IS学園に入学して1か月は経ったか。
しかし、そんな事はどうでもいいのだ! 何故なら今日から待ちに待った連休、ゴールデンウィークなのである! やはり学生にとって連休は嬉しいのである!
せっかくの連休を学園で過ごしまくる趣味は無し。こういう時くらい俺は自宅に帰るぞ!
母さんと父さんに俺の活躍っぷりを教えてやるんだ~♪ あとマイパソコンも持って行きたいし。
「忘れモンはないか?」
「おう!」
一夏も1度は家に帰っておきたいらしく、それなら一緒に帰ろうぜ的なノリで正門へと向かう俺たち。悲しいかな、俺たちへのお見送りは無いらしい。
「「「「 お勤めご苦労様ですッ!! 」」」」
代わりと言っちゃあ何だが、出迎えられちゃった。盛大に。
「……ああ」
へへっ、気分はまさに出待ちされたアイドルさ。こんなにも大勢のファンが俺を待っていてくれたんだぜ? これをアイドルと言わず何と言う。
「あにきー!」
「旋焚玖のアニキー!」
「あ、いま俺っちを見たぜ!?」
「バッカお前、俺と目が合ったんだよ!」
これはアイドルですね、間違いない(白目)
うん、そら誰も見送りに来ませんわ。
来ませんし来れませんわ。
見渡す限り、気合いの入った学ランに特攻服、高そうなスーツ。バラエティーに富んでる屈強すぎる方々が正門前で群れ群れってんのに、誰が来れるかっての。
微妙に忘れそうになるが、ここ普通に女子校だからな。隣りに居る一夏ですらビビッちまってんのに。強い(笑)女子が狼の群れに柵なしで近づけっかよ。
そんな中、一人の怖そうなお兄さんが一夏の前まで詰め寄ってきた。いったい何をする気でせう?
「おうコラ、一人目。テメェ一番目だからって調子コイてんじゃねぇぞ、あァん? テメェみてぇなボンボンより兄貴の方が100倍凄ェんだからよォ? そこンとこ分かってンだろなァ……あ゛ァ?」
「(´・ω・`)」
これは怖い。
ボンボンとか100倍ってのが、いかにもヤンキーっぽい。
【俺も一夏に凄む】
【いい感じに一夏を庇う。アドリブでいい感じによろしくゥ!!】
Uzeeeeee!!
果てしなくウザいテンションしてんな【下】なァ!!
庇うのはいいんだよ、全然いいんだよ。むしろ庇うつもりだったよ! 何で普通にさせてくれないの!? そういうチクチクした積み重ねが俺の疲労度を増させるの!
かと言って、既にアウェイ(一夏的に)なのに俺までヤンキー側に立ったらイカンでしょ。この状況で味方0とか一夏のメンタルが逝っちまうわ! 俺が一夏だったら(´・ω・`)どころじゃないわ!
くそ、見とけコラ!
そして聞いとけコラ!
一夏と強面さんの間にすすすっと割って入る。あらやだ、とっても怖い顔してらっしゃる。……怖いなー。
「あ、兄貴…?」
「俺の親友を傷付けてェ奴は今すぐ生命保険に入ってこい」
聞けコラ。
全員だぞ。聞けそして聴け。
拝聴しろ拝聴。
「最後の親孝行させてやる」
「「「 !!? 」」」
殺気はサービスだ取っとけ。
「ヒューッ! 旋焚玖、ヒューッ!!」
(庇われてんの)お前じゃい!
「「「 ヒューッ! 旋焚玖の兄貴、ヒューッ!! 」」」
(脅されてんの)お前らじゃい!
まぁでも、一夏が俺と竹馬の友って事も分かって、渦巻いていた変な敵意も消えたようである! 良かったのである!
さて、んじゃあ帰るか。
と言っても、歩いて帰る訳ではない。IS学園は人工島に建ってるからな。本島に戻るにはモノレールに乗らないと、なのである。
コイツらのほとんどは本島から来ている。故に此処でバイバイではなく、一緒にモノレールにも乗るんだが、外見がね。
顔もそうだが、服装からして巷でブイブイ言わせてる系兄さんの集まりだもんね。そんな怖い人たちと一緒に乗ってくる勇者(一般人)など居る筈もなく。
「へへっ、貸し切りですぜ、旋焚玖の兄貴!」
「……ああ」
「これが男性専用車両かぁ」
それは違うぜ、一夏よ。
お前の言う領域は既にッ!
男性専用モノレールと化してるんだぜ!
