パーティーは騒いでなんぼ、というお話。
「というわけでっ! 織斑くんクラス代表決定おめでとう!」
「「「 おめでと~! 」」」
ぱんぱかぱーん!
食堂に集まった面々がクラッカーを乱射する。
祝福の紙吹雪が降り注がれた。
【色鮮やかに舞う紙吹雪を背景に、祝福の舞を披露する】
【色鮮やかに舞う紙吹雪を背景に、祝福の抱擁を捧げる】
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!
「ミ~モヽ(・ω・oヽ)ミ~モヽ(o・ω・o)ノミモ(ノo・ω・)ノミモモモ~ミモ♪」
見さらせコラァッ!!
クラス本邦初公開、これが本意気のミーモ・ダンシングじゃい! 選んだからにはハンパは無しだコラァッ!! クラス代表がんばれコラァッ!!
「ヒューッ! 旋焚玖、ヒューッ!!」
(祝われてんの)お前じゃい!
「ひゅ~っ! ちょいす~、ひゅ~っ!!」
のんびりした合いの手サンキューだぜ布仏! それが俺の羞恥を1ミリくらい和らげてくれるんだぜ!
「旋焚玖さんのダンスは以前も1度拝見しましたが、改めて見ると凄いキレですわね」
「旋焚玖は武術やってるからな」(篠ノ之流フォロー)
お、そうだな。
「それ関係あんの?」
というか、誰もこの状況にツっこまないのが異常だと思います(名推理)
「ツっこんでキレられたくないからね」
「しょうがないね」
聖人枠の相川と鷹月にですら、そんな推測をされているのか。うん、それじゃあ尚更、他の奴らが止めてくれる事は期待できないですね。あ、そろそろサビに入るな、がんばろ。
◇
「というわけでっ! 鈴ちゃんIS学園にようこそ!」
「「「 ようこそ! 」」」
ぱんぱかぱーん!
このパーティーは鈴の歓迎会でもあるからな。一夏へのクラッカー乱射が終われば、当然お次は鈴のためのクラッカーだ。今度は歓迎の紙吹雪が舞い上がった。
【色鮮やかに舞う紙吹雪を背景に、歓迎の舞を披露する】
【色鮮やかに舞う紙吹雪を背景に、歓迎の抱擁を捧げる】
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!
◇
ぬわああああん疲れたもおおおおん!!
「チカレタ…」
いやホントに。
一夏には抱擁で良かったなこれ。むしろ最初の選択肢で気付くべきだったか……俺もまだまだ未熟って事だな。
「まったく……ハードラックとダンスっちまったぜ」
「アンタってば、相変わらずアホねぇ」
今宵の主役な鈴がケラケラ笑いながら飲み物を持って来てくれた。中身は当然、ちべたいコーラである。嬉しいのである。
「でも、ありがとね。あたしだって嬉しくない訳じゃないんだから」
お、ツンデレか?
そんな事したら可愛さが増すだけだぞ。
「気にするな」
「まぁ旋焚玖は武術やってるからな」(篠ノ之流フォロー)
お、そうだな。
「アンタそればっかじゃない!」
「し、仕方ないだろう! そっち方面には疎いんだ!」(むむぅ……好きな男の趣味は、やはり私も知っておいた方が良いのかもしれん…)
しかしアレだな、改めて一夏の人気が窺えるな。一応、このパーティーは1組の集まりと銘打っているんだが、明らかに30人以上来てるもん。流石に女子が鈴狙いで来てるってのは考えにくいしな。
現に一夏は俺たちとは離れた場所でモブ共に囲まれてるし。
遠目から見ても、やいのやいのと囲って持て囃してるみたいだが、知らん顔ばっかだし違うクラスの連中らしい。それを受けてる一夏の顔が(´・ω・`)の時点で、全く心には響いてねぇな。
「一夏は人気者みたいだな」
当たり前だよなぁ?
「うふふ、旋焚玖さんも羨ましいのではなくて?」
当たり前だよなぁ?
「なによ~? もしかしてアンタ、一夏に嫉妬しちゃってたりすんの~?」
当たり前だよなぁ……とでも言うと思ったか!
確かにかつての俺ならメラメラ嫉妬しただろう。友としてではなく、あくまで男としてだがな。
しかし!
しかしだ!
見よ!
オイ見ろコラ!
俺を囲う今の絵を!
日本一美人な箒と!
イギリス一美人なセシリアと!
中国一美人な鈴が!
