選択肢に抗えない   作:さいしん

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乳メガネ脱却、というお話。



第95話 山田真耶覚醒

 

 

「では、本日から格闘及び射撃を含む実践訓練を開始する」

 

 今日から実技授業は基本的に1組と2組の合同演習なんだとか。あ、ヴィシュヌと目が合った。

 

「……ニコッ」(どうして旋焚玖は体操服なのかしら。でもそれを言って、前みたいにプイッてなられても困るし、ここは笑顔で返しておくのがベストね)

 

 可愛い(再確認)

 

「まずは1組と2組の専用機持ちに戦闘の実演をしてもらおう。2組はギャラクシーのみだが1組からは、そうだな……」

 

 1組には3人、いやシャルルも専用機持ちだって言ってたから4人か。1組多いなー。まぁでも、流石にこれ以上多くはならんでしょ。

 

「……オルコット!」(……はクラス代表決定戦があったか。しまったな)

 

「はいですわ!」(旋焚玖さんに良いところを魅せるチャンスですわね!)

 

「と見せかけて、凰!」

 

「は、はい!」(どうして見せかけんのよ! 怖いから言わないけど!)

 

「えぇ……」(一度呼ばれたのに撤回されるなんて…! 流石に織斑先生でも納得がいきませんわ! 怖いから言えませんけど!)

 

 今のはブリュンヒルデジョークではなく、単なる千冬さんの早とちりだな、俺には分かる。まぁ言わんけど。

 

 

【どうして見せかけたんですか!】

【馬鹿野郎俺が出るぞこの野郎!】

 

 

 バカはお前だこのヤロウ!

 動けないのに出てどうすんだこのバカ!

 

「どうして見せかけたんですか!」

 

「む……」(旋焚玖め、何故スルーしてくれない……いや、待てよ? 今の私の発言はどうだった? 意気揚々と返事をしたオルコットの気持ちを踏みにじったのではないか?)

 

「オルコットは既に一度、クラス代表を決める時に試合を行っているが、凰はまだだったからな。それに言ってて気づいたから変更させてもらった。説明不足ですまんかったな、オルコットよ」(フッ……旋焚玖の指摘がなければ、私は暴君と威厳を履き違えてしまうところだった。まったく……旋焚玖の一言は人生のリードオフマンだな)

 

 わざわざツっこまされた俺が言ってもアレだが、誰にもミスくらいありますよってに。しかし、生徒にちゃんと謝罪できる千冬さんは教師の鑑である!

 

「なるほど。そういう事でしたら、わたくしの出番ではありませんわね」(先ほどの旋焚玖さんのお言葉は、もしやわたくしの事を想って…? うふふっ、まだまだわたくしのハートを奪い足りないようですわね!)

 

 セシリアも大いに納得しているみたいだ。なんかムフフとか言ってるし。

 んで、ヴィシュヌと鈴が模擬戦をするのかな?

 

「さて、お前達の相手だが――うわ」

 

 今千冬さん小声でうわって言ったぞ!

 なになに、どこ見て言って……うわ。

 

「ぬわあああん!」

 

 空気を裂く独特なISの機械音をブイブイ鳴らしながら、突っ込んでくる不届き者だとぅ!? 誰だ、また無人機の襲来か!?

 

「ど、どいてください~っ!」

 

 あ、山田先生だった。

 なんと、山田先生がISで突撃してきてますよ。ドジっ子能力を遺憾なく発揮して、まさかまさかの整列場所に突貫してきてますね。うーんこの乳メガネ、やっぱり乳メガネじゃないか!

 

「ちょっ、ま、マジかよ!?」

 

 乳メガネの対角線上に立っているのは一夏だ。

 これはブツかりますね間違いない。つまり一夏ヤバくね? あ、でも、【白式】展開しかけてるし大丈夫っぽいな。お前中々いい危機管理能力してるじゃねぇか!

 

 

【割って入れば合法的に抱擁できる!うひょー!】

【割って入るがその後は自慢のアドリブでよろ~】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

 なにがうひょー!だバカ!

 抱擁(交通事故)じゃねぇか!

 

 アドリブ上等だオラァッ!!

 かかってこい乳メガネコラァッ!!

 

 動き出せ時オラァッ!!(ヤケ)

 

「せ、旋焚玖!? 危ねぇって!」

 

 うるせェ!!

 神経集中させろマジで!