だから何だよ。
【せっかく来てくれたんだ。IS学園での俺の武勇伝を聞かせてやる】
【自分で言うのはアレだし、一夏に話してもらう】
自分から言っていくのか(困惑)
聞かれてないのに自分から話し出すのか……控えめに言ってドン引きなんですけど。「聞いてくれよなぁ、俺のしゅごい話ぃ~」って語りだすとか、結構な罰ゲームだと思うんですけど(憤怒)
いや、別に【下】がOKって訳じゃないからな?
【下】も【下】で大概おかしいからな? 「なぁ、俺の活躍を語ってくれよぉ」(ねっとり)っておねだりすんの? イタイっていうかキモいんだけど。それでも【上】よりはマシなような気がする。
あくまで気がするレベルってのがもうね(げっそり)
しかし、別にねっとり懇願する必要は無し。
ここは愉快なあんちゃんなノリでいこう!
「一夏ァ!!」
「おう!? どうした急に大きな声出して」
「いつもの言ったげて!」
「え、何を?」
ちっ…流石の一夏でも初見モノじゃ察してくれねぇか…! まだまだ千冬さんの域には達してないようだな! 精進しろこのヤロウ!
「oh 聞きたいぜ俺の武勇伝! そのしゅごい武勇伝を言ったげて!」
「ハッ…!」(IS学園内で起こった事は外部にはあまり伝わることはないって鈴達が言ってたっけ。それはつまり、一緒に乗ってるこの人達も旋焚玖がIS学園に巻き起こした旋風っぷりを知らないって事に繋がる? そんなのもったいねぇよな! この人達は旋焚玖のファンらしいし!)
「みんな聞いてくれ! IS学園に入学してからの旋焚玖の武勇伝を!」
「「「 うおぉぉぉぉぉッ!! 」」」
一夏の一夏による俺のための武勇伝が語られるのであった。一夏視点で語られるのであった。……一夏視点で語られるのか(胸騒ぎ)
「ペラペラペーラペラペーラ!」
「「「 うおぉぉぉぉぉッ!! 」」」
「ペペラペラペラペーラペラ!」
「「「 うおぉぉぉぉぉッ!! 」」」
「フッ……」
すごく……大げさです。
だが、俺は一夏に任せたんだ、何も言うまいて。
フッ…俺の歴史にまた(大げさな)1ページ。
話を聞いた俺のファン達(恐)は高揚し、一夏は誇らしげに語り部を務め、俺は晩御飯のメニューを想像していた。
◇
「今日は千冬さんも帰ってくんのか?」
「んー、何も連絡ないし多分帰ってこないんじゃないか」
帰り道。
恐々オッス系兄さん達は既に解散している。とても晴れやかなお顔をしてバイバイした。俺の武勇伝が聞けて良かったな(白目)
「なら、飯はどうすんだ?」
「……あー、どうすっかなぁ、俺もなぁ」
まぁ一夏は料理の鉄人クラスだし、一人でも別に支障らしい支障はないんだろうが。
【飯食いに来させる】
【一夏君もうまそうやな~】
冗談はよしてくれ(タメ口)
「馬鹿野郎お前飯食いに来いお前!」
「え、いいのか?」
【いいわけないだろ立場をわきまえろ】
【パジャマ持って来いパジャマ!】
お泊りコースじゃねぇか!
いいよ来いよ! 夜通しゲームしようぜ!
「パジャマ持って来いパジャマ!」
「え、泊まっていいのか?」
【いいわけないだろ立場をわきまえろ】
【ゲーム持って来いゲーム!】
「ぷよぷよ持って来いお前! 初代だぞ初代!」
「おう! スーファミのヤツだな!」
飽きたらテトリスな!
◇
それから一夏とは分かれ道でいったんバイバイし、俺は久々の自宅に到着である。チャイムを鳴らしたら、わざわざ母さんと父さんが2人して出迎えてくれた。
「おかえり、旋焚玖!」
「おかえりなさい、旋焚玖!」
へへ、こういうのは何歳になっても心が温まるな。流石に少し照れてしまうが、そこはまぁご愛嬌ってヤツだ。
「……ただいま」
【感極まってパパに抱きつく】
【感極まってママに抱きつく】
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!
1か月ちょい親と会わなかっただけで感極まる高校男子がいるか! いてたまるか! 幼稚園児か! 臨海学校から帰って来た小5か! 修学旅行から帰って来た小6か!
「パパぁぁぁぁ~!!」
「おっと!? ハハッ、寂しかったのかコイツぅ~♪ いくつになっても旋焚玖は甘えたさんだなぁ~!」
うるせぇ!
ジッとしてろコラァッ!!
「パパだけズルい~! ママもママもー!」
「ふべっ!?」
ちょっ、タックルしてくんなコラァッ!!
抱擁じゃねぇぞコラァッ!!
久方ぶりの帰宅に再会。
主車家は今宵もあたたかい。
優しい世界(*´ω`*)
次話は弾の家にでも遊びに行きます。