だからと言って、皆が話せたら苦労せんわい。

 

「教官の憂いはごもっとも…! ですが! それでもあなたは此処にいるべき存在ではありません! この学園の生徒など、教官が教えるに足る人間ではありません!」

 

「何故だ?」

 

「学生など意識が甘く、危機感に疎く、何よりISをファッションか何かと勘違いしている! 不純極まりないではありませんか!」

 

 耳がいたーい!

 ISをカッコ良く乗り回してモテモテになりたいとか不純極まりないぞ俺! でもやめない(断固たる決意)

 

「……ふむ。お前は……いや、お前達はISを何だと認識している?」

 

「兵器です」(即答)

「たけしです」(即答)

 

「む……それがふつめんの専用機か」

 

「まぁ……そんなところだな」

 

 俺にとっての専用機が【たけし】なのは間違いない。検査の時から俺はアイツしか知らんし。

 まぁ俺の居ないところで【たけし】は俺以外の女達に乗られまくってるけどな(NTR風説明)

 

「……兵器、か。本来ISというのは、宇宙を翔ける翼として作られたモノだったんだがな……どこかのアホアホ兎と世界一美人なショタコンのせいで、兵器としての印象が強くなってしまったのは確かだ」

 

 一体誰なんだその2人組は…!(すっとぼけ)

 まぁ原因はともかく、今は兵器じゃないって事だろ。

 

「今ではISも、サッカーや野球と同じスポーツ競技として扱われている。浮ついた気持ちで臨んだ挙句に怪我するバカは確かに言語道断だ。だがそれとは別に、楽しんで学ぶ姿勢まで否定する権利はない」

 

「し、しかし教官…!」

 

「何よりここは軍隊ではなく、学び舎なのだからな。軍隊の考えを学園の生徒に押し付けるのは、些か度が過ぎるのではないか?」

 

「ぐぬぬ…!」

 

 これには強気なボーデヴィッヒも『ぐぬぬ』らしい。屁理屈ではなく、真っ当すぎるほどの正論でこられたからな。俺でもコレに反論しろって言われたら難しいわ。

 

「た、確かに教官の仰る通り…ですが! それでも批判はさせてもらいます! 私は昨日、此処へ来たばかりですが、この学園の生徒はあまりにレベルが低い!」

 

「ほう……根拠はあるんだろうな? 先入観に溺れて否定するのは、お前の嫌う凡愚のソレだぞ?」

 

 千冬さんの言う通り、何でもかんでも決めつけて話すのはイカンよね。それがネガティブ系なら、なおさらイカンでしょ。

 

「ご安心ください、教官。確固たる理由があります。私は昨日の放課後、そして先程中庭への移動も、ふつめんと共に行動していましたが「少し待て」……は、ハッ!」

 

「その『ふつめん』というのは、もしや旋焚玖の事を言っているのか?」

 

「ハッ!」

 

「意味は?」

 

「普通の顔です!」

 

「フッ……お前にはまだ見えていないようだな」(ドヤァ)

 

 いやそこでドヤ顔はおかしくないですか?

 しかし千冬さんだし深く考えてはいけない(戒め)

 

「まぁいい、話を続けろ」

 

「は、はい! ふつめんと移動中、私は周りから不快な視線を感じました!」

 

 そうだったかな(感覚麻痺)

 

「1年生からはそうでもなかったのですが、他の学年の奴らはふつめんに対して、明らかに敵意……だけでなく侮蔑の視線を送っていました」(かつて私が教官と出会うまで感じていた視線と同等の不快感…! どうして間違えようがあろうか! 思い出しただけでもむきー!)

 

 オイオイ聞いたかオイ!

 ボーデヴィッヒがさらっと言った『1年生からはそうでもなかった』という部分をよォ! これは聞き逃してはいけない、超絶ひゃっほいポイントですよコレは!

 

 人間やっぱ慣れるんですよ! 俺に環境の如く適応してくれた1年生達には多大なる感謝を! そんでもって2~3年はまだ全く絡んでないから、へこたれる必要なし! 

 ボーデヴィッヒの証言により、女尊男卑の巣窟と謳われるIS学園ですら、絡み続ければ受け入れられる事が分かったんだからなやったー!