俺と一緒に居てくれている…! 何の気まぐれか知らんが、居てくれている事実…! 揺るがない事実…! 紛れもない事実…! 絶対に事実…! 事実であってほしい…! 夢なら醒めないで…!
数より質だオラ!
テメェらモブなんざ何人集まろうが、三大美女に勝てる訳ないだろ!……あ、3人に勝てる訳ないだろ!(言い直し)
【箒が居ればそれでいい(箒ルート)】
【セシリアが居ればそれでいい(セシリアルート)】
【鈴が居ればそれでいい(鈴ルート)】
【俺も一夏に群がる一人でありたい(???ルート継続)】
え、なにこれは…。
……エロゲかな?(現実逃避)
えっと……文言がキモいってのは一旦置いておこう。たぶん肝はそこじゃないんだ。っていうか絶対そこじゃないんだ。あーっと、とりあえず……あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!(落ち着きを取り戻す儀式)
よし、これで冷静になった。訳ねぇだろこのヤロウ! アホか! どうすんだオイ! なんだこの直接的な選択肢!? ルートってなに!?
【上】選んだら箒と付き合えんの!? 【2番目】選んだらセシリアとか!? 鈴とイチャイチャパラダイスな関係になりたきゃ【3番目】ってか!?
ナメんなコラァッ!!
全員俺のモンだコラァッ!!(大志)
そして時は動き出す。
「何やってんだよお前ら」
一夏に群がるモブ共に、ニッコリスマイルでこんにちは!
「「「 ヒッ!? 」」」
毎度毎度同じリアクションだな、お前らな。違うのは顔だけじゃねぇか! その反応はもう飽きたわ。たまには違う反応してみせろよ! かかって来いオラァッ!!
出来ねぇんならどけオラ、散れオラ!
「俺も仲間に入れてくれよ~」(名演技)
「「「「 ひゃぁぁぁぁぁッ!! 」」」」
ほい完了。
蜘蛛の子以上に散っていきましたとさ。
「た、助かったよ旋焚玖。正直、困ってたんだ」
「気にするな」
一夏も得して、俺も未来的な意味で得した筈だし。きっと、いや絶対に。強く信じる気持ちが大事。
(……今更アイツが一夏に嫉妬なんかする訳ないか)
(そうだな、むしろ誰よりも一夏を想える奴だ)
(うふふ、旋焚玖さんはお友達想いなのですね)
一夏を連れて戻ってきたら、何故か3人から生暖かい目で迎えられました。ナズェミテルンディス!!
「はいはーい、新聞部でーす! 話題の新入生、織斑一夏君と主車旋焚玖君に特別インタビューをしに来ました~!」
インタビューか。
俺も随分すげぇ立場な男になっちまったもんだ。
「あ、私は2年の黛薫子。よろしくね! 新聞部部長やってまーす! はい、これ名刺ね!」
これはこれはご丁寧に。
高校生でも名刺とか持ってるんだなぁ。
【なんだァてめェ…? まず名乗れ】
【もしかしてアイツの知り合いですか?】
まゆずみかおるこォ!
そう聞いたわ! いま聞いたわ! 名刺にもちゃんと書いてるわ! お前ホント頭パープキンだな!
「……もしかしてアイツの知り合いですか?」
「え~っと……アイツって誰かな…?」
俺も知りたい。
アンタ誰の知り合いっすか。
「あっ…! もしかして、たっちゃんの事かな!?」
誰だそれ!?
ここであだ名はやめてよぉ!
フルネーム! フルネームでおなシャス!
【そうかな】
【そうだよ】
いやどっち!?
俺が俺の言葉で惑うっておかしいだろ! 俺は惑わす側じゃないの!? 何で俺が惑わされる側になってんの!?
「……そうかな」
「む……」(なるほど。たっちゃんの言ってた通り、確かに一癖も二癖もある子だわ…! でも、私だってジャーナリスト魂を懸けてやってるんだから! 動揺なんてしてあげるもんですか!)
き、機嫌悪くなったりしてない?
大丈夫?
「ふふっ、主車君は後でちゃんとインタビューしてあげるから……慌てちゃダメよ?」
え、なにその感じ。
今ウィンクされたぞ、可愛い。そして彼女は俺に惚れてますね、間違いない。というか俺が惚れましたね、間違いない(恋愛脳)
「ではでは、まずは織斑君! クラス代表になった感想を、どうぞ!」
ボイスレコーダーをずずいっと一夏に向け、打って変わって無邪気な子供のように、瞳を輝かせる美人な眼鏡先輩。眼鏡で美人とか最強やん?