 

「はわわっ!? しゅ、主車くん危ないですからぁ!」

 

 (原因)お前じゃい!

 

「ふわわわぁぁぁ~っ!?」

 

 ものすっごい勢いだなオイ! ブレーキとアクセル踏み間違えてんじゃねぇぞコラァッ!! タイミング間違えたら終わりだ、集中しろ集中しろ集中しろ――ッ!!

 

余裕で生身な旋焚玖とISを纏いまくりな真耶。両者の身体が接触するか否かの僅かな瞬間。タイミングはまさに零コンマの世界。

 

「……ッ!」(ここだ!)

 

真耶の右腕を掴んだ旋焚玖は、向かい来る勢いに抗わず、そのまま背後の地面へと背負い投げた。

 

「ふきゃっ……あ、あれ…?」(痛く…ない…?)

 

投げられた瞬間、確かに予感した背中への衝撃。しかし、それが真耶を襲う事はなかった。

 

「……激流を制するは静水」(震え声)

 

 こ、怖かったぁ…。

 

「あ、ありがとうございます、主車くん」

 

「気にしないでください」

 

「うぅ……ほんとにすみません」(もし主車くんが居なかったら、織斑くんにケガを負わせていたかも……猛省しなさい、真耶!)

 

 気にしろ乳。

 分かってんのか乳。

 

 走馬灯レベルで気ィ遣ったんだからな今の、いやマジで。

 女だし、背中から落としたら流石に可哀相かなぁって、わざわざ着地しやすいよう投げ飛ばすのに、俺がどれだけ神経と筋肉使ったか。一瞬でも労力ハンパねぇんだぞこの乳めが!

 

 おかげで脳みそパーン身体はズシーンだ。

 お前俺が純情な感情の持ち主じゃなかったら、乳のひと揉みくらいは要求してんぞ。報酬的な意味で。

 

 

【報酬は山田先生の身体で】

【気にするな。一夏が無事ならそれでいい】

 

 

 純情な感情ォん!

 

「気にしないでください。一夏が無事ならそれでいいです」

 

「……へへっ、また助けられちまったな」

 

「いや、一夏も【白式】を出しかけてたし、今回ばかりは俺が勝手に出しゃばっただけさ」

 

 いやホントに。

 むしろあの状況で【白式】を纏った一夏が、弾丸乳メガネをどう捌いてみせるか見てみたかったくらいだ。

 

「……主車くん」(助けた織斑くんに少しも恩着せがましい事も言わず、何より、戦犯すぎる私にも気を遣ってくれるなんて…! 以前、主車くんの情はマリアナ海溝よりも深いと言っていた千冬先輩の言葉が私も理解できました! 言葉でなく身体で理解できましたよ…!)

 

 む……何やら乳メガネから、今まで目の前に立っても微塵も感じた事のなかった気配が……なんだ、この気配は。表情にも勇ましさが見え隠れしているような。……俺の気のせいか?

 

「(このままじゃダメよ真耶! だって私は教師なんだから! 教師が教え子に甘えてどうするの! 自分の失敗をドジっ子体質のせいにするのは終わりです! 殻を打ち破る時は今なのよ真耶!)……私、もっと頑張ります。主車くんにも尊敬してもらえるような、立派な先生になってみせます…!」

 

 これは1組が誇る副担任、山田真耶先生。

 熱い想いがガンガンに伝わってくるぜ。

 

「ならば、早速お手並み拝見といこうか」(フッ……旋焚玖め、言葉ではなくあえて行動だけで真耶の意識を引ぎ上げてみせるとはな)

 

 どうやら模擬戦は鈴とヴィシュヌの対決ではなく、山田先生1人vs鈴&ヴィシュヌでやるらしい。

 

「いやいや、さっき旋焚玖に投げられた人に2人掛かりは…ねぇ?」

 

「……そうですね。むしろ私は旋焚玖と闘りたいです」

 

 ヤりたいって言うなよ。

 せめて闘いたいって言ってくれよ。

 

先程の失態を見ていた鈴とヴィシュヌは、真耶相手では乗り気ではないらしい。そこに『二対一』まで加われば、いくら生徒と教師の試合であっても、眉を顰めてしまうのも無理はなかった。

 

しかし、彼女たち以上に眉を顰めるどころか、動揺しまくっている生徒が一人居た。

 

(いやいやいや!? おかしいでしょ!? 待って待って待って! 今、トンデモないことしたよね旋焚玖!? 生身だよ!? 生身なのにISを纏って突っ込んできた人をぶん投げちゃったんだよ!? どうしてそこに誰もツっこまないの!? 何でみんな驚いてないの!?)