 

「敵愾心を持つだけならまだしも、これほどの男を見下し哂うなど……私より長く同じ学園に居ながら、この男のしゅごさを理解できていない凡愚の証拠に他なりません!」

 

「それは本当にそうだな!!」

 

 うわビックリした!?

 

「うわビックリした!? で、ですよね! 教官も同じようにお考えだったとは嬉し……はっ…!?」(これは……ナイスな案が閃いたかもしれん…! 教官は私が思っている以上にふつめんを評価している可能性…! 私はソレに賭けるッ!!)

 

 急に大きな声出すのはビックリするからダメだってセシリアが言ってましたよ! そしてボーデヴィッヒは何か思う事でもあったんか?

 

「改めてお願いします教官! 我がドイツで再びご指導を!」

 

「それとこれとは話が違うだろうが」

 

「しかし今ならなんと! 主車旋焚玖もセットで付いて来ます!」(ドヤッ)

 

 でもぉ…お高いんでしょ?って違うわアホか! 通販番組みてぇなノリでなに言ってだコイツ!?(びっくりなン抜き言葉)

 

「ほう…?」

 

 キメ顔で頷くのやめてくれませんかね。

 俺は余裕で行きたくないですよ! ドイツ語のテレビ番組は面白くないし、街中の八百屋に行っても買えないじゃないか!

 

「魅力的な提案ではあるが、それでもダメだ。むしろ付いて来させる訳にはいかん」

 

「な、何故ですか!?」

 

 これには俺も正直ビックリである。千冬さんの事だから、『俺にも来てほすぃ!!』ってなると思ったんだが……これは恥ずかしい自惚れですね。ちっ……反省してまーす(棒読み)

 

「弟の親友を手前勝手に連れ去る姉が何処にいる」

 

 手前勝手って言い方が様になっていると思った。

 そしてやっぱり千冬さんがナンバー1! これは何処に出しても誇れる姉の鑑ですよ! いやマジで。これには天邪鬼な旋焚玖さんも尊敬の眼差しを禁じ得ない。

 

「フッ……尊敬するだけでいいのか?」

 

 うわわ…。

 読まれた上に返しがおかしいですよ千冬さん!

 

「へ? どうしたのですか、教官?」

 

「気にするな。まぁそういう訳で、今回ばかりは旋焚玖で私を釣ろうとしても無駄だ。今回ばかりはな」

 

 『今回ばかり』の重ね掛けに、あくまで例外的だという意思を感じますねぇ! これこそ俺の知ってる千冬さんである!(謎の安心感)

 

「くっ……織斑一夏め…! ここでも私の障壁となるのか…!」(誘拐の件は納得したが、ソレとコレとは別だ! やはりアイツは一度この手でポッコポコにせねば…!)

 

 これは……良くない流れなんじゃないか?

 ただでさえボーデヴィッヒは一夏に嫉妬してんだ。ここにきて更なる一夏へのプンスカポイントを与えるのはマズいですよ!

 

(案ずるな。私に考えがある)

(アッハイ)

 

 心を読むだけじゃ飽き足らず、心の声まで飛ばしてきましたよこの人。なんかもう絶好調だな千冬さん。

 しかし何やら千冬さんには策があるらしいし、ここは姉弟子のお手並み拝見といこうか。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

「は、ハッ!」

 

「今からお前に伝える言葉は、教師としてでも教官としてでもない。織斑千冬としての言葉だ。故にどう捉えてもらっても構わん」

 

「は、はぁ…………!!!!!!?!!??」

 

「……むぅ…!」

 

 うおおおぉぉぉ…ッ!?

 な、なんちゅう殺気だオイ!? 

 

「私欲で一夏を傷付けてみろ……殺すぞ」

 

「!!!!!!!」

 

 うーわー、ごっつこわいー…。

 

 これはやべぇ……シャルの兄弟に怒鳴り散らした時のヤツと質がまるで違うじゃないか…! 

 こんなモンお前一般人が浴びたら塵と化すんじゃないか、いや冗談なしに。俺ですら直立不動で精いっぱいなんだぞ。あ、ボーデヴィッヒは……ぁれ?