「え、えっと……まぁ、なんというか、頑張ります」
「んー、いまいちインパクトに欠けるなぁ。もう一声お願い!」
「え、えぇっ…!?」
一夏が困った顔でこっちを見ている!
お、アイコンタクトの時間か?
(教えてくれ旋焚玖! こういう時は何を喋ればいいんだ!?)
(俺に聞かれても分かんねぇって)
いやホントに。
俺だってインタビューとか受けた事ないんだから。IS起動させた時も、俺は記者会見やってないし。
(そこを何とか頼むよ! 俺じゃ思いつかねぇんだって! 何でもいいから!)
(うんこちんこ言ってりゃウケるだろ)
(だからそれがウケるのは小学生までだって!)
それは違うぜ、一夏よ。
男は何歳になっても、うんこちんこで盛り上がれるんだぜ? ま、ここは女子校だけど。
「ほらほら、例えばさ『俺に触るとヤケドするぜ!』とか!」
むむむ、と悩む一夏を見かねた眼鏡な先輩……えっと、黛先輩からのアドバイスである。なんか妙に古臭いけど、言ってほしいノリは分かった。それっぽいのを今風に変えて言えばいいんじゃないか?
「な、なるほど…! 俺に触るとヤケドするぜ!」
「そのままじゃない!」
「(´・ω・`)」
何故そのまま言うのか。
こういう時の一夏のセンス、俺は嫌いじゃない。鈴も爆笑してるし。
その後も色々と一夏にインタビューしていく黛先輩。内容は、初めてISに触った時の事とか、千冬さんは何か言ってたか~とか、IS学園らしいISに携わるモノばかりである。
なるほど、俺にもこういう質問が来るんだな。頭の中でシミュレーションしておいた方が良さそうだ。
「よし、協力ありがと織斑君! 次は主車くんね!」(たっちゃんが言ってたわね、この子は普通に男女平等パンチが飛んでくるって。ここは当たり障りのない質問の方が無難かしら)
【オッスお願いしま~す】
【はい】
ん?
「はい」
「じゃあまず、年齢を教えてくれるかな?」
え、なんで?
【24歳です】
【言う必要はありません】
いや、【上】は誰の事言ってんの?
24だし、千冬さんか?
「言う必要はありません」
「え、身長・体重はどれくらいあるの?」
いや、何でそれを聞く必要があるんですか?
【え~、身長が170センチで体重が74キロです】
【言う必要はありません】
いや言わせろよ。歳も身体も秘密にする理由がねぇよ。
あと【上】は誰? 千冬さんじゃないよな? え、お前? もしかしてお前の自己紹介だったりすんの?
「言う必要はありません」
「今なんかやってんの? すごいガッチリしてるよね」
【特にはやってないんですけど、トレーニングはやってます】
【言う必要はありません】
え、これはどうすんの?
普通に【上】選んでも大丈夫? トレーニングってレベルじゃないんだけど、まぁ間違ってはないし。ずっと【下】ってのも多分違うと思うし。
「特にはやってないんですけど、トレーニングはやってます」
「ふーん……週どれくらいやってんの?」
【シュー……3日から4日ぐらいですね】
【言う必要はありません】
毎日なんだよなぁ。
なんなら今朝もしてきたよ。
「言う必要はありません」
「なるほど、強さの秘訣は内緒って訳ね」
ああ、うん、もうそれでいいよ。
「んー……よし、ありがと! だいたい分かったわ!」(全然分かんなかったけど、たっちゃんより強いらしいし、不機嫌になられたら困るからね!)
「アッハイ」
俺、何か答えたっけ?
いや、深く考えるのは止そう。むしろ、空気を読んでくれているのであろう黛先輩に、感謝するレベルだろこれ。
「(でも、このまま終わるのも癪だなぁ…あ、そうだ!)彼女とか、いらっしゃらないんですか?」(丁寧に聞いたし、これくらいはいいよね!)
え、そんなん関係ないでしょ(正論)
【星の数ほどいる】
【星の数ほどほしい】
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!
【下】がまさに本音だけど、言えないよ! キモいよ! 本気でキモがられちゃうよ! 怖い上にキモいとか、もうダメだよ! 言っても笑ってもらえる程、まだ掌握できてないよ!
ここは明らかにウソ丸出しなノリで! 嘘乙、見栄乙。なツっこみ待ちな感じで言おう! キモがられるより失笑を買われた方がまだマシだ!
「星の数ほどいる」(どやぁ)
見よ!
渾身のドヤ顔を!