 

悲しいかな、シャルルがデュノア社から言い渡されたターゲットは一夏のみである。そこに2人目の起動者に関しては一切触れられていなく、必然的にシャルルは旋焚玖の旋焚玖っぷりを前もって知らされていなかった。

 

「安心しろ。今のお前達なら瞬殺される。なぁ、かつての【銃央矛塵(キリング・シールド)】?」

 

 え、なにその厨二チックな二つ名は。

 山田先生、そんな風に呼ばれたの? しかし千冬さんは厨二っぽい雰囲気が似合うな。

 

「……はい」(千冬先輩には何もかもお見通しみたいです。その上で発破まで掛けてくれるなんて…! ここで燃えなきゃいつ燃えるの真耶!)

 

「んなっ…!?」

 

「それは……聞き捨てなりませんね」

 

 千冬さんと山田先生のやり取りにムカチーンと来たらしい。鈴、そしてヴィシュヌも上空へと飛翔する。それを目で一度確認してから、山田先生も空中へと躍り出る。前に俺の方をチラ見してきた。なんでぇ?

 

 

【ナズェミテルンディス!?】

【応援してます】

 

 

 【上】の方が絶対面白いし、山田先生だからネタも分かってくれる期待度レインボーなんだが、別にそういうおフザけキャラを定着させたい訳じゃないんだよなぁ俺もなぁ。

 

「応援してます」

 

「……はいッ!」(見ていてください、主車くん! 私はもう、あなたを失望させたりしません!)

 

 (返事が)力強いよねぇ。

 

「手加減しないわよ、山田先生!」

 

「本気でいかせてもらいます…!」

 

「い、行きます!」

 

言葉こそ普段通りの真耶な感じではあるのだが、その瞳には鈴たち以上に闘志が込められており、さらに言えば、鋭く冷静な雰囲気すらをも醸し出していた。

その様子に気付かぬ2人は、同時に真耶へと先制攻撃を仕掛けるが、それを簡単に回避される…だけに留まらず、反撃にまで移される。

 

「ちょっ、速っ!?」

 

「くぅっ…!?」

 

「そこですッ!」

 

 開戦もそこそこに千冬さんが口を開いた。

 

「さて、今の間に……そうだな、ちょうどいい。デュノア、山田先生が使っているISの解説をしてみせろ」

 

「あっ、はい」

 

 空中での戦闘を見ながら、シャルルが説明を始めた。見るからに山田先生が鈴とヴィシュヌをポコポコにしてるから、割と要点チックな説明が求められるな。

 

「山田先生の使用されているISは、デュノア社製【ラファール・リヴァイヴ】です。第二世代開発最後期の機体ですが――」

 

 ラファール・リヴァイヴ?

 興味ないね(クラウド)

 だって俺はたけし一筋だから(一途)

 

「ペラペラペーラペラペーラ」(リヴァイヴの説明中)

 

「ああ、一旦そこまででいい。もう終わる」

 

 シャルルの説明に聞き入っていなかった俺は、山田先生の活躍っぷりを十二分に見させてもらった。いや、魅させてもらったな。

 

「……ふぅ。ありがとうございました」

 

 地面に降りて来てから、ズレた眼鏡を掛け直しつつ一礼する山田先生。かっけぇ。

 

「つ、強すぎでしょ山田先生……このあたしが手も足も出ないなんて…!」

 

「……完敗です。上には上が居る事が身に沁みて分かりました」

 

 2人も山田先生に頭を下げた。

 まぁ2人掛かりで挑んだにもかかわらず、ぐうの音も出ない程にフルボッコにされてたもんなぁ。流石に試合前とは打って変わって殊勝になるわな。俺が闘ったら? 負けますねぇ! さらに瞬殺されますねぇ!……とほほ。

 

「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できたな? 以後は敬意を持って接するように。では、今から実習を行う。織斑、オルコット、凰、デュノア、ギャラクシーをリーダーにグループに分かれろ」

 

 千冬さんが言い終わるや否や、一夏とシャルルの元へと一気に2クラス分の女子が黄色い声と共に詰め寄った。……別に羨ましくねぇし。俺だって学園から出たら、詰め寄られる事なんてしょっちゅうだし。性別は漏れなく男だけど。黄色い声も漏れなく低音だけど。……ちくせぅ。