 

「……プルプル……プルプル……」

 

 俺の背後でプルコギってたでござる。

 やめて(切実)

 

 俺を矢面に立たせないで……というかもう、この怖さは矢面どころか白面だろ。……千冬さんは白面の者だった…?(うしお並感)

 

「……ほう。私の前に立ち塞がるか、旋焚玖よ」

 

 アンタそれ兄弟ン時にも言っただろォ!(※第112話参照)

 

 バカ言ってんじゃないわバカ言ってんじゃないよ! 相変わらず俺の評価エベレスト超えてんなアンタな! 頭チョモランマでヒマラヤか!

 

 しかし、まぁなんだ。

 『一夏を傷付けるな』か。

 確かに教室では言えんわな。

 

 だからこそ、此処で言って正解だったんじゃないか? きっと俺達が諌めるよりも、千冬さんが釘を刺した方が効果的なのは間違いないだろうし。

 

 ボーデヴィッヒはプルコギッヒになっちまったけど。

 

「フッ……そこでプルプルしてるボーデヴィッヒに朗報だ」

 

「ろ、朗報……?」

 

 おい、俺の背後から顔だけひょっこり出すな。

 お前の大好きな千冬さんだぞ~。怖くないぞ~と見せかけてやっぱり怖いからねしょうがないね。

 

「私をドイツに連れて行けるぞ」

 

「!?」

 

 んん?

 あんだけ嫌がってたのに、急にどうしたんだ?

 

「連れて行く方法が一つだけある」

 

「そ、その方法を是非ッ!!」

 

「簡単だ。文字通り、私を連れて行けばいい」

 

「いえ、ですが……教官は断りましたよね?」

 

「ああ断った。嫌だからな。だからお前は嫌がる私の首根っこひっつかまえ、無理矢理連れて行けばいい」

 

 あっ…(察し)

 

「拒否するならひっぱたき、張り倒し、服従するまでブン殴り続け、連行するッ!!」

 

「エェッ!?」

 

 オーガやんけ!

 千冬さんは白面の者でありオーガだった…?(畏怖)

 

「嫌も応もない。シールドを裂くが如く無理矢理だ」

 

 そうすりゃボーデヴィッヒよ…ドイツで再指導だってさせられる……ってか。ある意味、最も千冬さんらしいシンプルな方法ではあるな。力でねじ伏せればいいんだからよ。

 

「わ、私が……教官を……む、無理ですよ! 私が教官に勝てる訳ないじゃないですか!」

 

「なら諦めるんだな。実力で従わせられん限り、私は絶対に行かん」

 

「く、くぅぅぅん…」

 

 いや、くぅぅぅんてお前。

 しかし話も佳境っぽいし、俺もテキトーに存在感出しとくか。

 

「とりあえずよ、強くなってみたらいいんじゃないか? 目先の事に囚われずによ」

 

「ふつめん……」

 

 目先の事ってのは一夏に対する憤怒だからな! さりげにこう言っておく事で、矛先を一夏に向かせない隠れた俺の好プレーである!(自賛)

 

「そうだ、ボーデヴィッヒ。私自ら指導したくなるほど強くなってみせろ。お前の挑戦を私は待っている」

 

「教官……分かりました…! このラウラ・ボーデヴィッヒ、必ずや強くなってみせます!」

 

「フッ……その意気だ」

 

 そう言って千冬さんは去っていた。

 いやはや、流石すぎる。

 亀の甲より年の劫とはよく言ったモンだ。俺より上手くいい話っぽく締めよったわ。

 

「ふつめん」

 

「ん?」

 

「私は強くなるぞ!」

 

「……ああ」

 

「よし、そうと決まればさっそくアリーナに行くぞ!」

 

 なんでぇ?

 IS戦だと僕はうんちですよ?

 

「今だとトーナメントに向けて訓練している奴が居る筈だ」

 

 おぉ、この感じは別に相手が俺でなくてもいいっぽい! ぽいぽい!

 

「まぁいるだろうな。んで、どうする気だ?」

 

 確認大事。

 万が一があるからね。

 

「片っ端からポコポコにしてやる!」

 

「ならば良し!」(曹操)

 

 イクゾー!

 

 





良くはないんだよなぁ(マジレス)

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