セシリア以上にドヤ顔してるんだぜ!
これはまさにツっこみ待ちですね、間違いない。こんなノリして言った言葉を信じるなんてとんでもない!
「す、すげぇぜ旋焚玖! モテモテじゃないか!」
アホの一夏は既に戦力外だ!
次来い次!
鈴!
こういう時にツっこむのはお前の役目だぜ!
「は?」(迫真)
「え?」
「何言ってんのアンタ」
「えっ…いや……あの…」
ちょ、ちょっと待って鈴さん。
何でそんな感じなんですか? そこはアナタ『相変わらずアホねぇ』じゃないんですか?
「オイ」(迫真)
「え、あ、なにかな、箒……さん」
もう怖い。
思わず、さん付けしちゃう雰囲気なんですけど。
「冗談でも言っていい事と悪い事があるぞ」
「……………ごめんなさい」
な、なんだよぅ。
どうしてそこまでキレるんだよぅ。
キチガイなフツメンは、嘘でも夢を語っちゃいけないって言うのかよぅ。
あ、でも、箒も鈴も真人間だからな。普通の神経してたら怒って当たり前か。ダチがハーレム公言したんだし。もし一夏に星の数ほど彼女が居たら、俺だって怒るもん。いや怒りはしないか、むしろ泣くな。泣いて羨ましがるな、うん。
「ま、まぁまぁ! お2人とも、旋焚玖さんも冗談で仰っただけですから! ねっ、そうですわよね、旋焚玖さん!」
お、そうだな。
便乗して機嫌が直ってくれるなら、それに越したことはない。
そう、冗談だ。
今はな。
俺は必ず成し遂げてみせる…!
【そうかなぁ】
【女ならな、奪うくらいの気持ちでいかなくてどうする。自分を磨けよ、ガキ共】
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!
コイツの煽り性能やべェ!
いやいや【上】も【下】もダメだろ!? もうケンカ売ってんじゃねぇか! でもどっちか選ばないと……【上】か? それとも【下】か? どっちだ、どっちの方がまだマシだ!?
【上】は短いけど、普通にイラッとくる。ここで更にボカすのはイカンでしょ、多分…! せっかくフォローしてくれたセシリアの顔にまで泥を塗るようなモンだし。
え、でも【下】もヤバいだろ。何で上から言ってんの? 惚れてんのは俺なんだけど? 何で俺が惚れられていて当然みたいな感じになってんの?
……バカじゃないの?(真顔)
あぁもう分からん!
久々に分からん!
どっちも間違いなら、せめてハッタる俺でいたい! 今夜も俺はハッタるぞ!
「女ならな、奪うくらいの気持ちでいかなくてどうする。自分を磨けよ、ガキ共」(震え声)
「「 んなっ!? 」」
お、怒ったかな?
いいよ来いよ!
かかって来いよ!
拳でこい拳で!
「「むぅ…」」
(一度フッた癖にガタガタ言うなって? そういう事なの? 自分を惚れさせてみろって、そう言ってんのね…! いいわ、やってやろうじゃない…! むしろ、あたしはその為に来たんだから!)
(一度フッた私には自業自得すぎて何とも耳が痛い。だが、もう一度惚れさせてみろと旋焚玖は言っている…! ここで燃えなければ女が廃る! いいぞ、やってやる…! 必ずお前をもう1度振り向かせてやる!)
「今の言葉、胸に刻んておくわ」
「同じく。いい刺激を貰った」
鈴も箒もキレるどころか笑みすら浮かべている……なんでぇ?
「……ああ」
分からん!
分からん時は短く頷く! これに限る!
「うふふ、先ほどのお言葉。わたくしも受け取らせて頂いておきますわ」(とはいえ、わたくしを惚れさせるにはまだまだ足りませんわよ、旋焚玖さん)
何言ってだコイツ。
「好きにしろ」(ピッコロ)
「ヒューッ! 旋焚玖、ヒューッ!!」
ああ一夏、お前のそのアホっぷりだけが俺のオアシスだ。
「それじゃあ最後に、記念写真だけ撮らせてもらおうかな!」(主車くんは意外とモテる! これはメモ必須ね! むふふ、オイシイ話頂きましたよ~!)
満足げな顔しやがって…!
元はと言えば、お前が変な爆弾落としたのがきっかけなんだからな! このうんこ眼鏡! うんこ先輩!
ともあれその後も、パーティーは盛り上がりを欠く事なく、夜遅くまで続いたのだった。
旋焚玖:チカレタ…
選択肢:チカレタ…