 

「織斑君、一緒にがむばろう!」

 

「わかんないところ教えてYO!」

 

「デュノア君の操縦技術が見たい。見たくない?」

 

「じゃけん見せてもらいましょうねぇ~!」

 

 行列が出来るラーメン屋並みな繁盛っぷりである。詰め寄られている2人は明らかに困ったさんな様子だけどな。

 

「(´・ω・`)」

 

「あ、あはは……」

 

 一夏は(´・ω・`)してるし、シャルルは苦笑い。んでもって、2人とも立ち尽くしている。

 しかし一夏はいつも通りだとしても、流石にシャルルはイカンでしょ。今朝来たばかりなのに、もう何回目だよ、アイツが苦笑いしてんの。はしゃぎたい気持ちは分かるが少しは自重しろよお前ら、あと俺。

 

 

【自分も一夏に群がる一人でありたい】

【自分もシャルルに群がる一人でありたい】

 

 

 文面はともかく俺の役目はアレだろ、蜘蛛の子を散らせる者と化せばいいんだろ。そういうのは慣れてるし得意だぜ(自虐)

 

 まずは俺から近いシャルルへ群がる女どもの背後に忍び寄る。あ、おじゃましまーす(小声)

 

「ガチョーン!」(アドリブ)

 

「「「 ひょわぁっ!? 」」」

 

「うわビックリした!?」

 

 シャルルまで驚かせちまったが、まぁ想定の範囲内だ。

 

「おい、やべぇよ…やべぇよ…」

 

「どうすんだよ…」

 

「どうすんだよ…」

 

「朝飯食ったから…」

 

 オラ散れ。俺も今朝はパン食ったんだから散れオラ。さっさと散らねぇとアホの【選択肢】にトンデモねぇ事されちまうぜ? 俺が。

 

「あ、集まり過ぎは良くないよねー」

 

「そうだよ」

 

「お、そうだな!」

 

 よしよし、俺の意図を汲んでくれたのか、ナニかをさせられる前にシャルルからスタコラサッサしてくれてありがとよ。……ん?

 

「この感じだと、私達の方にも主車くんがガチョりに来る可能性…?」

 

「ありますねぇ!」

 

「ありますあります!」

 

 一夏に群がっていた女共も空気を読んで離れていく。

 いやはや一発双貫とはまさにこれ。文字通り一度で二度おいしいってヤツだな。俺のギャグもまだまだ捨てたモンじゃねぇぜ。

 

「よし。では出席番号順に一人ずつ各グループに入れ。主車はデュノアのサポートをしてやれ」(私が怒鳴るまでも無いとはな。まったく……旋焚玖に掛かれば、小娘共の扱いなど赤子の手をプニプニするより簡単らしいな)

 

「お願いしますね、主車くん」(主車くんなら安心ですね!)

 

「分かりました」

 

 分かりません。

 サポートって言われても、一体ナニをすればいいのか。俺のIS技量がうんちな事は、千冬さんも山田先生も分かってくれてるだろうし。

 

 あれかな? 

 シャルルに変な気を起こす女子が居ないかどうか、監視でもしてればいいのかな。あ、シャルルの班に箒も居る。

 

「せ、旋焚玖! 同じグループだな!」(ふぉぉぉぉッ! 座席の神には見捨てられた私だが、班の神には見捨てられていなかった…! 見捨てられてなかったぞぉ!)

 

「ああ、お前が居ると心強い」

 

 いやマジで。

 俺という存在が受け入れられつつある風潮はあっても、結局のところ専用機持ちを除けば、俺とちゃんと話してくれるのって箒と布仏と相川と鷹月くらいだし。

 

「う、うむ!」(ふははは! 聞いたかデュノア! おい聞いたか!? こんなにも私は旋焚玖に頼りにされているのだ! 今日来たばかりの男に私は絶対に負けんからな!)

 

 (返事が)力強いよねぇ。

 

 箒のおかげで俺も不安が和らいだ。

 さぁ、実習のお時間だ。サポートは任せろー。

 





シャル:二人目の男子が生身でISを投げ飛ばしたんですけど

アルベール:うっそだろお前ww

ロゼンタ:テラワロスww

シャル:(´・ω・`)
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